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発明の名称 γ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平6−180389
公開日 平成6年(1994)6月28日
出願番号 特願平4−352400
出願日 平成4年(1992)12月11日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】松永 圭司
発明者 穴山 義正 / 栃内 三彦 / 服部 清男
要約 目的
γ線、X線及び中性子線の高性能且つ効果的な同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材に好適な成形品を提供する。

構成
中性子線遮蔽に優れた熱硬化性樹脂100重量部にγ線、X線遮蔽に優れた酸化鉛、酸化タングステン等高密度無機物質50〜2000重量部を混合し、密度2.0以上に硬化成形することにより、高密度でありながら高い水素原子密度を持ち、γ線、X線及び中性子線の高性能な同時遮蔽が可能な成形品を得る。前記原料に水素吸蔵合金を添加し更に中性子線遮蔽性能を増強し、また原料混練時に脱泡混練及び消泡剤を添加することにより成形品密度を高め各遮蔽性能を向上させる。
特許請求の範囲
【請求項1】 フェノール樹脂,エポキシ樹脂,クレゾール樹脂,キシレン樹脂,ユリア樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の群から選ばれた1種以上の熱硬化性樹脂100重量部にPb,W,Cr,Co,Cu,Fe,Mn,Mo,Ag,Ta,Cd,Dy,Eu,Gd,Au,In,Hg,Re,Sn及びUの元素単体又は化合物の群から選ばれた1種以上の高密度無機物質50〜2000重量部を均一混合し、該混合物の成形体密度が2.0以上になるようにしたことを特徴とするγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材。
【請求項2】 前記熱硬化性樹脂100重量部と前記高密度無機物質50〜2000重量部にさらに水素吸蔵合金1〜50重量部を均一混合し、該混合物の成形体密度が2.0以上になるようにしたことを特徴とするγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材。
【請求項3】 請求項1記載の混合物の混合に際し、混合溶液の脱気混練及び混合溶液への消泡剤の添加の両方、又は前記両者の何れか一方が施されたことを特徴とする請求項1記載のγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材。
【請求項4】 請求項2記載の混合物の混合に際し、混合溶液の脱気混練及び混合溶液への消泡剤の添加の両方、又は前記両者の何れか一方が施されたことを特徴とする請求項1記載のγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、γ線、X線及び中性子線を同時に遮蔽する放射線遮蔽材料に関するものであり、放射線施設や、放射性廃棄物、核燃料、ラジオアイソトープ(RI)等の貯蔵、輸送容器及び関連機器等の放射線遮蔽材料に関する。
【0002】
【従来の技術】放射線の中でγ線及びX線の遮蔽は、どのような物質も質量減弱係数に大差はなく、密度の大きい物質の方が線減弱係数が大きくなり、遮蔽体の厚みが小さくて済むので、一般には鉛や鉄、コンクリートなどが使われている。中性子線の遮蔽には主にポリエチレンやパラフィン、ホウ素を混入したエポキシ樹脂などの高分子材料や水などの水素を多量に含有する材料が用いられている。またコンクリートも水素を含有しているので、遮蔽を兼ねた構築材料として用いられる。中性子線の遮蔽には水素が非常に重要であり、物質中に照射された速中性子は、物質中の水素原子との弾性散乱によりエネルギーを失い熱中性子となり、熱中性子は水素やその他の元素の原子核により捕獲される。熱中性子は熱中性子捕獲断面積の大きな原子核によるほど捕獲され易いが、この場合二次γ線が放出される場合があるので、中性子線遮蔽にはこの二次γ線の遮蔽も含めて考えなければならない。従って、中性子線の遮蔽、あるいは中性子線とγ線、X線を同時に遮蔽する場合には、ポリエチレンやパラフィン、水などの中性子線遮蔽材と、鉛や鉄などのγ線遮蔽材を積層させるなど併用しているのが現状であり、特に中性子線を伴う放射線施設や廃棄物、核燃料、RI等の貯蔵、輸送容器、及び関連機器の遮蔽は、密度の大きいコンクリート、鉛又は鉄等で構築、製造するとともに全く別の遮蔽材としてポリエチレン、パラフィン又は水等により遮蔽体を構成するか、コンクリート構造体のみで遮蔽体としている。
【0003】コンクリートのみを遮蔽体として用いる場合は、その遮蔽能力が充分でないため相当の壁厚を必要とし、施設の使用可能面積が小さくなる等の問題がある。又コンクリート構造体は、その吸水性により放射性汚染水を吸水する恐れがある為、防水塗装を施したりポリマーコンクリートを上塗りしたりしなければならず、非常に高価になる欠点がある。またコンクリートや鉄、鉛等とポリエチレンやパラフィンなどを組み合わせる場合は、接着性が悪く施工、製造が困難である為、特殊工法を用いなければならず問題が多い。更に両者の熱膨張係数が著しく異なるために、温度の差により罅や反り、脱離等も起こるので、施工、製造後の温度管理の面でもかなりの注意を要する。またポリエチレンやパラフィンなどは比較的低温で溶融し、特にパラフィンは発火しやすいため耐熱耐火に細心の注意が必要とされ、結果的に非常に高価な施設や製品となってしまう。また中性子線の遮蔽に水を用いる場合は、液体であるため使用箇所、使用方法等が制限されてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、中性子線とγ線、X線を同時に遮蔽することにより、上記欠点となる二重構造の必要性を無くすとともに、充分な強度、優れた成形性、加工性を有し、耐熱性、疎水性、耐薬品性に優れた低コストの新しいタイプの放射線遮蔽材を提供することを目的とする。従来、放射線遮蔽材はγ線、X線用と中性子線用とに分けて考えるのが一般的であった。γ線、X線用遮蔽材には密度の大きい物質が有効であるのに対して、中性子線用は水素を多量に含んでいる物質の方が効果が大きいため、概念的に低密度の物質が有効とされ、両遮蔽材には互いに矛盾が生じ共用できないと考えられていた。さらに、高密度無機物質と合成樹脂から成る組成物の水素含有量(重量%)は、その母材となる樹脂単独で得られた成形品のそれよりも著しく減少してしまい、中性子線遮蔽能力もそれに伴い低下するかのように考えられていた。