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[26447] <習作>FATE×IS
Name: ドレイク◆f359215f ID:7d75b67c
Date: 2011/03/13 17:44
かなり好評をいただきましたので、書き続けることにしました。これからもご指摘・ご感想を頂ければ嬉しいです。

 このSSには以下の要素があります。クロスオーバー・TS、これらが苦手な方はバックしてください。

 志保の乗る機体について意見がほしいです、現状、作者が考えているのは別の作品の機体で(ヒント・正義爺の偶神、敵としてデブを出すかも)、これについて皆様の意見がほしいです。



[26447] 第一話
Name: ドレイク◆f359215f ID:9e6f3747
Date: 2011/03/13 17:09
 

 懐かしい夢を見た。偽善と知り、滅びの道と知り、それでもなお綺麗なものがあると信じ、正義の味方として突き進んだ。
 その果てにあった、当然の帰結。魔術の師でもある最愛の女性との別れ、熱狂と怨嗟の声に満ちた処刑場、振り下ろされる断罪の刃。途切れ、奈落へと落ち往く意識、二度と目覚めぬ眠りであった、筈だった。
 夢の内容は自身の死に際、死んだのであれば次などない、終わるから死なのだ。夢でしかありえぬ筈の事象は、かつて自分が歩んだ道だ。なのにそれを夢として見れる、その異常さ、どうやら自分はつくづく出鱈目なことに縁があるらしい。
 そんな事を思いつつ、―彼―ではなく、―彼女―は布団から出る。赤い髪を伸ばした少女―少女というには不釣り合いな落ち着いた雰囲気がある―は着替えを済ませ、朝食の準備を手伝うために台所に向かった。

 台所では母親が朝食の準備をし、父親が新聞を読みながら食卓に着く、ありふれた、だがかつては経験したことのない普通の家庭、それを見ながら、自身が二度目の人生を生きていることを実感する。
 この二度目の人生をどう生きるか、それはまだ定まっていない。かつてのように正義の味方として生きる、それも考えた。だが、両親は前世―衛宮士郎―のことなど知らぬし、今の自分は結果的にとはいえ、この体を奪って生きているようなものだ。だから、早死にする生き方はしたくない。先のことはまたいずれ決めるとしよう。そう考えていると、テレビではあるものを映していた。
 
 まるで、漫画やアニメに出てきそうな機械を身に纏った女性が、華麗に空を舞う。現実味ののない光景は、れっきとした現実だ。
 
 IS<インフィニット・ストラトス>、もとは宇宙開発用に作られたそれは、ある事件で一躍脚光を浴び、今では世界各国の軍事の中枢を担う兵器だ。また、女性にしか扱えず、女尊男卑という考えを広めたきっかけでもある。

 この時はまだ、自分がISにかかわるとは欠片も思っていなかった。



 数ヵ月後、オレはドイツにいた。第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』の観戦ツアーを両親がテレビの懸賞で当てたからだ。
 各国の最新鋭機体によるど派手なバトルはかなりの見ごたえだった。それだけで済めばいうことなしだったんだが、あいにくとオレは出鱈目なことと同じくらい、厄介事にも好かれる性質らしい。
 
 目の前で現在進行形の誘拐現場に遭遇し、つい口癖が出た。

「なんでさ……」

 気持ちを切り替えたオレは、魔術で視力を強化して、誘拐犯の追跡を開始した。



 織斑一夏は、混乱の真っ只中にあった。IS世界大会に出場する姉とともにドイツに来てみれば、謎の組織に誘拐され、不安と恐怖に押しつぶされそうになっていると、いきなり誰かが突入し、あっという間に犯人たちが制圧されたのだ。
 その誰かが、名実ともに世界最強である姉の織斑千冬、とかだったら自身の無事を喜べるんだが、あいにくと姉さんではなく、赤い髪をした俺と同い年くらいの女の子。
 
 一言だけ言わせてくれ、誰だよこの子!!

