福島第一原発:報道をはるかに超える放射能

死を覚悟する自衛官、国のリーダーにその認識はあるか

2011.03.18(Fri)  藤井 源太郎

国防

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 しかし、中性子線は鉛を透過するため、実際には半分程度しか遮蔽できません。

 なお、本年度から後継車両であるNBC偵察車の部隊配備が始まります。

 除染車3型(B)は、1995年の地下鉄サリン事件の際に出動し、除染剤を撒布していたことで有名です。

 放射性物質の除染を行う場合、真水による外部の洗い流しが有効なので、本車両では、装甲車両や街路から放射性物質となっている塵や埃を、除染剤や温水等によって除去(洗浄)します。

 しかし、本車両は部隊で使用している73式大型トラックをベースとしているため、β線以上の放射性物質から乗員を守ることはできません。このことは、73式中型トラックに搭載する94式除染装置についても同様に言えます。

ほぼ丸腰で放射能汚染地域へ向かう自衛隊員

 いわば、丸腰で汚染地域での除染活動を行うことになってしまいます。

 隊員が直接装着する個人装備には、化学防護衣、戦闘用防護衣と防護マスクなどがあります。化学防護衣は特殊ゴム素材による密閉型であり、夏場などわずか30分ほどで汗だくになる極めて作業効率の低下を招くものになっています。

 戦闘用防護衣は、3層の通気性のある繊維状活性炭布を使用しており、同じく活性炭フィルタの防護マスクを併用して身体を完全に覆いますが、放射線を完全に防ぐことはできず、放射性物質の吸引による内部被曝を防ぐものという意味合いが強いものです。

 このほか、圧縮空気を装面者に供給する空気マスクがありますが、マスク装着時は30分ほどしか作業ができません。

 これらの個人装備では、α線やβ線を防ぐことはできても、γ線やX線、中性子線などの放射線を防ぐことはできません。

 現在、恐らく放射性同位体である137セシウムなどからγ線や中性子線が出ているでしょうから、防ぐことは無理でしょう。

 上述の通り、近年、ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応や核・生物・化学兵器への対応といった、新たな脅威や多様な事態への実効的な対応を行うため、防衛省ではCBRNテロ対処装備の取得を行ってきましたが、取得途上にあることと、予算的制約により装備品が質、量ともに貧弱であることは否めません。

 ですが、今現在、福島第一原発における事象対処(原発事故の場合、事故レベルが決定するまで事象と呼ぶ)のため、全国から終結し統合運用されている自衛官は、これらの装備を用いて基準値以上の放射線を浴びながら、命がけで作業を行っています。

 被曝による自衛官の死傷者が、今後発生するでしょう。自分の生命が危険に晒されていることを知りながら、それでも多くの自衛官は、国民を守るために危険を顧みず、職務の遂行に当たっています。

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