目の前にいるなのはとフェイトのシグナム達への言動に堪忍袋の尾が切れてしまった零は、遂にはやての目の前で殖装し、ガイバーゼロとなった。その姿になのはとフェイトは驚き、はやても驚きを隠せず唖然としていた。
その戦闘が開始される数時間前、アースラにいたリンディはユーノから連絡を受けていた。その内容は以前クロノから受け取ったガイバーに関することだった。
「何ですって!?あのガイバーと呼ばれる存在が過去に存在していたですって!?」
『はい、しかもその存在していた時代なんですが・・・・ちょうど【アルハザード】が存在していた頃らしいんです』
ユーノから伝えられた【アルハザード】という世界・・・・それは遥か古代に存在していたとされている別名【忘れられし都】と呼ばれる古代文明で、次元と次元の狭間にあるとされている伝説上の世界。そこには死者ですら蘇らせる秘術が存在していたという。
『それで、ガイバーというのは、この書物によると古代文明・・・・それもアルハザードと同等か、それ以上の技術力を持っていた文明が作り出した生体兵器だそうです!』
「生体兵器ですって!?」
ユーノからガイバーという存在は、生体兵器であることを告げられたリンディは驚きの声を上げる。しかしもしガイバーが生体兵器だとするのなら、あの戦闘力や武装に納得が行く。ガイバーの武装などは明らかに度を越えている質量兵器であり、時空管理局の腕のある武装局員が束になっても、たった一人のガイバーを倒せるかどうか怪しいものだった。
リンディは一先ずこの事をなのはとフェイトに伝えるべく、連絡を取ろうとした時だった。海鳴市周辺には通信妨害の類の魔法が掛けられ、通信ができない状況なってしまっていた。
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海鳴市のとあるビルの屋上・・・・そこではなのはとフェイトに攻撃を仕掛けるガイバーゼロの姿があった。はやてを傷つけ、シグナムとシャマルとヴィータとザフィーラを壊れた機械扱いをするなのはとフェイトに怒りを露にしたガイバーゼロは、その怒りを込めた拳をなのはに向けて放った。
なのはは当然の如く片手を出して“青色”の魔力障壁を展開、ガイバーゼロの拳を受け止めるが、逆に障壁ごと自分が押し負ける結果になった。
「なっ!?何だこの威力は!?」
ガイバーゼロの拳の威力は、なのはを障壁ごと突き飛ばすほどの破壊力を持っていた。その威力になのはは驚きの声を上げる。しかも間髪いれずガイバーゼロはなのはに向かって突撃し、繰り返し拳を魔力障壁にぶつけてくる。
その攻撃に初めは片手で防げていたが、いつの間にか両手で支えないと障壁の維持ができない状態になってしまった。ガイバーゼロがこれほどの力を引き出している理由・・・・それはガイバーのコントロールメタルが、零の怒りによって強殖装甲の能力を向上させているからだった。
「ハァァァァッ!!」
なのはの状態を見ていたフェイトは、障壁を殴り続けているガイバーゼロの後ろから頭に狙って蹴り飛ばそうと、右足を勢いよく振り被ってきた。これが頭に命中すれば、脳震盪を起こして最悪相手を昏睡状態にできるとフェイトは踏んでいた。
しかしガイバーゼロのヘッドセンサーは奇襲を仕掛けようとしているフェイトの存在を見逃さず、振り返りながら後ろから迫るフェイトの右足を左手で掴むと、そのままなのはに向けてフェイトを投げつけた。
『うわぁぁぁっ!!』
ガイバーゼロに投げつけられたなのはとフェイトはそのままビルの壁に向かって飛ばされ、二人共ども壁を打ち抜いてビルの中へと消えていった。ガイバーゼロは二人を追うためにビルに接近すると、そこには思いがけない者がいた。なんとそこには、なのはとフェイトがおらず、以前シャマルに闇の書を使わせようとしていた仮面の男がいた。しかも二人とも全く同じ姿で・・・・・
