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[26469] 【習作】とある露出狂の幽霊体質(最近15禁くらいになってきたかも?)
Name: 真田蟲◆00a1ef96 ID:fc160ac0
Date: 2011/03/19 03:16
午後8時43分。
人口のほとんどが学生であるこの学園都市では、繁華街の大通りといえどこの時間にもなれば人通りは少ない。
下校時間が決められており、娯楽施設の多い地下街も平日は20時には完全に閉まる。
多くの学生たちは進学塾に通うかアルバイトでもしていない限りこの時間はすでに帰宅している。
そのため大通りの店も大半はこの時間にもなれば店じまいするところが多く、
既にシャッターの降ろされた店舗が目立つ。
そんな一角に、明らかに不良然とした格好の男子学生たちに囲まれた少女がいた。
彼女は特に困ったそぶりも見せず、店のシャッターにもたれかかり腕を組んでいる。
その少女を取り囲み下卑た笑い声を上げる男たち。

「なぁ、いいじゃねぇか。一緒に遊ぼうぜ?」

どこか昭和を感じさせるステレオタイプなナンパに、それを聞き流しながら少女はため息をつく。
通りに目を向ければ、わずかながらにも通る通行人と目が合うが、皆一様に視線をそらす。
誰も見るからに厄介事に首を突っ込んでまで、赤の他人を助けようとはしない。
わかってはいたけど、そのことに少女はため息が出る。
別に助けて欲しいわけじゃない。自分は特に困ってはいないのだから。
彼等の判断は少なくとも間違っちゃいない。
人道とか正義とか、道徳的な面では正解ではないかもしれないが、賢明な判断というやつだろう。
ただ、皆同じように背を向けて逃げていく。
それが彼女にとってはおもしろくない。それだけだった。
まぁ、こんなことに好き好んで首を出すのは変なやつか、馬鹿なくらいによほどのお人よしくらいである。

(あいつみたいに、ね・・・)

無意識にある人物を想像し、苦笑する。
確かにあいつは馬鹿でお人好しで変なやつだ、と思う。
今までこんな状況になったことは何度もあるが、首をつっこんできたのはあいつくらいだ。
まぁ、あんなお人よし他にいないか・・・この街、変な奴ならいっぱいいるのになぁ。

「おまえらぁ!女の子にな~にやってんだぁあ!!」

そんな時、大通り一体に響くような大声が聞こえてきた。
まさかあいつがまた来たのかと思い顔をあげる。

「な、なんだお前!?」

「か弱い女の子を囲んでナニしようとしてたんだって言ってんだ!!」

そのあまりの光景に少女は思考が停止する。
不良たちも動揺し、固まっていた。
それは彼女にとってあまりにも想定外の光景。

「集団で婦女暴行など、このひょっとこ仮面が許さない!!
 この俺の股間のアナコンダが成敗してくれるわ!!」

左手は横に、肩より20度上になるように伸ばし、右手は拳を作って心臓の位置に。
両足を閉じて直立し、ひょっとこを模した面で顔を隠した人物。
茂みから首を伸ばす大蛇は周囲を威嚇するかのように猛っている。
その人物は・・・

「「「「「「「「「へ、へ、へ、変態だーーーーーーー!!」」」」」」」」」」

・・・面以外は何も身につけていない、いわゆる全裸だった。







学園都市、それは東京都西部を開拓し作られたいくつもの学校が集まった都市である。
そこでは科学的に超能力の開発が研究され、学生たちは日夜、能力の可能性を模索している。
誰でも能力者になれるというわけではなく、人口のほとんどは無能力者ではある。
しかし外の世界と比べ圧倒的に様々な能力を扱える人間が多いため犯罪者も多いのが難点だ。
能力を使って悪さを働く輩は後を絶たない。
この物語の主人公、永蟲柳という少年もその一人。
彼の前科は二つ、『猥褻物陳列罪』および『強制猥褻罪』である。
全裸でいきなり登場した彼を見て、不良たちは「変態だ」「露出狂」「でかい」と騒ぎ立つ。

「そらそらそら!俺のアナコンダの毒牙にかかりてえ奴はかかってきな!!」

「な、舐めてんのか!?この変態きち○い野郎!!」

不良の一人が柳、もといひょっとこ仮面に殴りかかる。
ひょっとこ仮面は地面を軽く蹴ると跳躍した。

「おっぴ○げアタック!!」

彼は股を大きく開き、ちょうど股間が不良の頭にぶつかるようにする。
しかし実際は軌道は重なっているはずなのにぶつからない。
不良の顔はそのままひょっとこ仮面の股間をすりぬけた。
すたっと軽い音をたてて着地するひょっとこ仮面。
両腕はYの字を描くように上にあげている。
アナコンダは相変わらず周囲を威嚇している。

「ぐ、お、ぅぉぉぉおおおえええええええええええ!!」

先ほどひょっとこ仮面を殴ろうとして失敗した不良は、その場に跪き、嘔吐した。
物理的なダメージはなかったものの、彼の精神的ダメージは計り知れない。

「ふ、次に死にたい奴は誰だ?」

柳は挑発的な笑みを浮かべたが、仮面に表情が隠された状況では見えなかった。
しかしその雰囲気は十分に不良たちに伝わった。

「こ、こいつやばいぞ!!逃げろ!!」

一人のその言葉を合図に男たちは散りじりになる。
残るは不良たちに絡まれていた少女だけだった。
ひょっとこ仮面はおもむろに腰を少し突き出しながら少女へと歩み寄る。

「大丈夫かな、お嬢さん?」

「・・・へ?・・・え、あ、や?jjxgbh五slcxxxhXz zbhel bvh!?!???」

彼の呼びかけに、思考停止状態に陥っていた彼女の頭が再起動する。
視界に映るは全裸の仮面をかぶった少年。
もちろん裸なのだから下半身も丸出しで。
幼少のころに父親のものを見たきりで、それもこんなものだったかどうかもわからない未知のものをぶら下げた男。

「あっ、あっ、あっ・・・・・アキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

顔を真っ赤に染め、喉が壊れんばかりに悲鳴をあげ、全身から放電し始める。
どうやら彼女も能力者、それもかなり強力な力を持っているらしい。
やがて放電された電気は周囲を破壊しはじめるも、柳は平然としていた。
電気が彼の方へと飛んでも、その光が体を透過するかのごとく背後へと抜ける。

