原作マンガとアニメ化02 〜アニメ化の際する描写の変化 未成年の飲酒・喫煙〜
←原作マンガとアニメ化 前編
〜マンガをアニメ化するにあたり、生じる問題〜
原作マンガとアニメ化 後編
〜アニメ化の際する描写の変化 未成年の飲酒・喫煙〜
題材
『家庭教師ヒットマンREBORN!』2巻 p.76(天野明・集英社)
『もやしもん』2巻 p.32・33(石川雅之・講談社)
今回は『家庭教師ヒットマンREBORN!』(天野明・集英社)と『もやしもん』(石川雅之・講談社)。この2作品を例に挙げ、未成年の飲酒・喫煙描写における変化を比較する。
まずは、『家庭教師ヒットマンREBORN!』。まず、この作品は主人公を含めた登場人物の多くが中学生である。この点に加え、ストーリーにヒットマン(殺し屋)、マフィアの要素があることから、アニメ化に際し改変が多く加えられている作品だ。
原作マンガでは主要人物の一人、獄寺隼人の喫煙シーンが見られる。ただし、獄寺隼人は主人公沢田綱吉と同じ中学生だという所に留意していただきたい。本作は週刊少年ジャンプ連載作品であり、テレビアニメの放映時間が休日の午前であることから、視聴者に未成年が含まれる、また未成年を視聴者層の狙いとしていることが想定できる。
視聴者である未成年への影響を鑑みた結果だろう。アニメでは喫煙シーンはカットとなり、このことにより彼が得意とするダイナマイトでの攻撃は原作マンガのように煙草の火で着火することはできなくなってしまった。
ちなみに、スモーキン(smoking)は喫煙、ハリケーン(hurricane)は嵐、暴風の意。
次に、『もやしもん』について。『もやしもん』は青年マンガ誌『イブニング』(講談社)で連載中の作品である。テレビアニメはCS放送を除き、深夜の時間帯に放送された。原作マンガでは農大一年かつ、未成年である及川の飲酒シーンが見られる。
このシ−ン、アニメでは農大院生(成年)である長谷川が未成年の沢木、及川の飲酒にストップをかける。また、酒に対する感想は原作マンガでは及川が話すのに対し、アニメでは及川が飲酒しないため、長谷川の台詞にすり替わっている。また、原作マンガでは他にも沢木と及川、また2人と同級生であり未成年の結城の飲酒シーンが度々見られる。
この未成年3人の中で、及川の発言に注目したい。目上の人物に飲酒を勧められた場合、及川は
「というかあたし未成年なんですけど(2巻第13話)」
「あ ここ二人未成年なんでジュースか何か(2巻第16話)」
と始めは断るが、それ以上薦められると飲酒している。また、アルコール度数の低い酒に対して
「こんなの子供が飲むモンさ」
と言う川浜(沢木たちの先輩で農大2年)に
「子供はお酒 飲んではいけません」
と答えるシーン(5巻54話)も見られる。以上の事柄から、彼女の性格と酒に対する考え方が窺える。しかし、アニメの場合は及川自身が「未成年なんで」と言って断った後、飲酒はしない。
また、『もやしもん』では、ページ端にある欄外が他のマンガに比べて非常に多い。登場人物紹介から、言葉の注釈、菌の説明、作者と担当の会話とその内容は様々であるが、第5巻55話ではこの欄外より作者の意図が読み取れる。
「このお話は」より始まり
『フィクションです。ところで読者の皆様に伺いたいのですがこのフィクション=ウソのお話の中で
未成年の学生がお酒を飲んでいるのは問題があるとお考えでしょうか? いっそのこと「この世界で
は18歳から飲酒が可能です」と書こうかなぁ。』
『』が引用部分であるが、このような欄外でフィクションを強調するのはこの時からではなく、物語序盤より節々でこのような言葉が述べられている。恐らく、第5巻での及川の台詞「子供はお酒 飲んではいけません」は、著作者の代弁なのではないか。子ども、つまり未成年の飲酒を推進する目的でマンガ内に未成年の飲酒シーンをかいているわけではないことの意思表示なのではなのだと私は考える。
『もやしもん』は可愛らしい菌のキャラクターがいることから子どもにも人気があり、作中の人気キャラ、オリゼーを中心とした絵本も出版された。読者に子どもがいることは、柱書きに小学生からのファンレターのイラストを転載していることからもわかる。
青年雑誌であるイブニングに掲載されていることに関わらず、『もやしもん』は一定の低年齢層の読者がいる。また、アニメ化されたことで、その傾向は更に強まったと言えよう。
テレビアニメ化すれば当然、マンガの時よりも視聴者への配慮が多く必要となってくる。視聴に金銭や手間がかからない、受け手を選ばない形で放送されるからだ。その上、テレビ放送では「観る意思がなくともチャンネルを変えていて目に入ってしまった」ということが有り得る。
視聴者への配慮は、知名度・人気があがるほど対応に追われる。アニメ化にすることで必ず視聴者層が広がるのは言うまでもない。有名になればなるほど、それだけ受け手が広がり、道徳に関しての風当たりも強くなってくるものである。だがしかし、どこまでの変更が"視聴者への配慮"になるのか、また表現を制限することで作品の良さが失われはしないか。以上の問題を提議し、この章を終えることにする。
