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支援ヨシュエス小説短編 共に笑顔 2011年 ホワイトデー記念LAS小説短編 キスの3倍返し!? 2011年 4月1日記念ハルキョン小説短編 晴れのち土砂降り 3点セット
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支援ヨシュエス小説短編 共に笑顔


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リベール王国で起きた2度の大事件を解決したエステルとヨシュアは旅に出た。
結社との戦いの後消息をくらましてしまった少女、レンを探すために。
帝国の街を回っていた2人は、いつしかロレントの街に似た雰囲気の街にたどり着いた。
故郷を感じさせる街並みに、エステルとヨシュアの気持ちも軽くなった。
しかし、広場に通じる道を歩いていたエステルは暗い表情になって歩みを止めた。

「どうかしたの?」

不思議に思ったヨシュアがエステルに尋ねると、エステルは黙って視線を広場の方へ移した。
ヨシュアが広場の中心部を見ると、そこには倒壊した時計台のがれきがそのままになっていた。
どうやら先日の災害で壊れてしまったようだった。

「そうか、レナさんの事を思い出してしまったのか……」
「……ちょっとね」

エステルの母親のレナは、帝国軍の砲撃によって崩れたロレントの街の時計台で、小さな頃のエステルをがれきから守って命を落としてしまったのだ。

「別に我慢しなくても良いんだよ」
「えっ?」
「僕は約束したじゃないか、エステルが泣きたくなったらいつでも胸を貸してあげるって」
「でも、泣くなんてあたしらしくないし」
「無理して笑っているエステルの顔を見ている方が悲しいよ」
「じゃあ……」

エステルはヨシュアの胸にすがりついて静かに涙を流し始めた。
それと同時に、辺りには冷たい雨が降り始めた。
ヨシュアはエステルを雨からかばうように抱きしめながらそっと話し掛ける。

「悲しかった事は、全て涙で洗い流してしまおうよ。僕もエステルと再会したあの海岸でそうしたんだ」

ヨシュアの言葉を聞いたエステルはかすかにうなずいて涙を流し続けた。
あの時は泣いているヨシュアの背中にエステルが抱きついて慰めていた。
今は2人の立場は逆だ。

「泣き終わったら、今度は2人で楽しい事を考えようよ。もう僕は2度とエステルから離れない、ずっと一緒に歩いて行くって誓うよ」

ヨシュアが優しくエステルに話しかけると、エステルはヨシュアの手をぎゅっと握ってうつむいていた顔を上げた。

「もう大丈夫?」
「うん」

エステルはヨシュアに強くうなずいて返事をすると、もう片方の手で目にたまった涙をふいて微笑み返す。

「それじゃあ、また約束しようよ。2人で一緒に歩いて行くって」
「そうだね」

エステルに言われて、ヨシュアはエステルと握った手を強く握りしめた。
2人に笑顔が戻ると、それを祝福するかのように雨が上がり、雲の間から太陽が顔をのぞかせた。

「あっ、綺麗な虹!」

エステルが嬉しそうに青空にかかった虹を指差した。
ヨシュアも穏やかな微笑みを浮かべて虹を眺めた。

「ねえ、レンともこうして笑い合う事ができるのかな?」
「歩き続ければ、きっと大丈夫だよ」

ヨシュアはそう言って優しくエステルの肩を抱きしめた。



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2011年 4月1日記念ハルキョン小説短編 晴れのち土砂降り


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「何で、キョンが出てくるのよ!」

朝、目を覚ましたハルヒは叫び声を上げた。
それは先程まで見ていた不思議な夢の内容を思い出したからだ。
2人だけで閉じ込められた夜中の北高。
グラウンドで暴れる青い巨人。
そして、ハルヒはキョンにキスをされ……。
そこまで思い出したハルヒは否定しようと激しく頭をかきむしった。
今日は休日、外は晴れ。
SOS団の定例の市内不思議探索をするには絶好の日だとハルヒは考えた。
思い立ったら即実行がモットーのハルヒは、古泉イツキ、長門ユキ、朝比奈ミクル、キョンに電話をかけて招集しようとした。
しかし、キョンに電話を掛ける時になってハルヒは今日が4月1日だと言う事に気が付いた。
何か面白い嘘をつこうと考えたハルヒは電話に出たキョンに傘を持って来るように告げた。
案の定、キョンからは疑問の声が返って来る。

