ライブ一段落

Mar-22-2011



 本日もまた黙祷から不謹慎へと流れますので、抗議がある方はワタシへ直接どうぞ。倉地久美夫も天才ですが、玉置浩二もやはり天才だと思うのは、80年代的な反語的レトリックとはいえバンド名に「安全地帯」とつけた事にもその一端が現れています。

 と申しますのも、我々DCPRG、一昨々日日富山で演奏し、一昨日富山から帰還し、その足でピットインに向かい、演奏し、そのまままた飲んで、寝て、起きて、台湾マッサージに行って帰宅したばかりですが、彼の地、富山はあたかも安全地帯であるかのごとき雰囲気。京都や鹿児島の友人も同じ事をいますが「本当に被災した人や死んだ人には申し訳ないけど、ぜんぜん他人事なんだよね。だってこっち、実際何ともないんだもん」とのこと。初めて訪れた富山は、それはそれは牧歌的なヴァイブスの街でした。

 ああそれなのにそれなのに。福島の与太郎兄弟をビビってか、イベント二日前に一方的にドタキャンしてきて、主催者とファン、そして11人(ゲストにTAKUYAさんまで連れてよ!!笑)雁首そろえて乗り込んだ我々全員をコケにしたリトルクリーチャーズ、というより、原発の無い安全な沖縄に移住したばかりの青柳拓次氏は、本日よりバンドの名称を「リトルクリーチャーズ」から「安全地帯」に変えるべく、玉置浩二氏に移譲願いを出しに行くべきでしょう。

 とはいえ高い可能性で玉置氏は原発のある本州にいらっしゃるでしょうから(解らないハワイかも知れない)、メールか電話ということになるので、直訴としては些か迫力に欠けますが、些か迫力に欠けるのは氏にすればもともとの事ですから気にもなるまい。とはいえあの素晴らしい才能と歌声を持る氏の事ですから、いつか恐怖と蒙昧を克服し、真実に気がつく事でしょう。即ち、既に地球上の、少なくとも我が国の中に、絶対安全地帯などどこにもないということ、もし安全地帯があるとしたら、一人一人の心の中にだけなのだということを。と、こうしてデリケートなエコロジストをディスっているのだか、若き音楽家への愛のあるウィズダムを送っているのだか今ひとつよく解らない事を書いても(笑)、結論としてはやはり玉置浩二は天才だとしか思うしかありません。「安全地帯は、我々一人一人の心の中だけにある」どう読んでも玉置浩二の一人勝ちです。

 一方、2日前に突然代役を振られたにも関わらず、二つ返事で富山まで飛んで来て下さった、サカキマンゴーとリンガトレイン・サウンドシステムの皆さんは、そのドープでトライバルなグッドミューックはいうまでもなく、音楽家としてのあらゆる姿勢において、リスペクトしてもしてもしきれません。我々は握手し、互いに「光栄です」と言い合いました。

 というかそもそも、ワタシはここ数年来、サカキマンゴー氏のファンで(「菊地成孔セレクション200CD」のアフリカ編をご参照ください)、最初にクリーチャーズがドタキャンし(しかも、公演中止に対する、ファンと主催者への公式発表の文言は<この度の震災の影響により公演中止>のみ!!ぶははははははははははははははは!!!!富山の聴衆と我々DCPRGを下々の国民扱い!!「安全地帯」がダメなら「リトル東京電力」もしくは「リトル原子力保安員会」がよろしかろう。なんか「行きたいけど、ちょっとトラブルがあっていけなくなっちゃって」みたいな含み持たせちゃって、なかなかオトナだねえ。ソウルフルでグルーヴィーなクリーチャーくんたち・笑)、どうやら地元のロックバンドが出るそうだ、と聞かされていたので、当日会場入りしてから、いらっしゃるのがマンゴー氏と聞いた時には小躍りしてしまいました。トラブルは好機と言いますが、本当にあの日は、特別に素晴らしいイベントになり(集客的には、クリーチャーズが逃げたんでちょっと減っちゃったらしいんですが・笑・すんません地方に弱くて)これは反語抜きですが、そういう意味では、青柳さんの反原発思想と行動には本当に感謝します。ていうか可哀想よ。ファンは許すんでしょうからなあ。反原発と反死刑は凄いもんね〜ポップさが。今音楽家がビビったら一生悔いる事になると思うんですがねえ。まさか富山と福島を間違えたとか?(ワタシ、それやりそうなんですが・笑)