〜マンガをアニメ化するにあたり、生じる問題〜
原作マンガとアニメ化 後編
〜アニメ化の際する描写の変化 未成年の飲酒・喫煙〜
題材
『家庭教師ヒットマンREBORN!』2巻 p.76(天野明・集英社)
『もやしもん』2巻 p.32・33(石川雅之・講談社)
今回は『家庭教師ヒットマンREBORN!』(天野明・集英社)と『もやしもん』(石川雅之・講談社)。この2作品を例に挙げ、未成年の飲酒・喫煙描写における変化を比較する。
まずは、『家庭教師ヒットマンREBORN!』。まず、この作品は主人公を含めた登場人物の多くが中学生である。この点に加え、ストーリーにヒットマン(殺し屋)、マフィアの要素があることから、アニメ化に際し改変が多く加えられている作品だ。
原作マンガでは主要人物の一人、獄寺隼人の喫煙シーンが見られる。ただし、獄寺隼人は主人公沢田綱吉と同じ中学生だという所に留意していただきたい。本作は週刊少年ジャンプ連載作品であり、テレビアニメの放映時間が休日の午前であることから、視聴者に未成年が含まれる、また未成年を視聴者層の狙いとしていることが想定できる。
視聴者である未成年への影響を鑑みた結果だろう。アニメでは喫煙シーンはカットとなり、このことにより彼が得意とするダイナマイトでの攻撃は原作マンガのように煙草の火で着火することはできなくなってしまった。
ちなみに、スモーキン(smoking)は喫煙、ハリケーン(hurricane)は嵐、暴風の意。
次に、『もやしもん』について。『もやしもん』は青年マンガ誌『イブニング』(講談社)で連載中の作品である。テレビアニメはCS放送を除き、深夜の時間帯に放送された。原作マンガでは農大一年かつ、未成年である及川の飲酒シーンが見られる。
このシ−ン、アニメでは農大院生(成年)である長谷川が未成年の沢木、及川の飲酒にストップをかける。また、酒に対する感想は原作マンガでは及川が話すのに対し、アニメでは及川が飲酒しないため、長谷川の台詞にすり替わっている。また、原作マンガでは他にも沢木と及川、また2人と同級生であり未成年の結城の飲酒シーンが度々見られる。
この未成年3人の中で、及川の発言に注目したい。目上の人物に飲酒を勧められた場合、及川は
「というかあたし未成年なんですけど(2巻第13話)」
「あ ここ二人未成年なんでジュースか何か(2巻第16話)」
と始めは断るが、それ以上薦められると飲酒している。また、アルコール度数の低い酒に対して
「こんなの子供が飲むモンさ」
と言う川浜(沢木たちの先輩で農大2年)に
「子供はお酒 飲んではいけません」
と答えるシーン(5巻54話)も見られる。以上の事柄から、彼女の性格と酒に対する考え方が窺える。しかし、アニメの場合は及川自身が「未成年なんで」と言って断った後、飲酒はしない。
また、『もやしもん』では、ページ端にある欄外が他のマンガに比べて非常に多い。登場人物紹介から、言葉の注釈、菌の説明、作者と担当の会話とその内容は様々であるが、第5巻55話ではこの欄外より作者の意図が読み取れる。
「このお話は」より始まり
『フィクションです。ところで読者の皆様に伺いたいのですがこのフィクション=ウソのお話の中で
未成年の学生がお酒を飲んでいるのは問題があるとお考えでしょうか? いっそのこと「この世界で
は18歳から飲酒が可能です」と書こうかなぁ。』
『』が引用部分であるが、このような欄外でフィクションを強調するのはこの時からではなく、物語序盤より節々でこのような言葉が述べられている。恐らく、第5巻での及川の台詞「子供はお酒 飲んではいけません」は、著作者の代弁なのではないか。子ども、つまり未成年の飲酒を推進する目的でマンガ内に未成年の飲酒シーンをかいているわけではないことの意思表示なのではなのだと私は考える。
『もやしもん』は可愛らしい菌のキャラクターがいることから子どもにも人気があり、作中の人気キャラ、オリゼーを中心とした絵本も出版された。読者に子どもがいることは、柱書きに小学生からのファンレターのイラストを転載していることからもわかる。
青年雑誌であるイブニングに掲載されていることに関わらず、『もやしもん』は一定の低年齢層の読者がいる。また、アニメ化されたことで、その傾向は更に強まったと言えよう。
テレビアニメ化すれば当然、マンガの時よりも視聴者への配慮が多く必要となってくる。視聴に金銭や手間がかからない、受け手を選ばない形で放送されるからだ。その上、テレビ放送では「観る意思がなくともチャンネルを変えていて目に入ってしまった」ということが有り得る。
視聴者への配慮は、知名度・人気があがるほど対応に追われる。アニメ化にすることで必ず視聴者層が広がるのは言うまでもない。有名になればなるほど、それだけ受け手が広がり、道徳に関しての風当たりも強くなってくるものである。だがしかし、どこまでの変更が"視聴者への配慮"になるのか、また表現を制限することで作品の良さが失われはしないか。以上の問題を提議し、この章を終えることにする。
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