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患者続々、薬届かず…医療現場パンク寸前 福島・いわき(2/2ページ)

2011年3月19日17時16分

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写真:いわき市立総合磐城共立病院の新生児集中治療室で診療する医師=18日、福島県いわき市、葛谷晋吾撮影拡大いわき市立総合磐城共立病院の新生児集中治療室で診療する医師=18日、福島県いわき市、葛谷晋吾撮影

 道路は通行できるのに、放射線の影響を心配してか、医薬品や食料が届かない。ガソリン不足で出勤できない職員が続出し、さらに原発への不安から県外へ避難するスタッフも相次いだ。「院長命令で病院に残れとは言えない」。医師は108人から約60人に、看護師は約730人から3分の2程度に減った。

 看護師は「このままだと、職員はみな過労で体を壊してしまう」と訴える。樋渡院長は「必要最小限のスタッフと物資で、最高の治療をめざそう」と医師らに呼びかける。

 入院患者のうち、軽症者ら約半数は退院や転院をしてもらった。妊産婦や新生児は原発のリスクを考え、全員を県外の病院へ移送。外来診療は4日前から急患に絞った。

 スタッフからは「入院患者と一緒に全員避難すべきだ」という声もあがった。樋渡院長はこう返した。「うちが閉まれば、重症患者はどこにも頼れない。国の避難指示が出るまでは最後まで残ろう」

 とはいえ、院長も自分の判断が正しいのかどうか、悩む毎日だという。「国には考えられる最悪のシナリオを示してほしい。そうすれば、最悪の事態を前提に患者を守る方法を考えられる」

 一方、患者のために県外への退避を決めた医師もいる。

 原発から約55キロ離れた郡山市の病院。医師3人は16日、がん治療をしている患者15人と東京へ向かった。

 「気分は悪くないですか」。東北新幹線が動いているJR那須塩原駅から乗った車中で、医師らは点滴やカテーテルをつけた患者一人ひとりに声をかけた。

 同行した医師は「点滴も輸血も満足にできない環境では、患者を危険にさらすと判断した」と言う。受け入れ先を探すのに苦労した末、つてを頼って大阪の病院などに避難先をようやく確保した。

 郡山の病院には、まだ約420人の患者が残る。医師は語る。「どこでもいい。患者を受け入れてほしい」(富田祥広、川口敦子)

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