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「一番弱い人に支援届かない」…石巻の精神科病院
天井まで水没 潜って薬探し
「一番弱い人たちに支援が届かない」。宮城県・石巻漁港近くの精神科病院「恵愛病院」は11日の津波で患者の24人が流され、今もガスや電気などのライフラインが断たれたまま。
医師や看護師らはスタッフや医薬品の不足に悩まされ、水に潜って薬を探すなど患者数十人の治療や世話に必死であたっている。
同病院は120床で、重い統合失調症患者や認知症の高齢者が多い。木村勤院長(61)は18日、「一番被害がひどい地域の一番弱い人たちなのに支援が届かない」と、無精ひげが伸び疲れ切った顔でつぶやいた。
「波が来た!」
11日、職員が叫びながら院内に走り込んだと同時に、どす黒い水がごう音をあげて流れ込んできた。地震発生後、高台に避難しようと患者107人を1階大広間に集めた直後だった。
重油混じりの水が天井近くまで達した。流されまいとカーテンレールにしがみつく人や木村院長が2階から放ったシーツにつかまった人もいたが、1人で動けない患者も多く、全員は救えなかった。患者を引き揚げようとした藤中好子看護部長(63)は、水を大量に飲んで意識を失った。血圧や体温が急激に下がり、一晩中、別の看護師が抱きしめて温め続け蘇生した。
当初残った患者は83人。職員は治療を継続しようと水につかった薬を潜って探した。最初の2日間は水だけ。被災後3日目に救援物資が届いたが、おかゆとゆで卵だけという日もある。
医療スタッフの支援はいまもなく、ストレスや薬不足で衰弱したり、自傷行為を繰り返したりする患者が後を絶たない。ヘドロや壊れた機材が散乱した1階病棟や廊下には、シーツに包まれた遺体があちこちに横たわる。唯一無事だった2階病棟は一時患者であふれたが、ようやく40人は別の病院に受け入れてもらうことになった。回復後、帰宅もせず不眠不休で働く藤中看護部長は、「支援を充実してもらい、何とか残った患者さんを守りたい」と訴える。
精神科病院は、災害時の救援ネットワークが整備されていない。今も被災地の病院に取り残されている患者が少なくない。吉南病院(山口市)の長嶺敬彦内科部長は「精神疾患の薬は、中断すると症状が悪化したり、場合によっては高熱を出すなどして死亡することもある」と早急な救援が必要だと指摘している。(岩永直子)
(2011年3月19日 読売新聞)
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