中部電力はこの1週間、東日本大震災で電力不足に陥った被災地への支援など対応に追われた。同時に東京電力の原発事故を受け、中部電の原発戦略にもかつてない逆風が吹いている。浮き彫りになった様々な課題に中部電はどう対応していくのか。
「東日本への支援には制約がある。それでも何か可能性がないか、あらゆる方法を検討しているんだ」。こう言葉を振り絞る中部電首脳の表情は、疲労の色が日に日に濃くなっている。
東電管内では電力不足が続く。だが東電・東北電と中部電とでは電力の周波数が異なり、中部電に供給余力があっても国内で3カ所しかない周波数変換設備(FC)の能力(100万キロワット)以上の融通はできない。中部地域でも震災直後から家庭や商業施設などで節電の動きが広がったが、変換設備の壁があり効果は限定的だ。
中部電が運営する東清水FC(静岡市)では14年に能力を現在の3倍の30万キロワットにする計画がある。「仮の送電線を通して前倒しで30万キロワットにできないか」。周波数の壁を越えるためのか細い可能性が関係者の間で日夜議論されている。
上積みできるのは人的支援だ。11日夜から原子力技術者や配電設備の復旧支援要員を順次派遣し、16日時点で原子力技術者は後方支援を含めて21人、配電設備の復旧要員は330人にまで増強した。だが中部電首脳は「被災地の指揮命令系統も混乱している。応援の追加要員もいるが待機中だ」と苦しげに語る。
自らも強い逆風にさらされている。東電福島第1原子力発電所の事故で原発の「安全神話」は崩壊。2月24日に発表した経営ビジョンで原発推進を打ち出したばかりの中部電にも、市民からの厳しい視線が突き刺さる。
「進められる状況ではない」。静岡県の川勝平太知事は17日の記者会見で、中部電の浜岡原発(同県御前崎市)の6号機計画にくぎをさした。6号機は2015年に着工し、18年以降に営業運転を始める計画。だが大震災で危機管理や震災対策の常識は覆った。
4号機で計画していたプルサーマル発電も同様だ。本来は今年2月に開始予定だったが、耐震安全性に関する国の評価遅れで延期。12年初めに予定される次の定期検査での実施が有力視された。だが御前崎市の石原茂雄市長は15日、「大変厳しい状況に追い込まれた感じがする」と述べ、早期実施に疑問を呈した。
「地元に説明をしながら丁寧に進めていく。この姿勢に変わりはない」。今後の原発戦略について中部電はこう説明する。しかし6号機計画だけでなく、30年ごろまでに浜岡以外の新規立地という構想も当面は議論できる環境ではなくなった。今や定期検査のため運転を停止している浜岡3号機の再起動のタイミングに注目が集まる状況だ。
大震災を受け、今後は製造業などが西日本に拠点を移管することも予想される。国内の電力の需要構造がどう変化するのか予想できない。一方で国内の原発政策は大きな十字架を背負った。その中で中部電は安定供給の継続を求められる。
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