<<途中追記>>


リトルクリーチャーズから、というか、主催者からの公式コメント↓

http://helios.city.nanto.toyama.jp/perform/index.html




<ここまでこの文章。いかにも青柳氏からワタシの方に連絡があったかのように誤読される可能性がありますが、氏からは一報もありません。ダマでやりやがったのです(笑)。ワタシに一報を入れたのは、勘の良い方にはお解りの通り、鈴木正人くんです。彼は小学生からの学友の代わりにと平身低頭し、つまり彼なり仁義を切り、「できればこの話は内々で・・・」という言葉も貰ったのですが、ぱっと聞いて内容を知った段階でもうウッヒョ〜ブッチーン!と来てしまっていたワタシは、ウッヒョ〜ブッチーンと来た時の通常の反応として非常にニコニコし(笑)「うん、全然大丈夫だよう。こんな時だもんねえ。しょうがないよう。うん。とにかく俺たちは平気。鈴木くん悪くないよ。うん。それじゃ青柳君にもよろしく伝えといてね。じゃあね〜(爽笑)」といって電話を切り、現場で主催者に話を聞いて、苦渋をなめている彼等から裏を取ってから、ライブのMCでガッツリやってしまい(笑)続けてここでもやってしまった訳です(笑)。鈴木君ごめんね〜(笑)。でもさあ普通こういう場合、バンマスもしくは原因の奴が相手のバンマスに直接詫びいれるのが筋だよね?まあでも、文字通り、ビビる大木くん、いや間違えた青柳くんにはよろしく伝えといてください。まあでも、もし鈴木君からの一報が無かったらオレ新宿終わってすぐ沖縄に飛んでたから、どっちにしたって大変よろしく伝わることにはかわりないけどね>


<<途中追記終わり>>




 というかそもそも2、あらゆるエコロジカルな思想の中から、敢えて反原発思想だけを切り取ったとしても(切り取れないと思いますが・笑)、それ自体は、ワタシ個人は組し得ませんけれども、現代社会においては非常に有効で説得力のある考えだと思います。演奏中はいつ死んでもまったく構わないとばかりに超人化してしまうワタシとて、演奏していない時間は薙刀を盗まれた弁慶よろしく単なる冴えない中年男でして、原発事故は怖い。何せ、タクシーに乗ったときに流れるテープのアナウンスを「お客様の安全の為、シーベルトをお下げください」と聞き違えるほどですからな。

 しかし、怖いちゅうたら飛行機だってチャカだって怖いですし、キチガイに刃物とは言ったもので、むだ毛処理用のカミソリだって怖い(あれで襲いかかられた事があるのです。若造の頃ですが。二人とも裸だったんで、さながら狂ったサルの追いかけっこですよ。ですから、友達が飼っているチンパンジーなんかもう怖くて仕方がありません)。饅頭が怖いときもある。永遠が怖い事もある。しかし、真の恐怖は、安全地帯とまったく同じ、我々一人一人の心の中にあるのであります。