「ふー・・・ふー・・・ふー・・・死ね、変態!!」

ブちぎれた目をした少女がスカートのポケットから一枚のコインを取り出し、少年へと向ける。
それは彼女の必殺技とも呼べる、自身の呼び名としても使われる技。
少女の名は御坂美琴。学園都市が誇る最もレベルの高い7人の超能力者。
レベル5の一人である超電磁砲である。
指ではじかれたコインは、電磁力でその速度、威力を高められ少年に向かう。
しかしその攻撃は地面のアスファルトを削りながらも、彼の体をすり抜けた。
すり抜けた攻撃は一直線にすすみ、反対車線側のビルに直撃する。
そのビルは周りと比べ比較的小さかったからか、単純に威力が高かったからか倒壊した。
すでに明かりも消えていて、人がいなかったであろうことが幸いか。

「助けが必要じゃなかったっぽいけど、それでも助けに入った相手に攻撃するのはどうなのよ?」

柳は自分の全裸を棚上げして、御坂に呆れたような声で言う。

「あ、あ、あんちゃ!なんで私のレールガンが効かないのよ!?」

いろいろな意味で動転している御坂は舌を噛んでしまった。
しかしそんなことを気にする余裕は御坂にはなかった。
彼女はもう一度にいろいろありすぎて混乱していた。

「ま、ず、はありがとぅだろうがぁあああ!!」

柳は正当なような理不尽なような言葉をはいて跳躍する。
狙うは彼女の顔面。得意のおっぴろげアタックだった。
彼のアナコンダが、丁度御坂の鼻の位置に交差するようにしてすり抜ける。

「んjvsjvvぬあうりうhるzんd;vbjk!??」

御坂は視界いっぱいに映った男の象徴に、再び意識を飛ばした。
ばたりと前のめりに倒れる少女。
周囲からは警備員のものと思われるサイレンの音が聞こえてきた。

「む、邪魔ものが来たか。では諸君、さらばだ!!」

柳扮するひょっとこ仮面は、倒れた御坂と、未だ嘔吐し続けている不良に叫びかけ
夜の闇へと消えていった。


この物語は、科学と魔術、そして露出狂とそれを取り締まる警備員、風紀委員との
戦いの物語である。


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永蟲柳の能力
幽霊体質:まるで幽霊のように任意の物質を、自分の肉体が透過するようにする能力。
     光を透過すれば透明人間にも慣れる。最強にはなれないが、物理的には無敵になれる。(攻撃があたらない)
     彼が服を着るのを拒めば、誰も全裸になることを止められない。

ひょっとこの面:装着者が誰なのか外部からわからなくさせる認識疎外の術式がかかっている。
        彼が学園都市に来る際、持ってきたオカルト側の品。
     







[26469] 露出狂の夜
Name: 真田蟲◆00a1ef96 ID:fc160ac0
Date: 2011/03/13 20:31
まずは、管理人さんの無事をお祝します。
一安心ですね。

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警備員、それはこの学園都市の治安を守る教師で構成された組織である。

彼等は昼間受け持つ授業の傍ら、日々この都市で生活する者のため戦っている。
この学園都市には能力開発のために様々な力を使う生徒が存在し、
その力をもって犯罪を犯すやんちゃな奴らが後を絶たない。
また、能力に上手く目覚めることができずに周囲への嫉妬、コンプレックスから
ぐれて不良になってしまう学生、総称してスキルアウトと呼ばれる子供たちもいる。
警備員の仕事は、ある時は言葉で、抵抗する時は場合によっては武力をもって
問題児達を補導し更生させることが主な仕事である。
自治が認められているこの学園都市にとっては警察(少年課)のような立場である。
外部からの侵入者などの危険な存在に対しても、身を呈して生徒たちを守るのも
仕事ではあるのだが、それはまた別の機会に話そう。

「今日こそはとっちめてやるじゃん、このくそ餓鬼!!」

黒く長い髪を後ろで束ねて風にたなびかせ、警備員の制服に身を包んだ女性。
この真剣な表情で道路を走っている黄泉川という女性。
彼女も格好を見ればわかるとおり、警備員の一員だ。
毎日毎日こうして悪ガキ達を捕まえて更生させるため、西へ東へ走りまわる熱血教師だ。

「こんのぉ、待つじゃんよ!!」

「ははは~つかまえてごおらんなさ~い。」

彼女が今追いかけっこをしている相手、それは最近学園都市を騒がす変態。
通称ひょっとこ仮面だった。
その名の通り、顔を隠すようにひょっとこを模したふざけた仮面をかぶっており、
それ以外は何も身にまとっていない全裸という、露出狂の少年だ。
夜の街に出現しては、街行く人に強制的に自分の股間を見せつけるというある意味凶悪な猥褻行為の常習犯である。
体格や、すでに声変りも終えている様子から高校生であると思われる。
しかし股間の茂みから生えているものは少年のそれではなく、大人のものよりも断然大きい。
少なくともあまり男性経験の少ない黄泉川は、あれよりも大きいものを見たことはない。
それがこの変態を調子づかせている一因であるのは間違いなく、生意気でムカつく。
体育教師であり、体力には並々ならぬ自信がある自分でもなかなか追いつけないほど足も速い。
また、その能力も問題である。
前方を走っていた裸体が、急に横に跳んで建物の中へとすり抜けた。
そう、すり抜けるのである。
全身をあらゆる物質を任意に透過させることができる能力をもっているのだ。
能力としてはある意味、物理的な捕縛が出来ないという無敵な能力だ。
学園都市の能力レベルの判断基準0~5で当てはめればレベル4相当だろう。

「くっそ!」

たびたびこのようにして追っていても視界から消えるのである。厄介な能力であった。
しかしこのひょっとこ仮面において真にやっかいなことがらは他にある。
学園都市の情報には全学生の能力のデータが記載されている。
そのデータの中に該当する能力の持ち主がいないのだ。
一番内容的に近い能力では永蟲柳という男子高校生の能力がある。
彼の能力は幽霊体質、今追っているひょっとこ仮面と同じく物体を肉体が透過する能力である。
しかしそのレベルはあくまで2であり、固体と気体は透過できても液体は無理。
加えて能力の発動範囲が両腕の肘から先のみという中途半端な代物だった。
さきほどのひょっとこ仮面のように全身で壁をすりぬけさせるなど不可能。
では彼は誰なのか、それは未だにわかっていない。
何故か録音した声などで声紋を測定しようとしてもエラーになる。
正体を見極めるには直接仮面をはがしてその顔を見るしかない。

