なっきぃ こと 中島早貴さんとはじめてお会いしたのは 2007年のちょうど今ごろ。四年前の春の昼下がりでした
ぼくはその日、はじめて「ゲキハロ」の仕事をいただき、 はじめて会う℃-uteの はじめての主演舞台ということで はじめて尽くしの緊張感の中、一時間ほどの面会時間で ℃-uteの皆さんの印象をインプットすべく、池田と共に ペラ数枚の仮の脚本らしきものを持参してまいりました
「卒業式の帰り道に、仲良しの友だちとプリクラを撮る」 そんな内容のペラでした。読み合わせの一番最後だった 中島さんは、なんとその数枚の脚本を読みながら言葉を つまらせ、涙を流しました。・・ぼくはア然としました
それは、卒業という晴れやかなきもちと、もう友だちと 毎日は会えないというかなしいきもち、プリクラなんか 撮らなくてもすぐ会えると笑う友だちの「きっとそうは ならない未来」をいとおしくおもうきもち、およそその ペラ数枚の脚本に(きちんと書きこまれていないのに) 求められているすべての感情が、淡く渾然一体となった、 貴い涙でした
ぼくは面会後の興奮も覚めやらぬまま、池田と立ち食い 蕎麦をすすりつつ「とんでもないものを見てしまったな」 と言うと、池田も「とんでもないものを見てしまったな」 と言いました ・・ その役の身になって、あたまで考えると相反する感情の すべてを自分のものとして、こころで同時に感じている
それはものすごく特別な才能であり、これを感じるだけ ではなく、おもいを言葉にのせて表現するところにまで いけたならば、彼女はとんでもないことになっちゃうぜ ・・ 言葉にするならそんな感じの興奮を、言葉にしないまま 共有していたのだとおもいます
それで前述のオトムギ初ゲキハロ『寝る子は℃-ute』で 早貴さんに宛書きさせてもらった司(つかさ)という役 に、クライマックスシーンで以下のセリフを書きました。
『夏美さんは空に帰っていった。
星が多すぎて、どの星になったのかはわからない。
だけど、もうあの水色の鏡の中に、夏美さんが現れることは、
ないんだろう。
チョウさんは、千切れるくらいに手を振っていた。
わたしたちはみんな笑っていたけど、
笑っていないと涙がでちゃいそうな、へんなきもちだった。』
(ごらんになってない方、なんのこっちゃですみません。 だけど是非今からでもDVDで観ていただきたい作品です)
この中島早貴さんの長台詞に、想いをのせきった表現に、 ぼくは深く感動しました。ご来場のお客様にも大絶賛で 迎えられた、忘れられないシーンとなりました。ですが、
このセリフって、セリフだけ注意深く読み返してみると、 二行目と三行目、四行目と五行目、ほとんどのセリフが 前の一行と相反する「別のきもち」の衝動に動かされた、 へたすると「わけわかんない」「ついていけない」こと になっちゃう、ぎりぎりの連続で構成されているのです
なっきぃのモノローグにこめられた感情が、ぴたぁーっ、 とうまっていたからこそ、うけいれられた、神のシーン。
「しあわせ」と「かなしみ」は 両極にあるものではなく、隣り合わせにあるものなのだ。 そんな、知っているつもりだった、知らないでいたこと、 中島司にあらためて教えてもらった気がした塩田でした
・・ぎゃー!
なんか、どえらく長い文章になっちゃっててすみません。 まだ肝心の『1974』まで行き着けてないというのにぃー
ちょっと途中はしょります
今回のオトムギ、中島さん 岡井さんをお迎えするんだ! そう決まった直後の塩田のきもちは 「うおぉーっ!」「ついに再会できる!」「うれしい!」 大興奮歓喜しましたが、それだけではありませんでした
四年前、はじめての芝居の時でさえ、あんだけこころを 揺さぶられたんだ あれから四年めちゃ密度濃く毎日をたのばってるお二人。 今やいったいどんだけすごいことになっているのだろう。 年に数えるくらい、コンサートや劇場で「また、ご一緒 できる時を楽しみにしています」とごあいさつするたび、 必ず「はい!ぜひ!」とまっすぐな即答を返してくれた あの笑顔には、なんとしても作品でばっちりこたえたい!
『寝る子は℃-ute』は稽古初日に台本が全部あったので、 「宛書き」のための準備時間は「一時間」とするならば、 『1974』がもらった時間は、なんと「四年間」なのだ。 今回の宛書きには、果てしない時間がかかっているのだ! 「やべえ!」「緊張する!」「がっかりさせたくねえ!」 色んなきもちで胸が騒いでしかたなかった稽古前でした
・・だけど、そうしてはじまった『1974』稽古・・
はじめてのホン読み稽古。早貴さんは「色んなきもちを まぜこぜに」宛書きされた役に「うわぁ(喜)その声で、 そのように読んで欲しかったんだ」と作家冥利に尽きる、 感情が連綿と生まれ続ける素敵な読みを聴かせてくれて、 さらにちょいちょいと演出をつけるたび、その役として、 あまりにも絶妙な「こころで感じてる」リアクションを、 ぴたっぴたっと返してくれた。わぃっ!色んなきもちを 感じるこころ、大切にしたまま、さらに純化してパワー アップしてるぅ!!
立ち稽古で「そこで前に、センターに出てみてください」 と頼んだら、ぶわっとおっきい目をもっとおっきくして 笑顔全開で魅せてくれた芝居に「こりゃ紀伊國屋ホール の最後列の壁にライナー性のホームランでバコーン!と ぶち当たるなーッ」って、おいら、演技でバコーン!と やられてしまった。おもいをのせる表現が、四年前とは 比べようもなく圧倒的にパワーアップしてるぅ!!
そんな早貴さんを視た瞬間、シオダの渾然一体となった 色んなきもちは、ふわーっと「この芝居をつくれる幸せ」 という、もっと大いなるおもいへと昇華していきました
そうして
のこり半分の脚本は、その稽古時間からもらったものに この身をまかせ、導かれるままに大胆に書き切りました。
はい。まるで、じぶんで書いたようじゃない、大胆さで。
大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の中島 早貴さん、
どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!
そして次回のムギムギデイズ『宛書きをする幸せ』には この芝居のもうひとりの主演女優 岡井千聖さんのことを 書くでやんす!
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Date: 2011/03/19(SAT)
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