 彼女はそんな俺の思いなどつゆ知らず、いたって落ち着いた様子で
「大丈夫か、君」
なんて言いながら、オレの拘束を解いてくれた。話を聞いてみると、彼女は俺が誘拐される現場を目撃して助けに来てくれたらしい。いや、普通そこって警察とかに連絡するんじゃねえの、って思ったが助けてくれた恩人なので、そのことには突っ込まなかった。ここで俺は、この女の子の名前を知らなないことに気づいた。

「ん、オレの名前?、衛宮志保っていうんだ、好きに呼んでくれて構わないぞ」
「えっと、じゃあ志保って呼ぶよ、オレは織斑一夏、一夏でいいぜ」

 そんな感じで、安心しきっていた時だ。

「おいおいおいおい、なあに助かった気でいるんだよ、このくそ餓鬼ども」

 そこには、八本の装甲脚を背部から生やしたタイプのパワードスーツ―IS―を身に纏った女性がいた。俺はこの時、無事に帰ることをあきらめた。ISという世界最強の戦力に対抗できるものは今、この場にはない。だけど―

「ああ、二人揃って帰るつもりだが」

―なんて、志保は言い放った。

「無茶だろ志保!!、どうやってISに勝つつもりだよ、魔法でも使えるって言うのかよ!!」

 あまりにも気負いなく、ISに立ち向かおうとする志保に、オレは制止の言葉を放つ。だが、それを聞いた志保は、はにかんだような笑みを浮かべ

「ああ、そうさ、俺は魔法使いなのさ」

 そう言ったんだ、当然、敵の女性は激昂し、怒声とともに襲いかかる。

「やれるもんならやって見せろや、くそ餓鬼ィィィィッ」
「言っただろう、二人揃って帰る、とな」

 対する志保も、その手に白と黒の双剣を顕現させ、応戦の構えをとる。

―ここに、IS対生身の人間という、ありえぬはずの戦いの幕が、切って落とされた―

 
  



[26447] 第二話
Name: ドレイク◆f359215f ID:52f0f169
Date: 2011/03/20 08:20
 結構、好評だったので続きを書いてみました

 <第二話>

 ドイツのとある廃工場で、戦いの幕が上がる。

 本来成立すらしない、生身の人間とISの戦い、初手は当然ISがとった。ISと人間のスペック差を考慮すれば当たり前のことだ。ISは8本の装甲脚を用い、文字道理手数の多さを生かした接近戦を仕掛ける。
 一夏とISの使い手の脳裏には、志保が装甲脚に貫かれ、無残な屍をさらす光景が映っていた。

 だが、その程度の窮地、乗り越えられずして何が―正義の味方―だ。

 直後、志保の背後から放たれる何か、正体は多種多様な計8本の刀剣。それがライフル弾もかくや、という弾速を持って、ISの装甲脚と真っ向からぶつかる。
 ISという最新鋭技術を、いっそ古めかしいとさえいえるような刀剣を用い迎撃する。その光景の異質さに一夏は声を亡くし、ISのの使い手は、声を張り上げ叫ぶ。

「なんだそりゃあ、何をしやがったこの餓鬼ィィッ」
「言っただろう、―魔法使い―だと」

 対する志保は、剣弾とぶつかり合い、体勢を崩したISへと斬りかかる。だがISは、体勢を崩しつつもその場で急速旋回、勢いに任せて装甲脚を振り回し迎撃する。そのまま装甲脚から砲撃を放つ。

 ―勝った、ISの使い手はそう確信した。先ほどの一撃とは違い、今度は弾丸、あの妙な技で迎撃はできまい。その確信も

 ―光とともに顕現した巨大な斧剣で、必殺の弾丸を防いだ姿で、あっけなく打ち砕かれた―

  ことここに至り、ISの使い手は、相手が魔法と呼んでも差し支えないような、尋常ならざる何かを持っていると認識した。

「おい、餓鬼、済まねえな、てめえを侮ってた。ここからは全力で行く、だからきかせろ、てめえは何者で、何のために織斑一夏を助ける」 
「人にものを尋ねる前に、まず、自分の名前ぐらい明かしたらどうだ」
「ああ、そいつは済まねえな。私の名前はオータム、亡国機業のエージェントだよ。さあ次はてめえの番だぜ」
「フッ、そうだなしいて言うなら、通りすがりの正義の味方だよ」
「クククッ、じゃあ何か、この状況は偶然の結果かよ。つまりてめえは全くの無関係だって訳か」
「納得したか?」
「ああ、もういいさ。じゃあ死ねよ」

 そして、ふたたびはじまる戦闘。剣群が乱れ舞い、銃火が走り、鋼と鋼が激突する。
 
 過去を積み重ねた重みを揮う志保と、先へ進む未来の鋭さを纏うオータム、二人の激突は正しく、新しき伝説というべきものだった。

 だが、ISのシールドでほぼ無傷のオータムに対し、致命傷こそないものの傷だらけの志保、二人の姿はこの戦いの結末を暗示しているかのようだった。

「粘るじゃねえか、正義の味方。こっちはあまり時間をかけられないんでな、次で決めるぜ」

 宣言とともに、オータムの背後から現れるミサイル、同時に放つビームワイヤー。人ひとりを殺すには過剰なそれを志保は、双剣の投擲でミサイルを撃ち落とし、斧剣の盾でビームワイヤーを防ぎきった。
 志保の視界を爆炎が塞ぐ中、オータムの声が響く。

