TV版はメインの3人全員が未成年だから当然としても、成人している設定のOVA群においても
・真:話数はあるが全体的にそんなことやってる場合じゃない
・ネオ:話数が少ないし、隼人は忙しいし、竜馬は出番少ない。そもそもメインは一応未成年チーム。
・新:竜馬が新宿のラーメン屋でビール頼むシーンがあるくらい?
なのでどうしたって間に合わない。
別にゲッターにこだわることもないし…と、ビールを"美味そうに"飲むシーンのアニメの記憶を掘り出そうとしたが、「エヴァンゲリオン」のミサトさんや「カウボーイビバップ」のフェイくらいしかすぐに思い出せない。あとは「晩酌シーン」としてサザエさんやしんちゃんか。
意外に思い当たらないので調べてみると、案の定アニメの飲酒シーンにはここ十数年で規制が厳しくなったようだ。
●未成年の飲酒シーン
昔に比べて酒そのものが買いやすくなった(酒を扱うスーパーやコンビニの増加)ことや現在の社会状況を考えれば、喫煙シーンとともに「未成年が飲む」場面を入れない、あるいは改変するのは意味のあることだと思う。
ただ、原作付きのアニメの場合、原作では飲酒シーンが登場しているのに削除したり、色や缶・瓶を描き換えて「酒じゃなくてジュースです」という表現に変えたりすることが目立つと、さすがに違和感が大きく、場合によってはキャラクターの設定や性格描写に大きく関わってくることもある。(「不良性」や「酔うと人が変わる設定」の表現など)
<参考>
[(放送事故、ハプニング)タレコミコーナー アニメ編]
ここを見ると、少なくとも80年代中盤くらいまでは「未成年キャラが羽目をはずして酒を飲む」シーンには、恒常的でなければ(花見やパーティーなどで羽目を外す、あるいはジュースと間違って飲んでしまう程度)おとがめなしだったことがわかる。
「未成年の飲酒・飲酒による事故を誘発してしまいかねない」と自主規制されるようになったのは90年代になってからだろうか。
場合によっては、この杓子定規な自主規制レベルが、シーンの意味や演出、キャラクターの設定にまでも無理を強いる場合がある。
近年でそれが最も顕著な形で現れたのが「もやしもん」のアニメだった。
原作付きアニメとしては総じてまずまずの内容ではあったが、この点は不可抗力とはいえ大きな不満・ムリヤリ感が残った。
「農大でアレコレ騒ぎながらも発酵学の道に足を突っ込んでいく主人公とその周辺」を描く物語で、ストーリーの途中で教授が発酵蔵を新設し、酒造りに関わっていくという都合上、酒はこの物語に切っても切れないはずなのに、主人公の沢木と同輩が「新1年生=未成年」であるという動かせない設定のため、原作では酒を飲んで美味い不味い凄いと感想を語るシーンがカット、または他のキャラクターが代役をつとめるということになっている。(勝手に浪人設定を付け加えるわけにもいかないし…)
第5話は、「日吉酒屋」にメンバーが集まり、実際にカウンターで試飲しながら、日本酒の既存の問題や展望のうんちくを聞いたり語り合うのがストーリーのメインで、もっとも「もやしもん」らしい場面の一つなのだが、ここでも上記の「規制」が強く働き、ずいぶんとニュアンスが変更されてしまっている。
原作をご存じない方のために軽くまとめてみると、このシーンに登場するキャラクターは
<1年組>
・沢木:主人公。種麹屋の息子。菌や微生物が見え、声を聞くことができる。
・結城:沢木の親友。造り酒屋の息子で、日本酒の知識と利き酒能力に秀でている。過去の経験から、日本酒業界の悪習を撤廃し、改革すべきという理想を抱いている。
・及川:ほとんど成り行きで樹ゼミに参加した女子学生。酒は飲めるが日本酒は苦手で、発酵品の知識もまだビギナー。
<2年組>
・美里
・川浜
寮住まいのゼミの先輩。密造酒計画を実行するだけあって、酒の知識は相当のもの。
<院生>
・長谷川
博士課程の学生で、実質樹教授の助手的存在。酒を飲むとキャラクターが急変してしまうため、普段は固辞している。
日吉酒店の店主が、「ちゃんと作った日本酒」を彼らに飲ませ、その味をめいめいが評価するシーンがある。
原作では、ここで飲んでいるのは長谷川を除く全員で、特に「日本酒は甘ったるくて苦手」と言う及川が一口飲んで
「おいしい…これが本当に日本酒?」<A>
