伝えたいことがあります。
私は15歳の時、兵庫県神戸市須磨区で
阪神淡路大震災に遭い、被災生活を送りました。
だからといって、この度の地震で被災された方々の苦しみを
理解できるなど、到底思えません。
ですが、
食料、水、電気、ガスがなく
毎日寒くて眠れなかったことや
3週間お風呂に入れなかったことや
本気で死を覚悟したあの瞬間を
16年経た今も、忘れられません。
水をとりあって大人が口論している姿や
救援物資の行列でもたついてしまった母が知らない人に怒鳴られている姿や
毎日不安で、家族に聞こえないように声を押し殺して泣いていたことなど
16年経ても当時の記憶は褪せることがないことを思い知らされます。
だからこそ、
この度の地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げるとともに、
被災経験者として、
無事な地域に住んでいる方々に伝えたいことがあります。
被災者が望むこと。
それは、この災害を絶対に忘れないで欲しいということです。
「忘れない」とは
「防災をきちんとする」
ということ。
未来の犠牲を少しでも防げたら
自分たちみたいに悲しい想いをする人を少しでも減らせたら
被災者にとって、それは何にも代えがたい救いとなります。
阪神淡路大震災では
6400人を越える人々が尊い命を落とされました。
皆様も、家族や自分を必要としてくれている方のために
自分で防げる「防災」を、心に留めてください。
僅かではありますが、自分の経験から得た教訓を記させていただきます。
<命を守るために>
● 家具は全て倒れます
震度7では、全てが倒れます。
寝室にはタンスなど大きな家具は置かないで下さい。
寝ている時は逃げることができません。
阪神淡路大震災の死因の殆どは圧死です。
私はスチールラックに洋服を置いて
万一倒れた場合でも身体に倒れてこないように
布団と平行に配置しています。
テレビなども頭の近くや高い場所に置かないで下さい。
テレビほどの重いものが、震度7だと
「落ちる」のではなく「飛びます」・・・。
● 外出時は
ガラスや落下物に注意を払ってください。
神戸は「地震がこない街」と言われていたため
耐震性が重視されず残念ながら杜撰な工事が行われていました。
しかし、鉄筋コンクリートの耐震チェックをうけた建造物なら
倒壊することはまずないと言われています。
私は建物に入った時、まず頭上に落下物がないか、
近くに大きなガラスがないかをチェックします。
そして、地震が起きた時、どこに身を隠すかをいつもイメージしています。
揺れに襲われたその瞬間、まずそんなには動けません。
慌てて建物の外に飛び出すよりは、落ち着いて、
落下物や割れるガラスから身を守ること、頭を守ることを心がけて下さい。
● もし、閉じ込められた時などは、笛があるといいと友達が言っていました。
私も地下鉄を利用するので、持ち歩いています。
<被災生活のために>
● 浴槽に水をはる
インフラが破壊されてまず困るのが水でした。
トイレが流れなくなるので、バケツに水をためて
流すしか方法がなくなります。
パニックの中、用を足した後の排泄物を流せない状態が続くと
精神的にも不安定になります。
まず、トイレを流す水を確保できていると
精神衛生上、良いと思います。
● 被災生活の必需品
食料、水、薬、毛布はもちろんですが
・下着の替えや、衣料品
冬の被災生活は、いつでも逃げられるように、また寒さから身を守るために
服を着たまま寝ます。
お風呂にも入れないどころか、水がもったいなくて
手を洗うこともできませんし、
もちろん洗濯も出来ないので、衣料品の替えがあると
精神衛生上、救われます。
救援物資を運んだり、救出作業に出かけたり、
お年寄りを励ましてまわったり、水汲みに行ったり
被災生活では、皆で助け合って精力的に動くことになります。
そのためにも
精神衛生状態をととのえることは非常に大切です。
当時、やっと電気が復旧して、
2週間ぶりに熱いお湯でしぼったタオルで身体を拭いた時
どれだけ嬉しかったか!!!
あの快感にはふるえました。
ですので、
除菌シートなどもあればよいかもしれません。
当時は「水のいらないシャンプー」という商品も大変役に立ちました。
● 心のケアを
被災生活に慣れるのに必死なので、被災者の方々は
一見、気丈に見えるかもしれません。
ですが、状況が一段落すると
大きな喪失感に襲われると思います。
当時15歳だった私は、日常が簡単に壊れてしまうという事実、
そして、「人が死ぬ」ということが突然身近になったことに
非常にショックを受けました。
お子様も含め、周りの方々の心に気を配ってあげてください。
<最後に>
● 義捐金
余震や原発など、震災被害はまだ続いています。
しかし、焼け野原になった神戸も、日本中の方々の支援のおかげで
活気のある街に蘇りました。
被災地は必ず復興します。
私たちは無力ではありません。
一人一人が募金をして、被災者の生活と心を支え
未来の復興の力に少しでも役に立てたらと思います。
被災された皆様の苦しみが少しでも和らぐ日が来ることを
心から願っています。