「てめえなら、その程度防ぐと思ってたよっ!」
「なにっ」

 爆炎を貫き現れるのは、装甲脚が2本、パージしたそれをオータムは、残った装甲脚で投擲したのだ。あまりにも予想外の攻撃に反応が一瞬遅れ、廃工場の壁に志保は叩きつけられた。

「グッ、ガハァッッ」

 苦悶の声を上げながら、志保は内心で自身の迂闊さを呪った。久方ぶりの戦場で勘が鈍ったか、そう思いつつ現状を確認する。壁に叩きつけられる直前に、構成を脆くした投影物を作って、クッション代わりにして致命傷は避けたが、まともに戦闘を行えるほどではない。

 普通ならここで終わる、だが、オータムは勝利を確信しきっている、そこにオレの勝機がある。オレは体に走る激痛を無視し、魔術回路を全力で稼働させた。


 これで終わった、粉塵が舞い散る中、オータムはそう確信した。そして踵を返そうとしたとき、背筋に悪寒が走った。視界が開ける、そこには、黒塗りの弓に、禍々しい気配を持つ捻じれた剣をつがえた、奴の姿があった。アレはマズイ―本能の命じるままに、回避行動をとる中、奴の声が響く。

「偽・螺旋剣<カラドボルグ>」

 ケルト神話にその名を残す、<堅き稲妻>の名を持つ剣は、その名のとうりの轟音を轟かせ、廃工場の壁を貫き、彼方へと消え去った。轟音が去った後には、満身創痍の志保と、機能停止寸前のISを身に纏ったオータムだけが残された。

 オータムはその最中、味方からの通信でタイムリミットが来たと知る。アレがここに来る以上、一刻も早くこの場から離脱しないとまずい。

「チッ、引き分けか、命拾いしたな正義の味方」
「どうする、まだ続けるか」
「いや、このままじゃあ両方共倒れだ、それに目的ももう果たした」
「成程、ブリュンヒルデがここに来る、というわけか。決勝戦を棄権して」
「なんだ、気づいてやがったのか」

 そしてオータムは、もうここには用がないと言わんばかりに、この場から去った。最後に―

「じゃあな正義の味方、てめえは殺す、いつか殺す、必ず殺す。それまでくたばるんじゃねえぞ」

 ―と言い残して。


 それを見送った、志保と一夏は、たがいに顔を見合わせて、笑顔を交わす。

「すっげえな志保!、志保って本物の魔法使いなのか!」
「ああ、そうさ。ところで、けがはないか一夏」
「おかげで傷一つないさ、志保のほうこそ大丈夫か?」
「なんとか、許容範囲内さ。そろそろ、オレもこの場から去らないとな」
「えっ、どうして」

 すると志保は苦笑して

「オレが魔法を使えることを、あまり広めたくないんだよ。だから、今日の一件は、俺と一夏の秘密にしておいてくれ」
「わかったよ、誰にも話さないって約束する」
「ありがと、一夏」