「・・・まったく、本当に面倒なやつじゃん。」

「キャーーーーーーーーーーーー!!」

ひょっとこが逃げ込んだと思しき建物から悲鳴があがる。
不幸中の幸いとして、奴の逃げた先からは必ず今のように悲鳴があがるのでどの方向にいるかわかることか。






逃げ込んだ先、そこはトレーニングジムだったようだ。
動きやすい服装になり、それぞれウェイトトレーニング用の機械を使う人たちがいた。
日々こうやって放課後や仕事帰りに汗をかいて自分の体を磨いているのだろう。
いいことだ。実にいいことだ。
壁をすり抜け突如現れた俺を見て、皆一様に呆然としている。

「ふふ、皆さんなかなかの体をお持ちで。
 どうでしょう、この俺も自分の肉体には結構自信があるのだが・・・」

両腕を後頭部にあてて腰を突き出す。
俺の自慢のアナコンダは己を主張するかのように雄々しく鎌首をあげ、反り返っていた。

「ま、負けた・・・」

腹筋を鍛えていた、筋肉隆々のビキニパンツの男子大学生が崩れ落ちる。
ランニングマシンを走っていた会社員が、止まってしまい後ろに流され倒れる。
サンドバックを叩いていたボクサーが殴った反動で帰ってきたサンドバックに弾き飛ばされる。
休憩中で牛乳を飲んでいたと思われる眼鏡な女子高校生は口からダバダバと白いものを垂れ流していた。

「キャーーーーーーーーーーーー!!」

一人の女性から悲鳴が上がる。
それをかわきりにパニックに陥る現場。
俺はそれに気をよくすると再び別の壁をすり抜けて逃走した。
一枚、二枚、三枚、悲鳴を聞きながら壁をすり抜ける。
するとそこはシャワールームのようだった。
俺の正面には一人の全裸の男性。
胸板厚く、濃い胸毛が男らしく少しうらやましかった。

「WaーO、キーングサーイズ。」

外人なのか、そんな感想を言ってきた。そうか、ここはシャワールーム。
全裸でも問題ないため混乱した様子はない。
これではあまりおもしろくないが、褒めてくれたことは嬉しかった。

「産休、ミスター。」

俺はちょっとイントネーションを変えてお礼を言っておいた。
ミスターはその言葉に親指を立て、二カッと白い歯をのぞかせる。
俺は笑顔の彼に手を振り、隣の壁をすり抜けた。
すると今度も同じくシャワールームのようだった。
俺の正面には一人の全裸の女性。
豊かな胸をおしげもなく突きだすように背筋をぴんと伸ばしている。
つややかな黒髪が白くも健康的な肌との相乗効果で美しかった。

「ヘロー!」

さっきの外人を見習って気さくに挨拶してみた。
それに対して彼女は顔を真っ赤にしながらも凄い勢いでこちらに接近。

「ふん!!」

勢いよく足を振りかぶり、アナコンダを蹴りで退治しようと挑戦した。
猛者だなぁと思いながら能力発動。
彼女の美脚は俺の体をすりぬけ、体勢を崩した彼女は後ろにすっ転ぶ形で倒れた。

「いったたたた・・・」

見事なM字開脚。美しい。
知り合いの、しかも女子高校生のこんな姿を偶然にも見れるとは眼福眼福。
俺は両手を合わせて拝むと、また壁をすりぬけて逃走した。
そのまま服を隠している場所まで走る。
とあるビルの裏、そこにあらかじめ隠していた制服に着替える。
ひょっとこの面を外し、鞄に入れる。
そして何食わぬ顔で自分の学生寮の部屋に向かった。
帰り道のコンビニでプリンとゼリー、漫画雑誌を購入する。
部屋の前まで来ると、隣人も丁度どこかから帰ってきたところのようだ。

「あっ、おかえり永蟲。お前も今帰りか?」

「ああ、そういう上条もどこか行ってたのか?」

「風呂が故障しちまって、ちょっと銭湯に・・・ははは。」

「災難だったな。」

こいつは上条当麻。クラスメートであり隣人である。
特に親しいというわけではないが、誰とも分け隔てなく話す上条は友人の少ない俺にとっては
比較的こうやって良く話す人間だ。まぁ仲はいいほうと思っていいのかな。
話すことはあっても一緒には遊んだりはしないからクラスメート以上、友人未満といったところか?
風呂が故障したと聞いて同情した俺は、先ほど買ったプリンをこのクラスメートにあげた。

「いいのか?」

「気にするな、多めに買ったものだからな。」

「サンキュー永蟲!」

じゃあな、と別れを告げてそれぞれの部屋に入る。
さてと、まずは足の裏を洗うかな。裸足で走りまわってたから真っくろだ。




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短くてすいません。
思いつきを書きなぐっている状態なので。
主人公は能力テストではレベル2ほどに手加減しています。
夜の楽しみのために。






[26469] 露出狂と舞踏会
Name: 真田蟲◆00a1ef96 ID:fc160ac0
Date: 2011/03/15 19:39

夕暮れが街を紅く染め上げる。
ビルの谷間に沈んでいく太陽を見つめながら、第七学区の高層ビルの屋上に佇む人影があった。
永蟲柳である。彼は屋上から一人、地上を歩く人を眺めていた。

「・・・今日はやけに風紀委員が多いな。」

道路には、日が暮れる前に自室に帰ろうとする学生が溢れている。
その中に普段より明らかに多い人種がいる。
着ている制服こそそれぞれの通う学校指定のものでバラバラだが、彼等は共通して同じ腕章をしていた。
その腕章には風紀委員と書かれている。
ここ学園都市の風紀委員は、外の世界のそれとは似て非なるものである。
風紀委員とは、その名の通り学生としての風紀を守るためのものであるが、
学園都市ではある程度の権限が公的に認められた自警団の役割も兼ねている。
所属している人間は差はあれどほとんどが能力者であり、暴徒の鎮圧の際は正当防衛として能力の使用を認められている。
その風紀委員の仕事には、巡回して問題が起きていないかパトロールすることも含まれる。
しかし、この通りに今までこんなにも風紀委員が集まっているのは見たことがない。
基本的には彼等は普段、自分たちの所属する支部の担当地域で仕事をする。
そして支部は大抵の場合、それぞれが通う学校がある区域に所属しているのだ。
だから歩いてる風紀委員の制服も見慣れたものであるはずなのだが、あまり見ないものも含まれている。
応援として駆けつけた他の支部の風紀委員と見ていいだろう。
最近は柳は、この第七学区を中心に活動していた。
おそらくここ毎日出没するひょっとこ仮面に対応するために張り込んでいるのだろう。
柳はにやり、と口角を吊り上げた。

