東日本巨大地震:揺るぎない日本人の市民意識

非常食は食べる分だけ、凶悪犯罪も起こらず

 日本の東北地方で大地震が発生した後、2次被害が最小限に抑えられた背景には、日本人の秩序意識が大きく作用した。生活の基盤を完全に失ってしまった状況でも、人々は冷静に模範的な行動を取っている。自然災害や戦争といった災害が起きた際、どこの国でもさまざまな不条理や犯罪などが頻発するが、日本ではこのような現象はみられない。

 地震発生後、最初の平日となった14日朝、地下鉄の運行は再開されたが、電力供給が不十分なため、駅は大混雑となった。東京駅や新宿駅など主要駅の切符売り場やホームは足の踏み場もないほど多くの人でごった返していたが、大きな騒動や混乱は起こらなかった。

 特に大津波に襲われた東北地方沿岸の地区では、避難所を埋め尽くした住民たちが「忍耐」と「他人への気遣い」とは何かを身をもって示している。毛布を2枚に破って分け合う人、飲料水や油を求め支援所の前で数百メートルにわたる列を作って待ち続ける人、先に来たからと言って後から来る人のために、自分たちが食べる分だけのラーメンやおにぎりを買い求める人など、どこに行ってもこのような光景を目にすることができる。緊急支援用給水車の前でも、余分に水を要求する人はいなかった。

 閉店したパン屋の主人は、被災した人たちに無料でパンを配り、ある女性は「自分の家のトイレを使って下さい」と書いたスケッチブックを持って通りに立ち、自宅のトイレを開放した。誰もが困難な状況にある中、「自分ができること」を探して共同体に貢献しようとする姿勢を垣間見ることができた。1997年のアジア通貨危機の際、韓国人が金を集める運動に必死になったのを思い起こさせた。

 災害が起きた場合にどう行動すべきかについて、日本人は幼いころから教育を受けているため、政府や社会に対する信頼がある。孤立した人たちも「自分を先に助けてほしい」と大騒ぎすることなく、高い場所で大きく「SOS」の文字を掲げ、静かに救助を待っている。現地の人たちは「政府や警察、自衛隊などが全力を尽くしている。協力体制がしっかりと機能し、状況は好転するはずだ」と互いに声をかけ合っている。

 最大の被害地域の一つである宮城県内のコンビニエンスストアやショッピングセンターなどでは、窃盗や食料品の万引きなどが14日午後2時までに40件ほど発生した。しかし、殺人や強盗といった凶悪犯罪は発生していない。

 しかし「あまりにも楽観的すぎるのでは」と感じることもあった。地震と津波があった翌日、東京都内ではジョギングを楽しむ人の姿が目についた。一方その時間、テレビでは廃墟となった海岸沿いの様子が生々しく映し出されていた。また成田空港では、海外旅行に出掛ける人の姿も多く見られた。

辛貞録(シン・ジョンロク)記者

【ニュース特集】東日本巨大地震

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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