 そして志保も―

「じゃあ一夏、さよならだ、縁があったらまたいつか会おう」

 ―といって、夕焼けの中、去って行った。


「さよなら、志保」

 俺は志保の後姿を見送りながら、さっきの光景を思い返し

「カッコよかったな、志保。俺もいつかあんな風に、誰かを守れるくらい強くなりたいな」

 じゃあまず、これからは剣道の練習を、もっと頑張るとするか。俺はこっちにやってくる千冬姉さんを見ながら、そんなことを決意するのだった。

 ―こうして、ありえぬははずの出会いと、事象と、結果に彩られた騒乱の一日は、少年の心に輝きを残しつつ、幕を閉じたのだった― 



[26447] 第三話
Name: ドレイク◆f359215f ID:7d75b67c
Date: 2011/03/13 17:08
 
 <第三話>

 織斑一夏は、日課である早朝のジョギングを行っていた。ドイツでの誘拐事件から数年過ぎ、一夏は中学三年生、進路に頭を悩ます時期になった。
 あの誘拐事件の後、千冬姉さんを含めいろいろな人たちから話を聞かれた。もし俺を助けたのが姉さんだったら、<ブリュンヒルデ>がたった一人の弟を救うために、『モンド・グロッソ』の決勝戦すら棄権して誘拐犯たちをやっつけた。
 なんて、いかにもな美談で終わったんだが、あいにくと姉さんが俺の監禁場所にたどり着いた時には既にオレは、何者かによって―当然、志保のことだ―助け出され、監禁場所の廃工場は何者かによる大規模な戦闘の跡があった。
 おまけに、ISのコア―コアには独自のネットワークによって常時リンクしている―のログを調べると、当時、あの場所には一機のISがいたことを示していた。問題は、このISが、織斑千冬・ドイツ軍のいずれのISとも交戦していないにもかかわらず、あの場所で交戦していたことだ。後の現場検証で、残骸の中からISの装甲材の一部や、専用のミサイルの破片、挙句の果てにISの装甲脚まで発見されたからだ。この装甲脚から、あの現場にいたISは、強奪されたアメリカの第二世代型IS<アラクネ>と判明した。

 だが、その<アラクネ>と交戦していた筈のISの存在がどうしても掴めなかったのだ。コアのネットワークにも情報はなく、現場周辺での目撃情報もなし。ならば、最初から二機目のISなどいなかったのではないか。そう仮定しても、今度はどうやったらISとISもなしに戦えるというのだ。現場には<アラクネ>の痕跡以外に、多種多様な刀剣による、斬撃痕・刺突痕、さらには大規模なエネルギーを秘めた回転体をぶつけたと思われる壁の大穴まであり、すべてを知るであろう少年も黙して何も語らず、ドイツの調査関係者はそろって頭を抱えたらしい。ちなみに、現場に倒れ伏してた誘拐犯たちの証言は、そろいもそろって「何が何だかわからないうちに気を失った」だそうだ。

 ―通りすがりの少女が、俺を助けるために誘拐犯をたたきのめし、魔法を使ってISと戦い引き分けに持ち込んだ―

 なんて、だれが予想できるんだか、事実を言ったって子供の戯言で片づけられるしな。千冬姉さんによると、この正体不明の何者か、つまりは志保に唯一判明している事実、多種多様な刀剣を使うことを指して、正体不明の剣<アンノウンソード>なんて呼ばれているらしい。

 まあ、そんな感じで俺の周りはしばらくごたごたしていた。けどそんなことより、志保みたいに誰かを守れるぐらい強くなりたい、そう強く思ったんだ。
 
 それからというもの、日頃から通っていいた剣術道場の練習にも、これまで以上に力を入れ、練習量も増やしていった。道場の師範代からは
「ただ惰性で剣を揮うのではなく、前を見つめ先へ進もうと剣を揮っている。いい傾向だ」
 なんて言われた。俺としては、単に志保がかっこよくて、自分もそんな風になってみたい。そう思っているだけだから、ものすごく照れくさかった。

 ―このまま、でかい事件があったとはいえ、日常が続いて行くんだろうなと思っていたんだ。この時の俺は―



 ―数ヵ月後、とある高校の入学初日

 ―どうしてこうなった、もはや俺の心中はそれ一色だった。マジで周囲すべてから突き刺さる視線、オレ以外の男子ゼロなこの状況、もう一度言わせてくれ、どうしてこうなった!!

 ここは<IS学園>、ISの操縦者を育成するための学校で、周知の通りISは“女性にしか動かせない、
つまりは女子高なのだ。原因は俺が高校の受験会場に行って、試験管の指示通りの場所に行くとそこにISがあったんだ。
 まあ、そんなものがあれば誰だって興味本位で触るくらいはする。そうしたらいきなり頭の中にISのデータが流れ込み、気付けばISを装着していた。そのあとはいきなりの試験官とのバトル、正確にいえば突っ込んできた試験管をよけたら壁に激突して自滅した、そんでもってIS学園入学おめでとうというわけだ、冗談じゃない。

 おまけに厄介事というのは連続で起きるみたいで、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットとの決闘まで決まってしまったのだ。原因はセシリアって言う女の子はプライドが高くて言う事にいちいち棘があるんだ、それについ俺が言い返してしまい、後はもう見事なまでに売り言葉に買い言葉、あれよあれよという間にISでの決闘まで決まったのだ。
 当然、俺はISに関してはど素人。だから俺はこの学園で再開した幼馴染、篠ノ之箒を頼った。

「頼むっ、箒。俺にISの操縦方法を教えてくれっ」
「まったく、安い挑発に乗るからそういう目にあう。だ、だがまあ、お前がどうしてもというなら、教えてやらんこともないぞ」
「ああ、今の俺は箒しか頼れないんだ」
「そっ、そこまで言うなら仕方がないな」