「何!?どういうことだ?何故仮面の男が・・・・しかも二人?」
さすがのガイバーゼロも、先程まで戦っていた少女の姿ではない別の人物がいたことに驚く。しかもヘッドセンサーを駆使しても周囲に目の前の仮面の男ら以外の存在がないことから、目の前にいる仮面の男らが何かしらの事をしていたのではないかと思った。
ガイバーゼロが知らぬも同然・・・・先程までのなのはとフェイトは、仮面の男が変身魔法を使って化けていたからであった。
実はシグナム達がなのはとフェイトと戦っていた時、突然仮面の男がなのはとフェイトをバインドで拘束し、シグナムやシャマル、ヴィータまで拘束してしまったのだ。そしてあろう事か闇の書を手にシグナム達のリンカーコアを闇の書に吸収させてしまい、念話が通じない事に心配になって駆けつけてきたザフィーラまで吸収し、消滅されてしまったのだ。
そして仮面の男は、本物のなのはとフェイトを四重のバインドにクリスタルケージに閉じ込め、その後自身をなのはとフェイトに化けてから、はやてと零を呼び出したのだ。
仮面の男らは痛みを堪えつつ起き上がると、片方の男は手にカードのようなモノを四枚出現させ、ガイバーゼロに向けて投げ込むと、ガイバーゼロの目の前で縄状に変化し、ガイバーゼロの上半身を拘束した。
「ぬう!?」
「貰った!!」
バインドで拘束されたことでガイバーゼロが身動きを取れないと悟ったもう一人の仮面の男は、右手を構えてガイバーゼロに向かって飛び込んできた。しかしガイバーゼロもそのままでいる訳でもなく、両腕の高周波ソードを展開させて上半身を縛り付けていたバインドを切り裂いた。
「何っ!?」
仮面の男の放ったバインドはなのは達やシグナム達にも使用した強固なバインド、それをたやすく切り裂いたガイバーゼロに驚いている隙を突かれ、殴りこんできた仮面の男は逆にガイバーゼロの放ってきた右ストレートの拳を腹部に受けてしまった。その強烈な拳によって肋骨にダメージを負ったのか、仮面の男はそのまま落下しそうになるが、もう一方の仮面の男が助けに来た。
「ほう、どうやら苦戦しているようだな。アリアにロッテ・・・・」
突然何処からか男の声が聞こえると、ガイバーゼロに向かって火の玉が飛来し、ガイバーゼロは後ろに下がって回避すると、仮面の男ら二人の前に飛行魔法を発動して空中に浮かぶグラーベが現われた。
「グラーベか?何しに来た!?」
「お前らでは手に負えないだろう。こいつは俺が相手をしてやるから、とっとと消え失せろ。この負け犬・・・いや、負け猫と言うべきか?」
仮面の男に話し掛けていたグラーベは、そのままガイバーゼロのほうを向き、仮面の男らは足下に魔法陣を展開してその場から消えた。
「さあ、邪魔者はいなくなったし、この前の続きと行こうか・・・・アムド!!」
グラーベの叫びに呼応して、背後から紅い強殖装甲が出現し、グラーベはガイバーブラッドへとなり、両腕の高周波ソードを展開させてガイバーゼロに斬りかかって来た。ガイバーゼロはこの間と同じように周波数と同じにしてソードをぶつける。それによってお互いの高周波ソードは威力が相殺し合い、ただの剣と剣とのぶつかり合いとなった。
だが、ガイバーブラッドとガイバーゼロとの戦闘は以前初めて戦ったより熾烈を極めた。その理由は、ガイバーブラッドが以前と比べて強殖装甲の性能を引き出していたからだった。
ガイバーゼロは距離を取りながらヘッドビームで攻撃を仕掛けるが、ガイバーブラッドに悉く回避され、逆にガイバーゼロがビルの間に逃げ込んで隙を伺おうとしたが、壁の向こうにいるガイバーブラッドがヘッドビームで攻撃し、ガイバーゼロの目の前を赤い光線が通り過ぎていった。