「天気予報では降水確率は0%だと言っているぞ。それにほら、現に晴れていて雨なんか降りそうにないじゃないか」
「そうと見せかけて、夕立が降るのよ!」
「夕立は夏だけだろう」
「あんた、団長の言う事が信用できないの? 傘を持って来なさい、団長命令よ!」

知識を持っていたキョンを強引にねじ伏せ、なんとかハルヒは嘘をつき通した。
1人だけ傘を持っているキョンは周りからとても浮いた存在になるだろう。
つまらない嘘だが、付かないよりはマシだ。
夢の中でキョンに言われた言葉を思い出したハルヒは出掛ける前に髪型をポニーテールに変えた。
そして、着て行く服はお気に入りのピンクのスカート。
いつも頭に付けている黄色いリボンの位置を整えると、ハルヒは鏡の前で満足したようにポーズをとる。

「よし、バッチリ決まったわね……って何でこんなに気合を入れているのよ、デートじゃあるまいし!」

ハルヒが集合場所に行くと、待っていたのはなんとキョン1人だけだった。

「他のみんなはどうしたのよ?」
「急に都合が悪くなって来れなくなったようだな。ハルヒ、今日はお前がおごる番だぞ」
「バ、バカっ、何を言っているのよ!」

ハルヒはキョンの笑顔を見ていられずに目を反らした。
あの夢を見てから自分の心の中が変だとハルヒは思った。
キョンと目を合わせる事が出来ない。
まさか自分が恋をしてしまったと認める事はどうしてもできなかった。
恋愛は病気の一種だと公言してしまっていたのだ。
いつもの喫茶店の中でハルヒとキョンの2人だけのSOS団の定例会議をしていると、信じられない事に今まで晴れていた空模様が一気に土砂降りへと変わった。
街を行きかう人々は慌てて雨宿りをする。

「嘘っ、本当に雨が降って来た!」
「……やれやれ」

ハルヒとは対照的にキョンは驚く事も無く諦めた顔でため息をついた。
その後2人は喫茶店で時間を潰したが、雨が止む気配は無かった。

「仕方無い、妹に電話をして傘を持ってきてもらうか」
「どうしてよ、あんたは傘を持っているじゃない?」
「だって、ハルヒの分の傘が無いじゃないか」
「1本あれば十分よ」

ハルヒはキョンの差す傘に入って家へと帰る事になった。
キョンの方も照れがあるようで、ハルヒから体を離すように傘を差していた。

「もっと体を寄せなさいよ、そのままじゃあんたがずぶ濡れになっちゃうじゃない」
「2人で入っているんだから濡れるのは仕方無いじゃないか」
「ああもうっ、じれったいわね」

ハルヒはそう言うと、キョンの腕をとって強引に抱き寄せた。
2人の体が密着する。

「あんたが濡れて風邪でも引いたら、お見舞いに行くのが面倒だからこうしているんだからね!」
「分かった、また去年の12月のように迷惑をかけてもマズイしな」

キョンはハルヒが腕に抱きつくのを感じながらゆっくりとハルヒと歩調を合わせて進んで行った。

「……ほら、お前の家に着いたぞ」

家の前に着いても、ハルヒはしばらくじっと立ちつくしていた。

「ハルヒ、どうした?」
「な、何でも無いわよ、それじゃあまた明日、学校でね!」

ハルヒはそう言って家の玄関へと走って行った。

「お前のポニーテール、似合っているぞ」
「何をバカな事言ってるのよ!」

キョンがそう呼びとめると、ハルヒは振り返ってキョンに言い返した。
そのハルヒの顔は少し赤くなっているように思えた。
キョンはハルヒが自分から離れる時に抱きついた腕にぎゅっと力を込めたのは気のせいではないと確信した。
ハルヒが家の中へと姿を完全に消した後、土砂降りの雨は急に止んで空ははれ上がって行った。
やはりこの急な雨はハルヒの嘘が原因だったのだ。
どうしてハルヒは雨を降らせる事を望んだのか。
その理由を考えたキョンは激しく首を横に振って否定する。

