お詫び:全話12話前編と上げましたが
間違えました^^;
11話後編でした、前々話も11話後編じゃなくて中編でした、もうやだ・・・
「本局に出向け?」
『はい、やはり例のロストロギアで確定ということで、上層部はアドバイスが欲しいようです』
「十一年前のデータがあるでしょう、なんだって今更」
『ですが先日の一件での独断専行も有ります、地上本部としては本局と無用な軋轢を作りたくあり
ませんので』
「…借りを作りたくないと素直に言ったらどうです?まぁいいでしょう、大方ミゼット辺りの手回
しですね、相変わらずいやらしい子だ」
『(伝説の三提督を子供扱いとか…)ではそういうことで、おじい様』
「はいはい」
私が本局からの調査員との待ち合わせポイントに着いた時。
調査員達は全滅していた。
死者は居なかったが、全員動けなくなるまで攻撃され、悉く異常に魔力が低下していた。
魔導師襲撃事件、管理局員が標的になっては世話が無い。
ともあれ、救援を呼び、全員に応急処置をして次元航行艦に放り込んだあたりで、私宛の通信が入
ってきた。
モニターには、ミッドチルダ地上本部巡察部のボス、統括官が映っていた。
次元世界の首都的世界であるミッド地上の平和を維持する地上本部ではあるが、幾つかはかつて管
理局の本部がミッドの地上にあったころの名残を残す部署も残っている。
その一つが全ての巡察官が所属する巡察部である。
現在現役で巡察をしているのは、私を含めず僅か五名(だそうだ知らない間に二人ほど増えていた)
統括官に言わせれば「どいつもこいつも問題ばかり起こすクソガキ」ばかりだそうだ。
(ちなみにそこに私が含まれているのかは怖くて聞けなかった、カッコ失笑カッコトジ…)
まぁ色々と迷惑をかけている自覚はある。
この統括官、百年くらい前に、私が管理外世界で拾った子供の娘、つまり孫だ。
昔は可愛かったに・・・しかしミッドの住人としてはポピュラーな就職先、つまり管理局へ入り、順調
に出世した今では上司だ、まったく笑えない。
だいたい臨めばもっといいポストがあったろうに何を好き好んで、トラブルメーカーの吹き溜まり
のような巡察部の元締めになったのか?今だに理解できない。
「このまま巡航艦で向かうってことでいいですかね」
『露骨な時間稼ぎは止めてください、無駄に飛距離の長いおじい様の転送魔法なら十分飛べるでしょう?』
「(ばれた…)あー本局ってほんとはポンポン転送魔法でいっちゃいけないんですよ?事故が」
『勝手に作った専用のポートをお持ちでしょう?』
「(…怖い子!)」
『硝子のカメンごっこはやめて、さっさと――』
<お説教の最中に申し訳ありません、シエラ殿。この宿六にエマージェンシーコールです>
孫娘のお小言に烏が割り込んだ、正式に譲渡され、なのはのデバイスとなったレイジングハートか
らの緊急通信だった。
どうやら心配が的中したらしい。
「第九十七管理外世界で例の犯人らしき人物が、現地人の魔導師に接触、すぐに本局に知らせて、
できればL級八番艦アースラの人員を現場に急行させるように」
『了解しました、御武運を』
「ありがとう」
孫娘の激励を受けて、私はさっそく転送魔法の準備に入る、目的地は無論第九十七管理外世界…地球だ。
◆
突然張られた結界。
話を聞いてくれず襲い掛かってきた女の子。
先生が言っていた「魔導師襲撃犯」
ああわたし負けちゃったんだ…
ボロボロのレイジングハート、吹き飛ばされたバリアジャケット。
そして私に近寄ってくるあの子。
必死にレイジングハートを持ち上げ、魔法を使おうとするけど、もう意識が…
こんなので終わり?
嫌だ!
ユーノくん…クロノくん…フェイトちゃん!
わたしが目をつぶった瞬間。
わたしとあの女の子の間に誰かが割って入った。
「ごめんなのは、遅くなった」
「ユーノくん…」
わたしの傍らにユーノくん
そしてわたしを庇うように、黒いマント、黒い杖、そして闇夜を切り裂くような金色の髪。
フェイトちゃんだ…
「仲間か!」
あの女の子がそう吐き捨て距離を取る。
「…友達だ」
フェイトちゃん!
