oreoreoreoreの日記

2008-08-14

[]倒産会社の財務諸表を見てみるエントリー

アーバンコーポが再生法申請 負債2558億円、08年最大の倒産

 東証1部上場不動産会社、アーバンコーポレイションは13日、東京地裁民事再生法の適用を申請し、同日受理されたと発表した。負債総額は2558億円で、帝国データバンクによると今年最大の倒産となった。不動産市場の低迷で経営環境が悪化、信用力が低下し資金繰りが行き詰まった。

 記者会見したアーバンコーポの房園博行社長は「痛恨の極み。再生計画認可後、私を含め全取締役が辞める」と語った。


http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080814AT1C1300B13082008.html


昨日のWBSを見ていたら、このニュースをやってました。ちょうど、税理士試験が終わって、気が抜けまくって、何もやる気が起きないっていうか、ランニングとか読書とか、そういうことしかやってません。

なので、久しぶりに、何かに集中したいなあって思って、ちょっと財務諸表を分析してみることにしました。


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↑ここらへんに、財務情報があったので、直近の3年ぐらいを見てみることにしました。で、けっこうややこしかったので、自分でエクセルでシンプルにまとめた方がいいなあってことで、手入力でエクセルにまとめたのが、これ↓


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うーん、正直、これを見るだけだと、倒産会社のものには見えない。不動産会社のB/Sって見るのは初めてだけど、もし、これだけ見せられたら、正直そんなにひどい会社には思わないでしょうね。強いて言えば、自己資本比率が低いっていうか、右肩下がりなので、まあ、経営状況は良くないよなって思うけど、これで民事再生かって言われると、たぶん、そうは思わない気がします。


ってことで、次は、P/Lですねってんで、これ↓


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うーーん、そんなに悪くないんじゃん??不動産市場が一時活況だったのもあるかもしれないけど、これが民事再生の会社かって言われると、正直よくわからない。これだけ見たら、そう思わないと思います。

ちなみに、なんで営業利益率じゃなくて、経常利益率で見ているかというと、今回は、倒産会社を見ているので、財務健全性を見たいなあって思って、経常利益を見ようと思いました。要は、銀行さんへの利息を支払った後がどうなんだ、ってのを見たかったので。


もちろん、直近のP/L敗戦処理っぽい感じなんで、なげ売りな感じが見られますが、直前の3月期までは、P/L的にも、そんなに悪くないじゃん、って印象です。ふーん、これで民事再生か。


というわけで、じゃあ、原因はCFだろうなってんで、見てみるとこれ↓


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    /\___/ヽ
   /    ::::::::::::::::\
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::|
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::| うわぁ!!
.   |    ::<      .::|
   \  /( [三] )ヽ ::/
   /`ー‐--‐‐―´\

うわぁぁ、これはちょっとやばいなあ。どこのベンチャーだよ、って感じのCFですが、東証一部上場企業ですか、そうですか、マザーズじゃないんですかって感じですかね。第一印象は。


うーーん、なんだこりゃ。ひでえな。何が起きてるの??


というわけで、CFの各項目を追うことに決定。見てみると、


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わかりますかね。僕は、まあ、このへんかなって、あたりをつけた3項目を抜き出してみました。不動産だから、債権回収ができなくて倒産のパターンかな、って思ったらそうじゃなかった。ちなみに、これは、CFなんで、現金への影響を示しています。▲なら、期首に比べて期末に現金に与えた影響がマイナスだったってことです。

例えば、売掛金が期首に100あったとして、それを返したけど、当期に売掛金が200増えたとします。そうすると、結果として、期末の売掛金は200なので、期首+100ですよね。売掛金が100増えるっていうのは、現金が100減っているわけです。元ネタのCFを見てもらうと、▲がついているのがあると思いますが、それはそうやって、現金が減った増えたってのをやってるわけですね。


