タバコ会社は儲け、タバコ労働者は健康を損なう
Tobacco's Profit, Workers' Loss?
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 111, Number 5, May 2003
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/members/2003/111-5/spheres.html

掲載日:2003年5月5日



 紙巻タバコ、葉巻、かぎタバコ、噛みタバコなどのタバコ製品は、喫煙する人にも、また受動喫煙で周囲の人にも、深刻な健康被害を及ぼすことはよく知られている。今日、世界中でタバコの使用を減らし、健康被害を防ぐためのいろいろなタバコ規制の運動が行なわれている。
 しかし、タバコ栽培労働者は、もう一つの健康被害に直面している。このタバコ労働者の健康被害については、長らく繰り広げられている ”利益” 対 ”人々の健康”のタバコ戦争においても、顧みられてこなかった。しかも、大部分のタバコは、特に発展途上国では、小規模な家族経営で栽培されており、ほとんどの労働者は個人契約で雇われているので、本来、彼等を保護してくれるはずの労働法の手が及ばない。

タバコに関する国際的規制

 アメリカでは、歴史的に連邦政府がタバコ栽培を奨励してきた。アメリカ農務省(USDA)のタバコ価格保護政策により、タバコの国内消費量と海外輸出量に見合った量に年間栽培量を制限するための”栽培割当”が定められている。
 この”栽培割当”を取得した農家を保護するために、この栽培割当制度及び付随する融資制度によってタバコの市場価格を意図的に高く維持している。”栽培割当”は賃貸したり取引することができ、近年は、少数の栽培農家に集中するようになり、その結果、これらの農家はもはや家族経営ではなく、大規模農園経営を行なうようになった。

 しかし、アメリカの健康を求める人々によるタバコ消費削減の戦いは、1997年に始まった膨大なタバコ訴訟をもたらし、ついにはアメリカのタバコ政策の流れを変えた。連邦政府は、現在、タバコ栽培の保護政策を打ち切った。
 アメリカのタバコ消費が減少しているので、タバコ会社(最大のそして最も影響力があるのは多国籍企業であるが)は、タバコ生産と販売を海外に移している。

 タバコ企業の上位3社、アルトリア(Altria)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)及び日本たばこ(JT)は、多くの国、特にブラジル、メキシコ、インド、中国、マレーシアなどで新たに生産体制を強化し、タバコ栽培の拡大を行なっている。
 世界のタバコ栽培の3分の2は中国、インド、ブラジル、アメリカの4カ国で占められている。ワシントンを拠点とする ”子どもをタバコから守るキャンペーン” の2001年報告書 『黄金の葉、不毛の収穫』 によれば、発展途上国でのタバコ栽培は、1975年から1998年の間に128%も増大した。

 従来、独立系タバコ栽培農家は、タバコ会社が多くの栽培農家を集めて行なう年に一度のオークションで、タバコ作物を売ってきた。このオークションでは、タバコ会社は必ずしもタバコ栽培農家から直接買うのではなく、タバコ仲買人を介して買う仕組みとなっていた。最近は、タバコ会社は栽培農家の系列化を行い始めた。

 アルトリアの関連会社であるフィリップ・モリス・アメリカ社は、栽培農家に対し ”パートナー合意” と呼ばれる契約を結ぶよう働きかけている。同社のスポ−クスマン、キム・ファーロウによれば、この契約では、タバコ仲買人を介さずに、タバコ栽培農家は直接タバコ作物を会社に納入でき、納入時期もオークション制度のように事前に決められた時ではなく、栽培農家が都合のよい時に納入できる。

 この契約制度について多くの人々は、経済的発展と栽培農家の自主性を制限することになると予想している。農家はますます特定のタバコ会社に依存するようになるので、農薬使用や栽培方法などについてタバコ会社の要求に従わざるを得なくなる。
 オークション制度においても、発展途上国ではタバコ会社とタバコ仲買人とが緊密な関係を結び、栽培農家への融資、肥料や種子、農薬、その他を供給する。

