市民による映画館“カーテンコール”がオープン
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昨年の11月福岡県の久留米大学で開催された、“地方発の映画”のシンポジウムに招かれた。久留米は瀬木直貴監督の「千年火」と、新作「卒業写真」を応援するなど地方発信の映画作りに力を注いでいる。そのシンポジウムで、閉館した映画館を、NPOを設立(現在準備中)して、新たに市民による映画館として再生しようとする有志の方々と会った。NPO任意団体、カーテンコール設立準備室の代表、金子盛司さんをはじめとする方々だ。久留米市にはかつて映画館が11館あったが、東映、松竹会館などが次々と閉館し、昨年の7月にスカラ座1,2がクローズして、成人映画の久留米スバル座を除いて映画館はすべてが閉館してしまった。現在は久留米市郊外のシネコン、T・ジョイがある。
久留米の都心部では大型スーパーのダイエーが3店舗閉店し、中心部の商店街には空き店舗が目立つという。これは久留米に限ったことではなく、地方都市で普通に見ることのできる風景である。そこで、金子さんたちは、地方都市の映像文化を守ろうと立ち上がった。スカラ座1,2をそのまま借り受け、市民による映画館として運営し、3月21日(祝)にオープンを予定している。シネコンではなかなか上映されないミニ・シアター系の作品や、良質な作品でもすぐに打ち切られた作品を上映していきたいという。また、落語、シンポジウム、朝市などのイヴェントも企画し、市民のコミュニティの場としても活用していく。さらに託児所や介護師をつけた企画上映も計画している。昨年は邦洋あわせて821(邦417、洋404)本の映画が公開されたが、その多くは地方では上映されない。シネコンでは拡大公開作品か、ミニ・シアター公開のなかで特にヒットした作品しか公開されない。上映機会を求めるミニ・シアター系の製作者、配給会社といった発信者や、様々な映画と出会いたいファンである受信者にとって、この試みは喜ばしいことである。地方都市の駅前商店街に空き店舗が並んでいる風景は珍しくないと書いたが、久留米スカラ座が成功すれば、追随する町も増えるはずだ。その意味では、ぜひとも成功してほしい。しかし、現実はそんなに簡単にはいかないだろう。応援しておきながら、ひとこと言いたくなるのが私の悪いクセなのだが、東京でも苦戦する作品が多いミニ・シアター系の映画を久留米で上映するからには、たいへんな覚悟が必要だ。
NPO法人が運営する映画館としては、埼玉県、深谷市の《NPO法人市民シアター・エフ》が運営する“深谷シネマ”が成功している。この劇場は、代表の竹石研二氏をはじめとする関係者の映画館に注ぐ無私ともいえる情熱と地元住民の暖かい応援に支えられている。しかも、この劇場は座席数50という、扱いやすい規模でもある。一方、久留米スカラ座1は270席、2は250席という、どうどうたる映画館である。しかし、大は小を兼ねるということもあり、このスペースを活かした工夫をひねり出してほしい。
昨年のスクリーン数は3062となり、ついに3000を超えた。3000スクリーンあったのは1971年のことであり、その当時、映画人口は2億5000万人だった。しかし、その当時、3000スクリーンのうち、かなりの数の名画座が存在した。この時代に大学生だった私は、年間200本ほどは名画座で映画を見た。名画座がなければ今日の私はなかったとさえ言えると思う。しかし、現在の3000スクリーンの75%はシネコンである。多様な映画文化とシネコンは相容れないところが多い。だからこそ、スカラ座には何としても成功して欲しい。
久留米スカラ座の詳細は下記の通りである。ぜひ、みなさんも応援してほしい。
活動施設 スカラ座1、スカラ座2
所在地 福岡県久留米市東町22-34
都心部商店街ほとめき通り(西鉄久留米駅より徒歩3分)
会館予定日 平成19年3月21日(祝)
NPO任意団体、カーテンコール設立準備室(久留米市中央町20-13-205)
代表:金子盛司
副代表:小路賢司
技術責任者:福島英治