嬉しくて泣きそうになる。
朦朧とする意識の中、ユーノくんの説明を聞く。
フェイトちゃんはあの女の子を追って外に飛び出していった。
フェイトちゃんの裁判が終わりわたしに連絡しようとし、通信が繋がらなかったこと。
しかも魔法使いのいないはずの地球に広域結界が展開されておいること。
そこのエイレンザード先生から連絡で、わたしが襲われている可能性大という知らせが入り、フェ
イトちゃんとユーノくん、そしてアルフさんが来てくれた。
「レイジングハート?」
「うんレイジングハートがエイレンザードさんのデバイスに通信を入れたんだね、たぶん結界に取
り込まれる直前に。でもエイレンザードさんのデバイスとレイジングハートの直通回線は…どんな
技術をつかってるんだろう…」
わたしに回復魔法をかけてくれながらユーノくんはそんなことを呟いている。
先生のことなんてどうでもいいから。フェイトちゃんたちが見えるところに連れて行って欲しいと
お願いすると、ユーノくんはなぜか複雑な表情を浮かべ「わかった」というと私を抱えよとする。
「か、肩を貸してくれればいいから!」
「そう?」
お、お姫様だっことか恥ずかしすぎるよ…
ビルの屋上に出て、上空を見上げれると、フェイトちゃんの金色の魔力とあの女の子の紅い魔力が
ぶつかりあっていた。
あの子すごく強い…フェイトちゃんとアルフさん相手に一人で戦っている。
私は一人だったらフェイトちゃんたちのコンビには、とても敵わないと思うのに…
「やった!」
ユーノくんが快哉を上げる。
アルフさん渾身のバインドがあの子の拘束に成功したからだ。
よかったこれで…
そう思った瞬間、新たに現れた人影がフェイトちゃんを吹き飛ばし、アルフさんを蹴り飛ばす。
「フェイトちゃん!…アルフさん!」
「まずい!助けなきゃ」
ユーノくんが慌てて、私の周りに結界を展開する。
回復と防御の結界、ここからは出ないように言い置いて、ユーノくんはフェイトちゃんたち所へと向かう。
わたしはただそれを見ていることしかできないのが悲しくて…悔しかった…
◆
「大丈夫?」
駆けつけてくれたユーノに礼を言い、破損したバルディッシュを拾い上げる。
「大丈夫本体は無事…でもあのデバイスは」
リカバリーしたバルディッシュを右手に、そして左手に私はもう一機のデバイスを呼ぶ
「起きてハルベルト」
<Good Morning Lady>
「冗談言ってないで…防御型をなのはの近くへ出せる?」
<No problem>
ハルベルトに命じて魔道人形を呼び寄せる。
この結界は一方通行型だ、入ることは容易いが、出ることが難しい。
「随分使いこなしてるんだね」
「ハルベルトは優秀だから…むしろ私が魔道人形を全然扱えないんだよ。それよりユーノ全員をつれてこの結界外へ転送…できる?」
「アルフと協力すれば…なんとか」
「お願い…アルフもいいね?」
『ちょっとキツイけどやってみるよ!』
「エイレンザードさんが来てくれればなんとでもなりそうだけど」
ユーノが出した人の名に、私の心臓が軋む。
訳の分からない人、始めは明確に敵だった、なのはに協力してジュエルシードを集めていた。
次はなぜか私を助けてくれた。
管理局員のくせに母さんに協力し…
今はそのことを考えるのはやめよう、戦場で戦いを忘れれば、そこに待っているのは死だ。
「そうだね…あの人のことだから、絶妙のタイミングで来るよ」
「あれは絶対どこかでこちらの様子を見ていると思うんだけど…正直ひどいよね」
ユーノが緊張感の無いことを言うのに、少し苛つく、それはあの人への無条件の信頼の証なのか。
「いこう」
「あ、うん」
上空へ舞い上がり、心配そうにこちらを見詰めるなのはを見る。
ユーノ結界にハルベルトがコントロールする防御型の魔道人形、大丈夫なのは安全だ。
「いくよバルディッシュ、ハルベルト」
<Yes sir> <Yes Lady>
「ほぉ二刀流か、だが扱いきれるのか?」
さっき私を吹き飛ばした背の高いほうの女魔導師が斬りつけて来る。
速い、私は正直防御魔法はあまり得意なほうじゃない、攻撃は基本的に避けるタイプだ。
でもこの人は早い。
だから距離を取って動きを制限しないと。
「バルディッシュ」
<Photon Lancer>
四発のスフィアを生成、私が最初に覚え、もっとも使いなれた魔法、フォトンランサーを放つ。
相手は避けもしなかった、だけど直撃しても無傷!?
