↑展望台から、日本海を前にした発電所を望む浅草キッド

 テレビやラジオ出演のほか執筆など幅広い活躍を見せる人気タレント、浅草キッドの2人が、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を訪問! 首都圏の電気需要の約2割を生み出し、ギネスブックにも認定されている世界最大の原子力発電所をレポートする。原子力発電の安全性を支えているものは? 本当にCO2削減の切り札なのか? 地震後の様子は? 気になるさまざまな疑問を、同原子力発電所の横村忠幸所長に聞いた。

撮影/谷岡義雄


玉袋筋太郎(以下、玉袋)柏崎刈羽原子力発電所に初めて来ましたが、規模と従業員 の方の多さにビックリしました。

横村所長(以下、横村) ここ柏崎刈羽原子力発電所は、柏崎市と刈羽村にまたがる約420万㎡の敷地にあります。ここに7基の原子炉があり、総出力約820万kWを誇る世界最大の原子力発電所です。原子力発電はもともとアメリカからの輸入技術なのですが、より使いやすいように日本流に設計改良し、自主技術として育てるという取り組みを、福島第一原子力発電所、福島第二、そしてこの柏崎刈羽までの全17基で行ってきました。なかでも6、7号機は、日本が主導して開発した最新鋭の原子力プラントとなっています。

水道橋博士(以下、博士)今から3年半前の7月16日、マグニチュード6・8の中越沖地震に見舞われたわけですが、とくに大きな事故がなかったということは特筆すべき点ですよね。

横村 実は耐震基準も日本独自のものでして、日本で原子力発電所を建てる際には、建築基準法で定められた耐震強度の3倍で作ることになっています。実際、こうした基準に沿って作られていた原子炉本体は無傷でした。視察に来たIAEA(国際原子力機関)の方たちも、「あの地震に耐えたのか!?」と驚かれていましたね。とはいえ非常に大きな地震だったことは事実で、耐震設計が不足していた変圧器やタービンは損傷がありましたし、敷地内も地割れや陥没が生じました。

新潟県糸魚川市出身。慶應義塾大学工学部卒。原子力運営管理部保全総括グループマネジャー、原子力運営管理部長などを経て、2010年6月より執行役員・柏崎刈羽原子力発電所長に就任
玉袋 いやはや、あれほどの地震でほとんど被害がなかったのはスゴイ!

横村 現在は地震によって壊れたものを直すというよりは、今後、中越沖地震の1・5?2倍大きな地震が来ても問題がないよう、強化工事を中心に行っています。原子力発電所内では、東京電力の職員が約1100名、協力企業の方々が約6000名、計7000名以上が働いていますが、「災害に強い、世界に誇れる発電所」を目指し、全基復旧に向け、安全第一で、一丸となって取り組んでいます。

博士 多くの人が復旧への想いをひとつに頑張っているわけですね。安全設計が完璧でも、実際に運営するのは「人の力」ですから。

横村 我々はウランや放射能を扱う施設として、地域の方々がどんな思いを抱いておられるのか、つねに耳を傾け、声を聞き、それを発電所にフィードバックする活動に力を入れています。地域との共生こそが重要ですから。また、私たちはそういった地域の方々に対して、理解と信頼をいただくため、説明会や発電所の見学会などを実施し、安全第一で作業を進めているところを実際にご覧いただいたりしています。

博士 僕自身、2年前までは原発に対する漠然とした不安がありました。チェルノブイリの事故がありましたし、原子力発電所が題材となった映画『チャイナ・シンドローム』や『太陽を盗んだ男』が描かれたのはもう30年以上前なんだけど、そこから止まっているんですよね。わりと情報に触れている僕らでもそんな状況ですから、地道な広報活動や情報公開はすごく大切だと思いますね。

玉袋 現在、原子力の割合はどのくらいなんですか?

横村 日本全体では3割。東京電力管内では電気の4割が原子力発電で、そのうちの半分を柏崎刈羽原子力発電所で発電しています。地震によって稼動が停止したことで、日本全体のCO2排出の2%を押し上げてしまいました。

玉袋 ものすごい率ですね。

横村 原子力発電は運転段階ではCO2を出しません。温暖化対策は世界中の国にとって重要課題ですから、原子力の必要性はますます高まるでしょうね。

博士 エコロジーの視点から見れば、「自然エネルギーがいっぱいあるじゃないか」といわれますが、まだまだ政府の補助が必要だったり、そもそも平地が少ない日本では太陽光も風力も向かないと聞きました。

1962年生まれ。岡山県出身。TV・ラジオで活躍するほか、ライターとして雑誌等にコラムやエッセイの執筆などを行う。著書に「博士の異常な健康」、「筋肉バカの壁」(ともにアスペクト)など多数
1967年生まれ。東京都出身。最近は、“スナック芸人”として不動の位置を確立。DVD「玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ!」(アミューズソフト)絶賛発売中!
横村 自然エネルギーが増えること自体はいいことだと思いますが、エネルギーは好きか嫌いかだけでは決められないんですね。工業立国・日本として、どのくらいの電気を必要として、それに対してまとまった量をリーズナブルな価格で供給できる電源ということで考えないと、我が国の将来を見誤ってしまいます。

博士 そうそう。我々消費者が思いを馳せないといけないのは、工業にこそ電気が使われているという事実ですよね。これって普段の生活実感にないから、案外見逃されている。

横村 資源に乏しい日本はこれまで、外国から材料を買い、そこに付加価値を付けて輸出することで国を豊かにしてきました。新たな資源が見つからない限りは、今後も工業国というスタイルは変わらないと思うんです。そう考えると、高騰している石油に比べて、比較的安定供給が可能な原子力が、日本において極めて重要な役割を担うことは想像に難くないでしょう。

博士 もしかしたら将来、太陽光をものすごく効率よく発電できるイノベーションが訪れるかもしれない。そうした技術開発を支えるのは現在の電力なのだから、その時まで電力供給を減らしてはダメだと思うんですよ。そのためにも、もっとも効率よく供給できるのが原子力発電だというのが僕自身の理解です。

横村 補足すると、原子力発電も決して万能ではなく、電力需要の変化に合わせた調整を行わないという特徴があります。一方、そういったフレキシビリティに対応できるのが火力発電です。東京電力ではこうした電力の特性を活かしながら、原子力、火力、水力などをうまく組み合わせる「電源のベストミックス」という施策を進めています。

玉袋 お話を聞いて、原子力発電所が従業員や地域の人など、多くの人に支えられながら、安全第一で運営されていることを知りました。東京電力さんにはこうした事実をどんどんアピールしていってほしいですね。そして「安定供給しているんだ!」ってガツンと言ってもらったほうが、安心できますよね。

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