で、僕がうわぁぁって思ったのがこれ↓


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いくらなんでも、棚卸資産増えすぎだろっていう。これ、不動産会社だと普通なんですかね。っていうか、普通じゃないから民事再生に逝ったのかもしれないけど、これはやばいよなあ。これだったら、銀行さんもビビるわな、って感じですかね。


最初見たとき、P/L悪くないのに、なんでこんなにCF悪いの??って思ったら、こういうことだったんですね。つまり、シンプルに言えば、予定より売れなかったっていうお話しです。


ましてや、サブプライム問題、日本の景気後退、それでこんだけ棚卸資産が右肩上がりで増えていったら、銀行さんも金貸さないでしょうね。



というわけで、今年最大規模の民事再生の会社の財務諸表を見てみるエントリーでした。っていうか、すげー勉強になりました。こういう財務諸表もあるんですね。僕はCFの勉強ってちゃんとやったわけじゃないし、財務健全性の判定の勉強とかもちゃんとやったわけではないので、こういう事例研究をやると勉強になります。


税理士試験が終わってから、かなり腑抜けになってたんですが、おかげさまで、久しぶりに頭が集中しました。


【 追 記 】


 アーバンコーポは、東京や大阪など都心部で開発した土地や建物を国内外の投資ファンドに売却する不動産流動化事業を展開。だが、サブプライム問題の影響で投資ファンドにマネーが集まらなくなって物件が売れず、国内金融機関融資に慎重になった。首都圏などの分譲マンションの販売不振も顕著となり、建築資材の高騰が追い打ちをかけた。


asahi.com:朝日新聞のニュースサイト


財務諸表の分析がおもしろかったんで、他のニュースも見たりしてたら、こんなのがあった。


>だが、サブプライム問題の影響で投資ファンドにマネーが集まらなくなって物件が売れず、国内金融機関融資に慎重になった


サブプライムどうこう言う前に、僕が銀行員だったら、あのCF見た瞬間、金貸さないと思うんですけどね。。。

確かに、経常利益は悪くなかったけど、棚卸資産が倍々で増えてるんだぜ?あれ、不動産会社だとまともなの??だって、不動産に対する拙い知識だけど、不動産って、売れなかったら、すぐに価格落ちていくもんじゃないの??


正直、あのCF見る限り、僕みたいな素人でも、こりゃひでえなって思うし、


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財務諸表見る限り、このチャートが理解できない。もちろん、株式市場美人投票だってことはわかるけど、株価財務諸表って、あんまり関係ないんだなあって思います。B/SとP/Lしか見ないってことかな。


ただ、まあ、僕は不動産会社については素人なので、ああいうチャレンジングなCFが受け入れられる業界なのかもしれないですね。少なくとも景気が後退する前は。


あとで時間あったら、同業他社も見てみるかもしれないけど、あの財務諸表が業界のスタンダードだとすると、まあ、これからバタバタと倒産は続くだろうな、と思います。でも、ゼファーの件から、次の大型倒産まで早かったですね。。。次はどこなんだろう。。。


【 続きの記事 】

勤務くん勤務くん 2008/08/17 02:31 初めまして。最近ふとした拍子にこちらにたどり着きました。
古くから「勘定合って銭足りず」とは言いますけど、まさにその通りですね。流動性比率や自己資本比率だけでは分からない実態が炙り出され、会社の息づかいまで感じられそうな分析で、大変興味深く読ませていただきました。私も仕事(勤務税理士)として投資ファンドの人達とお付き合いがありましたが、「この人達はキャッシュフローしか興味がないんだな」ということを強く感じました。彼らにしてみれば投資家にキャッシュを分配するまでは、彼らの仕事は終わらないということなのでしょうが。
ところで、以前お勤めになっていた事務所では、同じような観点から新規顧客の獲得時(あるいは年次の契約更新時)に、顧問先のチェックとか実施されてましたでしょうか。うちの事務所は、形式的なのかもしれませんが、申告書作成の契約だけなのに、山のような社内手続があってうんざりです。さすがに財務分析まではしませんが、支払が遅れているお客様には「払ってもらえないと、契約できません」と言って督促しないといけない羽目になります。まぁ、事務所としてはリスク管理のうえで当然のことをしているのでしょうが、管理職としては本来の仕事(税務)以外の仕事が増えるのでイヤになりますね。
長文失礼致しました。

