光電気化学蓄電池 |
信大理学部(松本市)の樋上(ひのうえ)照男教授(分析化学)らのグループは4日、太陽光で発電する「太陽電池」と、発電した電気を蓄えておく「蓄電池」の両方の性質を持つ「光電気化学蓄電池」の開発に成功したと発表した。炭素分子「フラーレン」が持つ、太陽光エネルギーを内部に閉じ込め長期間保存できる性質を利用した。同教授によると、フラーレンを応用した太陽電池の開発は珍しいという。
「光電気化学蓄電池」は、フラーレンを溶かした油の槽と、酸化剤を溶かした水の槽の二つの部分で構成。油槽に太陽光を当てると、中のフラーレンが太陽光のエネルギーを蓄える。電気が必要な場合は、フラーレンが持つエネルギーを電子の流れを利用して水槽へ移し、電気を発生させる仕組み。
フラーレンが蓄えたエネルギーは長期間保存でき、夜間や悪天候時にも電気として利用可能。現在の太陽光発電システムでは、パネルなど発電部分のみでは電気を蓄えられないため蓄電器を設置する必要があるが、樋上教授らの光電気化学蓄電池が実用化できれば蓄電器は必要なくなり、省スペースやコスト減につながるという。
同教授は、信大客員教授でもある環境計測機器メーカー紀本電子工業(大阪市)の紀本岳志社長と、実用化に向けて共同で研究している。
樋上教授は「太陽光を物質として保存できる画期的な技術。小型化し携帯電話に利用するなど、日常で使えるように研究を進めたい」と話している。