2011年1月26日 10時48分 更新:1月26日 13時5分
【カイロ和田浩明】エジプト各地で25日に数万人が参加した反政府デモは、一部で衝突に発展し、参加者2人と治安部隊員1人の計3人が死亡した。ムバラク大統領の強権的支配が29年間続く中、これほど大規模な政府に対する異議申し立てが行われるのは極めて異例。チュニジアのベンアリ独裁政権を倒した民衆の怒りが、アラブ圏の重鎮を自任するエジプトにも波及し、政権側を激しく揺さぶっている。
現地メディアなどによると、デモ参加者が死亡したのは北部スエズ。投石によるけがや催涙ガスによる呼吸障害が死因とみられる。治安部隊員はカイロのデモ鎮圧中に投石を頭部に受けて死亡した。
内務省によると、デモは首都のほか、北部アレクサンドリア、ベヘイラ、ガルビアなどの各県で発生した。77年に全国的な騒乱状態となった「パン暴動」以来の大規模デモとの見方も出ている。
カイロ中心部のタハリール(自由)広場では一部参加者が警官隊と衝突し、催涙ガスや放水車も使用されたが、当局側は暴力的な取り締まりは控えている模様。内務省は「国民の表現の自由は尊重する」との異例の声明を出した。
目撃情報によると、タハリール広場では数千人が座り込みを続けていたが、26日未明に治安部隊が排除を開始した。25日午後の段階で、広大な広場は見渡す限り約1万人のデモ隊で埋め尽くされていた。参加者より治安要員が多いデモも少なくないエジプトでは異例の光景だ。参加者は「ムバラク(政権)を打倒せよ」「チュニジアに続け」などと叫んだ。
女性参加者のオムニアさん(26)は「チュニジアのようになりたい」。会計士のアムルさん(24)は「正義と職を求めてここに来た」と語った。
エジプトではムバラク政権下で治安当局に大幅な権限を与える非常事態令の施行が約30年間続き、政治的自由が制限されているとして、人権団体が批判している。経済成長は順調だが、若年層の高失業率や貧富の差への国民の不満は強い。