現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 社会
  4. その他・話題
  5. 記事

先生、帰ってきて 29歳高校教諭、生徒捜して津波に(1/2ページ)

2011年3月18日15時4分

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:高田高校の小野寺素子さん=岩手県立高田高校提供高田高校の小野寺素子さん=岩手県立高田高校提供

 先生、絶対帰ってきて――。東日本大震災で行方の分からなくなった岩手県陸前高田市の県立高田高校教師、小野寺(旧姓・毛利)素子さん(29)を、夫や同僚教師、生徒たちが案じている。「自分よりも、他人のことを真っ先に考える先生」と慕われてきた。顧問を務める水泳部の生徒を助けにいき、津波に巻き込まれたとみられる。再び教壇に立つ日をみんなが信じている。

 11日午後、津波警報が市内に鳴り響くと、校内で部活動をしていた生徒257人は、学校裏手の高台にあるグラウンドへ避難した。そこに約10人の水泳部員の姿はなかった。冬場は学校から500メートルほど離れた屋内プールで練習していたからだ。

 小野寺さんは、学校にいた生徒を避難させると、自分の車に乗ってプールをめざした。同僚の教員に「水泳部員を捜しにいく」と話していたという。

 プールは海岸沿いにあった。小野寺さんが向かって間もなく、大津波が堤防を乗り越え、街をのみ込んだ。プールも近くの建物もすべて流された。水泳部員の大半と小野寺さんは行方が分からなくなった。

 「自分のことは常に後回しだった。彼女らしいと言えば、彼女らしいです」。夫で、隣町の県立大船渡高校教師、浩詩さん(43)は話す。

 3年前、高田高校で同僚として出会った。明るく、生徒にも同僚にも信頼されていた。水泳部の生徒が、家に遊びに来ることもあった。何より、人を思いやる気持ちにひかれた。昨年3月に結婚。披露宴での水泳部員のスピーチで「男子生徒をがっかりさせましたよ」と冷やかされた。

 津波があった日も、いつも通りの朝だった。前日も仕事で遅かったのに、弁当を作ってくれた。いつも、「無理して作らなくていいよ」と言っても、「料理ぐらいさせて」と笑顔で返された。服や宝飾品など何かが欲しいとねだられたこともない。

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

関連トピックス

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

阪神大震災を上回る規模の大地震。多くの人命を奪ったのは高さ10mを超える津波だった。

猫の駅長で知られる和歌山電鉄貴志川線。「猫の手」も借りて地域の足を守った地元の取り組み。

国際学力調査で日本の順位が初めて上昇に転じた。「ゆとり教育」修正の効果が出た形だが、成績の下位層が多く、格差は広がっている。


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介