本発明者らは、中性子線遮蔽において重要なのは単に水素の含有量(重量%)等ではなく、単位体積当たりの水素原子数(水素原子密度)であることに着目し、水素を多量に含んだ熱硬化性樹脂材料中に高密度無機物質を混入して得られた組成物の水素原子密度が、その母材樹脂単独のものに比べて水素含有量(重量%)のような著しい低下を示さず、中性子線遮蔽効果に当たっては、その母材となる樹脂単独の場合よりも、寧ろ優れた性能を持つ場合があるという現象を見い出し本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、フェノール樹脂,エポキシ樹脂,クレゾール樹脂,キシレン樹脂,ユリア樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の群から選ばれた1種以上の熱硬化性樹脂100重量部にPb,W,Cr,Co,Cu,Fe,Mn,Mo,Ag,Ta,Cd,Dy,Eu,Gd,Au,In,Hg,Re,Sn及びUの元素単体又は化合物の群から選ばれた1種以上の高密度無機物質50〜2000重量部を混合し、該混合物の成形体密度が2.0以上となるようにしたことを特徴とするγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽が可能な放射線遮蔽材が提供される。
【0006】本発明における放射線遮蔽材は、まず、水素を多量に含んでおり、且つ熱に強い熱硬化性樹脂を用いるのが望ましく、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を単独または複数種を混用する。熱硬化性樹脂は充分な強度、優れた成形性、加工性を有し、比較的耐熱性が大で、その選択によっては150℃以上での使用が可能である。また、高密度無機物質は、なるべく密度の大きい物質を用いるほどγ線、X線遮蔽効果が向上し、熱中性子捕獲断面積の大きな元素又は該元素を多く含む物質ほど中性子線遮蔽に効果があるため、これらを兼ね備えた無機物質を用いるか、組み合わせることによって、一層優れた放射線遮蔽材の製造が可能である。高密度無機物質としてはPb,W,Cr,Co,Cu,Fe,Mn,Mo,Ag,Ta,Cd,Dy,Eu,Gd,Au,In,Hg,Re,Sn及びUの元素単体又は化合物(鉱物を含む)の群から選ばれる1種又は複数種を粉体或いはペレット状態で用いる。
【0007】熱硬化性樹脂に添加する高密度無機物質の量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し高密度無機物質50〜2000重量部の範囲が好ましく、50重量部未満では、γ線、X線の遮蔽効果が劣り、2000重量部以上では、中性子線の遮蔽効果が低下するとともに成形品が脆くなり成形品の機械的強度が劣る。中性子線、γ線等の各種放射線が共存する環境での遮蔽には、各種放射線の強さや特性により、上記配合割合の範囲内で、配合割合を適宜設定し、最も効果的な遮蔽を行うことができる。なお、上記配合物を硬化成形した場合、成形品の密度が2.0以上であることが必要である。この値未満では、γ線,X線遮蔽能力が劣り、同時遮蔽には不適となる。
【0008】熱硬化性樹脂溶液に高密度無機物質の粉体または顆粒を混練する場合の過程において、空気の巻き込みや、樹脂の希釈剤に用いられる揮発性物質等が残留し組成物中に留まることにより、充分な密度の成形体が得られない場合がある。この現象を防止するため、減圧及び真空状態で混練する脱泡混練や、表面張力を小さくして気泡等を材料中から抜け易くする消泡剤を添加することが成形品の密度向上に有効である。また、この操作により、各放射線の遮蔽性能の向上にも役立つことが確認された。
【0009】次に、本発明において、熱硬化性樹脂に高密度無機物質とともに、比較的高い解離温度を持ち、高温まで水素を化合保持する水素吸蔵合金を、添加混入することにより、高密度を保持したまま、水素原子密度の更なる増加が可能なことが見い出された。水素吸蔵合金は、樹脂等の高分子化合物と同等の水素原子密度を持ちながら、高分子化合物よりはかなり密度が高いので、中性子線及びγ線、X線の同時遮蔽に非常に有効である。水素吸蔵合金は水素ガスと反応させることにより、水素を金属水素化物として貯蔵できるものであり、Ti系、La系(R系)、Mg系、Ca系等が知られているが、本目的の為には常圧での水素解離温度の高いMg系が最適と考えられ、その添加量は製品コスト等を考慮して熱硬化性樹脂100重量部に対し1〜50重量部の範囲が好ましい。
【0010】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。遮蔽性能の試験は、各放射線の線量当量率を1/10にする各試験材の厚さ(1/10価層)を求め、それによって評価を行なった。試験には中性子線源として252Cfを、γ線源として60Coを用いた。
【0011】[試験1]熱硬化性樹脂として液状のビスフェノール系変性エポキシ樹脂(硬化剤:アミン系)を用い、それに高密度無機物質として酸化鉛(II)(比重:9.53)、酸化タングステン(VI)(比重:7.16)の粉体を選択し、それぞれ表1に示す配合割合に従って配合し、脱気混練及び消泡剤添加(混合物に対し、シリコン系1重量%)を行ない、成形型に注入し60×60×2cmに硬化成形したものについて、その密度及び遮蔽性能を測定し、水素含有量(重量%)及び水素原子密度を求めた。なお、比較例として熱硬化性樹脂単独(試験番号No.1),ポリエチレン,コンクリート,炭素鋼(SS41)についても行なった。結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】表1より、実施例であるNo.2〜No.7の試験材は比較例であるNo.1のエポキシ樹脂単独の場合と比べて、同等或いはそれ以上の中性子線遮蔽能力を有しており、なお且つその密度の上昇によりγ線遮蔽能力も増しており、γ線、X線遮蔽能力と中性子線遮蔽能力を高性能に兼ね備え持つことが明かである。他の比較例であるポリエチレン,コンクリート,炭素鋼(SS41)と比較してもγ線遮蔽能力,中性子線遮蔽能力を統合的に考慮した場合、いずれの実施例でもその優位性が明かに認められる。また、その配合割合を変えることで、γ線、X線遮蔽性能と中性子線遮蔽性能を任意に設定でき、その場の状況に合わせたもっとも効果的な遮蔽材を製造することが可能である。
【0014】[試験2]試験1のNo.6の試験材について消泡剤の添加、或いは脱気混練のどちらかを行わない場合、又はその両方を行わない場合について、その密度、遮蔽能力について比較した。消泡剤は樹脂、無機物質混合物に対しシリコン系消泡剤を1重量%添加し、脱気混練は減圧により行なった。結果を表2に示す。表2から、高密度遮蔽材を製造するに当たって、消泡剤の添加及び脱気混練が相当な効果があり、高密度になることは勿論、それぞれの遮蔽性能にも大きな影響を与えていることが明かである。
【0015】
【表2】

