巨大地震と原発事故の混乱が収まらない。日本の原発の安全神話は崩れ落ち、被災地にはガソリンなど生活物資が届かない。計画停電など影響は被災地以外にも及ぶが、政権のリーダーシップは見えない。地震と津波の規模が想定外だったのは確かだが、備えやその後の対応には次々と問題点が浮かび上がる。なぜ混乱がここまで広がったのか。「誤算」を検証する。
ガソリンなぜ届かない?道路寸断、運転手も不足
東日本大震災の被災地ではガソリンや軽油など石油製品の不足が深刻な問題になっている。JX日鉱日石エネルギーはこれまでにタンクローリー車約150台を被災地に送り込み、昭和シェル石油は新たに応援部隊を派遣した。ただ交通網の寸断に運転手の不足と疲労が重なり、十分な燃料配送ができていない。
津波で流されるなど被災地では100台以上のローリー車が失われた。被害を免れたローリー車も燃料を現地で調達できず、ガス欠で動けないといった事態も発生したもようだ。構造上、ローリー車はタンクに入った燃料を使えない。
ローリー車そのものの不足は徐々に解消されつつある。JXエネルギーでは現在、東北6県で120台程度が稼働中。西日本などで確保したローリー車を送り込んでおり、今回の増強で震災前の水準(約250台)まで台数は回復する。
昭和シェルは震災直後に首都圏からローリー車を送ったが、大阪府や愛知県などからもローリー車と運転手を追加派遣した。さらに貯蔵・物流拠点となる油槽所の稼働時間を秋田県や青森県で3~4時間延長するなど出荷能力を高めた。19日には神奈川県から宮城県に向けてドラム缶200本(40キロリットル分)の灯油をトラックで送った。
ただローリー車の確保だけでは十分ではない。ローリー車の運転手は大型免許のほかに原則として危険物取扱者の資格などが必要で、通常の配送トラックに比べ確保が難しい。震災後は休む間もなく配送作業を続けており、疲労による事故の発生も懸念される事態だ。「運転手の過労や過重労働が報告されている」と石油連盟は指摘する。
首都圏や西日本から派遣された運転手は日本海側からの山越えや雪道に慣れていない。JXエネルギーの担当者は「道路網の寸断もあり、通常の何倍もの配送時間がかかる」と話す。
いざという時に燃料が届きにくくなる背景には別の理由もある。石油会社が生産設備削減や物流効率化など合理化を進めたのが裏目に出たとの指摘もある。
石油製品の輸入を制限していた特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が廃止される前の1995年と比べ製油所は全国44カ所から2011年には27カ所と4割減った。ローリー車も約1万8000台から10年に約7000台と大幅減。約600カ所あった油槽所も04年時点で190カ所と7割減っている。
東北6県ではJXエネルギーの仙台製油所(宮城県)がほぼ唯一の生産拠点となった。石油各社が大消費地である首都圏などに製油所を集約した結果だ。95年時点は日本海沿岸に5カ所の製油所があったが、現在は1カ所。今回の震災では関東を含め太平洋沿岸の製油所が次々に操業停止に追い込まれたが、日本海側の製油所でカバーすることは難しく、安定供給が揺らいだ一因になった。
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