東京大学医学部附属病院放射線科 中川恵一准教授に聞く
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福島原発事故 放射線 健康への影響は?
公明新聞:2011年3月20日付
100ミリシーベルトでも症状なし
過剰な反応 は控えて 行政の指示に従い行動を
東日本大地震による福島第1原子力発電所の事故で放射能被害への不安が広がっています。放射線は健康にどのように影響するのか、日常生活の注意点などを、放射線医療を専門とする東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一准教授に聞きました。―放射線を浴びることに不安の声が聞かれますが。
中川 放射線は普段の生活の中で誰もが自然に浴びているものです。その量は、国や地域によっても違いますが、世界の平均で年間2.4ミリシーベルトという量を浴びています。イランのラムサール地方ではその4倍で、年間約10ミリシーベルトですが、それでも問題があるわけではありません。
今回の福島原発の事故によって、各地で観測されている放射線量は多少増えてはいますが、健康に影響のある量ではありません。
―どれぐらい浴びると健康に影響が出るのですか。
中川 放射線量が1000ミリシーベルトを超えると、吐き気などの症状が出ます。それよりも大幅に低い100ミリシーベルト程度の放射線量であれば症状もなく、血液検査でも、白血球の数値が下がるなどの異常は見られません。
しかし、この100ミリシーベルトの蓄積があれば、発がんリスク(危険性)は若干高まります。ただ、それはごくわずかで0.5%程度の確率です。日本人はもともと2人に1人、50%の確率でがんになりますが、それが50.5%になるという程度のことです。
―今回の事故で、一部に「東京も危ないから大阪に引っ越す」などの話もあるようですが。
中川 過剰に反応する必要はありません。東京の場合、全く問題ありません。
―放射線を一度に浴びた場合と長時間浴びた場合の違いは。
中川 例えば、原発の作業員などが、事故で一度に大量の放射線を浴びるようなケースは危険です。
しかし、普段の生活の中で少量を浴び続けたとしても、生物のDNAは、放射線で一時的に壊されてもすぐに修復されるので、人体に与える影響は小さいのです。
例えば、東京周辺では、1時間当たり1マイクロシーベルト(0.001ミリシーベルト)程度の放射線が観測されましたが、この量で先ほどの100ミリシーベルトに達するのには11年かかります。しかし傷つけられたDNAは日々修復されてしまうため、医学的にも影響はありません。
退避地域内 家の中で窓を閉めて
―退避地域内の住民などで、放射性物質を浴びるのを防ぐための注意点は。
中川 放射性物質を体内に取り込む「内部被曝」を防ぐことが大切です。
基本的には、花粉の対処法と一緒です。外ではマスクやぬれたタオルで鼻や口をふさぐ。肌の露出は避け、家に帰ったら、玄関に入る前に頭や着衣をよく払うことなどが大切です。
また、家の中では外気とともに放射性物質が侵入しないように窓を閉めることも大切です。用事がないなら家にいたほうが安全です。
―ほかに注意すべき点は。
中川 とにかく、行政の指示に従って行動すれば、特段注意することなどはありません。
『放射性物質』――
放射線を出す物質。自然界に存在するラジウムやウラン、原発の核分裂で生成されるセシウムやヨウ素などを指す。
放射線を出す能力を放射能という。
放射線が人体に与える影響を示す単位が「シーベルト」。1シーベルトの1000分の1が1ミリシーベルト、その1000分の1が1マイクロシーベルト。
人間が全身に、一度に大量の放射線を浴びた場合、500ミリシーベルトで血中のリンパ球が減少、7000~1万ミリシーベルトで100%死亡するとされる。
胃のエックス線集団検診は1回0.6ミリシーベルト。
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2011年3月20日付