東日本大震災、透析クリニックが直面する課題、都内の事情(2) - 11/03/16 | 16:15
「現在、業務用車のうち1台はガソリン調達のためのガソリンスタンド回りに専念させている。これとは別に職員の車2台およびレンタカー1台を有事のために用意した」(若井院長)。レンタカーはガソリンを満タンにしたうえで駐車させたままだ。
「現在の調達難が続くと3日くらいしかガソリンが確保できないところをさまざまな工夫で日数を延ばしている」(若井院長)。そのうえで、「1週間もすれば、供給は再開に向かっていくのではないかと神頼みのような思いでやりくりしている」(若井院長)。
同クリニックには、通院の透析患者のほかに、在宅で血液透析を行っている患者が6人、在宅での腹膜透析患者が1人いる。また、透析以外の在宅医療を受けている患者9人の中には、在宅酸素療法の患者2人、たんの吸引器を使用している患者1人が含まれている。
在宅酸素療法、吸引器とも電力確保が必要条件。万が一、電気が止まった場合、酸素ボンベなどで酸素を供給することが必要。一方、吸引器の中には、自動車のシガーソケットや電池から電気を得るタイプの機種もあるものの、同クリニックの患者の機械にはその機能が備わっていなかった。同クリニックでは保有していた手動式の吸引器を貸し出すことで対応している。
その一方で、新たな機器の確保は事実上、不可能に近いという。
「バッテリー式の吸引器、手動式吸引器、発電機、ポータブル式バッテリーなどの調達を医薬品・医療機器卸を通じてメーカーに問い合わせているものの、近いうちに手に入る見込みは立っていない」(若井院長)。
人工透析に関する診療報酬は2006年の診療報酬改定で大幅にカットされた。「それ以来、設備をフル稼働しなければ赤字化のおそれがある」(若井院長)という状況がある。そのため、大型の自家発電機や貯水槽などの装備は困難だという。
「透析医療では災害対応で施設によるバラツキが大きい。安全対策をしっかり講じることができるような診療報酬上の評価が平時から必要」と若井院長は話す。
また、カンボジアで透析クリニック開設を支援した経験から、「医療材料の再利用や自家発電機および貯水タンクの常備など、ハイテクに頼らないアジア諸国の医療には学ぶことも多い」と若井院長は指摘している。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)
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