2011年1月26日 20時49分 更新:1月26日 23時23分
新卒採用数が絞り込まれ「超就職氷河期」と指摘されるなか、既卒者を新卒枠に入れて選考する動きが企業の間に広がっている。就職先が決まらなかったり、希望する仕事に就けずに卒業を余儀なくされた既卒者にとっては朗報で、企業側も多様な人材を確保できる。ただし採用人数そのものを増やす企業は限られており、新卒者にとっては希望する企業への就職が、一段と狭き門になる可能性も高まっている。【横山三加子、宮崎泰宏】
11年春卒業見込みの大学生の就職内定率(昨年12月1日時点)は68.8%と過去最低を更新した。こうした状況を踏まえ、厚生労働省が昨年、卒業後3年以内の既卒者は新卒枠で受け付けるよう経済界に要請したことに企業が応えた。12年春から実施するシャープの町田勝彦会長は「いい人がいれば採用する。新卒も既卒も関係ない」と話す。
毎日新聞社の調べでは、このほかトヨタ自動車や武田薬品工業、NTTグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友海上火災保険、花王など採用人数の多い主要企業が軒並み、12年春から既卒者の選考を始める。トヨタは、就業経験の有無や卒業後の年数など「制限は何もない」としている。花王は「昨今の厳しい就活状況を踏まえ、勉強優先で不本意な就職活動を送った学生を救済したい」と導入を決めた。
一方、新日鉄や野村ホールディングス、帝人、東京ガスなど従前から既卒者を受け入れてきた企業も多い。東京電力は「卒業後1年以内」としていた基準を「3年以内」に拡大。大和証券グループ本社は11年春採用から、3年以内の既卒者を対象とする選考を現在実施中だ。
会員企業1283社を対象に日本経団連が昨年2~3月に実施した調査で、回答企業425社の約4割はすでに、採用選考で既卒者を受け付けていると回答した。ただし、海外留学生や司法試験など資格取得から就職に方針転換した学生などの採用が多く、「就職活動2年目という既卒者を受け付けていたケースは少ないのではないか」(大手メーカー)というのが実態だ。
また、グローバル競争の激化から、ユニクロを展開するファーストリテイリングやパナソニックなど外国人採用を拡大する動きも一方で拡大しており、限られた採用枠をより多くの希望者で争う構図となっている。