※このインタビューは2008年9月におこなわれました。 肩書等、当時のままになっています
東京電力株式会社 取締役社長 清水正孝氏
内永 まず始めに、スポンサー企業になっていただいたこと、そしてKDDI様に次いで御社の優秀な社員をJ-Win事務局にご出向いただいたこと、お礼申し上げます。
清水 社外の機関に出向することは、とてもいい財産になるんですよね。私も行きたいくらいです(笑)。
内永 このたびは社長に就任され、おめでとうございます。今は環境の変化などいろいろあり、本当に大変な毎日だと思います。
清水 会社は今、非常に難しい局面に立たされています。昨年の7月に発生した地震の影響により柏崎刈羽原子力発電所の全号機(7基)が停止したこともあり、各方面の方々にご迷惑をおかけしました。我々の基本的な使命である「電気の安定供給」が、柏崎刈羽原子力発電所の全号機停止により、現在の最大の課題になっています。それに加え、昨今の燃料代の高騰はすさまじく、H19年度は前年度比で約7,000億円、H20年度についてはさらなる燃料費負担が発生する見通しです。
内永 原子力発電というのは環境という観点からは優等生で、いろいろ問題があるにせよ、今後とも電力の基盤にならざるを得ないと思います。それが地震の影響で止まってしまい、代わりに火力に頼らざるを得ず、そういう意味では環境問題などさらにいろいろ問題が重なってきますね。
清水 原子力は温暖化問題やエネルギー供給の安定性という面では、切り札であることは間違いないのですが、それだからこそ、今まで以上に安全性や品質管理を徹底しなくてはいけないと思っています。いずれにしても、原子力発電所の停止や原油価格の高騰などの大きな課題に直面している現状は、会社始まって以来のことでしょうね。
とにかくこれらの課題を克服するために全力を挙げていくぞという気持ちと、それからこういう状況だと、難局を耐え忍んでいかなければならないということに視線がいきがちですが、それよりも前を見て、成長基盤を失わないようにしていくことのほうが大事だと思います。
内永 今は、瞬間風速が吹いている、しばらくたつと元に戻る、と誰しも思いたいわけですが、世の中はどうもそうではないかもしれませんね。
清水 成長基盤を失わないという観点から販売営業の面で、お客さまに役立つような新しい分野を開拓するということを積極的にやっています。機会があったらご覧いただきたいのですが、当社には「TEPCO電化ファクトリーI2(アイ・スクエア)」という施設があります。そこでは産業分野の機器を実際にデモンストレーションしています。産業分野のエネルギーというと、一般的には蒸気とか熱などを使うことが多いわけです。そこで我々が提案しているのは、この蒸気や熱を使う工程に、最新のヒートポンプ技術やIH(誘導加熱)技術を活かすことで高い生産品質・生産効率と環境性を実現する「電化ファクトリー」です。ビジネスの成長という意味だけではなく、環境問題やエネルギーの効率的な使い方、省エネなど、お客さまニーズに応じるとともに将来の成長につながっていくことにも地道に取り組んでいるんですよ。