また、内閣府がまとめた「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」から、該当する部分をそれぞれ引用しておりますので、支援を考える際の参考にしていただければと思います。こちらのサイトを読んでいると、以下で挙げたほか、外国人や障害のある方へのケアも考えなければならないと痛感します。
■医療体制
- 医療体制の整備が急務ではあるが、現地では施設そのものが損壊しているところが多いため、全国的な支援が必要。ただし、もともと医師・看護師不足であるため、全国のリソースの許す限りの対応とならざるをえない。
- 震災後初期には、赤十字やDMATが駆けつけて急性期のけが人や病人を診療していたが、現在は慢性期の疾病や風邪・インフルエンザなどの感染症、歯科などの診療が求められるようになっている。これらの診療にはカルテや服薬の状況を確認する必要があるが、それも流されている場合も多く、新たに作り直す作業が生じている。
【区分】
1.第1期・初動対応(地震発生後初期72時間を中心として)
1-04.救助・救急医療
【03】病院間連携・患者搬送
【教訓情報】
01.被害を受けた医療機関では、震災による負傷者や震災前からの入院患者の転院、通院患者の紹介なども必要だった。
【教訓情報詳述】
02) カルテ散乱やコンピュータ停止のため、転院先、紹介先への診療データ引き継ぎも困難だった。
「【03】病院間連携・患者搬送(pdf)」(阪神・淡路大震災教訓情報資料集)
■避難所の運営
- 避難所では自治組織が形成されつつあるが、緩やかな組織であるがゆえに強制力を持たず、置き引きなどの犯罪行為に対しての実効確保ができない。周辺地区の警察による巡回が望まれる。
- 電気、ガス、水道が復旧していない避難所では、炊き出しやカイロなど使い捨て用品を使用しており、また水洗化していないトイレのくみ取りも必要となるため、避難生活が長引くにつれて廃棄物の処理が課題。
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-01.避難所の運営と管理
【01】避難所の運営
【教訓情報】
03.避難者有志がボランティアとして発災当日から管理運営に携わった避難所もあったが、その他の避難所でも徐々に自主運営組織が形成されていった。
【教訓情報詳述】
06) 避難所において、防犯対策を講ずる必要性が生じ、兵庫県は巡回パトロールを実施した。★
「【01】避難所の運営(pdf)」
【区分】
1.第1期・初動対応(地震発生後初期72時間を中心として)
1-08.保健衛生
【02】トイレの確保とし尿処理
【教訓情報】
01.断水により水洗トイレが利用できなくなったため、避難所などでは汚物の山ができた。プールの水を利用するなどの工夫をこらしてトイレを確保したところもあった。
【教訓情報詳述】
02) 学校等の避難所では、糞便を流すためにプールの水を運ぶ、糞便をビニール袋に入れて清掃する等、断水の中で水洗トイレを利用する工夫がこらされた。
「【02】トイレの確保とし尿処理(pdf)」(同上)
■支援物資の物流
- 物流拠点としての機能が損なわれているため、支援物資を末端(避難所だけではなく、ライフラインがないまま自宅や親族宅で寝泊まりしている方を含む)まで行き届ける仕組みがない。物流のプロがそれなりの設備(倉庫、店舗、配送等)で行っていたレベルまで回復することは、当面の間は不可能。「支援物資を送れば現地に届く」という前提を一度白紙に戻して、支援物資を末端まで届けるための物流システムを構築する必要。
- 全国から送られてくる支援物資は、内陸部の拠点にいったん集約して10トントラックで現地までピストン輸送している。積み込み拠点は物流の設備があるものの、受け入れる側はフォークリフトもないため、トラックから積み降ろすだけでも重労働になる。10トントラック分の物資を継続的に受け入れられる大規模な避難所も限られている。
- ストック物資(毛布、調理器具、暖房器具、ラジオ、仮設トイレ等)は現地でストックして管理する体制ができるまでは、必要量しか受け入れられない。現時点ではまだ足りないところが多いと思われるが、今後必要量を上回る物資が送られた場合、現地で管理する体制ができるためにはインフラの復旧を待つ必要があり、現時点で多すぎるストック物資は避難所の生活スペースを圧迫する恐れもある。
- フロー物資(食料、歯磨き、洗面、紙おむつ、生理用品等)は継続して供給する必要。食事が炭水化物中心(おにぎり、カップラーメン、アルファ化米等)となっているので、ビタミン類や繊維質を含む加工食品もあるとよい。
- 支援物資の物流システムについては、ストック物資がある程度行き渡り始めた後は、できるだけロットを小分けにしてフロー物資が継続的に届けられるような物流システムとする必要がある。現時点では、石油燃料の物流ルートが確保されない限り難しい。特に、リアス式海岸部では、内陸部から沿岸の被災地まで車で2時間〜3時間かかるところがほとんどであるため、ロットを小分けにして継続的に届けるためには大量の石油燃料が必要。
- 以上から、フロー物資は継続的に小分けして送り届ける必要があるものの、石油燃料の不足によりロットを大きくせざるをえないというジレンマの中での物資補給となっている。
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-01.避難所の運営と管理
【03】避難所間・避難所内外の格差