 タバコ産業界に大きく影響を与えるような国際的な協定や条約は存在するが、タバコ栽培労働者の健康問題に着目したものはない。
 1999年に世界保健機関(WHO)はタバコ規制枠組み条約(FCTC)について作業を開始した。WHOの加盟192カ国に対し、タバコ規制枠組み条約(FCTC)は、広告とスポンサーシップ、外箱の警告文、税、密輸に関する国際的な規制政策の実現を推進してきた。2003年2月には最後の政府間交渉を行い、2003年5月には世界保健総会で締結する予定となっている。
 しかし、2月の会議にも出席した ”子どもをタバコから守るキャンペーン” のコンサルタント、ロス・ハモンドは 「タバコ栽培労働者の健康問題は、実際にはタバコ規制枠組み条約(FCTC)の議題ではなく、環境的に持続可能な方法に関する小さなセクションもあるが、それは自主的なもので拘束力のない」 と述べている。

 また、タバコ栽培自体の環境健康問題に着目した通商規定も存在しない。匿名を希望する報道担当によれば、タバコに関連する関税と貿易に関する世界貿易機構一般条約でもタバコ栽培の環境健康問題は割愛している。
 同様に、北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)は、カナダとメキシコからのタバコ輸入に関する関税と手数料を全廃したが、そのことはタバコ労働者や環境に関する規制強化にはなっていないとノースカロライナ州ローリーの栽培農家販売協会の副理事アーノルド・ハムは述べた。
 移民労働者を雇い入れているアメリカの大規模タバコ栽培企業は別として、ほとんどのタバコ栽培農家は零細な家族経営であり、国の労働法や国際労働機関(ILO)の労働条約の規制が及ばない。

タバコ労働と健康

 2000年発行の書籍 『発展途上国のタバコ規制』 によれば、世界中で約3,300万人の人々がタバコ栽培の作業に関わっている。タバコ栽培労働者も、他の農業労働者と同じく、農業機械や器具による事故、畑での熱射、農薬の配合や散布時における急性または慢性中毒、畑やタバコの粉塵、カビなどを吸い込むことによる喘息やけい肺などのけがや病気になっている。
 タバコ栽培労働者に特有な環境問題の一つは、グリーン・タバコ病(green tobacco sickness GTS)といわれるもので、ぬれたタバコの葉に触れることに起因する一種のニコチン中毒である。
 しかし、最も議論の対象となっており、深刻なタバコ栽培の環境健康問題は農薬使用の問題である。

 タバコの栽培期間中、何度も農薬が散布される。1984年発行の書籍 『熱帯農業における環境管理』 によれば、 ”子どもをタバコから守るキャンペーン” の2001年報告書 『黄金の葉、不毛の収穫』 が引用しているように、ケニヤの契約農家はブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)によって、16回、農薬を散布するよう要求されている。
 同様なことをイギリスのNGOである ”クリスチャン・エイド” によって2002年に発行された報告書 『タバコ中毒』 の中で、ブラジルの栽培農家が述べている。
 タバコ栽培労働者が曝露している農薬の正確な量はわからないが、タバコ栽培は労働集約的であり、花もぎ作業はしばしば手作業であり、ほとんどの農家の機械化はそれほど進んでいない。

 1998年6月発行の ”地球農薬キャンペーン” の中の記事、『ブラジルにおける有毒作物−タバコ』 によれば、タバコ栽培では年間、ヘクタール当り3,000時間の労働が必要で、トウモロコシ栽培の265時間に比べると格段に多い。畑での労働時間が長いということは、それだけ曝露する機会が多いということである。
 また、特に発展途上国の多くのタバコ農場は亜熱帯地域に存在するので、防護服は必ずしも現実的ではない。そのようなところで防護服を着れば熱射病で倒れてしまう。

  ”子どもをタバコから守るキャンペーン” の 『黄金の葉、不毛の収穫』 によれば、タバコ栽培に特有の農薬があるわけではないが、いくつかの農薬が大量に使われている。アルディカーブ、クロルピリホス、1,3-ジクロロプロピレン(1,3-D)などが世界中のタバコ栽培でよく使われている。
 アセフェイトもまたよく使われているとハモンドは述べている。