「くっ!?まさか、ガイバーの能力をもう理解したのか!?」
「これは最高の鎧だな!!これさえあればどんな不可能な事でも可能にできそうだ!!」
ガイバーゼロは短時間の内に強殖装甲の能力を理解したガイバーブラッドに驚いていた。と言っても零が自分自身ガイバーの能力をどれくらいで理解できたかは分からなかったが・・・・ガイバーの能力に完全に優越感を感じているのか、グラーベは笑いながらガイバーゼロに攻撃を仕掛けてくる。
さすがのガイバーゼロも以前に存在していた能力差がなくなってしまい、徐々にガイバーブラッドの格闘能力にガイバーゼロが押され始めてしまった。
「くっ!!」
「ははははっ!!どうした?どうした!?」
ガイバーブラッドの格闘能力にガイバーゼロは防御もままならなくなり、とうとうガイバーブラッドの攻撃がガイバーゼロに当たるようになってしまった。そしてガイバーゼロはガイバーブラッドの右ストレートによってビルの壁にめり込んでしまった。
「がはっ!ごふっ!!」
「ふふふっ、この力を持つ者は私一人でいい。貴様もあのプログラムども同様に、この手で殺してやるよ・・・・」
壁にめり込むガイバーゼロに、ガイバーブラッドは左腕でガイバーゼロの首を締め上げながら空中にその身を晒す。ガイバーゼロは体を動かそうとしたが、先程までのダメージのせいで体を動かす事ができなかった。
「だが、ただ殺すだけでは面白くない・・・・そうだな、まず左腕を!!」
「がぁぁぁぁぁっ!!!」
「さらに右足もだ!!」
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガイバーブラッドはガイバーゼロの左腕を掴むと力一杯に握り、ガイバーゼロの腕を握りつぶしてしまった。さらにガイバーゼロの右足を自身の足で絡めて曲がる方向とは逆に締め上げて右足を折ってしまった。その苦痛にガイバーゼロは大声で叫び声をあげた。
「!!零兄ぃっ!!!」
ガイバーゼロの叫び声を聞いたはやては、胸の痛みを堪えつつ地面を這いずりながらビルの下が見えるところまで必死に移動して零の名を叫ぶと、ガイバーブラッドはゆっくりとはやてのいる方を見上げた。
「そうだ・・・・面白い事を思いついたぞ・・・・」
ガイバーブラッドは激しい痛みで動けなくなっているガイバーゼロを正面に向かせるように持ち替えると、はやてのいるビルまで上昇し、はやての目の前までやってきた。
「零兄ぃ!零兄ぃ!!」
「・・・・闇の書の主がこんな子供とは思わなかったが、まあいい」
「なんで・・・・なんでこんなことを平気でするんやっ!?零兄ぃを放して!!」
「何故だと?貴様の持つ闇の書のおかげで、どれだけの命が失われたか・・・・そしてその呪われたロストロギアのせいで、どれだけの人が大事なモノを失ったか・・・・」
涙を流しながらはやては何故こんな酷いことができるのかガイバーブラッドに問い掛けるが、ガイバーブラッドはそんなはやての姿など眼中になく、闇の書への恨み言を言い放つ。
「はっ、はやて・・・・」
「だから私は、貴様の大事なモノを目の前で壊してやるよ・・・・こうやってなっ!!」
「駄目!!やめて・・・・やめてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
痛む体を必死に動かしてガイバーゼロははやてに右手を伸ばす。しかしガイバーブラッドはガイバーゼロの背中に右腕を当てると、ガイバーゼロの左胸を貫くように高周波ソードを展開した。
その瞬間、はやての時間が止まった・・・・そして目の前には、ガイバーブラッドの高周波ソードが、ガイバーゼロの左胸・・・・人間でいう心臓の部分を光る刃が貫いていたのだ。ガイバーとなった零の肉体は、強殖細胞によって内蔵の一部が退化しており、確実に心臓を貫かれたかどうか分からないが、そのことをはやては当然知らない。