と驚くシーンがある。
また、沢木と結城も、樹教授から感想を求められて、
結城「確かにこれは丁寧な造りを感じるとてもいいウマい酒ですね…」<B>
長谷川「おじいさんにまとわりついている菌が関係してるのかしら」
沢木「いや それとは全然関係なく元々ウマいんすよこりゃ」<C>
と、実際に酒を利きながら答える。
これがアニメ5話の同様のシーンでは、
・試飲するのは川浜・美里・長谷川の「成人組」だけ
・原作で及川が「私日本酒ダメなんで」と試飲を一度断るシーンのセリフは、「未成年なんで」に変更
・沢木を「あんたは未成年なんだからダメ」と長谷川がたしなめるセリフが追加
・飲んでみて<A>のセリフを言う役割は長谷川
・沢木と結城は差し出されたぐい飲みの酒の匂いを嗅ぐだけ
・<B>のセリフは
「確かにこれは…香りだけでも丁寧な造りを感じます。」に変更
・<C>はセリフに変更はないが、沢木がぐい飲みの中の菌を見つめる描写に変更
に変わっている。
特に違和感のある部分は、以下のようなところか。
・詳細はともかく(記憶がほとんど飛ぶので)、「どうも自分は飲むとヤバいらしい」と自覚し、普段は少量でも自重しているはずの長谷川がすんなり飲んでしまうのは後で出てくる設定と矛盾する
・日本酒に無知な及川ならともかく、発酵学や各種酒類にも精通しているドクターの長谷川から、「これが本当に日本酒?」という発言が出るのは違和感がある
・この場面では非常に結城が雄弁であり、「日頃家業について複雑な思いを抱きつつも、誰よりも日本酒業界のことを憂いつつ改革したいという情熱を持っている」一面が表現されている。知識と利き酒という日本酒リテラシーの半端なさが発揮されるシーンなのだが、規制で口にすることが許されていないため、初見の人には、ともすれば「飲んだこともないのに頭でっかちのウンチク君」と取られかねない。
「試飲ぐらいいいんじゃあるまいか」と思うのだが、それで美味い不味いを語るとなるとやはり恒常的に飲んでいるのを暗示してしまいまずいことになるのか。
実際に読んだり見たりすれば、「未成年の安易な飲酒や飲酒強要の助長につながる」とは思えないシーンなのだが、内容や印象での線引きはできないからひとからげにするしかないのかもしれないが、それによってキャラクターの印象まで微妙に変化してしまうのはどうかと思う。
こうした規制に従いつつも逆手にとって、ギャグ表現につなげてしまった見事な例が、アニメ版の「魁!クロマティ高校」である。
この作品に出てくるキャラクターは、「主人公(一応)の神山以外全部札付きのワル」という設定なので、校内だろうが街中だろうがおかまいなしに酒もタバコも得物を持ち出しての喧嘩もやるし、パチンコにも制服のまま平気で行ってしまう。
アニメ化に当たっては、いかに「不良の素行の表現」であっても(それ以前にわざわざクロ高のアニメを見ようという人間にそうした配慮や心配は無用な気もするし、「林田がタバコ吸ってるのがカッコ良かったから真似した」という視聴者もいないと思うが…)規制からは逃れられない。
そこでスタッフが選択した表現とは、
・タバコ
→変な棒を咥え、その先からニョロニョロしたピンクなどのビビッドな色の謎の物体が出て、へろへろとたなびくように動いている
というとんでもない力技だった。
このアニメは林田の髪の毛をはじめ、「なぜかよく分からないけども画面のどこかで何かがウニョウニョ動いている」ので、全体的に違和感を感じない。
このムリヤリな処理が、「クロ高がそもそも持っている圧倒的なまぬけ感」にマッチしてしまっているのが絶妙だ。この作品でしか使えない手法ではあるが素晴らしい。
その他
・酒を飲むシーンがノンアルコール飲料になっている
・セリフの「殺す」が「ころがす」、「タバコ」が「ゲタバコ」に変更。
・これ以外にもパチンコやナイフなどを使用したシーンも描写が変更されている。
(wikipediaより)
また、著作権的な面倒を避けるためか、「前田君のお誕生会」で歌う曲が、原作の「ハッピーバースデイ」ではなく、
「♪ハッピーバースデイ〜 お前〜」
という全くオリジナルの節回しになっていて、その強引さだけで笑える一つのギャグだったりなど、細かいところで「大人の事情」それ自体を逆手に取っている表現がちりばめられている。