「あのハルヒが……そんな事あるものか! それに俺は朝比奈さんのような優しい先輩の方が……」

しかし、キョンは閉鎖空間でハルヒとキスした時の事、救急車に運び込まれるキョンの姿を見た時のハルヒの慌てた顔、そして今日のポニーテールの髪型や腕に抱きつかれた感覚などを次々と思い出すのだった。
キョンの方もハルヒを意識し始めてしまったと自覚してしまったのだ。

「今日のうちに言ってしまえば、冗談だったって済ませられるかもしれないな」

キョンはそうつぶやくと、ハルヒの家のインターフォンを押すのだった。



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2011年 ホワイトデー記念LAS小説短編 キスの3倍返し!?


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寒さも和らぐ日々が訪れ始めた3月の中頃、自然とホワイトデーの話が教室のそこかしこでされるようになった。
バレンタインデーのお返しを考えていたシンジはクラスの女子が話をしているのを聞いて驚いてしまった。

「まさか、バレンタインデーのお返しにそんな決まりがあるなんて……」

シンジは困惑した顔でそうつぶやいた。
先日のバレンタインデーにシンジはアスカから『大人の味がするとても甘いチョコレート』を受け取ってしまっていたのだ。
それは値段の付けようの無い物で、しかも形の無い物だったので、3倍高価な物にするとか、3倍の量を返す事など不可能だった。

「やっぱり、1度に3回連続は無理だろうから、朝と昼と夜に分けた方が良いかな」
「何を難しい顔をして考えているのよ」
「ひゃあっ!」

突然アスカに声をかけられて、シンジは驚いて飛び上がってしまう。

「アスカ、ビックリさせないでよ」
「驚いたのはこっちよ。さっきから暗い顔してブツブツ言ってるけど、深刻な悩み? アタシが相談に乗ろうか?」
「だ、大丈夫、たいした事じゃないから……」
「そう、でも1人で抱え込まない方が良いわよ」

アスカが立ち去ると、シンジはホッとしたように胸をなで下ろして息を吐き出す。

「こんな事アスカに相談できるわけが無いじゃないか……でも、アスカの都合も考えてあげた方が良いのかな……」

シンジは忘れないようにホワイトデーの予定を紙に書いて置いた。
そして、放課後にシンジは義理チョコ(本人達にとっては本命チョコなのだが)をくれたレイ、マナ、マユミへのお返しを買いに商店街へと出掛けた。
そのシンジの姿を目ざとく見つけたアスカはこっそりと後を追いかけて行く。

「シンジのやつ、アタシがせっかく本命チョコを渡してやったんだから、他の子達と同じ物じゃ承知しないわよ」

アスカはシンジはお返しに高級なスイーツを贈ろうと考えているのが分かった。
おいしいスイーツが食べられるのは嬉しかったが、特別なプレゼントを期待していただけにアスカは少し寂しさを覚えた。
帰り道にシンジがアスカへの特別なプレゼントを買い求めるのかと期待していたが、アスカの見ている前でシンジは真っ直ぐに家へと帰ってしまった。

「シンジったら甲斐性の無い男ね、つまんないの」

アスカは気落ちした様子で自分の家へと戻るのだった。
今ごろシンジは部屋でバレンタインのお返しのスイーツを準備しているのだろう。
それを邪魔するわけにもいかないと思ったアスカはシンジにちょっかいを出さずに退屈な時を過ごした。
その日の夜、アスカの携帯電話にシンジからの電話が入った。
シンジは明日の朝、登校前にバレンタインデーのお返しをしたいから部屋に来て欲しいとアスカに告げた。

「おはようございます、おばさま」
「いらっしゃい、アスカちゃん。今日シンジは珍しく早起きしているのよ」
「あはは、そうですか」

アスカはユイにあいさつをして、シンジの部屋へ入る。
すると、しっかりと服装と髪型を整えたシンジがアスカを待っていた。

「シンジ、お返しなら学校で渡せば良いじゃない」
「だって、みんなの見ている前じゃ恥ずかしかったんだ」
「ただ渡すだけで何をそんなもったいぶっているのよ」
「ごめん」