【0016】[試験3]試験1のNo.4,No.5における酸化鉛及び酸化タングステンの割合を減らし、代わりに水素吸蔵合金としてMg−Ni系を混入した試験材について、その密度及び水素原子密度、遮蔽性能の評価を行なった。Mg−Ni系水素吸蔵合金は通常状態で300℃以上の高温まで水素を保持することができる。なお、No.14、No.15の試験材も脱気混練及び消泡剤の添加を行なった。結果を表3に示す。表3より、水素吸蔵合金の混入によって得られたNo.14、No.15は、水素吸蔵合金を混入していないNo.4、No.5と比較して、それぞれ同等のγ線遮蔽能力を持ちながら中性子線遮蔽能力が向上しており、その優位性は明かである。
【0017】
【表3】

【0018】
【発明の効果】本発明による放射線遮蔽材はγ線、X線及び中性子線の同時遮蔽能力が、従来の方法の積層タイプやコンクリートよりも非常に優れているため遮蔽材のコンパクト化が図られる。また原料の配合割合を適宜設定することにより、最適な遮蔽材の設計が可能である。更に、熱硬化性樹脂や高密度無機物質の種類、製造方法等を選択することで、使用上充分な機械的強度及び耐熱性を持たせた遮蔽材の製造が可能である。また母材となる熱硬化性樹脂の成形などに関する技術は、既に種々の分野で定着しており、本発明品はそれらの技術、設備等を利用して製造することが可能であるため、より安価で安定した遮蔽材の提供が可能であるなどの利点がある。


 
 


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