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東日本大震災:ガソリンは買わず、被災地に回そう…全国の備蓄は十分

ガソリンスタンドでの給油を待ち、長蛇の列を作る無数の車=宮城県登米市で2011年3月18日午前、森田剛史撮影
ガソリンスタンドでの給油を待ち、長蛇の列を作る無数の車=宮城県登米市で2011年3月18日午前、森田剛史撮影

 東日本大震災で、被災地周辺のガソリンや灯油の不足は深刻だ。厳しい寒さの中、暖房用燃料の枯渇が迫ったり、薬の確保のために車が動かせず孤立する地域もある。石油各社は、製品やタンクローリーを転送して被災地周辺への供給を急いでいるが、被災地から離れた地域の「買いだめ」が被災地への供給を難しくすることも懸念されている。

 ◇被災地…食料、薬買いに行けず/寒さ厳しく、灯油も底つく

 雪が舞う仙台市で17日朝、市中心部にある百貨店の臨時店舗前に入店の順番を待つ長蛇の列ができた。大留悦子さん(36)は「米が残り2日分を切った。車のガソリンもない」と不安をもらした。市内で娘と2人暮らしだが、震災で約1800棟が壊滅的な被害を受けた福島県南相馬市から両親と兄が避難してきたため、さらに食料が必要になった。買い出しなどで移動するにはガソリンが必要だが、大留さんと兄の車に残る燃料はどちらもメーター2目盛り分しかない。大留さんは「友人とメールで情報交換しているが、ガソリンを入手できる当てはない」と嘆く。兄が避難してきた南相馬市は福島第1原発の事故で大半が避難指示や屋内退避指示の対象だが、「車がなくて動けない人もたくさんいた」という。

 「ガソリンがなく、薬さえもらいに行けない」。仙台市と隣接する山形市の山間部に住む女性(48)は困り果てた。高血圧などの慢性疾患を抱える母(72)との2人暮らし。11日の震災で自宅に戻ると停電していた。石油ファンヒーターも動かず、寒がる母を車に乗せて暖を取らせた。

 1日数本しかバスが通らない山あいで停留所も遠く、病気の母を連れ出すのは難しい。徒歩圏内には病院はなく、スーパーも車で40分かかる。車は生活の命綱だ。母が毎食後に飲んでいる薬が切れたため、13日に残り少ないガソリンを使い、まずスタンドに向かったが大行列。5時間待ったが売り切れで、ガソリンも薬も買えないまま自宅に戻るしかなかった。いつも移動販売車で買っている灯油ももうすぐ底をつく。

 ◇操業中の製油所だけで需要95%カバー

 石油元売り各社で作る石油連盟によると、国内に27カ所ある製油所のうち、東日本の5カ所が震災で操業停止し、1日の平均需要量(361万バレル)の3割にあたる106万バレルの供給能力が失われた。しかし、操業中の製油所だけで需要量の95%を供給する能力があるほか、元売り各社合計で85日分の備蓄がある。操業停止中の2製油所が今週には再稼働できそうで、「全国で融通しあえば需要には応えられる」(同連盟)という。

 石油元売り各社は、北海道や西日本で製油したり備蓄していたガソリンの日本海側から被災地への転送を開始しており、各地のタンクローリーも被災地へ向かい始めた。元売り大手の担当者は「被災地への運び込みは徐々に進んでいる。しばらくしのいでほしい」と話す。

 ◇「都内なら、多少不便でも生きていける」

 一方、首都圏でもガソリン不足は続いている。「客が殺到して車列が続き、警察が出動する騒ぎになった」。東京都世田谷区の住宅街にあるガソリンスタンドでは、震災後の14日、店を開けて数時間で、その日仕入れたガソリンがすべて売り切れた。それ以降、店は閉めたままだ。メーカーからのガソリン供給が止まっているからだ。

 店主は「『いつ店を開けるのか』と、ひっきりなしに問い合わせはくるが、ガソリンの供給がいつ始まるのか私たちにも分からない」と話し、再開のめどはたっていないという。首都圏では在庫切れのため、休業するスタンドは多く、1台当たり10リットルまでと販売制限を行うスタンドもある。

 3時間待って給油した江東区の男性会社員(34)は「いざというときのために準備が必要だと思って並んだ」と話す。一方で足立区の女性会社員(28)は車に乗るのをやめた。「都内なら、日常生活が多少不便になっても生きてはいける。被災地の方々を思うととても車を使う気にはなれない」と話した。【山田泰蔵、遠藤和行】

 ◇エコドライブで節約

 やむを得ず車を利用する場合、ガソリンをなるべく使わず走る方法がJAF(日本自動車連盟)が推奨している「エコドライブ」だ。急発進・急加減速しない▽停止中のアイドリングストップ▽不要な荷物は降ろす--などが基本だ。

 最も有効で簡単にできるのが、ガソリンの消費割合が最も大きい発進時の「ふんわりアクセル」。発進の際は一呼吸おいた後、アクセルを徐々に踏み込む。車の動きがついてくる程度にやさしくアクセルを踏むことがポイントだ。また、停止中にアイドリングしないでエンジンを止めるだけで1分間約28CCのガソリン節約になるという。

 ガソリン不足で、JAFにも利用者から「ガソリンを補充してほしい」との問い合わせがあるという。JAFは「動けなくなった場合はレッカー移動で対応しているが、補充は基本的にお断りしている」と説明している。

 JAFはホームページ(http://www.jaf.or.jp/eco-safety/eco/ecodrive/index.htm)で、簡単にできるエコドライブを紹介している。【山崎友記子】

2011年3月21日

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