 なんか、えらく顔を赤くする箒、熱でもあるのか? と、そこで俺は重要なことに気づく。肝心要の自分が乗るISの情報を全く知らないのだ、急いで俺が千冬姉さんにこのこと、特に武装について聞くと、とんでもない答えが返ってくる

 ―武装が近接戦用ブレード一本ってどういうことだよ、俗に言うブレオンってやつかよ!!ー

 まあ、嘆いていてもはじまらないし、箒との相談の結果、回避機動の理論の習熟とイメージトレーニングを重点的に行うことになった。後はひたすらに剣を揮い、やる気を高めていった、これには箒も全国大会優勝の腕前を持って手伝ってくれた。

「それにしても、見違えるほどに強くなったな、一夏」
「そうなのか?、箒。自分じゃあんまり実感わかないんだよな」
「ああ、剣に迷いがなくなった感じだ」

 そんなに違って見えるものなのか、確かに昔はただなんとなくで剣を揮ってたように思う。

「道場の師範代にも言われたよ、惰性ではなく前を見据え、剣を揮ってるってね」
「何か、目標でもできたのか?」

 それはあんまり言いたくねえなあ、子供じみた理由だし。



「恥ずかしいんであんまり言いたくないんだけどさ、憧れの人がいるんだ」

 照れながら一夏はそんなことを言う、私は一夏がそこまで言う人のことが気になった。

「どんな人なんだ、その憧れの人というのは」
「どんな人か……、そうだな一言で言うと正義の味方だな。俺はその人に助けられ、その人がかっこよくて、だから、追い付きたい。そう、思ったんだ」
「そうか、私は立派な理由だと思うぞ」

 ―理由を語る一夏の横顔は、今までより一番かっこよくて、私は不覚にも目を奪われたのだった―
 


 それでも無情に時間は過ぎ去っていくもので、あっという間に決闘当日。
 
 俺は千冬姉さんに呼ばれアリーナの入口に来ていた、そう、俺のISは当日になってようやく来たのである。ぶっつけ本番にもほどがある。

「来たな一夏、これがお前のIS<白式>だ。時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやれ」

 そこには<白>があった、装甲を開放し主を待ちわびるその機体を見て、俺は直感的に理解する。

 ―これは俺のIS,俺のための力、俺の剣なのだと―

 そして俺は、<白式>を纏い、戦いの場所へと向かうのだった。

 



[26447] 第四話
Name: ドレイク◆f359215f ID:7d75b67c
Date: 2011/03/15 21:30
<第四話>

 長い金髪をたなびかせ、青い第三世代型IS<ブルー・ティアーズ>を身に纏った少女、セシリア・オルコットはIS学園のアリーナで決闘相手である織斑一夏の登場を待ちわびていた。
 世界初の男性のIS操縦者、最初はどれほどの逸材かと期待していましたが、ふたを開ければ全くの素人、ならば、イギリス代表候補生たるこの私がISのことについて教えて差し上げようと思いましたのに、それをあの男は私の行為をむげにした挙句、祖国を侮辱する始末。 こうなればあたしの手であの男の増長を戒めねばなりませんわね――
 
 などと、織斑一夏がきいたら―お前が言うな―とか言いそうなことを考えつつ気炎を上げる。すさまじいまでの自身の棚上げっぷりだった。


そして現れる織斑一夏、このまま戦えば結果はわかりきっている、ならば、最後の慈悲を与えてやるべきだろう、そう考えたセシリアは彼女にとっての慈悲、一夏にとっての大きなお世話を与えるのだった。

「よく逃げずに来ましたわね、その意気に免じ最後のチャンスを差し上げますわ」
「チャンスだって?」
「ええ、このまま戦ってもあなたが無残な姿をさらすだけ。ここであなたが自身の非を認め謝罪するならば、許してあげないこともなくってよ」

 あの男は自分の発言で引くに引けなくなっただけ、引く機会さえあれば引きさがるだろう。セシリアはそう考えていたが、それに対する一夏の答えは――


「断る、俺にだって意地はある、抗いもせずに終わらせたくない。それにここはアリーナ、決闘場だろう、だったら力でもってねじ伏せてみろセシリア・オルコット、俺はそう簡単にやられねえぞ」


