中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし・健康 > 暮らし一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

繰り返される震災の映像 子どもの心に影響も

2011年3月17日

 テレビから繰り返し流される津波や原発事故の映像。重要な情報だが、大人が漫然と見続けると、一緒にいる子どもの心に深刻な影響を与えかねない。 (生活部震災取材班)

 「ジョージ(アニメ『おさるのジョージ』の主人公)がいい!」

 地震発生から数日後の真夜中。埼玉県三郷市の主婦(36)は、自宅で就寝中の長男(2つ)が突然、大声で泣きだしたことに驚いた。

 主婦は地震発生時から、テレビのニュース番組を見続けていた。長男はアニメのDVDを見たがったが、自宅が河川に挟まれた地域にあり、余震の影響が心配だった。

 思えば、主婦がテレビを見ているとき、長男は画面に背を向け、頭や顔を手で覆って、主婦にまとわり付くようになっていた。真夜中の出来事で、主婦は「心を痛めているんだ」と気づいた。ただ、いざというとき、二人の子どもを連れて逃げるのは自分。「ニュースを見ないではいられない」と悩む。

 地震が起きたとき、東京都港区の主婦(34)は、次男(5つ)と幼稚園から帰宅する途中だった。トイレを借りようと入ったコンビニは混乱し、落ち着いて用を足せなかった。その後、次男はテレビで地震のニュースを見るたびにトイレに行きたがる。外出前などは、普段より頻繁にトイレに駆け込むようになった。

 主婦は「かわいそうなのでアニメ映画のDVDを見せているが、揺れると気になって、ニュース番組にチャンネルを戻してしまう」と話す。

 東京都内の男性会社員(43)の長男(8つ)には、地震発生二日後から、指しゃぶりや母親にまとわりつく姿が見られた。抱きしめると落ち着いたという。

 子どもの心に何が起きているのか。兵庫県立大看護学部長の片田範子さん(小児看護学)は「現地の映像と自分が体験する余震、親の表情、家庭内の話題などの情報を自分なりに統合し、自分の身にも何かが起こるのではないかと不安に襲われる」と説明する。

 言語聴覚士で、早稲田大客員教授の湯汲英史さん(発達心理学)も「子ども自身が揺れを体験しているので、テレビの向こう側の出来事と思えない。被災地との距離が分からず、すぐ近くで起こっていると感じる子もいる」と指摘する。

 不安やストレスのサインが現れやすいのは、(1)睡眠(2)食欲(3)表情。

 年齢別では、乳児の場合、夜泣き▽寝付きが悪い▽少しの音で驚く、泣く▽表情が乏しくなる−などが起こる。幼児以上は、赤ちゃん返り(指しゃぶり、おねしょ)▽食欲低下▽落ち着きがない▽無表情▽チック▽自傷(爪かみ、髪を抜く)▽震災ごっこ▽暴力的な遊び−など。

 では、どう対処すればいいのか。子どもが幼い場合について、片田さんは「テレビの視聴は控え、ごく普通に生活することで『大丈夫だよ』と伝えてあげて」と話す。不安から親のそばを離れない場合はたくさん抱き締めることだ。

 湯汲さんも「毎日同じ環境で過ごすことが、子どもの情緒の安定や脳の成長に必要」とし、必要な情報の入手については「子どもが寝た後にテレビを見るなど工夫を」と提案する。

 小学生になると、地震や津波、原発の爆発などに疑問を持っていることも多い。片田さんは「親は説明を避けがちだが、事実を事実として教えることも必要。疑問に丁寧に答え、一緒にメカニズムを調べることで不安を受け止めてあげてほしい」と助言する。

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