怪獣映画がまだ一般の観客を対象としたプログラムピクチャーだった頃、両親と、父の会社の同僚と何人かの集団で『ガメラ対バルゴン』(併映は大魔神)という映画に同行させられた記憶があります。私がまだ5歳頃のことでありました。
『週刊少年キング』の昭和41年9月25日号に掲載された広告。
その映画を見てから何日か後、父が会社帰りに買って来てくれたのがバルゴンのプラモデルでした。
なぜ、主役ガメラではなくバルゴンなのかそれは単純にガメラは売り切れだったからでした。そして、おそらくこのバルゴンこそが、私が最初に手にした‘怪獣’であると記憶します。
(怪獣図鑑等の書籍を除く)
組み立て説明図の一部。
先端が二股になったフォークのようなパーツが
ガメラとバルゴンそれぞれの箱に入っていました。
更に何日か経て、ガメラも無事に私のコレクションに加わり、組み立て説明図上で紹介されているような闘いを実現させることが出来たのでした。プラモデルという決して頑強ではない代物が5歳児の好き勝手に玩ばれるという劣悪な環境下で大破することもなく持ち堪え、この闘いを実現させることが出来たところから察するに二体の怪獣プラモは、それほど日数を空けず揃ったと思われます。
ウチは決して裕福な家庭ではなかったはずですから、この短い期間に、腹の足しにもならない怪獣プラモを買い揃えてくれた両親に今更ながら感謝の念を抱かずにはおられません。
さて、上の雑誌広告にはガメラとバルゴンの他に、何やら見慣れない怪獣が二体紹介されています。
『海底怪獣ワニゴン』と『地底怪獣ガマロン』。
世間一般的には殆ど知られていない怪獣ですが、第一次怪獣ブームの洗礼を受けた当時の子供たちの間ではメジャー級に知られた存在であるのではないかと思われます。
みうらじゅん氏が映画秘宝怪獣丸秘大百科でワニガマについて書いています。
ワニゴンとガマロンは
日東科学教材という会社のオリジナルです。
雑誌広告だけではなく、ガメラとバルゴンのパッケージの脇に画像付きで紹介されていましたから、ガメラとバルゴンのプラモを手にした人はほぼ間違いなくこの怪獣の存在を認識したに違いありません。
そして同時に、多くの怪獣少年達が次回のガメラシリーズにこの二頭の怪獣が登場すると思い込んでしまったのではないでしょうか?何しろ、ガメラやバルゴンと並んで紹介されたこれらの怪獣については何も説明がされていなかったからなのです。私もそう思いましたし、あの‘みうらじゅん’氏もそう思っていたそうです。
最近知ったことですが、箱絵は小松崎茂画伯によるものだそうです。
ガメラとバルゴンの箱絵が写真をコラージュした物だったのに対し、ワニゴンとガマロンのそれはこの通り大迫力のイラスト。当時の子供らに与えたインパクトも相当なものであったと推測できます。しかし私まだこの頃、ワニゴンもガマロンも実際の商品を目にしたことはありませんでした。
当時仲の良かった友達の家に遊びに行ったときの事です。その子のおもちゃ箱の中に何やら見慣れないこげ茶色で平べったい怪獣が有るじゃありませんか。私がそれを手にとって「バルゴン?」と呟くと、それの聞き逃さなかった友達が間髪入れずに「ちがうよ!ワニゴンだよ」責めるような口調で教えてくれました。当時、保育園で怪獣博士の異名を取っていた私だったので、知らない怪獣が存在することと、名前の間違えを指摘されたことに軽いショックを受けたのでした。(笑
プラモデルを形成するプラスティックという素材は子供が遊ぶには少々脆い気がします。接着した部分が取れてしまうこともありますが誤って踏んづけたり、他の怪獣と衝突させたりすると案外簡単に壊れてしまうのが難です。それが原因で私の興味はプラモよりも、‘こわれないオモチャ’というキャッチフレーズで世に出たソフビにシフトしてしまったのではないかと思います。
ワニゴンが最初の発売されたのは私が保育園児の頃でしたが、その後、何度か再発売されています。今にして思えば、その間隔が絶妙でした。前に購入して組み立てたものは前述したような理由で既に壊わして処分してしまっていますから、模型店等で再発売されたものを目にした時は、時代が変わっても色褪せないワニゴンのカッコ良さ(特に箱絵)と懐かしさでまた欲しくなってしまうのです。実際私も、ある年齢に達するまでは
再発売の度に買い直した記憶があります。
今回、ネットオークションで手に入れた物は1983年に発売された復刻版で、最新版となるわけですが、それでももう現時点で26年も経っています。発売していた会社が商売の方向性を変えてしまったので、もう復刻されることは無いかもしれません。
一般的にはあまり有名ではないオタク相手のメーカーが版権や金型を買い取って再発売する可能性もあるかもしれませんが、たぶんそれはビックリする様な価格になっていることでしょう。
なお、この'83の復刻版は、唯一私が手を出していない時期のものなのでワニゴンと私の再会は軽く30年超振りのこととなりました。
今見れば部品数も少なく、かなりチープで簡単なプラモですが、私にとっては箱絵も含め懐かしさ満載で、眺めているだけで自然とテンションが上がってしまいます。
ワニゴンより少し遅れて発売されたガマロンの箱絵。
これまたかなりの迫力です。
ワニゴンもガマロンもガメラの映画には出てこないとがハッキリした頃、当時、このラインナップに興味を持っていた子供たちの中では「ガマロンはワニゴンの対戦相手」であると考えるのが当然になっていたように思います。
私はワニゴンほどガマロンのことが好きになれなかったのですが
対戦相手としてガマロンを一度だけ購入しています。
箱の大きさは一緒なのに、ワニゴンの方は箱がスカスカでガマロンは一杯に詰まっています。ガマロンの方が体の幅が広いことと、ワニゴンの手足の部品構成がワンピースであるのに対してガマロンはそれぞれが2ピースだからのようです。
つい最近になって、ガマロンは何故ガマゴンではなく『ガマ‘ロン’』なのか気になりだしました。強そうな怪獣の名前としてはガギクゲゴやザジズゼゾなどの濁点使用は必須なので、濁点を持たないワニに怪獣命名の王道ともいえるゴン付けをしたが、ガマの怪獣にまでゴン付けしたらクドイからと妄想してみましたが、もっとそれらしい理由をネットで見つけてしまいました。
第一次怪獣ブームの折、週刊少年キングが怪獣の特集を組んだときに、オリジナル怪獣として『ガマゴン』という名前の怪獣を既に発表していたそうなのです。
ネット回遊中に見つけたガマゴンとガニリの画像。
週刊少年キングのオリジナル怪獣です。
生理的嫌悪感すら抱いてしまうガマゴンに比べれば、ガマロンのほうが幾分愛嬌を持っていると思えます。‘ロン’という可愛らしい響きにもをちょっと納得。
今までの癖で、当たり前のように未組み立てのまま本棚に収めてありますが、ふと気が付いたことがありました。とっくに人生の折り返し地点を通過しているだろうに、勿体ぶって未開封のままにしておく意味があるのか?と。
隣にチラッと見えていますが、じつはワニゴンとガマロンとガッパの3点セットで出品されていたものを落札しています。正直なところ、商品化に恵まれているガッパはこの際どうでも良かったのですが、同時期に別個で出品されていたワニゴンは3,000円と高かったので入札に踏み切れず、この3点セットの方に入札したのでした。タイミングが良かったのか、ワニゴン単品の出品価格よりも安くこの3点セットを落札することが出来ました。