 ――明確な宣戦布告だった。


「よく言いました、ならばこの私セシリア・オルコットと<ブルー・ティアーズ>の奏でる円舞曲で無様に踊りなさい!!」


 ――それと同時に放たれるレーザーライフル、その閃光が戦いの開幕を告げた――


 

 放たれるレーザーをギリギリでよける一夏、砲口を向けられると同時に回避機動に移ったのが功を奏したらしい、それを示すかのように肩部の装甲にはレーザーの焦げ跡が付いていた。回避を見てとったセシリアはISの一部を四つ切り離す、おそらくあれはアニメやマンガでよく見るような遠隔攻撃兵器だ。それとレーザーによる中・遠距離戦がセシリアの戦い方なのだろう。
 脳内で相手の戦術を推測しつつ、一夏はひたすらに回避機動をとっていた。ただでさえ射程の面で不利な相手、おまけにこちらはまだ機体が万全じゃない、フィッティングが終わるまでは回避に専念する、それが一夏の当面の方針だった。
 <白式>が乱れ飛ぶ、その機動に洗練さはなくいっそ滅茶苦茶とさえいえた。一夏はあえて出鱈目に飛ぶ、相手は射撃戦主体、直線的な機動はハチの巣にされるだけ、だが複雑な機動をとろうにも問題が発生した、搭乗時間の短さだ。
 ISの操縦は基本的に搭乗者のイメージに基づいて行われる、だが当然現実とイメージには少なからず齟齬が存在する。ISの操縦に習熟するというのは、この齟齬を無くすということなのだ。ISの強さは搭乗時間によって大きな差が出る理由がこれだ、搭乗時間が多ければ多いほど齟齬が少ないスムーズな機動が可能なのだ。今の織斑一夏にそれは望めない、だから、あえて出鱈目な、セオリーを外した機動で飛ぶ。
 いくら慣性制御によって飛ぶISといえども機動限界がある、あまりにも出鱈目な機動は搭乗者の体に大きな負担をかける。一夏はセシリア、いや、男が女に唯一勝る身体の頑健さを持って行う機動でセシリアの猛攻をしのいでいた。

 

 ――急上昇、急降下、急旋回を目まぐるしく繰り返し、セオリーなど知ったことかと言わんばかりの出鱈目機動にセシリアは手を焼いていた。一見すると<白式>の装甲は傷だらけだが、その実はほとんどがかすり傷、シールドエネルギーは削られているものの機体性能に陰りはみられない。
 
 ――それは、代表候補生である自分が素人一人倒せないでいるということ、そんな事実は認められない、この一撃で決着をつける――

 そして<ブルー・ティアーズ>から、今までその存在が隠されていたミサイルが発射された。蛇のごとき白煙を伸ばしながら襲いかかるミサイルを<白式>は、変わらず出鱈目な機動でよけようとしたが、ミサイルが<白式>に接近した時、閃光が走った。

 閃光が襲ったのは<白式>ではなくミサイル、至近距離でのミサイルの爆発に<白式>はバランスを崩し致命的な隙を見せる。レーザーライフルから再び閃光が走り、セシリアは勝利を、観客は一夏の敗北を確信した。



 その確信は次の瞬間に砕かれた、光に包まれた<白式>がこれまでとは段違いのスピードでもってセシリアの必殺の一撃をかわしたのだ。光が消えるとそこには、傷だらけの装甲ではなく洗練されたデザインの純白のISがあった。それが指し示す答えは一つ。

「ま、まさか……一次移行<ファースト・シフト>!? あなたまさか今まで初期設定で戦っていたというの!!」

 驚愕するセシリア、だがあることに気付き再びその顔に勝利の確信の笑みを浮かべる。

「ですが…、先ほどからの無茶な機動にこれまで蓄積されたダメージ、そろそろシールドエネルギーが尽きる頃ではなくて?、私の見立てではあと数回の攻撃が限度かしら」



 図星をさされ苦虫をかみつぶしたような顔をする一夏、このまま<白式>が回避行動をとり続けてもじり貧、一か八かの突撃を仕掛けてもそれこそ相手のレーザーライフルの餌食になるだけ。確かに八方塞の状況、だけど

 ――俺の憧れは、この程度の窮地で屈するような人じゃない、諦めてたまるものか――

 この状況を打破するために思考をめぐらす、そして見つける起死回生の手段。近接特化ブレード<雪片弐型>、千冬姉さんが使っていたものと同じ名を冠する刀、それのスペックを確認した一夏は最後の賭けに出た。



