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島根の自画像:知事選・県議選を前に/3 医師不足 /島根

 ◇確保へ体制構築急務

 邑智郡3町の医療を担う公立邑智病院(邑南町)で先月20日、内科医が面接を受けた。26歳の坪井博文医師は「過疎地域に寄り添う医療に従事したい」と意欲を語った。脳神経内科専門医を目指していたが、医師不足に苦しむ病院での研修で「専門外も務める医師」の必要性を痛感し、決意したという。

 慢性化した県内の医師不足。大田2次医療圏の中核・大田市立病院は昨年、外科・整形外科医の常勤不在で「救急告示病院」指定を取り下げた。雲南総合病院(雲南市)も眼科、精神科に加え新年度から脳神経外科常勤医が不在になる。

 人口10万人あたりの医師数は、県全体では全国10位の264人(08年現在)だが、県内7圏域中で全国平均225人を上回るのは出雲(429人)と松江(242人)のみ。最少の雲南圏は129人だ。不足圏域の各病院は独自に医師確保に努める。邑智病院では4月から、坪井さんとベテランの内視鏡内科医(61)が常勤医として着任する。隠岐病院(隠岐の島町)は産婦人科常勤医の招へいに成功し、4月から初産の対応が可能になった。大田市立病院も昨年6月、消化器内科医である金藤英二副院長が着任、内視鏡検査復活にこぎ着けた。

 明るい兆しのようにも見えるが、圏域を担う2次医療機関の医師不足が、重篤患者を受け入れる3次医療機関への患者集中をもたらしているのでは、と県は推測する。

 県立中央病院(出雲市)で昨年11月10日と今年1月18日、679の病床が満杯になる異常事態が起きた。同病院は、隣接圏域である大田、雲南から軽・中度の患者が来院したと推定。重篤患者の受け入れ余地を確保するため、他の医療機関への分担を市消防本部と出雲医師会に要請した。同病院の三島俊行総務部長(県県立病院課長)は「2次医療機関の医師不足は確実に影響している」と分析する。

 県は、全体で人数を底上げしない限り医師不足や3次医療機関へのしわ寄せは続くと判断。「地域医療支援センター(仮称)」を設置し、医師確保や地域への均等配分、医師が研究分野を犠牲とせずに地域医療に従事できるキャリアプラン作りを進める方針だ。

 邑智病院の石原晋院長は「若い医師が地域医療とキャリアを両立できるよう、公的機関による根本的なシステムを一刻も早く構築すべきだ」と強調する。個人や病院の努力にとどまらない医師の確保・供給体制が急がれる。【鈴木健太郎】

毎日新聞 2011年3月19日 地方版

 
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