【北陸発】被災地でもらった温もり 受験で仙台へ 小矢部の18歳2011年3月17日 泊めてくれた夫婦 送ってくれた 上着もくれた言い尽くせない「感謝」大学入試で仙台市を訪れ、東日本大震災に遭った富山県小矢部市の男子受験生(18)が、たまたま出会った地元夫婦の家に三泊し、長距離バスが運行する山形市まで送ってもらい、十五日に帰宅を果たした。「本当に親切にしてくれて、何度ありがとうを言っても足りない」と温(ぬく)もりに感謝している。 受験生によると、試験前日の十一日、新幹線でJR仙台駅に到着し、在来線に乗り換えようと改札を通ったところで地震に遭った。ホームの天井が落下するなど大きな被害だったが無事に外へ逃げ、歩いて一駅先にある宿泊予定のホテルへ向かった。 一時間かけてたどり着いたが、被災していて泊まれる状態でなく野宿を覚悟。自宅へ連絡したくても携帯電話が不通なため公衆電話に並んだが、これもつながらない。何度かけ直しても駄目で途方に暮れていると、五十歳代ぐらいの女性に声をかけられた。 事情を説明すると女性は、仙台市郊外の柴田町の自宅へ、迎えに来た夫の車で連れていってくれた。夫婦二人暮らしの家は大きな被害はなかったが、電気やガスは止まっていた。石油ストーブでミルクを温め、もちを焼いて一緒に食べた。 翌朝、市内は受験できる状態でなく、入試は延期に。しかし交通網は寸断されていて帰れず、さらに二泊、停電の中で過ごした。 十四日、山形市から北陸方面へバスが出ていることが分かった。片道分しかガソリンがなく、被災地では購入が難しいにもかかわらず、夫婦は一時間ほど運転して山形まで送ってくれた。 別れ際には「大学に受かったら、お祝いしよう」と励まされ、交通費として三万円と、寒さをしのぐ上着も渡された。 受験生は新潟でJRに乗り、翌日午前三時ごろ帰宅できた。 夫婦からはその朝、帰宅を確認する電話があり、感謝の言葉に「当たり前のことをしたまで」と答えたという。受験生は「自分は幸せ。少しも大変じゃなかった。大変なのは地元の人たち。募金とか何かできることを被災地のためにしたい」と考えている。 (宮本隆康)
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