赤毛のアンの髪は、どれくらい赤いのか? その答えは、アニメ「赤毛のアン」の第14話にある。アンがアヴォンリーの学校に来てから3週間経ったころのエピソードで、「教室騒動」というお話だ。同級生のギルバート・ブライスはハンサムだが、女子をからかって喜ぶ癖がある。そんなギルバートがアンの髪の赤さを、次のように表現している。
「にんじん、にんじん」
アンの髪を引っ張りながら、ギルバートはそう言ったのだ。つまり、アンの髪の赤さは「にんじん」の色に近かったのである。赤というよりオレンジに近い。
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自分の髪の毛を「にんじん」と言われたアンは激昂し、「卑怯者、大嫌い!」と怒鳴りながら石版でギルバートの頭を叩く。石版が割れるほどの勢いだったので、アンの怒りは相当なものだったと想像出来る。「拷問にかけるほど、私の気持ちを傷つけた」とも言っている。髪の色をにんじんに喩えられたくらいで、そんなに怒らなくても、とも思うが、僕も自分の髪質にコンプレックスを持っているので、アンの気持ちが良く分かる。天然パーマのくせが強いのだ。それを同級生から「チリチリ、チリチリ」とからかわれでもしたら…、さすがに石版で叩いたりは出来ないが、心の中はそれくらい穏やかじゃない状態になると思う。
いずれにしても、このエピソードからアンが自分の赤毛を気にしていたことが分かる。そして、その赤毛が「にんじん」に似ていたことも分かった。
よし、アンのコンプレックスを僕が引き受けよう。美容院で、アンと同じ髪の色にしてもらうのだ。
「美容院に、にんじんを持って行く」
美容院で赤毛のアンと同じ色にしてもらうために、まずはスーパーでにんじんを調達した。本物のにんじんを色見本として、僕の髪をアン色に染めてもらうのだ。
≪にんじんを調達≫
ここで更に告白すると、僕はにんじんが嫌いだ。チャーハンに混ざっている、細かいにんじんでさえも全部避けてしまうほど、嫌いだ。そういった意味でも、アンの怒りが他人事とは思えない。
スーパーで調達したにんじんを持って、予約していた美容院の前に立つ。
≪この色にしてもらおう≫
しかし、僕は何故、髪をにんじんの色にしないといけないのか?
一瞬我に返りそうになるが、そこはグッとこらえて美容院の扉を押した。とにかくアンと同じ髪にしてもらう。それが今回のミッションなのだ。
美容院は渋谷の円山町にある「ナートゥ」というブラックヘア専門のお店だ。以前、別の企画で「EXILEになりたい」という記事を書いた際、頭にラインを入れてもらったことがある。
≪以前の企画ではラインを入れてもらった≫
EXILEの次は、「赤毛のアン」である。
この人は一体何を目指しているのか? 美容師のゆかりさんは、きっとそう思っているに違いない。ゆかりさんなどと慣れ慣れしい呼び方をしているが、前回名前を聞いたら「ゆかり」としか教えてくれなかったので、仕方ない。
ゆかりさんににんじんを見せながら、改めてお願いした。
「赤毛のアンにしてください」
≪赤毛のアンはこの色らしいです≫
≪赤というよりオレンジですね≫
「大丈夫ですよー、やりましょー。」と軽いトーンで引き受けてくれた、ゆかりさん。僕にとっては結構なイベントなのだが、ゆかりさんにとってはそうでもないらしい。そういうお客は珍しくないのかもしれない。
「赤毛のアンにしてください、って人、割りといるんですか?」
と聞いたら、「いえ、初めてですね」ときっぱりと言われた。
そりゃそうか。
≪待ってる間、ワンちゃんたちがにんじんに寄ってきた≫