よって、はやてには姿は変わっても大事な兄である零の心臓を、紅い姿をした人物に光る剣で貫かれてしまった光景にしか見えなかった。左胸を貫かれた事によって、ガイバーゼロの両頬の排気口から真っ赤な鮮血が噴きだした。
「がはぁっ!!!」
「最後の時を・・・たっぷり味わうがいい!!」
ガイバーゼロの左胸を高周波ソードで貫いたガイバーブラッドは、高周波ソードを抜くとはやてに向かってガイバーゼロを放り投げた。放り投げられたガイバーゼロは、はやての頭上を通り過ぎて地面に仰向けに転がった。
「あっ、ああ・・・・零兄ぃ、零兄ぃ!」
はやては必死にガイバーゼロの倒れている場所まで移動しようとしたが、途中で自分の手にヌメリとした感触が伝わり、自分の手を見た。そこにはガイバーゼロの胸から大量に出ていた真っ赤な血がはやての手に付着していた。
「うわぁぁぁ・・・・ああああ・・・・」
目の前に力無く倒れているガイバーゼロの姿に、はやては震えながら苦痛によって声にもならない声を発していた。その時、はやての足下に白いベルカ式の魔法陣が展開され、はやての前に闇の書が出現した。
<Guten Morgen, Meister.>
闇の書から発せられる声に呼応するかのように、はやての足元の魔法陣が白から黒のかかった紫色へと禍々しく変色した。
「はやてちゃんっ!!」
「はやてっ!!」
その時、ようやく四重のバインドとクリスタルケージの破壊に成功したなのはとフェイトが大声ではやての名を叫んだ。しかし二人の声ははやての耳には届かず、はやては自分にとって大切な存在である零が、自分の目の前で殺された事に・・・・“絶望”した。
「くっ・・・うううう、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」
はやての深い悲しみの篭った叫び声と共に瞳の色が真紅に変わり、紫色の魔力光がはやてを包み込み、その光景をガイバーブラッドはじっと眺めていた。そしてその中に、はやては遂に闇の書の封印を開放してしまう。
「我は闇の書の主なり・・・・この手に・・・・力を・・・・封印・・・開放・・・」
<Freilassung.(開放)>
“開放”と言う闇の書から煙が噴出し、はやての体に変化が起きた。はやての肉体は幼い少女から女性へと変化し、髪は急激に長くなりながら白銀に染まり、シグナム達の纏っていた騎士甲冑のような服装を纏い、背中からは四枚の黒き翼が生えた。その姿になのはもフェイトも驚きを隠せずにいた。
「また・・・全てが終ってしまった。一体幾度、こんな悲しみを繰り返せば良いのか・・・・」
「・・・・もう繰り返しはしない。この私の手で貴様を・・・いや、闇の書という存在を消し去ってくれるわ!!」
涙を流しながらそこにいた人物は既にはやてではなく、全く別の存在だった。彼女こそ、闇の書の管制人格である【闇の書の意志】と呼ばれる存在だった。それに対し、ガイバーブラッドは右手を握り締めて自分の手で闇の書を消滅させると宣言する。
しかし闇の書の意志は、そんなガイバーブラッドの言葉に耳を貸さず、目の前に倒れているガイバーゼロの傍まで歩み寄ると、ガイバーゼロを抱き起こした。
「主よ、貴女の望みを叶えます。愛しき守護者達・・・・そして、我が主の大切な兄君よ・・・・傷つけた者達を、私が今・・・・破壊します!!」
<Gefängnis der Magie.(魔力封鎖)>