「くく、ひぃふぅみぃよぉ・・・よくもまぁ大勢集まったじゃないか。
 今日の鬼ごっこはいつもより激しそうだな。」

からかいがいのありそうな人間たちを見つめて、舌舐めずりする。
はたして彼等は、自分が現れたらどんな反応をするだろうか?
おちょくれば怒るだろうか?どんな能力で追いかけてくるのか?
顔面に股間を近づけてやれば顔を歪めるだろうか?
裸の自分を罵倒してくるのか?
彼等が上げるのは悲鳴?怒声?さてはて・・・
それらを考えるだけで柳は背筋がぞくぞくとするのを感じた。

(ああ、はやく裸になって彼等の中に飛び込みたいな・・・)

「ハハ、アハハ、アハハハハハ・・・」

柳は肩から下げていた学生鞄からひょっとこの面を取り出す。
それをそっと、自身の顔に装着した。
指揮者のように腕を大仰に動かし、空を仰ぐように両手を上に向ける。
瞬間、彼の能力が発動し、ファサリと軽やかな音をたてて衣服がすり抜ける。
コンクリートの床に落ちた衣服を踏み越え、彼は舞踏会の会場へと跳躍した。





『ひょっとこ仮面捕縛作戦会議』
なんとも馬鹿馬鹿しいネーミングの会議が昨日、とある第七学区の講堂で行われた。
最近学園都市に出没しては混乱を巻き起こす犯罪者である自称ひょっとこ仮面。
ひょっとこを模した面以外は何もつけていない、猥褻物陳列罪および強制猥褻罪を繰り返す露出狂である。
そんな彼をこの度、警備員と風紀委員で協力して捕縛を試みる作戦が立てられた。
なんでも、彼の能力は全身をあらゆるものをすり抜けるようにする能力らしく、
今までも遭遇した人間が捕縛を試みるも失敗。
ひょっとこ仮面のセクハラ的痴漢行為の被害は増える一方である。
そんな事態を重く見た警備員、および風紀委員の一部の人間が今回の作戦を立案。
早期に彼を捕まえてこれ以上の被害を食い止めることにしたのだ。
最近の動向でひょっとこ仮面の出現活動地域は第七学区とその周辺が多いことから、
彼の拠点、もしくは学生寮自体が第七学区にあるのではと推測。
毎日出現していることから、本日も現れることを想定して網を張っているのだ。
第七学区にある支部の風紀委員は総動員。
その他の学区からも手の空いているものを応援に呼び、今現在この学区には風紀委員が総勢62名。
さらに、私服に着替えて一般人のフリをした警備員が130名潜伏している。
彼等はひょっとこ仮面を捕まえるべく、平静を装いながらも緊張していた。

「ふふ、早く出て来なさい変態さん。」

しかし緊張する面々の中に一人、今か今かと待ちわびている女子が一人。
ツインテールの髪型の常盤台中学の制服を着た中学生、白井黒子であった。
彼女は普段から精力的に風紀委員の仕事をこなす優秀な人材であったが・・・

「お姉さまの仇は、この黒子が必ずや討ち取ってみせますわ。」

この時ばかりは私怨に満ちた感情で作戦に参加しているのであった。
先日のこと、彼女のルームメイトにして同じ学校に通う先輩であり、お姉さまと呼び慕う存在が犠牲になった。
普段からお嬢様学校に通う人間にしてはあまりお嬢様っぽくない人ではあった。
寮の門限を過ぎても帰ってこないことは前々からよくあることだったので、最初はあまり気にしてはいなかったのだが、
22時を過ぎても帰ってこず、心配になっていたところに電話があった。
なんと麗しのお姉さまが病院に担ぎ込まれたのだという。
学園都市に七人しかいないレベル5の超能力者である御坂美琴は相当の実力者だ。
彼女に限って街の不良たちに打ち負けるなどまず考えられない。
すわ交通事故にでも巻き込まれたかと白井は心配した。
しかし原因は最近噂のひょっとこ仮面の仕業だったと報告を受けた。
なんと、彼女の麗しのお姉さまの顔面に、あろうことか汚らしい股間の一物を見せつけるようにしてこすりつけたというのだ。
実際はすり抜けたので物理的に接触はしていないのだが、白井にとっては同じであった。

(なんてうらやま・・・なんて破廉恥なマネをお姉さまに)

考えるだけで腹がたつ。
敬愛するお姉さまを汚されたという思いと、いつか自分がしようと思っていたのに先を越されたという思いが
彼女の腹の中でどろどろと渦を巻く。いや、正確には憤怒3割嫉妬7割といった感じか。
彼女としてはお姉さまと股間に顔を埋め合ったり、股間をこすり合わせるような変態行為を常日頃から妄想している。
しかしどんなに誘いをかけてもいつもつれないルームメイトに、関係が進行することはない。
どうするかと考えていた矢先に、どこの馬とも知れぬ変態に先を越されたのだ。
これが嫉妬せずにいられようか。お姉さまの周囲にいる変態は自分だけでいいのだ。
自分的にも社会的にも害悪でしかない変態など、存在することすら許されない。
ひょっとこ仮面は自分の愚息に並々ならぬ自信があるようだという情報がある。
なら二度と自信が持てないように、それをぐちゃぐちゃに再起不能に潰してくれますわ、と意気込むのであった。
被害にあった人間たちを白井は思い出す。
自信を喪失したボディ―ビルダーの大学生。
彼の得意技をくらい、3日たっても嘔吐が止まらない不良学生。
彼の出現に驚き怪我をした会社員。
女の子の大事なところを見られたという女子高生。
お気に入りのトレーニングスーツが牛乳臭くなってしまった同じ支部の先輩。
そして、少々男性恐怖症になってしまった御坂美琴。

(それにしてもこの間のお姉さまは可憐で可愛かったですわ・・・)

思い出すのは一昨日、お見舞いに行った病院で御坂美琴が目を覚ました時のこと。
普段気が強く、凛としていることの多い彼女が男性の医者を見て顔を真っ赤にし白井にすがりついてきたのだ。
二日たった今ではましになってきているが、男性を見るとひょっとこ仮面の裸体を思い出してしまうらしい。
御坂は涙目で弱弱しく、自身の見方である白井の服を掴んでしがみつくのである。
普段見られない想い人のか弱く自身を頼ってくれる姿に、病室の中で白井は思わず大量の鼻血を吹いた。

「オネエザマ”・・・ドゥフ、ドゥフ、ドゥフフフフフフフフフフフフフ。」

回想し、思わずにやける白井。彼女の口からは大量の涎が垂れ流しになっていた。
その様子に周囲の人間が少しづつ距離を開ける。
通りすがりの人の流れも、皆彼女を少し避けるようにして歩くので、彼女を中心に小さな空白の空間ができる。
そんなことに気づかず、いや、気づいていたとしてもお構いなしに彼女は怪しげに笑う。