「魔導師にしては悪くないセンスだ…だがベルカの騎士に一対一を挑むには、少し足らん!」
視界から消えた瞬間、眼前に敵が居た。
「くっ!」
ハルベルトで相手の剣を受け止める。
案の定バリアが砕け散るが、バルディッシュよりも頑丈に出来ているハルベルトががっちりと相手
の剣を受け止めてくれる。
バルディッシュをサイズフォームに変形させる。
<Scythe Slash>
魔力刃に貫通能力を付与し、がら空きの胴体を横薙ぎにしようとし…果たせず空振りする。
速いだけじゃない、近接戦闘能力も達人クラスだ。
<Arc Saber>
バルディッシュと同調させたハルベルトに、魔力刃を射出させる、魔道人形操作特化型のハルベルトでは少々荷が重いが、これは囮だ。
背後に回りこむように機動を操作しつつ、ゼロ距離で砲撃を叩き込む。
<Thunder Smasher>
「面白いな!切り裂けレヴァンティン!」
<Jawohl!>
信じ難い事に、私の放った砲撃魔法を…彼女は両断した。
少し距離を取り、息を整える。
あの弾丸…あれが瞬間的に魔力を高め、あんな無茶を可能にしているのだ。
「先ほどの言葉は訂正しよう、魔導師のくせに見事だ…私はベルカの騎士、ヴォルケンリッターが
将シグナム…そして我が剣レヴァンティン。お前の名は?」
「ミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ、そ
してハルベルト」
犯罪者なのに…思わず名を返す。
ベルカの騎士?
考える暇も無く、再びシグナムが襲い掛かってきた。
◆
空中で三組の魔力が激突する。
フェイトちゃんもアルフさんも相手に圧倒されている。
ユーノくんは上手くあの紅い女の子を凌いでいるけど、決定打が足りない。
「助けなきゃ…」
わたしが…皆を…助けなきゃ!
<Master.>
ボロボロのレイジングハートが私に話しかけてくる。
<Shooting Mode Acceleration.>
シューティングモードになったレイジングハートがわたしにスターライトブレイカーを撃てと語り
掛けてくる。
そんなの無茶だった、あの魔法はわたしにもレイジングハートにも負荷がかかるからと、先生の許
可なしには撃てないはずだ。
でもレイジンハート曰く、現在の破損状況ならば先生が定めた「絶体絶命の危機」に十分該当する
ため、撃つ事はできるという。
でも今のレイジングハートの状態であんな魔法を撃てば、レイジングハートが壊れてしまう。
<I believe, Master. Trust me, my Master>
私はあなたを信じています、だからあなたも私を信じてください。
そう訴えかけるレイジングハートに私は、頷いた。
レイジングハートがわたしを信じてくれるなら、わたしは…
「はいはい、とっても感動的な所だけど、なのははその結界から出ないように」
出た…
「最悪。先生…空気読んで下さい」
<…>
「うわ!レイジングハートまで無言でおじさんを責めてる!」
私の真横に出現した人影、灰色のバリアジャケット、ぼさぼさの頭、汚らしい無精ひげ。
紛れも無くエイレンザード先生だ。
「こわーいお姉さんがなのはを狙ってますからね、絶対にそこから出ないように」
「ふぇ?」
エイレンザード先生の出現に、皆の手が止まる。
「久しいですねェ、ヴォルケンリッターの皆さん」
まるで旧知の友人に話しかけるように懐かしく、でも先生らしくない、どす黒い負の感情を込めた
声で、先生はわたし達を襲ってきた人たちに語りかけた。
◆
「何者だ」
「…覚えていないとは心外だなぁ、まぁ考えてみるとシグナム、君とは最初の一回以外は相対して
いなかったかな?」
随分と可愛らしい騎士甲冑のヴォルケンリッターの面々に、思わず目を細める。
「此度の主は、良い主かな?」
「貴様!」
『フェイト、アルフ、ユーノ。一対一では不利です。後退しつつ三対三になるように、一旦仕切り
なおしなさい』
『それ根本的な解決にはならないんじゃないのかい?』
そうでもない、ヴォルケンリッターの面々が使う古代ベルカ式魔法の性質を考えれば、3VS3の
