巨大地震の被災者の皆様にお見舞い申し上げます。
大震災の前と後では私たちの生活や意識に大きな変化が及ぶのは必至で、それは、とりあえず今回は難を逃れた地域も例外ではない。情報も物流もすべて相互につながっているので影響は避けられないし、一連の地震活動が終息したわけでもない。別の地域で大規模な地震が発生する可能性もあり、いまからでもいいから、いろいろな備えを怠らないようにしたいものだ。
私自身は11日は関西に出かけており、震度5強と伝えられた東京地方の揺れは体験していない。だが、小学生のときに横浜で経験した震度5の揺れの衝撃と恐怖はいまでも鮮明に思い出す。東北地方を襲った震度6の揺れと津波の恐怖は想像を絶するとしかいいようがない。
揺れの強さを実感したのは、土曜日に帰宅後、部屋を見回したときのことだ。部屋にはいろいろなものが落ちて、床が散らかっている。たとえば、CDやBDは棚の最上段から200枚ぐらいが床に落ちて、散乱していた。不思議なことに2段目より下のディスクはほとんど落ちていないが、これはおそらく上部ほど揺れ幅が大きかったためだろう。
それよりも驚いたのは、左側のスピーカーが斜めに倒れている光景を目にしたときだ。
リファレンスに使っているB&W「Signature Diamond」は重心が高い上に設置面積が小さく、大きな揺れが長引くと転倒しやすい。おそらく2本とも倒れているのではないかと予想はしていたのだが、実際は左側のみが途中まで倒れた状態でなんとか踏みとどまっていた。センタースピーカーに寄りかかるように傾いただけだったので、ユニットとキャビネットは奇跡的に無傷で、被害はウーファーのフレームの一部に小さな傷が付いただけで済んだ。いまのところ再生音にも影響は出ていない。
実際にその場にいなかったのであくまでも想像だが、スピーカーが転倒したのは、形状と揺れの大きさに加え、スパイクと受け皿を併用していたことが原因だと思う。スピーカーが傾いてスパイクが受け皿から外れた後、その受け皿が横に滑る。その結果、スピーカーが逆方向に傾いた時点で今度はスパイクが支えを失い、床まで到達。受け皿を使っていたときに比べて傾斜が大きくなる動きを繰り返すうちに、倒れてしまったのであろう。
この予想を裏付ける事実を、新試聴室に設置したSophia 3のスパイクと受け皿の関係に見出すことができた。Sophia 3は重さがSignatureDiamondの3倍(75kg)あるうえ、重心が低く、安定している。
一見するとまったく動いていないように見えたのだが、スパイク部分をよく見ると、ほとんどの箇所で受け皿の中心から外れた位置にずれていた。後方の1箇所は受け皿の位置から完全にはずれ、床に直接スパイクが刺さっていた。受け皿の高さが低いこともあり、転倒には至らなかったとはいえ、よく見るとスピーカー本体は当初のセッティング位置から数cmずれ、角度も変化していた。
震度5の揺れでこれだけの重量物が動くのだから、さらに強い揺れがきた場合は、スピーカー自体が人体や家具などに危険を及ぼすおそれがあり、危険度は高いと言わざるを得ない。
転倒を未然に防ぐためには、スパイクと受け皿を使う方法を見直す必要がある。相互にバラバラに動かないように、スパイクと受け皿をなんらかの方法で固定するのがベストだが、その前にとりあえず受け皿の高さは最小限に抑えるべきだろう。
重心が高いトールボーイ型スピーカーの場合は、国内メーカーのスピーカーのように、前後左右に広がったスタンドを工夫しない限り、倒れやすいことに変わりはない。実際、今回の地震では関東地方の販売店でも多くのトールボーイ型スピーカーが倒れるなど、深刻な被害があったと聞いている。
Signature Diamondは底面に5箇所のナットが埋め込まれているので、手持ちのアルミ材を使ってスタンドを自作してみようと思う。次の大きな揺れがいつ来るかわからないので、対策に猶予はない。