これは、「現場の悪ノリ」だけでなく、そもそもが「池上遼一の絵柄のパロディである」野中英二の作品を好む人の年齢層が概して高く、「大人の事情」についても理解と察知が見込めるという背景もあるだろう。
他にも、未成年が飲酒(舐める程度でも)するシーンにおいて、お遊び的なニュアンスながら
・「これは異世界の話です」
・「この国では18歳以上の飲酒が許可されています」
・「江戸時代の話です。現代ではお酒は大人になってから!」
というクレジットやカットが挿入されることが増えた。
(例:「天保異聞 妖奇士」における、お馬が酒を飲んでぶっ倒れるシーンなど)
[成人の飲酒シーン]
未成年の飲酒場面については、かなり不自然な結果となることが多いものの、百歩譲って一理はあると思えるのだが、調べてみると成人の飲酒シーンについても自粛につながる要因がいくつかある。
<輸出の際の修正・配慮>
禁煙・禁酒への強い流れがある欧米、特にアメリカでは、フィクションの中に登場する飲酒・喫煙シーンへの規制が強い。
特に、法的に何ら問題のないはずの成人の行為を描いた場面ですら極力入れない、もしくは画面修正やカットを施すという規制が行われている。
これは、同様の規制のない外国作品や、規制前の過去作品でも例外ではない。
日本のアニメ作品が数多く諸外国に輸出されていることは周知の通りだが、人気作品の「エヴァンゲリオン」においても、かなり容赦ない修正規制が行われている。
同作品に登場する人気キャラクター「葛城ミサト」は29歳の設定なので、酒も煙草もはばからずにたしなむことができるはずなのだが、彼女の飲酒シーンがバチバチと狩られている。
知っての通り、ミサトは優秀な作戦指揮官である反面、ヘビースモーカーで大酒飲み、家の冷蔵庫にはビールばかり(エビスがお気に入りらしい)で、朝っぱらから水のようにビール缶をあおるわ、空き缶はほったらかしだわと、プライベートではズボラで豪快な二つの顔を持つキャラクターとして描かれている。
また、日常のガサツさと、特に後半になってから垣間見える過去のトラウマや女性の脆さという部分のコントラストが効いている、実は複雑な人物でもある。
第2話では、ミサトと共同生活を送ることになったシンジが、そのギャップのある姿にドン引きする場面が描かれている。
それが対米輸出時には29か所もの修正がなされた。
29個の中には流血描写、女性のヌードや胸の谷間など性的な要素、十字架や天使がらみのキリスト教的モチーフの冒涜につながるようなシーンも含まれているが、そのうち少なくとも実に13か所がミサトの飲酒がらみの修正である。
(ミサトは風呂上がりなので、そのための修正も含まれるかも。また別のシーンもビール缶がらみで修正された可能性ありなので厳密なカウントではありません。)
こちらの修正リスト(英文)によれば
1: Scene of Eva Unit 01's head spraying blood cut.
2: Misato's "And don't worry, I won't be making any passes at him" cut along with Ritsuko's subsequent tirade.
3: Yebisu beer cans digitally painted blue in car.
4: Scene of Shinji confronted by a pile of crushed beer cans and a liquor bottle cut.
5: Shot of shelf covered with various bottles of liquor cut.
6: Yebisu beer cans digitally painted blue in garbage pile. Liquor bottle digitally removed as well.
7: Scene of Misato asking Shinji to put away the food across a kitchen forested with beer cans and liquor bottles cut.