方が分があるのだ、とはいえ一々説明してる猶予も無い。
『これから私がヴィータ…小柄な騎士に隙をつくります、ユーノはバインド、アルフはザフィーラ、
男の癖に獣耳の奴です、そいつを牽制するように、フェイトがヴィータを撃墜しなさい』
『もう一人の方はどうするんだい?』
『シグナムは私がおさえます。フェイト…手加減は無用です、なんなら物理干渉設定をオンにしていいですよ』
先ほどからまったく返事をしないフェイトに冗談めかしていうが、やはり返事は無い、シグナムの
相手がしんどいだけ…ではなさそうだな、これは。
『なんだってあのチビなんだい?あの中で一番強いのはシグナムとかいう奴だろう』
アルフの言うことも解る、だがヴォルケンリッターが連携して戦闘する要は実はヴィータだ。
近接戦闘はもちろん、結界の展開、誘導弾による牽制。
少々かんしゃくもちではあるが、戦闘に関しては以外に冷静だ。
そういう意味では、戦いを“楽しむ”傾向のあるシグナムは、将として少々問題がある。
これまた一々、事情を説明する余裕が無いので、もっともらしいことを言って、言いくるめることにする。
『この結界はヴィータが展開しているのようですから、撃墜すれば破壊が容易くなる、逆にアルフ
とユーノで結界を作って連中を逃がさないようにしてください、クロノ執務官が来てくれるはずです』
ベルカ式なために、アルフも、アースラのスタッフも手間取っているようだが、私には見慣れた術式だ。
外側からも破壊できたが、それだと連中が逃げてしまう、誰か一人でも拘束できれば、色々と事情
を聞き出せる。
『ではいきますよ!』
結界へのアクセスと同時にとある魔法を行使した。
◆
「結界に干渉されてる、あいつだ!」
アールヴ野郎の指示だろう、それまでバラバラに戦っていた管理局の魔導師連中が連携して戦闘するよ
うになったせいで、やりづらい。
何とかして、あいつをぶっつぶさないと…
そう思った瞬間、眼前に飛び込んだ、人物に、不覚にもあたしは手が止まってしまった。
「エ、エレン…」
「久しぶりねヴィータちゃん!元気だった?」
嘘だ!あいつは死んだんだ、あいつは、あいつは!
「ヴィータ!」
シグナムの声で我に帰る、体が動かない?バインド!?
動けないあたしに金髪のガキが放った魔法…直射型射撃魔法がまるで機関銃のように襲い掛かってきた…
◆
フォトンランサー・ファランクスシフト
私の使える魔法の中でも最強の一つ。
突然現れた、白い鎧のようなバリアジャケットを纏った女性。
それを見た紅い子が見るからに動揺した、ユーノがバインドを掛け、動けないあの子に指示通り本気の攻撃を叩き込む。
割っては入ろうとした残る二人は、アルフと白いバリアジャケットの女性が邪魔をした。
スフィアが消滅し、合計1064発のフォトンランサーを受けた紅い子はユーノのバインドに拘束
されたまま、気を失っている。
ほぼ同時に空間結界が破壊される。
アルフとユーノが結界を展開し、逆に彼女達を逃がさないようにする。
正直私はもうあまり魔力が残っていない、早くクロノが来てくれないと、キツイかも…
『まずい!全員防御を!!』
あの人の悲鳴のような指示と同時に、巨大な雷が周囲に振りそそいだ。
「大丈夫かい?フェイト」
「アルフ…ありがとう」
あまり防御の得意ではない私だけど、アルフが庇ってくれて事なきを得たみたいだ。
ユーノは防御が得意だから大丈夫として…
「なのはは?」
「なのはも大丈夫みたいだよ、でも連中には逃げられたね…ああ無事じゃないのが一人いたよ、あいつだ」
「…」
呆れた様子でアルフが指差す。
直撃を受けたのでもないに、余波で吹き飛ばされ壁に張り付いているのが一人、あの人だ。
「あいつ、本当は弱いんだよねぇ、つい忘れそうになるけど」
そうあの人はけして強いわけじゃない、戦うのが巧いんだ、だからこうゆう広域攻撃とは相性が滅
法悪いんだな…勉強になったな。
『全員無事か?』
「あクロノ、うん大丈夫皆無事だよ」
『そうかそれなら良かった』
全員が気を抜いた瞬間だった、なのはの悲鳴が聞こえたのは。