「ドゥフフフフ・・・あ、鼻血が。」

思い出し笑いの最中、鼻腔がつんとしてきた。鼻血がたらりと流れ出てきたのである。
私としたことがはしたない、と正気に戻った白井は鼻を押さえて、血を止めるために上を向いた。
その時見えたのは高くそびえたつビル群と夕焼けに染まる空。
ではなく・・・視界一杯に映るは男性と思しき人間の、きゅっと引き締まった尻だった。
ビルから飛び降りたと思われる男の尻が、彼女の真上30センチ程度のところまで来ていたのだ。
するりと、肛門から白井の体をすり抜けて地面へと抜ける男。
予期していない突然のできごとに、白井は鼻を押さえるのを忘れて呆然としてしまった。
それがなんなのか理解する暇もなく、目に焼き付けるはめになってしまった男の尻。

「・・・は?」

あまりの出来事に一瞬思考が停止する。鼻血はだらだらと垂れ流しのままだった。
今のは一体なんだったのか、何か大きなものが降ってきたと思ったが気のせいだったのか。
疑問はすぐに氷解することになる。
彼女を透過して、地面にまで到達していた彼がするりと浮かび上がるようにして立ちあがる。
数歩歩いて白井と距離を取り、周囲の人間の目に映りやすいように胸をはった。
左手は横に、肩より20度上になるように伸ばし、右手は拳を作って心臓の位置に。
両足を閉じて直立し、ひょっとこを模した面で顔を隠した人物。
茂みから首を伸ばす大蛇は周囲を威嚇するかのように猛っている。
その人物は・・・

「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」

「で、出た、奴だ!!ひょっとこ仮面だ!」

「変態だー!」

「捕まえろー!」

・・・風紀委員と警備員が待ち望んだその人、ひょっとこ仮面だった。


巡回していた風紀委員が、潜んでいた警備員達が悲鳴を聞きつけ駆けつける。
白井は今しがた自分が目撃したものが何だったのかを認識し、ぶぱっと音をたててより多く鼻血を出した。
いつしかひょっとこ仮面を中心に取り囲むようにして人の輪ができていた。
彼等はいつでも能力を放てるよう掌を彼に向けたり、警棒を取り出したりして警戒している。

「クク、クハ、ハハハハハ!さぁ、皆、このひょっとこ仮面と踊ろうか!!」

ひょっとこ仮面は集まる視線に胸を、股間を高鳴らせた。
茂みから顔を出すアナコンダが上下に揺れて歓喜の踊りを踊る。
獲物たちの視線を受ける度、悲鳴を聞く度、罵声を浴びる度、アナコンダはさらに肥大化し凶暴性を増していく。

「そうかそうか嬉しいか。諸君らの反応に俺のアナコンダも狂喜しているぞ!
 さぁ、今日は舞踏会だ。もっともっと大きくなるぞ!!」

「・・・そんな、あれ以上大きくなるのか?」

絶対的な戦闘能力の差を垣間見て、絶望の声を上げる警備員の男性教師がいた。
そんな声を彼は、ひょっとこ仮面は逃さない。

「それはこれからその眼で確かめればいいだろう?さぁ、舞踏会の始まりだ。
 ・・・レッツ、パァリィイイイイイイイイイイ!!」

ひょっとこ仮面は雄たけびとともに跳躍し、稲妻のような速度で男性警備員の顔面に飛びかかった。
両足を持ち、股を広げるようにして股間が警備員の顔面と重なるようにしてすり抜ける。
彼お得意のおっぴろ○アタックだった。
男性警備員は物理的ダメージはなかった。
だが、男の股間を凝視してしまったという嫌悪感と、変態との圧倒的な戦力差を目の当たりにした絶望感。
彼の精神的ダメージは計り知れない。結果・・・

「ぐ!?かっ、はっ!、おぇ、ぇ、うぼぇぇぇえぇえええええええええ!!」

その場に崩れるようにして膝まつき、大量に嘔吐するのだった。
こうして、男性警備員の嘔吐音を鐘の音代わりに、ひょっとこ仮面と彼等の舞踏会が始まった。

「捕まえろぉおお!!」

誰かがあげた声を皮切りに、一斉に警備員がとびかかる。
しかし、捕まえようと手をのばしてもひらりと躱されるか、能力ですり抜ける。
警棒で攻撃しようとも当たらない。逆に下手に近づけばあの得意技を喰らってしまう。
風紀委員のサイコキネシスが、炎が、水が、風が、よくわからない光がひょっとこ仮面に襲いかかるがどれも効果はない。
どれもこれも彼の体をすり抜ける。
回避行動も見えることから能力のオンオフをしているのかもしれないがそのタイミングがわからない。

「蝶のように舞い・・・蛇のように絡みつく!」

「きゃーー!?」

ひらひらと変態的に回避し、一見無理な体勢から飛び跳ねて相手の顔面にダイブする。
今も女子風紀委員が犠牲になり、あたりは気絶する者と嘔吐する者が多数出ている。
見せつけるだけで耐性のない者は気絶するか嘔吐する。
そうでなくても彼と対峙する者は顔色が青かったり赤かったりと様々だ。
能力者は自身の脳で演算し、能力を発動する。
その為、平常心を失えば上手く演算できず脳に負担がかかる。
これだけの人数に囲まれて、これだけ能力を使用していれば負荷が多くて疲れるはずなのに。
先に倒れるのは風紀委員と警備員達だった。
彼等は皆一様に精神的に負荷がかかり、うまく力を発言できずに一人また一人と犠牲になっていく。

「こんな・・・馬鹿な・・・」

「おっきな蛇が・・・おっきな蛇が・・・」

「・・・おぼぉぇえええええええ・・・」

「嫌、とれない、とれない、とれない、とれ・・・」

自身の無力に膝まづくもの、未知の恐怖で蹲るもの、ひたすら嘔吐するもの、自らの顔を掻きむしるもの。
気がつけば周囲は死屍累々の地獄絵図の様相だった。
中には一度倒れながらも不屈の心で立ち上がろうと顔を上げる勇者もいたが、

「よっこいせっと・・・」

そんな勇者には顔を上げたところにひょっとこ仮面のお座り攻撃の洗礼が待っていた。
図らずしも、男の尻の穴に口づけすることになってしまった面々は、もう真白になっていた。
警備員でも高齢の田中さんなどは、ショックのあまり残り少なくなっていた髪の毛が全て抜け落ちてしまった。
舞踏会開始から約30分、既に立っているものはいない。
一般人はすでに現場から避難させられているので、今回は一般人に被害がなかったのが唯一の救いか。
いや、未だに一人だけ両足で立っているものがいる。
白井黒子だ。彼女は今まで鼻血を垂れ流しながら放心状態で直立したままだった。
しかしこの状態では戦力にもなるまい。
ひょっとこ仮面は彼女を放置するか、やさしくとどめを刺すか迷っていた。
よし、ここは綺麗に最後まで仕事しようと近づく。
その時、まるでこれが漫画ならギュピーンという起動音が聞こる程に白井の目に光が戻った。


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次回、vs白井。

昨日の夜の段階で自宅PCがネットに繋がらなかったのに、
今日バイトから帰ってきたら何故か繋がった。何故?