 アルディカーブは全身性の(訳注:植物体の全体にわたって浸透し効果を発揮する)殺虫剤で、土壌線虫、昆虫、ダニ類用である。急性中毒性で、めまい、下痢、嘔吐、目のかすみ、一時的末端神経麻痺、呼吸困難、過剰発汗などの症状がある。

 クロルピリホスは有機りん系殺虫剤で、神経刺激を干渉する成分を持つ。有毒物質疾病登録局(Agency for Toxic Substances and Disease Registry)によれば、クロルピリホスに曝露すると、頭痛、目のかすみ、過剰唾液分泌、筋肉弛緩、脈拍異常などを起す。

 1,3-D は主に土壌線虫用に用いられる。大量に吸うと呼吸器系炎症、吐き気、頭痛、疲労感を引き起こす。健康厚生局(Department of Health and Human Services)は、1,3-D は発がん性物質であるとしている。

 オレゴン州立大学にある ”全国農薬情報ネットワーク(National Pesticide Information Network )” によれば、有機りん系殺虫剤であるアセフェイトは、痙攣、頭痛、過剰唾液分泌、下痢、呼吸困難、そして死にいたることがある。
 アセフェイトは、低中用量では非常に毒性が高いというわけではないが、アメリカ環境保護局(EPA)は人間への発がん性の可能性がある化合物としている。

 マレイン酸ヒドラジドは支脈の成長を抑えるためによく使われる。EPAは、急性毒性、突然変異性あるいは発がん性はないとしているが、皮膚や目を刺激する。

 世界中の急性あるいは慢性農薬中毒の発症数を把握するのは難しい。 『世界健康統計四季報(World Health Statistics Quarterly)』 (第43巻、3号、1990年) の中で、J.ジェヤラタナムは 「農薬中毒はほとんど常に発展途上国での問題である」 と述べ、2500万件の農薬中毒が毎年、発展途上国で発生していると推定している。

  ”子どもをタバコから守るキャンペーン” の 『黄金の葉、不毛の収穫』はブラジルのNGO、Brasileiro de Justica e Paz からの引用として、ブラジルでは毎年30万人が農薬中毒になっているとしている。
 アメリカでの国立職業安全健康研究所(NIOSH)は、アメリカで医師が農薬中毒と診断した件数は年間1万件であるとしている。
 ある研究者たちは、公式に発表された数値は明らかに過少であり、少なくともその5倍はあると信じている。

 イギリスの NGO ”クリスチャン・エイド” の報告書 『タバコ中毒』 の中で議論されていることの一つに、有機リン系農薬がブラジルのタバコ労働者の自殺の引き金になっているかということがある。
 同報告書は、リオ・グランデ・ド・ブラジル連合大学複合領域、農業における研究と行動グループ、レチア・ロドリゲス・ダ・シルバ、等の研究を引用して、ブラジルのタバコ労働者の1979年から1995年までの自殺は、ブラジル全体のほぼ7倍に達しており、タバコ労働者の自殺時期は、農薬散布が最も高頻度で行なわれる収穫時期や翌年の栽培準備を温室内で行なう時期に対応している−としている。

 同研究の対象となった自殺者の3分の2はタバコ農場で働いていた。ブラジルのほとんどのタバコ栽培業者と契約しているブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の関連会社ソウザ・クルツ社は、この件に関しBATのウェブサイトで、「クリスチャン・エイドの専門家が述べている懸念について、我々はよくわからないが、今後、この件について彼等と議論する用意がある」と述べている。

 有機リン系殺虫剤に高濃度で曝露すると、コリンエステラーゼのレベルが下がり、筋肉弛緩、痙攣、精神錯乱などの神経系障害が起きる。いくつかの研究もまた、有機リン系殺虫剤への曝露と自殺との関連はありうるとしている。しかし、自殺前に農薬に曝露していたかどうかに関係なく、農薬による自殺はよくあることなので、明確な関連性についてはまだいくぶん疑問が残る。
 またタバコ労働者の自殺が、農薬自身のせいではなく、身動きならぬ借金の苦悩が引き金となっていたのかどうかということも、明確ではない。