闇の書の意志はガイバーゼロの排気口に付着している血を拭き取り、ゆっくりと寝かせると、闇の書が魔法を発動し、闇の書の意志を中心に結界が展開されていく。その結界は、以前ヴィータがなのはを閉じ込める為に展開した結界と同じモノで、ガイバーブラッドはもちろん、なのはとフェイト、そしてアースラから援軍としてやって来ていたユーノとアルフも結界内に閉じ込めてしまった。
「これは・・・・結界!?」
「なのは!」
「フェイト!!」
周囲の景色が変化した事により、自分達は結界に閉じ込められた事を認識するなのはとフェイト。そこへユーノとアルフが合流し、四人は闇の書の意志と対峙するガイバーブラッドの姿を見た。なのははレイジングハートを構えようとした時、突如ガイバーブラッドはなのは達に向け左手をかざすと、プレッシャーカノンを発射してきた。
「なっ!?」
「何をするんですか!?グラーベさん!」
「えっ!?グラーベだって!?」
ガイバーブラッドの発射したプレッシャーカノンを辛うじて回避したなのはの言葉にアルフもユーノも驚きの声を上げた。そう、実はクリスタルケージに閉じ込められていた時、グラーベがガイバーブラッドに殖装する瞬間を、なのはとフェイトは目撃していたのだった。
「貴様らは邪魔だ!そこで黙って見ているがいい。この私が闇の書を破壊する瞬間をっ!!」
「でも!それじゃあ、はやてちゃんがっ!!」
「関係ないっ!そこにいるのは全てを破壊することしか能がない、ただの壊れたロストロギアだっ!!」
闇の書を破壊したら、はやてごと破壊する事になると思ったなのはは、ガイバーブラッドに止めるように声を掛けたが、ガイバーブラッドはなのはの言葉を無視し、そのまま闇の書の意志に向かって突撃していった。
「スレイプニール・・・・羽ばたいて」
<Sleipnir.>
突撃してくるガイバーブラッドに対し、闇の書の意志は背中の翼を大きく羽ばたかせ、ガイバーブラッドの迎撃に出た。闇の書の意志が飛び去った後、地面に寝かされているガイバーゼロの近くには、はやてにプレゼントしていたペンダントにはめ込まれていたジュエルシードが青白い光を放ちながらガイバーゼロの傍に転がっていた。
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闇の書の意志とガイバーブラッドが戦いを始めた頃、結界外に位置する離れたビルの屋上には、あの仮面の男二人がいた。しかしガイバーゼロとの戦闘のダメージがあるのか肩で息を切らしていた。
「ハァハァ・・・・不味い事になったな」
「ああ、このままではデュランダルを使っての闇の書を完全封印ができない・・・・グラーベめ」
仮面の男の一人の手には白いカード状のモノを手にしていた。まさかのガイバーゼロの出現・・・・さらにはグラーベの身勝手な行動・・・・そんなイレギュラーが重なり、さらには闇の書の意志が展開させた強固な封印結界によって、当初予定していたデュランダルによる闇の書の永久凍結による完全封印の道は完全に途絶えてしまった。
そんな事を考えていると、突然足下に水色のミッド式の魔法陣が出現し、仮面の男二人はバインドで拘束されてしまった。しかも仮面の男らは縛り付けたバインドは普通のバインドではなく、徐々に体から力が抜けていくような感覚を感じていた。
「【ストラグルバインド】・・・・相手を拘束しつつ、強化魔法を無効化する。余り使い所のない魔法だけど、こういう時には役に立つ!!」
突然の声に仮面の男らは顔を上げると、そこには黒いバリアジャケットを纏い、S2Uを構えたクロノがいた。そしてS2Uで地面を叩くと、仮面の男らは水色の光に包まれていった。
『うわぁぁぁぁ・・・・・』
「変身魔法を強制的に解除する!!」
光に包まれた仮面の男らの姿は仮面だけ残して姿を変えた。変身魔法を強制解除され、仮面か外れてクロノの足下に転がる。だがその正体は、なんとリーゼロッテとリーゼアリアだった。
