離島や北部地域を中心に県内でも医師不足が問題となる中、琉球大学の医学生らが健全な医療社会の在り方を考えようと「地域医療研究会」を立ち上げ、活動を広げている。現場観察や勉強会を通し、将来関わる地域医療の問題と向き合うメンバー。「医療の発展と自分たちの成長の場にしたい」と意気込んでいる。
地域医療研究会は2009年入学生のうち「地域枠」で入学した学生7人によって10年に立ち上げられた。同枠は県からの奨学金などの代わりに、大学卒業後9年間、県内医療機関での診療が求められる。学生にとって学資負担が軽くなる一方、地域での診療は機材などが限られる中、地域を単独で支える責任を負うなど不安も伴う。設立時からのメンバーで、地域枠の富名腰朝史さん(2年)は「地域医療に取り組む仲間をつくり、意見交換したかった」と狙いを語る。
活動は週1回開く勉強会を中心に学生が地域の医療機関を訪ね、医師に丸1日張り付いてノウハウや課題を学ぶことや、消防署がない離島地域で救急法の講習会をボランティアで行うなど多岐にわたる。
座間味知子さん(4年)は、医師を交えた勉強会や離島の病院での研修などを通し、地域医療の課題を再認識。「地域で足りないのは1人で何でもできる『総合医』だと思っていたが、診療所での対処が難しい人を地域の中核病院で専門的に見る『専門医』も不足している」と話した。
地域枠学生7人が中心になり始まった取り組み。今では枠外の学生にも広がり、メンバーは40人程度にまで増えた。研究会代表の上原周悟さん(3年)は「地域枠の学生は責任がある分、学ぶ意欲も強い。その思いが地域枠外の学生にも広がっている」と感触を語った。
琉大病院で地域医療に携わる武村克哉医師は「学生時代から地域でどういったニーズがあるかを意識することで、チーム医療や限られた中での課題解決など、技能だけではカバーできないことにも気付け、学べると思う」と期待する。
8日には地域医療に関心のある学生を全国から沖縄に集め、5日間の日程で離島の医療現場などでのフィールドワークやワークショップを行った。メンバーは「今後は全国の人とも盛んに互いの経験を交換し合い、より良い医療を目指したい」と意気軒高だ。
(琉球新報)
2011年3月18日