東日本大震災で7割以上の世帯が津波に流された岩手県陸前高田市。約1250人が避難生活を続ける市立第一中学(生徒数297人)では、自らも被災者として身を寄せる同校の生徒たちが、率先して救援物資の運搬やお年寄りの手助けを始めている。中には家族の安否すら分からない生徒もいるが「街を立て直すために、できることから始めよう」と立ち上がった。門間健一副校長は「互いに助け合い、人の痛みの分かる大人に成長してほしい」と希望を託している。【稲垣衆史、石山絵歩、内橋寿明】
「手が空いている人は手伝ってください」
地震発生から6日目の16日。救援物資を積んだトラックがグラウンドに到着し校内放送が流れると、制服やジャージー姿の生徒たちが駆けつけ、大人と一緒に衣装ケースを運び始めた。
白い息を吐きながら布団と毛布を両手いっぱいに抱えた中学3年の伊藤光君(15)。力自慢で「重いものは任せて」とお年寄りの荷物運びも手伝っている。高校生の兄は無事だったが、自宅は流され、両親と今も連絡が取れていない。
両親のことばかり考えてふさぎ込んでいたが、避難所で助け合う被災者たちを見て「若くて元気な僕たちこそ力を出して協力したい」と思うようになった。
生徒たちは地震当時、市中心部の高台にある同校で15日に行われるはずだった卒業式の予行演習をしていた。
「自分から行動するタイプではなかった」と言う菅野翔吾君(14)は肩を寄せ合う被災者たちを見て、率先して玄関の掃き掃除をしている。安否が分からない同居の祖父のことを考えると胸は張り裂けそうになるが「みんなが嫌がるトイレ掃除もやります」。佐々木香澄さん(15)は「学校にいて助かった私たちが頑張らないと」と小柄な体で布団を運び込む。吉田円香さん(15)は被害を免れた自宅から自分の服を持ち出し、避難者に配った。
「お世話になった地元の人のためにできることは何でもやりたい」
毎日新聞 2011年3月17日 10時28分(最終更新 3月17日 11時13分)