 そんなもん自我の問題から切り離しと外に取り出し、理論的、社会的な危険性とごっちゃにしてグダグダ揉めてる間に(まあ、原発に関わらず、社会悪に関する議論は概ねこの形を採るのですが)、与太郎兄弟が一服つけて水浴びしてやがるのであります。ふざけやがってふざけやがって。黒い煙だ灰色の煙だ、放射線量が上がっただの下がっただの、これではゴジラやウルトラセブンやヱヴァンゲリオンを思い出しては乖離する大のオトナが量産される訳です。アニメ特撮ノスタルジーと擬人化ばっか得意になっちまったのはまあ良いでしょう。単なる現代日本病です。だったら伝統芸能が良いではないか。今こそ市川海老蔵は放水車のてっぺんで睨みをきかせて見栄を切り、血まみれならぬ放射線まみれの地獄絵を見せて禊を済ませるべきでしょう。狂っていると仰る?なるほど然り。しかし想像してご覧なさい。あらゆる人々の士気が、本当に上がりますぞ。今こそ歌舞伎や大相撲は立ち上がるべきです。

 ですから都知事、ワタシはここ歌舞伎町に越して以来、はじめてあなたを可愛いな、ステキだなと思いました。ハイパーレスキュー隊の皆さんに対して、泣きながら「どうもありがとうございました。これで日本を救う契機が出来ました」とおっしゃいましたな。あれは、忠実に現象に対して泣いているのではない。あの方々の凄まじい勇敢さに対し、忠実に現象に相対した時、人はむしろ、泣いたりなど出来なく成るでしょう。あなたの心の中の何かが素直に泣いたのです。あなたは正直さの上に並々たるレトリックが堆積している、つまりは文学者上がりの政治家ですが、あの瞬間はそれらレトリックが総て消え去った時間でしたな。よおく解りますぞ。あなたには命を捨てる覚悟がおありでしょう。そしてその時が、もう一生来ないなとお思いだったでしょう。今こそ成田屋に命令なさい。大舞台に立てと。相撲協会に命令なさい。瓦礫を外し、老人や赤ん坊を片手で取り上げろと。あなたが命令するのです。その事が重要なのです。陛下がかろうじて、帝都におられる間に。


 富山、新宿とご来場頂いた総ての方々に感謝します。予想していた通り、ステージに上がった瞬間のフロアのヴァイブスはやはり恐怖と不安で硬化していました。ほぐすようにほぐすように。上げるように上げるように。戻すように戻すように。灯すように灯すように。狂って。治って。狂って。治って。これらを総て、我々は、同時に走らせました。みなさんが踏みしめるステップの一歩一歩、グラインドする腰の一回転一回転に、内転筋を鍛える力であり、生きる根源的な力であるものが、同時に生じるのです。それはギリシャ的な知性と言い換えても良い。客観時間と主観時間、そこに発生時間が生じれば、無限に時間は存在する。そのほんの一端にしてすべてを、音楽はあからさまに現前化させます。昨日申し上げた通り、我々は、最初からずっと同じ事しかしておりません。

 一ヶ月間レコーディングに専念し、演奏は4/11、濱瀬元彦先生のTHE ELF EMSEMBLE(渋谷JZブラッド)となります。冒頭の青柳氏も含め、地方に逃げた音楽家がかなりいます。彼等は一様に、政府が大変な嘘つきで、巨大会社が神のように世界を操っていると言い、大衆は権力者に踏みにじられて惨めに死ぬと心から信じ込んでいる。つまりこれは、そこそこ貞淑な彼女や彼氏に対して、バリバリに浮気しているに違いないと疑心案儀、常に悶え苦しんでいるのと同じ心性なので、良い調子のナルシストマゾだとは思いますが、それなら変態自慢をしてくれれば良い。変態自慢は大歓迎です。単なる懐疑マゾの恐怖マゾの癖しゃがって、無知な大衆に対する正義の賢者の如く振る舞うトンマ共には天罰とまでは言いませんが、石ころにつまずいて膝でも擦りむけば良い。

