心が熱くなった。19日夜、福島第1原発3号機に放水し、帰京した東京消防庁の部隊の記者会見を見た。角刈り頭の隊長は「隊員の家族に申し訳ない」と涙をこらえた。別の幹部は出発前、妻に任務をメールで伝えると「日本の救世主になってください」と返信が来たという。
消防隊員だけではない。自衛隊員、警察官ら関係者は家族を残し、現場で「目に見えない敵」である放射線と闘っている。警察回り時代、怒鳴られたり、酒を酌み交わしたりした刑事たちを思い出す。武骨だが仕事に誇りを持つ「現場のプロ」によって日本は支えられている。
東日本大震災発生以来、首相官邸に詰めている。被災地と比ぶべくもないが、危機対応に追われる菅直人首相にとっては修羅場だ。取材するわれわれ記者もプロである。遠くに住む家族を思いながら、いまの自分にとってはこの場所が現場だと言い聞かせている。 (相本康)
=2011/03/22付 西日本新聞朝刊=