[26469] 露出狂と風紀委員で百合なあの子
Name: 真田蟲◆00a1ef96 ID:fc160ac0
Date: 2011/03/19 11:19
今回の話はWANDSの「明日もし君が壊れても」という曲を聞きながら書きました。
全く関係ありませんが。ええ、ありませんとも。
それと全体的にセリフが多い回になってます。
描写がすくなくすいません。


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よし、ここは綺麗に最後まで仕事しようと近づく。
その時、まるでこれが漫画ならギュピーンという起動音が聞こる程に目に光を取り戻す白井。

「ァオ、ンアァアアアアアオオオオオオオオオ!!」

彼女は天に向かって何かをふっきるかのように咆哮した。
それはまるで荒野で雄たけびを上げる獣のよう。
咆哮が終わると、口を半開きのまま、視線だけを動かしてひょっとこ仮面を見た。

「ッッブチコロス!!」

血走った目を限界まで開き、鼻から下は真っ赤に染め、とても女の子としては人目に見せられない形相。
幽鬼のようにゆらりと揺れると、その視線をひょっとこ仮面に向ける白井。
そのあまりの様相に若干引くひょっとこ仮面。
彼のアナコンダも彼女の様子に警戒するかのように少し小さくなる。5ミリほど。
おもむろにスカートをまくり上げる白井。その太ももにはベルトで固定された鉄の棒があった。
彼女の手が棒に振れた瞬間、その棒がひょっとこ仮面の股間に出現する。
しかしその棒はなんらダメージを与えることなく地面へと音をたてて落ちた。

「・・・クク、テレポート系の能力者か。
 何の躊躇いもなく俺のアナコンダを攻撃してくるとはな、俺でなければ二度と使い物にならなかったかもしれないぞ?」

「ふん、そんな汚らしいもの使えなくした方が社会のためですの。
 この白井黒子が、クゥロォコォがぁ!!
 あなたのその御自慢の蛇を退治して、お姉さまの仇をとって見せますわ!!」

ひょっとこ仮面の軽口に言葉を返しながらも白井は彼の背後に転位。
脊髄をねらって手にした鉄棒を突き刺す。
しかしそれは彼の体をすり抜ける。
だが彼女はそんなこともおかまいなしに次々と攻撃をしかける。
上段回し蹴りからの側等蹴り、蹴り降ろした足を踏み込みにし顎をねらって貫手を繰り出す。
その勢いで体を回転させ裏拳、回し蹴り。
鳩尾をねらって正拳突き、毒突き、手刀、正拳突き、と格闘ゲームかなにかならコンボを狙える攻撃を繰り出す。
しかしそのどれもが、やはり回避されるか能力ですり抜けられる。
せめて防御でもして触れてくれればテレポートでそこらのコンクリにでも埋めてやるのに。
そう思う反面、攻撃しても意味のないことはわかっていても殴らずにはいられない。
ひょっとこ仮面は華麗に連続でバク転すると白井から距離をとった。
余韻でアナコンダが首をゆらゆらと揺らす。
相変わらず彼女は彼とアナコンダを睨みつけていた。

「お姉さま?」

先ほどの白井の言葉に疑問を返すひょっとこ仮面。
また転位して追撃に入ろうとしていた白井は、その言葉を聞いて立ち止まった。
その場にとどまり、腰に手をあてて右手の指をひょっとこ仮面に突きつける。

「忘れたとは言わせませんわ!!
 ええ言わせませんとも!!
 言ってんじゃねえぞど畜生が!!ああん!?
 3日前、あなたがその不潔極まりないものを見せびらかした女性!
 常盤台のレベル5、超電磁砲の御坂美琴お姉さまです!!」

そう言われて、3日前の出来事を思い出す。
確か、不良たちに囲まれている女子中学生を見つけ、股間のアナコンダを見せつけて救助したのだ。
しかし救助は必要ではなかったらしくなぜか怒っていると思われるその女子中学生が攻撃してきた。
その攻撃は超電磁砲と呼ばれるもので、ものすごい威力を秘めていた。
必要なかったとはいえ、助けにきた相手に攻撃するのはいかがなものかとひょっとこ仮面は怒りを覚え、
ついついお得意のおっぴろ○アタックで攻撃してしまったのだったか。
赤面し、よくわからない奇声を発して気絶する彼女の反応はなかなかに魅力的だったと記憶している。

「ああ、あの悲鳴が素敵なお嬢さんか。
 あの子は君のお姉さんか何かなのかい?」

「ええ、私の敬愛する方ですわ!」

無い胸をはって誇らしげに宣言する白井。
言葉から推測して実の姉というわけではないようだ。
二人とも美少女とよぶにふさわしい容姿をしているが、顔は似ているとは思わない。
あれか、私の蕾とかなんか百合的な関係なのかとひょっとこ仮面は見当をつけた。
同性愛的なものか、おおいに結構。

「つまり君とあのこは百合的な関係ということかな?
 それが白百合か黒百合かはともかく。」

「はぁ、白か黒というのはわかりませんが・・・その通りですわ!
 私とお姉さまの愛の邪魔をするものは誰であろうと許しませんの。
 お姉さまに不埒なマネをしたあなたも同様許すわけにはいかない。
 おわかりになりまして?」

「そうか・・・少しうらやましいかな。特定の誰かをそうやって愛することができるというのは。
 これからも頑張ってお姉さまとの愛を育むといい。」

お互いに距離を保ったまま睨み合いつつも、お互いの出方を見るために軽口をたたき合う。

「あなたのような殿方に応援されてもうれしくありませんわ。
 ですがその点においてはありがとうと、言っておきましょうか。
 あなたには特定の愛を捧げる方はいませんの?」

