福島第1原発:ホウレンソウなどの出荷停止「当分の間」

2011年3月21日 19時44分 更新:3月21日 21時49分

農産物の出荷規制などについて記者会見する枝野官房長官=首相官邸で2011年3月21日夕、共同
農産物の出荷規制などについて記者会見する枝野官房長官=首相官邸で2011年3月21日夕、共同

 菅直人首相は21日、福島、茨城、栃木、群馬4県の知事に対し、4県全域で生産されたホウレンソウとカキナ、福島県産の原乳について「当分の間、出荷を控える」よう指示した。東京電力福島第1原発の事故発生後、茨城県産のホウレンソウと福島県産の原乳から食品衛生法の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたのを受け、原子力災害対策特別措置法に基づく措置として、初めて全県単位での農作物の出荷停止に踏み切った。

 出荷停止は枝野幸男官房長官が21日夕の記者会見で発表した。枝野長官は「直ちに健康に影響を及ぼすものではない。出荷制限措置は、暫定基準値を超える状態が長く継続することは好ましくないため決定した」と説明。「過剰な反応のないよう、冷静に対応をしていただきたい」と呼びかけ、農家などが受ける損害に関しては「適切な補償が行われるよう万全を期す。東京電力が責任を持つが、十分でないなら国が責任を持つ」と明言した。

 出荷停止を行う「当分の間」の見通しは「放射線の観測による」とし、「今後、各地でモニタリングし、調査結果を分析したうえで必要があれば追加の指示をする」と述べ、対象品目・地域を広げる可能性にも言及した。今回の対象地域が県単位になった理由については「原産地表示が県単位で行われている」と語った。

 福島第1原発周辺の避難指示(20キロ圏内)、屋内退避指示(20~30キロ圏内)と出荷停止の対象地域の違いについて、枝野長官は「大気中のものに接する場合と飲食し体内に取り込む場合に違いがあるのは当然。日常生活をする大気中の放射線濃度には問題がない」と強調した。【小山由宇】

 ◇茨城の最高値は5万4100ベクレル

 厚生労働省によると、21日までに茨城、栃木、群馬県内で採取されたホウレンソウと千葉県産の春菊から、暫定規制値を上回る放射性ヨウ素(規制値は1キログラムあたり2000ベクレル)、群馬県産のカキナから放射性セシウム(同500ベクレル)を検出。福島県産の原乳から、放射性ヨウ素(同300ベクレル)を検出している。それぞれの最高値は、ホウレンソウが茨城5万4100▽栃木5700▽群馬2630、カキナが555、原乳は5300(いずれも単位はベクレル)となっている。

 このうち春菊については、現時点で検出されているのが千葉県旭市だけで、地域が限定されていることなどから対象外とした。今後地域的な広がりを見極めた上で制限を検討する。【市川明代】

 ◇「誠に申し訳ない」東電副社長

 農産物に放射性物質の被害が生じていることについて、東京電力の藤本孝副社長は21日の会見で「誠に申し訳ない思い。賠償についてどういう方法があるか、国と相談したい」と述べた。

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷
 

おすすめ情報

注目ブランド