'11/3/14
大長港の雁木 改修で消える
呉市豊町の大長港で、明治から昭和初期に築かれた石段の護岸「雁木(がんぎ)」が姿を消しつつある。高潮対策で広島県が護岸改修を進めているため。住民が待ち望んだ安全対策ではあるが、ミカン栽培の最盛期を物語る雁木を惜しむ声もあり、一部をモニュメントとして残す計画も進んでいる。
当時の雁木は、人工の入り江である北堀と南堀の計約150メートルにわたって残っている。当初は約330メートルあったが、県が2007年度に護岸を造り替える工事を始め、これまでに北堀の南岸の約180メートル区間で古い雁木が姿を消した。
一帯は高潮による道路の冠水が年に数回は起こる地域。県は古い雁木の大半を取り除く予定で、新しい階段式の護岸と高さ約1メートルの堤防の設置を進めている。
工事を担当する県西部建設事務所呉支所は当初、古い雁木を残す工法も検討したが「石の再加工や強度の問題で事業費が膨らむため断念した」という。代わりに、新しい石で階段状に作る雁木風の護岸を採用。改修の総事業費は20億円程度を見込み、全ての改修が終わるのは約10年後を予定している。
取り除いた雁木の石の一部は現在、近くの空き地で保管している。自治会などでつくる豊町まちづくり協議会は、石を再利用したモニュメントやベンチを公園に設置することを検討しており、市も上限100万円の支援を予定する。
【写真説明】ミカン農家などが荷物の積み下ろしに使ってきた大長北堀の古い雁木。護岸改修で今後、姿を消す