「残念ながらな・・・俺の愛は全てのものに平等だ。
 この世界に生きるすべての人間を愛し、慈しむことこそ俺の生きざま。俺の義務。
 誰か特定の人間に俺の愛を捧げることなど・・・許されない。
 こんな愛は時代遅れなのかもしれんがな。」

まるで何かを悔やむような口調で話すひょっとこ仮面。
股間のアナコンダも、彼の精神状態を表してか、若干下を向いた。
そのセリフだけ聞けば博愛主義者の精神に全てを捧げたかのように聞こえる。
しかしそのような言葉は、十字教の信者が、宗教に全てを捧げているような人間が口にすれば様になるものである。
全裸の人間がいくらシリアスな口調で話しても、ちっとも真面目な話には聞こえなかった。
いや、彼としては自身の露出教とも呼べる宗教にでも全てを捧げたつもりなのかもしれない。
だが彼の平等なる愛をその身に受けた人間たちは、周囲で地に伏していた。
彼にとっての愛とは自身のアナコンダを見せつけること。
迷惑極まりない愛だった。

「だから、安心したまえ。
 君のお姉さまの心を横取りしようなどとは思っていない。
 彼女に欲情はしても惚れているわけではないのだ、君の恋敵にはならないさ。」

「それはありがたいことですけど、仮にあなたがお姉さまに惚れたとしてもです。
 お姉さまが変態の殿方に心奪われるなどありはしませんわ。
 それと、欲情するのもやめていただきたいですわね。
 お姉さまとおにゃんにゃんしてもいいのは私だけですの。
 魅力的な女性なのは認めますが、あなたの変態行為に巻き込まないでいただけませんこと?」

「安心しろ、俺の好みは彼女のような女性ではない。」

「あらそうですの?」

「ああ、『彼女のような女性を含む、老若男女すべての人類』が俺の好みだ。
 生まれたてから灰になるまで、その全てが俺のストライクゾーン。
 さすがに灰になってしまえば股間は反応しないが・・・心の打率は十割を誇る。
 何を隠そう、俺はバイだからな。
 安心の男女平等だ。」

全然安心できない好みだった。
しっかりと白井のお姉さまである御坂もストライクゾーンに入ってしまっている。

「全然安心できませんわ!
 結局お姉さまもあなたの好みに入っているではありませんの!」

どなる白井に、フッと笑うように息を吐き出すひょっとこ仮面。

「だから安心していいと言ったろうに。
 君のお姉さま一人を愛することなどしないし、君の恋路を邪魔したりもしない。
 愛する時は二人同時だ。
 君と御坂嬢、一緒に平等に俺の愛を捧げるさ。」

「余計安心できませんわ!!」

さらに怒って鉄棒を転移させてくる白井。
その棒をすり抜けさせてひょうひょうとした態度を取り続けるひょっとこ仮面。

「そうか?冷静になって考えてみるといい。
 ありのままの俺を前に、恥じらう君のお姉さま。それを真横で眺める君。
 連帯感からより一層絆は深まるぞ?」

その言葉の内容を愚かにも想像してしまう白井。
先日の病院のように、おびえて弱弱しく自分にすがりつく御坂。
男はもういやだと言う彼女に、同性の良さを教えようとする白井。
状況のせいか、ひょっとこ仮面から逃げるように白井の提案に乗る都合のいい御坂。
普段とは逆転する攻守の関係。
電撃の攻めが受けへと転じ、感電していた受けが攻めへと転位する。
実際にはありえないことだが、妄想とはたいていの場合都合のいいものである。

「・・・くふ!?」

止まっていた鼻血が再度吹き出し、これまでの出血量から脳が揺れる。
くらくらとする頭を抱え、地面に膝をついてしまった。

「・・・フッ。」

その様子を鼻であざ笑うひょっとこ仮面。
背筋を伸ばし、両手を腰に当て、股間を突き出すようにして白井の方へと歩み寄る。
彼女の2メートル手前で立ち止まる。
地に膝をつく彼女を見下すかのように立つ。
彼の股間のアナコンダは彼女の今の姿を見て笑うかのように上下に揺れていた。

「笑止、自分の妄想で地に膝をつくとはな。
 妄想とは自身の中で飼いならし、そこから生まれる無限のエネルギーを糧として己の力とするもの。
 飼いならすこと叶わず噛みつかれ、逆に力を奪われるとは。
 変態としては三流もいいとこだな。
 それでよく百合を名乗ったものだ。
 同性愛とはいわば反社会的な感情の愛だ。
 そのような愛は、自身の変態性を理解し、なおかつ妄想を飼いならすことを必然とする。
 この程度の基本もできないようではとてもではないが同性を愛することなどできない。
 素直にあきらめたらどうだ?
 お前には変態性が足りない、それはつまり君のお姉さまへの愛がたりないということだ。
 今の君に百合を名乗る資格はない。」

「・・・なんですって?」

好き勝手の事を口にして白井を貶めるひょっとこ仮面。
普段の冷静な彼女なら、彼の言っていることが穴だらけのめちゃくちゃな論理だと気づいたろう。
しかし先ほどからの大量の鼻血による失血と、そこからくる貧血。
くわえて彼を攻撃するための激しい動きからひどい眩暈を起こしていた。
今まで立っていられたのはひとえに彼への怒りがあったから。
それでも膝をついてしまうほどに今の彼女は眩暈でくらくらとしていた。
半ばぼんやりとした意識の中では、正確な判断などできない。
普段から変態を自称し、自身がレズビアンであることを理解している白井。
御坂美琴への愛は誰にも負けるつもりはない。
それがどうだ、百合を名乗る資格はないだと?
変態として三流だと?
お姉さまへの愛が足りないだと?
あろうことか、お姉さまへの思いを諦めろだと?