 まっすぐにこちらに突撃する<白式>を破れかぶれの特攻と判断したセシリアは、とどめのレーザーライフルを放つ。<白式>を襲う閃光、そして

 ――閃光が真っ二つに切り裂かれる――

 あろうことか<白式>はレーザーをブレードで切り裂きつつ、―正確にはレーザーの射線上にブレードを置いた―突撃してくる。もはや状況は逆転した、閃光もろとも<ブルー・ティアーズ>は切り裂かれるだろう。迫りくる一夏の強い意志を宿した瞳を見ながら、セシリアは己の敗北を悟るのだった。

「勝者!! 織斑一夏」

 ――アリーナに戦いの決着を告げる宣言が響き渡った――




 
 たくさんのご意見ありがとうございました、やはり志保のISは量産型を押す人が多かったです(理想郷となろうで同様でした)
 やはり宵闇眩灯草紙のクスィ・アンバーはマイナー過ぎましたか(なんせ、理想郷となろうでわかってくれた人はたったの一人)
 ちなみに最初は、redEyseの鬼神も候補にありました(だからなんでそんなマイナー過ぎるものを選ぶ)
 
 



[26447] 第五話
Name: ドレイク◆f359215f ID:7d75b67c
Date: 2011/03/19 23:36
 <第五話>

 織斑一夏の<白式>とセシリア・オルコットの<ブルー・ティアーズ>の戦いを、遠く離れた学園の屋上から見つめる人影があった。常人には見ることのできぬ距離を赤い髪の少女―衛宮志保ーは鮮明にとらえていた。

 「まったく、レーザーをブレードで防ぐとは無茶をする、それにしても一夏がIS学園に来るとは思わなかったな」

 あのドイツの一件以来、オータムの襲撃こそなかったがISに対しかなりの脅威を感じていた、先の戦いはオータムの油断もあったから勝てたようなものだろう。そして受験する高校を選ぶとき、ISの知識と対策を得るためにIS学園を受験先に選んだのだ。テレビで一夏のことを知った時は驚いたが、幸いにして別のクラスに編入された。自分から接触しなければ、ドイツの事件の真相がばれる恐れも少ないだろう。
 
 戦いの決着を見ながら俺は昨晩、偶然聞いた言葉を思い出していた。


「正義の味方で、俺の憧れか――」


 まさか、俺がそんなことを言われる日が来ようとは思いもしなかった。あの聖杯戦争から止まる間もなく駆け抜けたかつての人生。見返りもなく、後悔もなかったけど、傷を負い自身をすり減らし続けた。止まらなかったことこそが唯一の誇りだったんだ。
 そしてこの二度目の人生、止まった後の惰性で生き続けている、まさに衛宮士郎の残骸だった俺を一夏は救ってくれた。あの何気ない一言で、衛宮志保の心の傷口が癒されていった。
 この時やっと、あの満月の夜、安らかに逝った切嗣の気持ちが理解できた。後に続くと、無垢な想いで誓うものがいることは救いなのだと、ようやく理解した。


「今になって切嗣の気持ちを知るなんてな、――ありがとう、一夏」


 届くはずもないと知りながらも、俺は一夏に礼を言っていた。そして誓う、これからも一夏が憧れを抱けるような正義の味方であり続けると。
 それは、―衛宮士郎―ではなく―衛宮志保ーとしての誓いだった。



 ―その翌日、俺のクラスに転校生がやってきた。

「あたしの名前は凰鈴音、中国の代表候補生よ!!」

 髪形をツインテールにまとめた活発な女の子、その子を見て俺は思った。

 ―リンって名前の女の子は、みんな強気でツインテールなのか?-

 そんなとりとめもないことを考えていた、教師の話によると中学二年のころまで日本にいたらしい、道理で日本語が堪能なはずだ。どうやら座席は俺の隣になるようだ、彼女は俺の横に座ると改めて自己紹介した。

「さっきも言ったと思うけど、あたしの名前は凰鈴音よ、よろしくね」
「ああよろしく、俺の名前は衛宮志保、志保って呼んでくれ」
「俺って、変な言い方すんのね、あんた」
「昔からよく言われる、今更直そうとは思わないしな」 
「ふ~ん、そうなんだ。あとあたしのことは鈴でいいわよ」

 自己紹介をして、鈴とは仲良くなれそうだと思った瞬間、彼女の口から聞き捨てならない言葉が出た。

「それにしても一夏の周りには、相も変わらず女の子が多いわね!!。特にあたしの前の幼馴染の篠ノ之箒ってやつと、セシリア・オルコットとかいうのには注意しないとね」

 ――なんて独り言を言う鈴に俺は内心、やっぱり一夏にかかわらないようにするのは無理があったと感じていた。大体、クラスの転校生で俺の隣に座る奴が一夏の知り合いだなんて、そんなこと予想がつくか!!
 