 湾岸戦争症候群の2000症例の検証の一部として発行された国立科学アカデミーの報告書 『湾岸戦争と健康 第1巻、劣化ウラン、ピラドスティグミン、臭化物、サリン及び痘苗』 は、急性及び慢性の農薬曝露に関する16の研究事例を分析している。
 この報告書が農薬曝露の事例を含んでいるのは、有機リン系殺虫剤の挙動が、1991年の湾岸戦争時に兵士が曝露したかもしれない猛毒ガス、サリンに似ているからである。
 この報告書は、急性曝露が、長期にわたる神経精神系症状の増加と神経精神系テスト成績が劣るという結果に関連があるとした。さらに、慢性曝露は症状の増加と関連するが、自殺とは関係ないとした。

 グリーン・タバコ病(GTS)の症状は農薬中毒の症状と非常に似ており、このことが診断をより難しくした。GTSは本質的に皮膚吸収によるニコチン中毒である。水溶性のアルカロイドであるニコチンは、畑のタバコの葉に付く雨水や露に溶け込む。労働者が畑の中を動いて、ぬれたタバコの葉に触れると、ニコチンが直接皮膚から体内に取り込まれる。
 GTSの症状には、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、血圧変動、急性腹痛などがある。通常、暴露後、数時間で発症し、1〜3日間で元に戻る。

 国立職業安全健康研究所(NIOSH)の基金によるプロジェクトで、ウェイク・フォレスト大学の研究者トム・アークリとサラ・クアンドらの研究チームは、1999年のたばこ栽培期間中に、タバコ移民労働者をGTSから守る最もよい方法を見出した。その方法とは、労働者は長袖のシャツと長ズボンをはき、ぬれたらできるだけ早く、着替えるということであった。1993年、NIOSHはケンタッキー州の5つの郡で2ヶ月間にわたるGTSに関する調査を行なった後、タバコ収穫者は手袋、エプロン、雨合羽などの防護服をつけるよう警告を出した。

タバコ労働者の健康のための規制と会社の役割

 アメリカにおける農薬散布は、アメリカ環境保護局(EPA)、職業安全衛生局、及び州の農務局によって厳しく規制されている。 「農薬散布の安全性はこの数年で非常に改善された」 と栽培農家販売協会の副理事アーノルド・ハムは述べた。
 たとえ、そうであったとしても、マレー州立大学博士課程の研究者らによる移動タバコ労働者に関する2001年度研究によれば、70%の労働者が農薬に暴露していたが、そのうち50%は、自分達が使用している農薬の名前を知らなかった。

 タバコ会社が使用する農薬の種類や量について、どの程度関与しているのかについては議論のあるところである。
 アメリカに関して、フィリップ・モリスの報道担当、キム・ファーロウは、 「フィリップ・モリスは、栽培農家がどのような農薬を使用すべきかについてなどに関与していない。栽培方法についても全く、関与していない。我々は、農家が標準的な農法でタバコ栽培をするよう望むだけだ」 と述べた。ファーロウはさらに、農家は安全な農薬の使用法について地域の代理店とよく相談するよう勧められていると付け加えた。

 適切な農薬散布方法及び防護服の着用について労働者がどの程度、理解しているかの議論がある。マレー州立大学博士課程の研究者らが調査した移動労働者のうち、農薬散布の訓練を受けていたのは半分以下であった。
 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の関連会社ソウザ・クルツ社の報道担当メアー・ネトは、同社は契約農家に対し、必要な情報、訓練、及び防護服を与えていると述べた。
 イギリスの NGO ”クリスチャン・エイド” の報告書 『タバコ中毒』 は、栽培農家が危険性について完全に理解しているという証拠がないのに、有毒農薬を安全に使用することなどできるのかと疑問を提起している。

