2009年03月22日

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地方公務員の高すぎる給与明細

増税の前に ルポ 鹿児島・阿久根市

編集部 野口 陽


◆鹿児島県阿久根市

鹿児島県阿久根市を訪ねた。

竹原信一市長が、消防を除く市職員268人全員の給与を公開したからだ。 名前は伏せてあるものの、諸手当、ボーナスなどの各金額と合計の給与額を、 一円単位で市ホームページ上に掲載した。

◆300万円未満は7%

鹿児島県統計協会がまとめた、阿久根市民の年間所得推計は約200万円。

これに対し、市職員の給与分布を分析してみると、実に半数以上が年収700万円以上で、300万円未満は7%だけだ。

市職員の平均約650万円、民間300万円とすれば、2倍以上の格差が生じていることになる。

あわせて公開された今年度退職予定の一般職員の退職金は大半が2500万円以上。 見事なまでの「官高民低」ぶりに、市民は驚きを隠さない。

イワシの漁獲量が激減し、市の基幹産業だった漁業が衰退。

そのほかに目立った産業がない阿久根市は、高齢化が進み人口減少が止まらない、典型的な「過疎自治体」だ。

年間収入総額約107億円(2007年度)の半分以上は、国や県からの交付金と補助金が占めている。

その状況で、市の人件費は約22億円。

市税収入約20億円ではまかないきれず、結果的に国民の税金が地方公務員の給与補填に使われていることになる。

◆国と同じ給与体系

地方自治体の職員と民間との給与格差は、阿久根市に限った話ではない。

内閣府の外郭団体が1月に発行した経済誌「ESP」で、内閣府政策統括官の松元崇氏らが、地方公務員の人件費についての論文を寄せている。その論文にはこうある。

「地方公務員の給与に地域の民間企業の給与格差は反映されておらず、民間企業の給与水準が低い地域ほど、その地域の公務員の給与が割高になる傾向が見られる。
東京と鹿児島のタクシー運転手の給与は大きく異なるのに、東京と鹿児島の地方公務員の給与はほとんど変わらない」

地方の物価は大概、都会に比べて安い。

同じ給料額なら、地方のほうが可処分所得が高くなるはずだ。竹原市長は言う。

「自治体の給与は、自治体ごとの条例で定めるよう法律で決まっている。国家公務員に準じる必要はない。そもそも国から言われる筋合いの話ではないし、それなら自治ができない」

◆民間調査は1割だけ

公務員に関する著書の多い兵庫県立大学大学院の中野雅至准教授(行政学)はこう話す。 「地方分権が進んでいる最中に、給与水準だけ国に準拠し続け、『いいとこ取り』の地方分権になってしまっている」

そもそも公務員の給与水準は、人事院と県人事委員会が民間事業所の給料を調査し、民間水準に合うよう国や県に勧告する。

だから、民間との格差はない、というのが表向きの論理だ。

しかし、阿久根市の例を見れば、格差は歴然とあるーー。


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