 都民ですら今後、被爆の問題と大なり小なり闘って行かなければならないことぐらいわかってらあ。こっちゃあ好きで東京に残ってんだっつうの。安心出来る場所で安心して暮らす権利は誰だってあるんだから、好きにおしよ。こっちゃあ放射能の雨が降ろうと血の雨が降ろうとここが好きで住んでんだ。ちゅうか興奮するの止めろ気持ち悪いから(笑)。彼等の哀れさとはしたなさを、我々ELFの演奏は理論的にも実践的にも撃破し、祓い清めるでしょう。正に棚から牡丹餅ですが、これほど癒される東京は無い。ワタシがガキだった頃の街の灯りというのは、大体こんなもんでした。暮らしを楽しみましょう。ごきげんよう。










 <キャプション>

奇跡の復興2。11階は私室なので、長沼に復興してもらえず、独力でほとんど復元した(倒れたテレビと空気清浄機をよいしょと言って元に戻し、バスキアの絵を危ないからベッドの横においただけだが)。基本的にテレビの灯りだけで暮らしているが、一本ライトを入れるとこういう感じ。








菊地成孔の1行(厳密には数行)情報



<マネージャーのブログが引っ越しました>

* 2011年からフォームも新たに立ち上がりました。当欄以上に迅速かつ詳細ですので、菊地成孔の刻一刻と更新される日々の情報はコチラで↓


菊地成孔マネージャーの速報(ブログ)
http://naganumahiroyuki.seesaa.net/?1296834004






<菊地成孔の全集「闘争のエチカ」>

*今になってまた徐々に売れて来た。どどどどうして?(お年玉か)↓


「闘争のエチカ」商品説明(過去ログ)
http://kikuchinaruyoshi.com/dernieres.php?n=100812132059

「闘争のエチカ」予告編(you-tube)
http://www.youtube.com/watch?v=M4Zy-TfGO_w






<DCPRG活動再開ライブ(日比谷野音)の音源を、DVDR+写真集の形で販売します>

*DVD-Rだけでも買う事ができ、写真集は受注印刷(プリントオンデマンド)に。DVDRになったのは、CDだと1枚に入りきらないからで、動画はありません。詳細は後日↓
http://natalie.mu/music/news/44853 






<「オトトイのダウンロード数的には記録的な売れ行きだ」と高見Pが言っていたけれども、本当でしょうか>

* DCPRG活動再開ライブ2京都KBSホール/ボロフェスタのライブ音源を高音質配信にて販売中↓
http://ototoy.jp/feature/index.php/2011012801






 
菊地成孔の関連サイト



<ニューメロ・トーキョー>
http://numero.fusosha.co.jp/extra/ito_kikuchi/

伊藤俊治先生との対談。という、脱力でも入力でもない、絶妙な湯加減のオトナのカルチャー対談になっております。連載のタイトルは「遊び飽きかけている遊び人達へ」。



<マトグロッソ>
http://www.matogrosso.jp/
http://matogrosso.jp/soundtrack/soundtrack-03.html

「マットグロッソ」というウエブマガジンです。小説にサントラはあり得るか?といった、まあ、文芸批評と音楽批評をくっつけたお遊びですね。

<「服何故01」>
http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278
菊地成孔のモード批評書「服は何故、音楽を必要としているのか?」の映像サイト(ファンの方が作って下さいました)です。これは本当に凄い。読みながら観ると、情報量が5冊分に増え、5倍お得。


<AYAKO OKUNO>
http://www.ayakookuno.com/main/top.html

現在、菊地成孔が着用している帽子の90%はAYAKO OKUNOで発注した一点ものです。デザイナーの奥野さんは関西在住ですが、全国どこからでも受注されていますので、菊地のアレに似た感じの(或は、まったく同じものを)ものを、といった注文から、あなた独自のオリジナルな発注までオーケーです。




菊地成孔の雑誌連載


<ファッションニュース>
http://www.fashionnews.jp/magazine/fashionnews/

「服は何故、音楽を必要としているのか?」という連載で、パリ、ミラノ、東京のファッションショーと、使用されている音楽との関係について批評しております(この連載をまとめた物が「服は何故、音楽を必要としているのか?」です)。(6000文字)