1970年代から次々に斬新なテレビドキュメンタリー番組を発表し、数々の賞を受けたRKB毎日放送の元ディレクター、木村栄文(きむら・ひでふみ)氏が、22日午前9時30分、心不全のため福岡市の自宅で死去した。76歳。福岡市出身。自宅は福岡市中央区地行。葬儀・告別式は24日午前11時から福岡市中央区古小烏町70の1、積善社福岡斎場で。喪主は妻静子(しずこ)さん。
木村氏は西南学院大学卒業後、59年にRKB毎日放送に入社。主にドキュメンタリー番組の制作を手掛け、水俣病をテーマとした「苦海浄土」(70年)、炭鉱閉山の続く筑豊を撮った「まっくら」(73年)、五・一五事件の際、福岡日日新聞(西日本新聞の前身)紙上で軍部批判の論陣を張った菊竹六皷の生涯を描いた「記者ありき 六皷・菊竹淳」(77年)などの作品で知られた。
これらの番組で芸術祭大賞、放送文化基金賞、日本ジャーナリスト会議賞、日本記者クラブ賞など数々の賞を受賞、「賞男」と呼ばれた。
また、JNN九州・沖縄・山口の民放8局が共同制作していたドキュメンタリー番組「電撃黒潮隊」の制作指導などで、後進を育てた。
2003年にエグゼクティブプロデューサーで退職。パーキンソン病を患ったが、病に侵されながらも番組制作への意欲は薄れず、その様子はNHKの番組「もういちどつくりたい テレビドキュメンタリスト木村栄文の世界」のタイトルで全国放送された。
一昨年に腎盂(じんう)がんで手術を受け、昨年は肺炎で入院、今年2月からは自宅で療養していた。著書に「六皷・菊竹淳の生涯」「記者たちの日米戦争」などがある。02年に紫綬褒章を受章。
■情熱秘めた気配り 「苦海浄土」の原作者石牟礼道子さんの話
木村さんの「苦海浄土」の番組は、理屈で主張しない、情感に訴える演出で、力があった。水俣病問題を多くの人に知らせた功績は大きい。情熱を秘めた、気配りの行き届いた方だった。
=2011/03/23付 西日本新聞朝刊=