 有機栽培タバコが品質規準を満たしているのなら、農薬使用タバコと同じ価格で購入するとネトは述べているが、ソウザ・クルツ社は農薬使用を要求しているのかどうかについては明言していない。
 たとえ、実際にタバコ会社が栽培農家に農薬使用を強制していなくても、彼等の農薬を発展途上国の栽培農家が使用すれば儲かるので、タバコ会社の多くはそれを望んでいる。
 『ブラジルにおける有毒作物−タバコ』 によれば、ブラジルのリオ・アズル地区で活動するタバコ会社は農薬と肥料を農家に売るだけで年間約200万ドル(2億4,000円)を得ている。

 ネトは、ソウザ・クルツ社は、イミダクリプリド、クロマゾン、アセフェイトなどの毒性の低い農薬を使用するよう推奨しており、BATのタバコに使用する農薬の量は、ヘクタール当り実効成分ベースで1.4Kgまで減少したと述べている。ネトはさらにアメリカにおけるタバコでの使用量に関するアメリカ農務省(USDA)の数値として、ヘクタール当り55Kgを引き合いに出した。

 アメリカ農務省全国農業統計サービスではこの数値を確認することはできず、またその数値を示すこともできないとした。アメリカ農務省経済研究サービスの『アメリカ農業における主要穀物の生産方式 1990-97』では、全米の穀物生産における平均ヘクタール当りの実効成分は1.8Kgであるとしている。

困難な闘いに挑む

 タバコ農場労働者の環境健康問題は、十分に解明も理解もされていない。しかし、多くのNGOがその危険性を明らかにし、研究者達は、グリーン・タバコ病(GTS)農薬暴露という、2つの大きな問題の危険性について広く世間に知らせようとし始めている。

 タバコ農業の評論家達が推奨する環境健康問題の軽減対策はそれぞれ異なる。
 『黄金の葉、不毛の収穫』 はタバコ栽培農家が代替作物に転換することを支援するための資金融資を提唱している。
 『ブラジルにおける有毒作物−タバコ』 は持続可能な、あるいは有機農法に転換することについてのブラジルの農家の議論を報告しているが、タバコ会社が有機栽培タバコを買うことを望んでいるということについては懐疑的である。それというのもタバコ会社は農薬や肥料の販売から得る利益を失うことになるからである。
 ”クリスチャン・エイド” は、タバコ労働者の健康に関する疫学調査及びグリーン・タバコ病(GTS)と暴露した労働者の体内残留農薬との相互作用の研究を提唱している。
 ブラジルでは 『タバコ中毒』 の出版により、クリスチャン・エイドのブラジルにおけるローカルNGOとソウザ・クルツ社がタバコ労働者の環境改善について話し合いを行なったと著者のアンドリュー・ペンドレトンは述べた。
 しかし、クリスチャン・エイドのペンドレトンは、「BATは責任ある企業としてのやり方を約束すると言っているが、疑わしいところもある。BATは我々と話し合うことを望んでいると言うが、我々はまだ彼等の実際の行動を見ていないからである」と述べた。

 タバコ規制枠組み条約(FCTC)はタバコ労働者の環境健康被害について直接的には言及していないが、この条約の完全な批准が行なわれれば、そのような健康被害を評価し、低減する努力に弾みがつくであろう。
 しかし、タバコ規制枠組み条約(FCTC)が実際に批准されるかどうかはわからない。2月の交渉は”悪意あるもの”と2003年3月8日付けニューヨーク・タイムズは呼んでいる。そして5月に予定されている批准について、”子どもをタバコから守るキャンペーン(Campaign for Tobacco-Free Kids)”のコンサルタント、ロス・ハモンドは「むずかし」と述べている。

 防ぐことができるのに、現在世界各地で死をもたらす大きな原因となっている物質を規制する必要性と権利を確立することが難しいのなら、労働者の環境健康被害に目を向けさせるための、困難な闘いがまだまだ続くこととなる。

(訳:安間 武)


化学物質問題市民研究会
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