東日本大震災:避難所「ストレス極限」…情報も足りない

2011年3月21日 8時34分 更新:3月21日 11時19分

薄暗い避難所の体育館に敷いた布団の上に座る女性=岩手県釜石市で2011年3月19日午後3時11分、小出洋平撮影
薄暗い避難所の体育館に敷いた布団の上に座る女性=岩手県釜石市で2011年3月19日午後3時11分、小出洋平撮影

 「嘔吐(おうと)する人が目立つ」「ストレスが極限に来ている」。宮城、岩手、福島の避難所運営責任者アンケートからは、被災者の心身の状態が日々悪化していることが浮かんだ。医薬品が乏しく、暖房が不十分で風邪をひく人も多い。着替えが不足し、トイレの状態も劣悪で衛生面にも課題がある。先行きが見えないこともストレスの原因となっている。

 ◇インフル、下痢、トイレの衛生も劣悪……

 岩手県大船渡市の綾里中学校(避難者120人)では、風邪をひいている人が若い世代も含め10人程いるという。同県釜石市の甲子小学校(同283人)では、十数人が感染性胃腸炎を発症し、下痢や嘔吐などの症状が出ている。ともに医薬品は「ある程度ある」状態だが、患者全てが最適の薬を使えるわけではないという。

 宮城県石巻市の湊小学校(同650人)は暖房が十分でなく、温かい食事も何日かに1度。医薬品もあまりないと回答している。胃腸を壊す人が出始め、「建物1階が泥だらけで食中毒やノロウイルスが心配」という。

 長引く避難生活で体調を崩す人が目立ち、各地の避難所では、インフルエンザ患者も出始めている。

 断水で水が流せず、トイレが不潔な状態になっている避難所も。宮城県東松島市の避難所では、足の悪いお年寄りは廊下の簡易トイレで用を足さざるを得ない状況だ。

 岩手県大槌町の安渡小学校(同約800人)でも「和式の簡易トイレが来たが、洋式便座がないとお年寄りが使えない」。温かい食事も何日かに1食しか食べられず、高齢者によりつらい状況となっている。

 プライバシーが保てず、窮屈な避難所ではストレスも大きな課題だ。岩手県宮古市の愛宕小学校(同180人)は満員で、「寝る場所が狭く、避難者同士のけんかもある」。

 物資ではガソリン不足を挙げる声が圧倒的で、移動も困難な状況だ。下着や衣類が足りず、着替えのできない避難者が多い。津波で多くの行方不明者が出た岩手県では安否情報を求める声が上がり、原発事故が起きた福島県では「放射線量の測定値などの情報が足りない」という声が聞かれた。

 福島県川俣町の南小学校(同150人)に避難した人の多くは、原発事故で避難指示が出された浪江町の住民。「着の身着のまま来ているので、お金もなく、自宅に一度帰りたいという人も出てきている」という。

 避難者たちの不安は募る。宮城県南三陸町の避難所に入る無職、菅原みちゑさん(79)は持病の緑内障の目薬が手に入らず「このまま失明するんじゃないか」と語る。同県気仙沼市の飲食店経営、佐々木美佐子さん(64)は「周りで風邪をひいている人が多いので心配。早くお風呂に入りたい」と話した。

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