8: Scene of Shinji taking inventory in Misato's refrigerator cut.
9: Beer cans and liquor bottles digitally removed from kitchen table.
10: Scene of Shinji asking about the second refrigerator while Misato changes clothes cut.
11: Scene of Misato guzzling and relishing a can of beer cut. (This is one of my favorite scenes, too.)
12: Yebisu beer cans digitally painted blue on table and in Misato's hand.
13: Shot of Shinji cowering before Misato's breasts cut.
14: Close-up of Misato's butt as she admonishes Shinji across the table cut.
15: Shot of Shinji and Misato playing Jankenpon in front of a pile of beer cans cut.
16: Shot of chore schedule cut.
17: Pile of beer cans digitally removed from kitchen table.
18: Misato's "except, of course, of me that is" cut.
19: Beer cans once again digitally removed from kitchen table.
20: Shot of Misato's drying lingerie cut.
21: Shot of nude Shinji looking at Misato's drying lingerie cut.
22: Entire scene of Shinji's encounter with Pen Pen and his conversation with Misato (complete with toothpicks) cut. (Sorry Pen Pen. You're not in the show anymore.)
23: Shot of Misato in the bath talking to Ritsuko on the phone cut.
24: Misato now wears a blue digital bikini in the bath.
25: Shot of Eva Unit 01's head spraying blood cut.
26: Misato's "My god!" and Ritsuko's "Berserker" cut.
27: Scene of Eva Unit 01 breaking the angel's arms cut.
28: Scene of Eva Unit 01 ripping open the angel's chest cut.
29: Not an edit... Cross-shaped explosions left in.
が全体の修正箇所。興味のある方は、他にどういう場面がカットされたか読んでいただければ大体の修正傾向がつかめるかと。
修正内容についても、単にカットしたり、デジタル処理で塗りつぶしたり部分削除するなどのいくつかのパターンがあることがうかがえる。
こうした修正により、「自宅でふろ上がりにバスタオル一丁で闊歩したり、ビールをあおったり、シンジがいるのにかまわずに下着を干してたりする美里の一面」がかなりオミットされてしまい、「多面性がミサトの人間的な奥行きであり魅力なのに、こうしたカットによって"ただのデキる女性"になってしまい、描写の厚みが損なわれた」
と不満を漏らす声が米国のファンからも起こっていた。
エヴァンゲリオンの修正は有名な例の一つに過ぎず、他にもこうした無残なブッタ切り・塗りつぶしやカットは多くの作品で行われている。勿論アニメだけでなく、映画やドラマも例外ではない。
「成人の飲酒行為」に関しては、ここまでの規制はさすがに日本では、スポンサーの手前もあって(酒造メーカーだった場合)まだ至っていないが、喫煙シーンは激減している。