「クロノ!!このぉっ!!」
「こんな魔法、教えてなかったんだけどな・・・・」
「一人でも精進しろと教えたのは・・・・君達だろう・・・・アリア、ロッテ」
クロノはまるで仮面の男の正体をある程度知っていたかのような口調で二人を見つめる。そのクロノをアリアとロッテは睨みつけていた。
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はやては目を覚ました。いつもと変わらぬ自分の部屋・・・・はやては身を起こして車椅子に乗ろうとしたが、そこには車椅子はない。
(あれ?車椅子がない・・・・って何言うてるんやろ。私は車椅子なんか使ってないし、ちゃんと自分の足で歩けるはずやん)
はやては自分でも何を思ったのか車椅子を探そうとしていた自分に笑った。そして何不自由なくベッドから降りると、そのままキッチンへと歩いていった。そしていつものように冷蔵庫から食材を取り出し、ナベに水を入れて湯を沸かす。
そして包丁を手に食材を切ったり、ジャガイモの皮を剥いたりしながらナベに入れていく。そうしていると、キッチンに聞き慣れた人物たちが続々と現れた。
「おはよう、はやてちゃん!」
「おはようございます。主はやて」
「あっ、おはよう。シグナム、シャマル!ザフィーラも!!」
キッチンにやって来たシャマルはエプロンを身に付け、はやての手伝いをはじめ、シグナムはリビングで新聞を読み始めた。その横に狼姿のザフィーラが座ると、今度は目巻き姿の少女が現れた。
「ふあぁぁぁぁ~、はやて、おはよう・・・・」
「あっ、ヴィータもおはよう」
「もうヴィータちゃん、ちゃんと顔を洗ってきて眠気を覚ましてきて」
「むぅ~、そうする・・・・」
寝巻き姿でお気に入りのウサギのぬいぐるみを引きずりながらリビングにやって来たヴィータは、まだ寝ぼけているらしく、シャマルの指摘を聞き入れて洗面所へと歩いていった。その様子にはやては「クスクス」と笑い、シャマルと共に朝食の準備を始めた。
そして朝食が準備され、皆が席についてはやての「いただきます」の声に合わせてシグナム達も「いただきます」と言って食事を始めた。そんな中シグナムとヴィータはあるオカズを口にした瞬間、顔色を悪くした。
「・・・・この微妙な味付けは・・・・シャマルだな?」
「えっ、ええ!?」
「シャマルはもうちょい料理を精進せなあかんな~」
シグナムとヴィータがシャマルの作ったオカズによって致命的な精神ダメージを負ってしまった。その様子にはやては笑いながらシャマルにもっと料理の腕を上げないと駄目だと言っていた。
そして朝食を済ませ、はやてとシグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラはリビングに集り楽しい時間を過ごしていた。今のはやてにとってシグナム達守護騎士たちとの生活が楽しくてたまらなかった。
だが・・・・ここには、はやてにとって守護騎士たちと同等の、最も大切な存在である零は、そこにはいなかった・・・・・・いや、存在していなかった。
第16話完成しました。
ガイバーゼロがガイバーブラッドにボコボコにされてしまい、その影響ではやてが覚醒。はてさてどうなる事やら・・・・・
ちなみに、ガイバーゼロが倒れた時、「これだと防衛機能が働くんじゃない?」と指摘されると思いますが、あえてスルーしてください。過剰防衛なんかしたら話が狂いそうなので・・・・
ガイバーって装着者の精神状態、意志力に多大な影響を受ける・・・ってありましたが、それはユニットに取り込まれた時の効果か、取り込まれた後でも効果が出るのか・・・どちらだろう?
では、また次回で~