「あれ?、どうしたの志保」
「あ、ああ――、鈴はあの織斑一夏と知り合いなのか?」
「そうよ、先生も言ってたけどあたし中学二年のころまで日本にいたの、一夏はその時からの幼馴染
よ。ま、まあ、いつかは幼馴染以上になって見せるけどね!!」
「そ、そうか、頑張ってくれ」

 この時俺には一つの予感があった

 ――絶対、どでかい厄介事が起きるよなあ――


 そして、午前の授業が終わって昼休みの時間、手製の弁当を食べようとした俺に凛が声をかけてきた。

「志保~悪いんだけどさ食堂の場所を案内してくれない?」

 なんて言われたので食堂に案内することになった。もうこの時点で俺は覚悟を決めた、所詮、衛宮志保である俺が厄介事から逃げるなんて不可能だったのだ。一夏とかかわってどんなことが起きてもどんと来い!!、そんな気分だった、開き直ったともいうが。



「さて、一夏そろそろあの凰鈴音とかいうやつのことを説明してもらおうか」
「そうですわね、私も彼女と一夏さんの関係が非常に気になりますもの」

 なんて、まるで尋問でもするような雰囲気の二人と一緒に俺たちは食堂に向かった。食堂では案の定鈴が待ち構えていて

「遅いじゃない!!、待ってたわよ一夏」
「いや、別に約束してたわけでもないだろ」
「むっ、一夏のくせに生意気じゃない」

 そんなやり取りをしていると


「通路の真ん中で話し込むのはほかの人に迷惑だろう、続きは席に着いてからのほうがいいぞ」


 ――えっ、この声って、まさか――

 声のしたほうに目を向ければそこには、かつてと変わらぬ雰囲気を持った、赤髪の女の子がいた。あまりに突然の再開に俺はただ――

「し、志保なのか……」

 ――と、一言いうだけで精いっぱいだった

「ああ、久しぶりだな一夏。元気そうで何よりだ」

「「「はい?」」」

 俺の後ろで三人が間抜けな声を出すのが、いやに鮮明に聞こえたのだった。



 席について一番最初に声を発したのは箒とセシリアだった

「それではまず、その凰鈴音とどういう関係なのか説明してもらおうか」
「そうですわね、まずはそこを説明してもらいましょう」

 多少棘のある言い方をする二人、周囲のクラスメイトも興味心身らしく聞き耳を立てている。

「鈴は俺の幼馴染だよ、箒が小学四年のころに転校しただろ、そのあと、小学五年の時に鈴が転校してきたんだ。そのあと中学二年のころ中国に帰って、そして今日ここで再開したわけだ」

 一夏の説明と幼馴染発言に納得し安堵の表情を見せる二人、鈴は一夏の幼馴染発言に肩を落としていたが

「では次に、その方、衛宮志保さんだったかしら。その方のご説明をしてほしいですわね」
「ああ、そうだな」
「ええそうね、そこはあたしも非常に気になるわね」

 その次に志保のことを尋ねる二人、今度は鈴も二人に同意し尋ねてきた。
 その問いに志保は――

「むっ、俺と一夏の関係か――」

 そう言いつつ一夏のほうを見る志保、それに対し一夏は

「三人には悪いけど、それは俺と志保だけの秘密だな」

 ちょっと頬をあからめつつ、そんなことを言う一夏。その反応にクラスメイトは喚声を上げ、箒・セシリア・リンの三人は――


 ――志保は敵だな、最大級の敵だ――
 ――この方は、放置しておくわけにはまいりませんわね――
 ――フフフッ、志保とは仲良くなれそうだったけど敵になりそうね――


 なんて、乙女の勘で志保をライバルと認識するのだった。






 前回の話で一夏がたてたフラグは、セシリアでも箒でもなく志保だったというオチ。自分で書いていてなんだが、なんか一夏×志保になりそうなんだが、これって誰得?

 後全然関係ない話なんだが、ISの世界に、昔マガジンで連載してた漫画「『街刃』のキャラを入れたらISオワタになるんじゃないか?と思った。特に日鳥<灯盗>と金子<鉄呼>の二人、前者はIS即効エネルギー切れになりそうだし、後者はISがアイアン・メイデンになりそうだ(だから、なんでそんなマイナーネタを言うんだ、わかるやつなんざいねーだろ



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