たまに昔のドラマの再放送や映像ソフトを見ると、大人の男性はほぼ当たり前のように煙草を吸っていて、その喫煙率の高さに驚かされる。
しかし、特にアニメなど輸出の機会が多い映像作品においては、飲酒・喫煙シーンが輸出のネックとなることから「成人のシーンにおいても自粛」という流れが起こっても不思議はないかもしれない。
[国内からの規制を求める声]
今後さらに規制が強まるとなれば、上記の対外要因よりもこちらの圧力による可能性のほうが高いのではないだろうか。
「ドラマやCMの中で、喫煙をカッコよく、あるいは美味そうに演出するから未成年が影響されて喫煙する、だからよろしくない」
という論調で、ずいぶんと喫煙シーン・タバコを吸う登場人物の姿は"狩られて"しまったが、飲酒についても同様の声が強くなってきている。
上記のような規制を求める団体はいくつかあるが、代表的組織の例として、「NPO法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)」を挙げてみる。
この団体の行っている飲酒運転・薬物乱用・アルハラ(アルコールハラスメント。イッキ飲みをやらせる、飲めない体質の人に飲酒を強要するなどの行為)防止のキャンペーンには共感できるのだが、個人的には広告・映像関係への"配慮"の要請が「表現狩り」の域にまで踏み込んでいるように思えてやや気になった。
例えば、公式サイトの"06年企業アンケート 結果報告"においては、求める「配慮」の内容の中に
・スポーツイベントの冠スポンサーにならない
・スポーツの場面と飲酒をからめない
・飲酒シーンや喉を鳴らす効果音を使わない
・酔いの陶酔感を強調するような表現を使わない
・動物等のかわいいキャラクターを販売促進に使用しない
という、視聴者から見れば「ご無体」に感じるものが混じっている。
自分が左利きだからそう思うのかもしれないが、ビールも「食品」なのに、CMにおいて「美味しく感じるシチュエーションを出すな」「美味しそうに飲むな」とまで要求するのは度を越しているのではないだろうか。
確かに摂取の程度を誤れば疾病や死に至るものではあるが、極端な話をすれば、水だって過剰摂取すれば体内浸透圧以上でショックを起こして死ぬこともあるし、ジュース類も糖尿病や肥満に直結するものだから、
「ゴクゴク音を立てたり美味しそうに飲むCMはダメ」、あるいは、「メタボにつながるから炊き立てご飯や揚げたてでジュージュー言ってるフライや天ぷらの映像を使ってはいけない」とか、さまざまなものに規制をかける理由は存在している。この伝でいけば、食品CMが絶滅してもおかしくない勢いである。
もしこういった「成人でも飲酒や喫煙はダメ」といった圧力がフィクション類、やゲーム、しかも過去作品の再公開にまで関わってきたなら、さぞかし味気ないことになるだろうと思う。
例えば、こんな作品が再放送・公開封印されたら切ないし、あるいは該当シーンにいちいち「この作品はフィクションです。お酒・タバコは大人になってから」「喫煙・飲酒はあなたの健康を損なう恐れがあります」といったでっかいテロップが流れてくるとしたらどうだろうか。
・ルパン三世
・カウボーイビバップ
・ゴルゴ13
・シティーハンター
・じゃりン子チエ
・コブラ
・宇宙戦艦ヤマト(沖田艦長のパイプ)
・エイトマン(本当はタバコではないが)
・探偵 神宮司三郎シリーズ(推理がまとまらない)
その他挙げるとキリがないのでほんの一部にとどめておくが…
こうした論調は特定の団体に限ったことではなく、個人レベルでも高まりつつある。
色々検索していて、とあるコラムにて、
「『サザエさん』で、毎回のように波平さんやマスオさんが晩酌をしているのだが、何十万人もの視聴者がいる人気番組で毎回飲酒の場面があることを考えるとネガティブな感想を持ってしまう。いかがなものか」
という意見が書かれていて、
「波平さんにビールぐらい飲ませてやろうよ!」
と、なんだか寂しくなってしまった。
子供のころ、特に家族に何の欠落感があったわけでもなく、僻みのような感情があったわけでもないのだけど、なぜか、「サザエさん」の絵にかいたような一家団欒の風景がわざとらしくて嫌いだった。
そんな私でも、フネさんやサザエさんが
「おやつ戸棚にあるわよ」
「晩酌はビールでいいかしら」
と家族にかける言葉はなんだか暖かくて好きだった。
それは、菓子やビールというアイテムそのものではなく、「家族のために、その人が喜びそうなもの、好きなものを買っておいてくれる」という行為とか、「そうやってくれる人がいる」という存在の嬉しさに根ざしているのではないだろうか。
