東日本大震災は、茨城県にも容赦なく牙をむいた。しかし、救援物資は多数の死傷者を出した東北地方が優先され、水戸がある県央や県北、鹿行地区ではガソリンが枯渇寸前。水道は止まり食料も大幅に不足する中、隣接する福島県の東電原発が放射能の追い打ちをかけている。“忘れ去られた”被災地から、深刻な悲鳴が聞こえてきた。
茨城県は、震災で17人が死亡したほか、因果関係が不明の死者が5人、41人が重傷。80棟が全壊し、半壊と一部損壊は1万2000棟超、2000棟が床下浸水の被害を受けている。
被災地域のガス、水道は寸断されたまま。JR常磐線、常磐道の基幹交通網も完全にストップ。現在、県内499の避難所に6万2734人が身を寄せ合っている。
神栖市在住の70代主婦は悲鳴を上げる。
「やっとついたテレビの報道は東北ばかり。もちろん、被害は比べものになりませんし、ご苦労も十分分かっていますが、茨城は陸の孤島と化し、見捨てられたような気分になります」
放射能の不安も深刻だ。ひたちなか市の男性(65)は、空気中の放射線量が通常の100倍といわれる毎時5・5マイクロシーベルトを観測した15日、都内の娘の家まで、一般道で4時間かけて妻とともに避難した。
「ひたちなかは、1999年のJCO臨界事故で、放射能の怖さをイヤというほど思い知らされた場所。食料も水も不足しています。ガソリンメーターとにらめっこしながら、何とか東京にたどり着きました」
医療状況も大ピンチだ。県北最大級の医療機関、日立総合病院(日立市)の職員は「ガソリン不足でスタッフの出勤が難しく、急患の手術もできません。健康調査や精神的ケアにはとても人をさけない。一刻も早い食料、水、ガソリンの補給してほしいです」と窮状を訴える。
茨城出身のタレント、磯山さやかは自身のブログで「ローカル局が(茨城には)ないのが(報道されない)理由かもしれません」と、茨城県の状況を心配。コメント欄を情報交換や安否確認に使うよう呼びかけている。