「・・・そんなこと・・・認められるかぁ!!」

拳を地面に叩きつける。そこにあったコンクリートパネルが消えた。
そして現れるはひょっとこ仮面の頭上。
大きさ一辺30センチ厚さ3センチのコンクリートの塊だ。
重量も人を殺すには十分なものだ。
しかしその攻撃もひょっとこ仮面の体をすり抜けるばかり。
激しい音をたてて落下したパネルが破砕する。
結果として周囲を散らかすだけに終わってしまった。

「何度やっても無駄なのは君もわかっているだろう?
 君の攻撃は俺には届かない。とーどーかーない。
 何故だかわかるか?」

「・・・・・・」

彼の問いかけに沈黙で返す白井。

「解らないか?ならば教えてやろう。
 それは君の変態度合がまだまだ足りないからだ。
 衣服という名の羞恥心に身を包んでいる君では、到底俺には届かない。
 変態とは何か?
 それは変わらぬ態度で愛を貫くことだ。
 衣服とは毎日変えるもの。
 制服といえども、季節が変われば移ろいゆく。
 衣服は羞恥心を、恐怖心を隠す鎧としては十分だろう。たしかにすばらしいものだ。
 しかし衣服を着込むことは逆に、自分の心に弱さがあることを認めること。
 自身の弱さを認めているんだよ、君は。」

そのめちゃくちゃな論理に愕然とする白井。
私が弱い?
もちろん自分より強い人間などいくらでもいることは理解している。
しかしエリートである常盤台に通い、自身も学園都市でも珍しいテレポート系能力者。
それもレベル4の実力だ。
風紀委員としてもこれまで数々の問題を解決してきた。
その中には能力者が起こす問題も何度もあったし戦闘もあった。
しんどいこと多かったが持前の根性で、その度にそれをいつもいつも解決してきたのだ。
それなりの実力であると自負しているし、心もそこらの人間より強いと思っている。
その私が弱い?心が弱い?
こんな変態に能力で負けて、さらに心まで弱い?
しかも、それを私自身が認めているですって?

「怖かろう?悔しかろう?」

まるで彼女が自身の弱さを認められないことなどお見通しであるかのように嘲笑するひょっとこ仮面。
仮面の下の口は三日月のように細く釣り上がっていた。

「例え鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだ。
 そのような弱さでは、とてもお姉さまへの不変の愛を貫くことなどできはしない。」

「・・・っざけんなですわ!!」

怒りを動力に無理やり立ち上がる白井。
ほぼ限界なのは分かっていたが、ここまで言われては黙っていられなかった。
膝が笑っている。相変わらず貧血でぼろぼろだ。
だが、負けられない。こいつには。
何より、お姉さまへの不変の愛を貫くため、自分に負けるわけにはいかない。

「そこまで言うのなら証明して差し上げますわ。
 私が弱くないということを!!
 本気の私を!!」

そう言って宣言する彼女は力をためるかのように脇をしめ、腰だめに両こぶしを引き絞る。

「・・・10%!!」

彼女の靴、制服のタイが消失する。

「・・・30%!!」

スカートが、袖なしのベストが消失する。
露わになる黒のTバックに太ももに巻かれたベルト。

「・・・60%!!」

半袖のカッターシャツが消失する。
ついで出てきたのは下とおそろいの黒のブラジャー。
大きさ的に必要ないんじゃ、と一瞬思ったがひょっとこ仮面は黙っていた。
彼は相手の身体的特徴を指摘したりはしないのだ。
そこらへんは紳士だった。

「・・・80%!!」

靴下が消失する。
パンツとブラだけになるまで靴下は脱がない。
彼女なりのポリシーだったのだろうか、それはひょっとこ仮面にはわからない。
だが彼的にはおおいに賛成だった。

「そして・・これがぁ・・・100パーセントのぉ・・・私ですのぉおおお!!」

東洋の神秘、気でも練っているのか髪の毛が逆立ち、ツインテールが触手のようにうねうねと動く。
ブラジャーとTバックが消失した。
そこにいるのは生まれたての裸体をさらす少女。
凹凸は少ないが、なるほど、なかなかに引き締まった体をしている。
野生のカモシカのような肉体だ。
無駄な毛は一切なく、年齢的にも剃っているのかもともとか。
どちらか判別はつかない。
だが、個人的には剃っていると非常に興奮する、と彼は思った。

「ほほぅ、そのオーラ・・・実力を今まで隠していたということか?」

「これで格好としては立場は同じ。
 いいえ、面をしている以上、あなたの負けですわ。」

「ふむ、確かに。面という匿名性をもっている俺の方が弱いか。
 だがこれは俺のポリシーでありアイデンティティ。
 外すわけにはいかない。」

彼女の言葉に彼はうなずいた。
今の姿はひょっとこ仮面は顔に面、そして全裸という格好。
対する彼女は太ももにつけたベルト以外なにも身につけていない。
ベルトも、彼女の中でのポリシーでありアイデンティティであると考えても、
匿名性を得られる仮面をしているという時点で彼の負けである。

「認めよう。君は強い。
 先ほどの君の心が弱いという発言は撤回させてもらおう。
 その強さ、変態として君が一流だということを認めよう。
 確かにこれなら、君は同性愛を貫けるだろう。」

「ふ・・・当然ですわ。」

憎い相手から全面的な謝罪と、自身を認めるという言葉を受けて不敵に笑う。
しかし、いくら全力の自分になったとはいえ、先ほどの流血した鼻血は返ってはこない。
立っているのがやっとで、とても戦えそうにもなかった。

「では続きをしましょうか?今度は負けませんわよ?」

強がる白井。
いや、体は限界を迎えているが、今の自分なら目の前の男に負けないと思えた。

「・・・いや、続きはこんどにしよう。
 ふらふらの君と戦っても、例え勝利しても嬉しくはない。
 君との決着はいずれ、お互いがベストのコンディションの時につける。
 その時までおあずけだ。」

「そうですの?私はこのままでもいいんですのよ?」

「無理をするな。君の強さは認めた。
 変態と認めた君だからこそ、対等に勝負をするのだ。
 ここはおとなしく退こう、名前は覚えたぞ白井黒子。
 では・・・さらばだ。」

ひょっとこ仮面はその場で幽霊のようにふわりと跳躍し、建物の壁をすりぬけて消えていった。
あとに残されるは全裸の白井黒子のみ。

「・・・ふぅ、お姉さま。
 お姉さまへの愛は、この黒子、誰にも負けませんわ。」

星が輝き始め、うっすらと暗くなり始めた夜空に誓いを立てる。
ほぼ気力だけで立っていた白井は、その場に座り込んでしまった。

「ちょ、おま、なんでお前は裸じゃん!?」

気づけばすぐそばで声がした。
どうやら応援で駆けつけた警備員の女性らしい。
周囲にいる人間はすべて撃沈、気絶している。
唯一意識のある白井も素っ裸の状態だ。
何があったと狼狽している。
そんな女警備員に彼女はくすりと笑った。

「それは・・・私が白井黒子だからですわ。」

その笑顔は花が咲くように愛らしく、美しかった。








彼女が全裸でひょっとこ仮面とあと283回戦うことで、その度に自分の限界を超え、
学園都市のレベル5の一員となり、学園都市の能力者の序列が入れ替わる。
その可能性があるのだが、それについてはまだ誰も知らない。









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