勤務くん勤務くん 2008/08/17 02:44 すみません、追加です。
橘玲(最初読めませんでした。女性かと思っていた)のマネーロンダリング、私も大好きですよ。よくここまで知ってるな、という、まさに「蛇の道は蛇」もとい「餅は餅屋」といった感じです。お奨めされている他の本も、読んでみたいと思います。
では

oreoreoreoreoreoreoreore 2008/08/17 10:05 >勤務くんさま
初めまして。現役の税理士の先生から興味を持って読んで頂くというのは大変光栄です!

なるほど、ファンドの人はキャッシュ・フロー見てるんですね。僕は今回、銀行さんって、キャッシュ・フロー見てないのかなと少しびっくりしました。こんなところに金貸すなよ、っていう。確かに、前の事務所で、顧問先の融資の案件のとき、銀行はCFは全く見てませんで、「担保取るから、形式的に売上だけ見るか」的な感じでした。。。

>顧問先のチェック
うーん、そんなのやりませんでしたね。。。先生の友達で優秀な弁護士がいたのもあるのかもしれませんが、顧問先のリスク管理なんて全くやってなかったと思います。「合理主義こそこの世の美徳」みたいな事務所でしたので・・・

税務以外の仕事が多いって、イヤですね。。。心中お察しいたします。

今月は、他にも財務分析的なエントリーを書こうと思ってますので、よかったら、また、いらして下さい。コメントどうもありがとうございました。

勤務君勤務君 2008/08/24 01:51 コメント返信有難うございます。
銀行融資の現場というのは経験がないのですが、企業買収⇒再建⇒売却して回収、という場合、途中の再建部分をすっ飛ばして「いくらで買っていくら回収するか」という議論をすることが多かったです(正確には、再建部分はちゃんとした経営コンサル部隊と別途検討してるというだけでしょうが)。その際、ファンド側から見ると税金というのは(利益に貢献しない)支出でしかないわけで、削れるだけ削れ、というのはごく自然な流れだったりします。でもって、買収の受け皿としてアメリカのLLCとかオランダのBVとか言い出す人がいると、国内法+租税条約で源泉する・しない、申告必要・不要を検討する必要がでてきて、もー大変、という感じです。思えば私にとっての所得税法って、161条から始まっているような気がしますが・・・・
思うんですが、中小企業の直接金融の道って無いんですかね?ジャンク債じゃないですけど、集めてプールしたうえで小口化して上場すれば、リスクは分散されるんじゃないかと思うんですが・・・ってサブプライムの二の舞になるかも。
そうすると中小企業にも監査が必要になって、負担が大きいのかもしれないですね。

oreoreoreoreoreoreoreore 2008/08/24 02:39 うーーん、ファンドとか買収の税務って難しそうですね・・・勉強になります!

海外関係って、僕なんかせいぜい、出版関係で、海外のライターさんの処理をするぐらいでした。(僕以外の人は、デイトレーダーの確定申告を担当して、100日分ぐらいの換算やっててヒーヒー言ってましたが。。。)

>中小企業の直接金融の道
少人数私募債とかはどうなんですかね。あんまし詳しくないですが、信頼できる仲間内でグルグルやって、リスク分散とかできないんでしょうか。

ただ、正直言って、そんなの流行ると、「じゃあ、税理士先生の印鑑をもらって」とかいう話しになりそうな・・・

僕がいた事務所の先生も、お客さんから、「中小企業会計指針の印鑑下さい」って言われて、困ってました(笑)

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