きょうのコラム「時鐘」 2011年3月23日

 首都圏だけでなく、関西の知人からも乾電池がほしい、と言ってきた。近くのスーパーで見つけたが、棚に「一人3個まで」と張り紙がある

被災地優先の大事な品である。節度ある買い物が大事な心得の一つだが、在庫の品薄を知らせる張り紙が、不心得者を買いだめに走らせはしないだろうか。不安がよぎったが、「そんな人はいません」と店員に言われた

手を携え、足並みをそろえて被災地の苦難に思いをはせる時が、まだまだ続く。そんな時なのに、多くのファンを持つプロ野球が、開幕を巡って足並みを乱しているのはどうしたことか。開幕日を延期したパ・リーグに、セ・リーグはなかなか同調しない。きのうは多忙なはずの大臣の手までわずらわせた

被災者に勇気を与えたい、と口々に言う。確かに、スポーツはそんな力を備えている。懸命なプレーを見たいと願う一方で、同日開催やナイター自粛を望む選手たちの主張も理解できる

乾電池は3個までというささやかな節度も、積もり積もれば被災地の力になる。「勇気を与える」という大事な役目も、ばらばらでは力がそがれはしないか。