【教訓情報】03.避難所が、周辺被災者に対する救援の拠点となったため、避難所内被災者と周辺被災者との間で、食料・物資の配布に軋轢も生じた。
【教訓情報詳述】
01) 避難所外の被災者への物資等供給が避難所を拠点としたため、避難所内部の人から「どうして外部の人の分まで、配らなければならないのか」という不満の声があがった避難所もあった。
「【03】避難所間・避難所内外の格差(pdf)」(同上)
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-02.被災生活の支援・平常化
【01】食糧・物資供給体制の再構築
【教訓情報】
04.避難者ニーズは時々刻々と変化し、ニーズを把握しての適切な対応は難しかった。
【教訓情報詳述】
02) ニーズの把握は困難でタイムリーな対応は難しかった。また、報道を通じての支援呼びかけはタイムラグがあったため時期を逸した救援物資が届いた。
「【01】食糧・物資供給体制の再構築(pdf)」(同上)
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-02.被災生活の支援・平常化
【01】食糧・物資供給体制の再構築
【教訓情報】
05.弁当による栄養の偏りなどが発生したため、食費単価が変更され、野菜類の追加などが行われた。また、ボランティア等による炊き出しも実施された。
【教訓情報詳述】
05) 徐々にメニュー内容に工夫がこらされ、また野菜の提供なども行われた。
「【01】食糧・物資供給体制の再構築(pdf)」(同上)
■ボランティア
- 同様のジレンマはボランティアにもあてはまる。阪神淡路大震災のときは、被災地となった神戸周辺地域まで近隣市町村や府県からも個人ボランティアが陸路で日帰りすることができたが、リアス式海岸部の被災地までは、近隣市町村からでも急峻な山道を越えていかなければならず、継続的な支援のためには現地に寝泊まりすることが必要。しかし、インフラが損壊して物流が滞っている現状では、個人ボランティアが自活しながら継続的な支援を行うことはきわめて困難。
- 岩手県社会福祉協議会でも、ボランティアは同一市町村内で活動できる方に限っている。同一市町村内の方であれば、被災者と寝食しても不公平感がないからというのがその理由と思われる。外部の方が被災者と寝食すると、それに見合う働きが要求されることになり、いざこざのもとになる恐れがある。
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-04.ボランティア
【01】ボランティアの種類・活動内容
【教訓情報】
02.特に特技・資格を持たない一般ボランティアが多く、ボランティア活動は初めてという人も多かったため対応に追われる面もあった。
【教訓情報詳述】
02) 初心者ボランティアが多く、宿泊や食事のあてもなくやみくもに来神したボランティアへの対応に翻弄された例もある。
「【01】ボランティアの種類・活動内容(pdf)」(同上)
■罹災証明等
- 今後復旧支援のためには、地元市町村が「罹災証明」を発行することが重要なポイントとなるが、自治法等に規定された手続ではないため、基準の明確化、事務処理を遂行するための体制整備も今後の課題。
- 罹災証明は、その他の公的手続や民間金融機関との手続の際にも必要とされることがあるため、地元市町村役場と関係機関との調整が必要。地元市町村役場が壊滅的被害を受けている場合は、近隣市町村や県が代替的に事務処理を行うことも必要。
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-03.被害把握・り災証明
【02】り災証明書の発行
【教訓情報】
01.1月下旬に入った頃から、市民からの要望に応える形で、各市においてり災証明書などの発行が行われた。証明書の法的位置づけについて急きょ検討した上で発行した自治体もあった。
【教訓情報詳述】
02) り災証明(被災証明)の法的位置づけについて、急きょ検討した上で発行した自治体もあった。
「【02】り災証明書の発行(pdf)」(同上)
【区分】
2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日〜3週間)
2-03.被害把握・り災証明
【02】り災証明書の発行
【教訓情報】
03.り災証明は、各種の公的救済措置のほか、民間の被災者救済基準にもなった。一方で、自治体が全壊と認定した戸数は、建設省建築研究所が行った調査結果と比較して多かったとの指摘もある。
【教訓情報詳述】
01) り災証明は、各種の公的救済措置の基準となっただけでなく、民間の被災者救済基準にもなった。
「【02】り災証明書の発行(pdf)」(同上)
■義援金
- 現時点で一般の方ができる支援として、簡便かつ効果的なものは義援金の寄付。ただし、それを受け入れる側の実務には多大な労力が必要となるため、復旧時の被災地自治体の負担が増えるという点で、地元公務員としては痛し痒し。
- 個人的な見解として、民間機関を通じて義援金を募集して配分すると、そのために独自の事務処理を行わなければならなくなり、配分を受ける側にかえって不公平感を募らせることが危惧される。前回エントリでとりあげた関係機関の活動と同様、現行制度において可能な復旧事業をまず優先するため、増税して確保した歳入を地元自治体の歳入に充てることが事務効率上も望ましいというのは、コームインの勝手な言い分でしょうか?