磯野家ではフネさんとサザエさんが専業主婦なので、こういう書き方をするとジェンダーに敏感な方から反発を招く危険があるのでもうちょっと付け加えると、別にこれは「主婦(女性)のつとめ」「当然あるべき気配り」というような意味で書いているわけではない。買う主体は誰でもいいのだし、波平さんが「今日は母さんの料理で一杯やろう」と帰りがけに買ってくるのでもいい。
また、基盤を「家族」に限らず、友人でも恋人でも同じことだし、飲食物に限らず、本でもゲームでもレンタルビデオでもかまわない。
たとえ自覚していないまでも、自分以外の誰かのことを考えて、「これを持って帰れば(買っておけば)あの人は喜ぶだろう」「これを一緒に楽しみたい」という動機でモノを手に入れるとき、人はその刹那だけほんのちょっと幸せなんじゃないかと思う。
サザエさんもフネさんといった「買う側」も、日常化して気づいていないかもしれないけれども、そんな温かい気持ちを味わっているのだろう。
そしてそれこそが、「自分ではない誰か・あるいは何か(もちろんペットや植物・車やバイクなんかもそうですな)と空間を共有して過ごす幸せ・温かさ」なのだと思う。
「晩酌シーン」や「おやつシーン」が真に演出しているのは、そんな「ユニットの温かさ」というようなものではないだろうか。
最近のアニメで近いと思うのは、「クレヨンしんちゃん」だろう。
一家の主・ひろしは、家計の都合上発泡酒へのを余儀なくされながらも、日常的な晩酌シーンを披露してくれる貴重な一家だ。
こちらの方も規制で晩酌が廃止されたら切ないなあ。
35歳で一軒家建てて、月収54万(推定)とけっこう高給取りなのに常に小遣いは緊縮。
そんなひろしに、発泡酒ぐらい飲ませてやれよ。飲ませてやれって。
アニメではないが、メンバーそれぞれが特色のある拳法を使う「五星戦隊ダイレンジャー(1993年)」のキリンレンジャー・知(カズ)は「麒麟拳」の使い手なのだが、これは名乗りのポーズからも明らかなように明らかに酔拳をベースにした拳法である。
(参考:伝説の素顔名乗り[ニコニコ動画])
初期のエピソードには、敵の怪人と酔拳合戦&飲み比べを行う「豆腐で酔ったァ」という超傑作話があるのだが、やはり小さいお子様向けではなかったのか自主規制かは分からないが、以後「酔拳」という性格を表に出した活躍はほとんどなかった。知のキャラクターが素晴らしかっただけに残念なところであるが、酔拳を盛り込んだだけでも快挙というべきなのだろう。
しかし、確かにゲッターじゃムリですね…。
新ゲの竜馬は、ビール飲んだりラーメン食ったりで、とても可愛いです。【何の主張だか】
最近の、酒に対する規制は異常ですね。
バラエティでも、ビールが出たらラベルにモザイク入れますし。
「ネプリーグ」で、芸人の服にずーっとモザイクが入ってた事があったのですが、あのシャツには何が描かれていたのか。
逆にエライ想像をしてしまいます。
この調子だと、「人が死ぬアニメ、いっさい禁止!」とか言い出しそうですね。
実際、海外ではドラゴンボールは、肉弾戦部分をカットするとこもあるみたいですが。超能力戦はオッケーだとか。
冷えたビールで1MADは、そのうち(多分ビールが美味い頃)に、アニメ素材オンリーではない形になりますが作ろうかと思ってます。あの曲で「鉄管ビール」という言葉を覚えました。
>新ゲの竜馬は、ビール飲んだりラーメン食ったりで、とても可愛いです。
わかります!アニメの食事シーンって生活感というか、ヌクモリティ感じて好きです。隼人も食事シーンを披露してほしかった…あの人は始終忙しそうにウィダーインとかカロリーメイトかじって、「基礎代謝が足りてればいいんだ」とか言いそうですが。
>バラエティでも、ビールが出たらラベルにモザイク入れますし。
スポンサーとの関係ということもあるかもしれないですね。たとえばキリンビバレッジ提供なのにうっかりサッポロビールの瓶を使っちゃったとか…
今はそうでもありませんが、昔のNHKは番組の種類を問わず企業名や商品ラベルを出さないことに徹底していて、よく「明らかにちょちょっと手作りしたちょっとショボいビールやジュースのラベル」が登場していました。
>この調子だと、「人が死ぬアニメ、いっさい禁止!」とか言い出しそうですね。
漫画の世界だとかなり前から、何年かおきに暴力描写規制の議論とか規制案が起こるんですよね…
90年代には、「シチュエーションの内容に関わらず、1ページの殴打シーンが*個以上であれば規制(もしくは成人指定)」というアホな案が浮上していました。(競技としての)格闘漫画や、同じ殴り合いにしても被虐もあれば友情の殴り合いもあるのに…という話は、ネットのない時代でしたがけっこう活発に交わされていた覚えがあります。
いずれにせよ、今も表現規制はアレコレがんじがらめなので、これ以上ひどくなってほしくないなと思うです。