2 命がけの災害派遣
福島第一原発所内での作業は、もはや年間許容被曝量をはるかに超えています。作業従事者の身体は、内部も外部も確実に放射線に汚染されています。命を失うことが目の前にあるにもかかわらず、命令に忠実に、職務の完遂を目指しているのです。
その証拠に、3月17日に人事院が、福島第一原子力発電所の関連作業に当たる一般職国家公務員に限り、放射線量の許容上限を従来の100ミリシーベルトから、250ミリシーベルトに引き上げる規則改正を行いました。これは自衛官にも準用されます。
これは、単純に、許容量を上げなければ作業ができないほど原発所内の放射線量が増加していることを意味しています。
ここで言う被曝限度とは実効線量限度のことで、これは外部被曝と内部被曝の集計で表されます。年間線量限度は50ミリシーベルトです。男性が緊急作業に従事する場合の実効線量限度は、100ミリシーベルトです。
政府や東電が発表している以上の放射能
これを、250ミリシーベルトに変更するということは、外部被曝だけを表す等価線量を300ミリシーベルト以上(目の水晶体)、1シーベルト以上(皮膚)にするということです。
政府や東電が発表している以上の放射線が、原子炉建屋付近に発生していると見て間違いないでしょう。
この危険な所内業務に従事しているのは、陸海空部隊ですが、特に陸上自衛隊中央即応集団隷下の中央特殊武器防護隊が中心的役割を果たしています。
中央特殊武器防護隊と聞くと、何だか凄い装備を持っていそうなイメージがありますが、そうではありません。
原子力災害で放出される放射性ヨウ素の予防という観点から見ると、ヨウ化カリウム薬剤が有効ですが、とても災害派遣自衛官全てに配布されているようには思えませんので、内部被曝も相当あると思います。
3月17日には、福島第一原発3号炉に対して、CH-47(陸上自衛隊)2機による空中からの給水が合計4回実施されました。
3号炉は、MOX(ウランとプルトニウムを混合した)燃料を使用しているため、特に放射線が強いと思われるので危険度が極めて高い状況にありましたが、ヘリ隊クルー19人はやり遂げました。
ただ、給水の有効性、搭乗員や機体の被曝リスクなどの観点から、今後再び空中給水は困難が予想されます。
同日、3号炉に対して地上からは、陸海空3自衛隊により、原子炉高圧放水可能な大型消防車5台による放水が34分間(約30トン)行われました。
放射線量は明言されていませんが、先ほど述べたように相当高い放射線量の中で、原子炉建屋から10メートルという至近距離から放水しました。この大型消防車も通常車両ですので、放射線対策は講じられていません。まさに、自衛官は命がけで前線に出たのです。
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