【区分】
3.第3期・本格的復旧・復興始動期(地震発生後4週間〜6ヵ月)
3-02.住宅と生活の再建
【04】義援金
【教訓情報】
02. 1月25日に関係26団体からなる「兵庫県南部地震災害義援金募集委員会」が発足したが、委員会メンバーの構成や一部義援金が対象外となったなどの問題もあった。
【教訓情報詳述】
06) 義援金の募集・配分には大きなマンパワーと事務的経費が必要となる。☆
「【04】義援金(pdf)」(同上)
【区分】
3.第3期・本格的復旧・復興始動期(地震発生後4週間〜6ヵ月)
3-02.住宅と生活の再建
【04】義援金
【教訓情報】
02. 1月25日に関係26団体からなる「兵庫県南部地震災害義援金募集委員会」が発足したが、委員会メンバーの構成や一部義援金が対象外となったなどの問題もあった。
【教訓情報詳述】
01) 初期に各市町が受け入れた義援金の内、各市町を特定した義援金が募集委員会に送金されない例もあり、自治体間での不公平が指摘された。
「【04】義援金(pdf)」(同上)
(追記)
donffang99さんのエントリで引用されている今村西宮市議のエントリで、被災地支援を考える上で考慮すべき生々しい現実が書かれていますので、丸々引用させていただきます。
阪神大震災に遭われた西宮市議会議員今村岳さんの記事です。非常に大事なことを言っていると思ったので、ここに貼っておきます。
悔しくて、悔しすぎて、記憶から消していたことが、いろいろ蘇ってきて辛いです。
ひとつは、観光気分で来た自分探しボランティアの連中のこと。
彼らは、人から感謝されることを楽しみにやってきただけでした。
だから、汚れ仕事やしんどい仕事は何かと言い訳しながらやりませんでした。彼らで集まって楽しそうに親睦を深め合っていました。そんな彼らに「惨めな被災者」と扱われる屈辱。何日か経ったとき、避難所のリーダーが耐えきれずに怒鳴り散らして彼らを追い返してくれました。彼らがいなくなっても、彼らに受けた屈辱は消えませんでした。
ひとつは、「家が焼けただけでしょ?」と私に言った大学教授のこと。
震災後しばらく経って、避難所を少しはあけても手が足りるかなと思ったころに、大学に試験を受けられないと説明にいくために、京都まで出向いて教授を順番に廻りました。
ある教授はこういいました。
「ペンと本があれば勉強できるわけだし、もう電車も復旧しているから、
試験も受けに来れるはずでしょ?家が焼けたからと言って、ねぇ。。」
研究室でものを投げ散らかして軽く暴れたあと、彼に「おまえの家が焼けてもペンと本があれば授業をするんだな?」と言って帰りました。
部屋を出たあと、暴れたのは、目の前の豚を殺したかったからではなく、被災者以外が被災者のことを理解してくれるのではないかと期待した自分の愚かさに、腹が立ったからだとわかりました。
(中略)
「被災経験のあるあなたに訊きたいが、被災地に対して何かできることはないか」
と友人に訊かれたので、こう答えました。
まずは、呼ばれでもしないかぎり、絶対に被災地に行かないことです。被災地から出ようとする人、入ろうとする支援部隊や家族でアクセスはただでさえ大混乱ですから非常に邪魔です。統制もとられておらず装備もなく訓練も受けていない「ボランティア」はただの野次馬観光客です。何の役にも立ちません。
自衛隊は、食糧から水から燃料から寝具から、全て自前で用意して出動します。しかし、手ぶらのボランティアは、被災者が食うべきものを食い、被災者が飲むべき水を飲み、被災者が寝るべきところで寝るのです。完全に現場指揮に従うのであれば、しかも生き地獄での救援活動に耐えうる技術と精神力を備えているのであれば、行ってこればいいと思います。
次に、要請されないかぎり何も送らないことです。
何が不足しているかもわからずに送られてくるものは、千羽鶴と同じゴミです。「着るものがないだろう」とボロを送られても馬鹿にされたと思うだけです。水もガスもないところにカップ麺を送られても意味ありません。現場に何が必要かを理解しているのは現場のプロだけです。
「○が不足しているのでどこに送って欲しい」という呼びかけに応えるのであれば、ぜひ送ればいいともいます。
そして、ぜったいにこちらから安否確認の通信をしないことです。
安否確認したいのは被災していない側です。被災していない側が安心したいだけです。安否確認などされても被災者には何の益もありません。
安否確認で電話することは、通信が復旧しきっていない情況で、被災者でない側が安心したいがために通信を使用する行為です。
要はプロに任せることです。
16年前、遠くのまちの名前が書かれた消防車やパトカー、そしてなにより規律正しい自衛隊が来てくれたときには、ほんとうに嬉しかったです。彼らは、これまでに見たどんな人間より気高かったです。彼らはプロとしての技術を持っていましたし、彼らは私たちに感謝されることなど求めていませんでした。被災地に必要なのは、プロだけです。
http://xdl.jp/diary/index.html#20110313#p01
「要はプロに任せること(2011-03-15)」(dongfang99の日記)