アスカに言われて、シンジは苦笑しながら謝った。

「それで、プレゼントのスイーツはどこにあるの?」
「うん、もう用意しているよ」

アスカは口に出してしまってから、しまったと思った。
これでは昨日シンジの買い物の後をつけた事がばれてしまう。
しかし、シンジは気にしない様子でそう答えた。

「じゃあ、目を閉じて」
「……えっ?」

シンジに突然言われたアスカは驚いて聞き返した。

「だって、キスのお返しは、キスでするしか無いじゃないか」
「ちょっと……!」

赤い顔をして戸惑うアスカに、シンジは必死に頭を下げて頼み込む。

「お願いアスカ、僕にもお返しをさせてよ!」
「わ、分かったわよ……」

数分後、顔を赤くしたアスカとシンジが部屋から顔を出すのだった。
通学路を歩く頃になっても、アスカの顔は熱を帯びている。

「シンジったら、鈍いくせに大胆なんだから」

学校に登校したシンジは、レイとマナとマユミにバレンタインのお返しを渡した。

「碇君、ありがとう」
「このスイーツ、結構高いんじゃない?」
「あの……惣流さんの分は……?」
「アスカには、学校に来る前に渡したんだよ」

心配したマユミが尋ねると、シンジはそう答えた。

「えーっ、抜け駆けなんてズルイよ、惣流さん!」
「あなたは、もう食べたの?」
「そ、そうね、とっても甘くて大人の味がしたわ」

レイに聞かれてアスカは少ししどろもどろになりながらそう答えた。

「それは頂くのが楽しみですね」

マユミはシンジに渡されたスイーツの入った小箱を軽く抱きしめながらそう答えた。
そのアスカの言葉を聞いてシンジは慌てた様子でアスカにそっと耳打ちする。

「アスカ、適当な事言わないでよ」
「アタシは正直に感想を言っただけよ」

とりあえず、バレンタインのお返しは特別な物を貰ったと満足したアスカ。
しかし、シンジがまだ落ち着かない様子でいるのは気になった。
アスカと視線が合うと、シンジは赤くなって目を反らした。

「あいつ、まだ動揺から立ち直っていないのかしら、相変わらず気が小さいわね」

アスカはあきれた顔でため息をついた。
そしてその日の放課後、女子ゴルフ部の部活を終えたアスカは校門でシンジが待っていた事に驚いた。
吹奏楽部のシンジとは時間が合わずに、シンジが先に帰っている事が多かったのだ。

「何か用事があるならこんなに遅くまで待っていないで電話で呼んでくれれば良かったのに」
「ううん、今頃の方が都合が良いから」

シンジはそう言って、茜色に染まり始めた空を指差した。
ソワソワするシンジの様子にアスカは首をかしげながらも、一緒の通学路を歩いた。
そして、コンフォート17が近づくと、シンジは公園を指差した。
そこはバレンタインの日にアスカとシンジがキスをした場所だった。
シンジの真意を悟ったアスカは顔を赤くして叫ぶ。

「まさか、またキスしようって言うんじゃないでしょうね!」

アスカの言葉に、シンジはぎこちない動きでうなずいた。

「アンタ、いつからそんなキス魔になったのよ」
「こ、これはバレンタインのお返しだから……」

アスカに強く追及されたシンジはしどろもどろになって答えた。
その時強い風が吹いて、シンジのポケットから白い紙が舞い落ちた。
紙を拾い上げたアスカは驚いた。
そこにはシンジが1日で3回キスをするためのプランが書かれていた。
夜の予定は星空の下、ベランダでキスをすると書かれていた。

「シンジ、これって……」
「だって、ホワイトデーにするお返しは3倍返しってクラスの子達が話しているのを聞いたから!」
「だからって、1日にキスを3回なんてハードよ」
「……ごめん、強引に押し付けられたら迷惑だよね」

シンジはすっかり元気を失ってうなだれてしまった。
すると、アスカは夕陽に負けないぐらいに顔を真っ赤にしながら話し出す。

「仕方無いわね、今日だけシンジに付き合ってあげるわよ」

アスカはそう言って目を閉じてシンジに唇を突き出した。
そして夕陽に照らされた2人のシルエットが重なった……。
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