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[26504] 【やっちまったぜ】IS -Shield of Aegis-【IS×恋する乙女と守護の楯】
Name: 利怜◆ef51f0bf ID:3d06dbd3
Date: 2011/03/16 15:04
男の娘成分という事で、シールド9こと如月修史山田妙子の介入。

*注意事項
・妙子ちゃんはIS使えます。男の娘だから
・設子さんルートの重大なネタバレ有り
・オリIS登場
・設子さんマジ天使
・恋楯の世界観?知らん
・元々はみんなのアニキ、瑞穂ちゃんでやろうかと考えていた

以上を踏まえた上、ご覧ください。

3/15 公開

修正情報
3/16 第二話、誤字脱字の修正並びに、細かい言い回しの改訂



[26504] 第一話「しょあくのこんげん×2」
Name: 利怜◆ef51f0bf ID:3d06dbd3
Date: 2011/03/16 01:25
 「要人警護の任務は了解しましたが……しかもまた潜入ミッションですか?」
 
 新たに与えられた指令に、眉をひそめる。正直潜入ミッションという言葉にあまりいい思い出は無い。
 具体的に言うと、つい二日ほど前に卒業したセント・テレジア学院とか、聖應女学院とか。

 「まぁそんないやそうな顔をするな。今回は設子ちゃんも一緒だから」
 「今回も、の間違いでしょう」

 課長ののんきな言葉に俺は嘆息を禁じえない。

 「で、その設子はどこに居るんですか?」

 そう、俺と設子のペアこと「アイギスの双循」で任務を受ける時に設子がその場に居ない事は今までなかった。

 「うむ、設子君には予め準備が必要だったのでもう既に説明をし、準備をしてもらっている」
 「そうですか、それならいいんですけど」

 はて、一体準備とは何のことなのだろうか?そしてそれは俺はする必要があるのだろうか。幾つかの疑問があるものの、ひとまずは課長の話に耳を傾ける。

 「それで、今回の護衛対象はこの少年だ」

 そういって手渡される資料。

 「コイツは……」

 その資料に書かれた人物を俺は知っている。
 いや、今やその少年は世界一有名な日本人とも言える存在。
 世界で唯一マルチフォーム・スーツIS――インフィニット・ストラトスを扱える男。「織斑一夏」。

 「そう、彼は現在世界で最も危険に晒される可能性のある存在として、我々に警護の依頼が来たのだ」

 確かに、彼の存在価値はヘタをすると一国のトップにも匹敵すると冗談交じりで語られたりする。

 「ですが、何でそんな重要人物の警護が俺たちへ?言っちゃあなんですが、彼のことはそれこそ政府が総力を上げて身柄を守っているんでしょう?」
 「そうだ。とはいえ日常生活が万事安全とはいえない」

 たしかにそうだ。だからこそ俺たちのような生業が成立するのだが。

 「それに、ISを唯一扱える男を遊ばせるほど彼らも暢気ではない。よって、織斑一夏はIS操縦者養成機関であるIS学園に入学する事になった」

 IS学園――課長が言ったようにIS操縦者の養成機関であり、「あらゆる国家に属さず、企業の干渉を受けない」といった特殊性を持つ。
 確かにここに入学すれば、少なくとも卒業するまでの三年間は『政治的な』脅威から織斑一夏の身を守る事が出来る。
 だが、それはあくまでも外側、そして『組織的』なものからのことであり、『個人』から『個人』を守るのはほぼ不可能だろう。極端な話、彼を狙う組織に属する人間を一人入学させるだけで織斑一夏の安全性は途端に崩れてしまう。
 いや、だからこその俺たちか。公の存在などが潜り込めない所をガードするのが俺たち特殊要人護衛課の仕事の一つでもある。

 「ん?ちょっとまってください」
 「一体どうしたんだ?」

 そこで、俺はある致命的なことに気がついた。
 何度も述べているが、IS学園はIS操縦者の養成機関。入試のテストこそあるが、それ以前の大前提、それは当然のように「ISを動かせる事」。

 「俺にISは動かせません。よって俺がIS学園に潜入する事なんて不可能です」

 そう、まず俺はISを動かす事が出来ない。
 織斑一夏という前例が存在する以上、ISを操縦できる男が皆無と断ずるのは早計だろうが、そんな都合がいい話がそう転がっているわけが無い。
 もしそんなものが転がっていると言うのなら、それは最早偶然ではなく陰謀だ。

 「あぁそのことか。それなら問題ない。気にするな」
 「は?いや、流石にそういうわけにもいかないでしょう」

 第一、IS学園の特性上「護衛の任務の為に」という理由で潜入することすらおそらく不可能であろう。

 「そのことについては、ある人物から説明がある」
 「ある人物?」
 「あぁ、そろそろ……おぉ、来た来た」

 そういって課長がドアの方向に視線を向けるのに習って俺も後ろのドアへと振り向く。
 そこから入ってきたのはやけに疲れた様子の設子と……

 「やっほー、しゅーくーん!!おっひさー」

 ブルーをベースにセンターが白いワンピース、そして頭にウサギの耳のような機械をつけたハイテンション女がものすごく盛大に手を振っている。

 「た、束ぇ!?」

 その人物こそISの開発者にして現在絶賛国際的に失踪中。そして、何故かバ課長と交流があり彼女の失踪事件の際にその繋がりで一時的にとはいえ俺がガードし、その時に妙に俺のことを気に入った女、『篠ノ乃束』。

 「そうでーっす、束さんでーす。しゅーくん、ご結婚おめでとー」
 「は?」

 は、結婚?なにそれ。

 「え?だってきょーくんがしゅーくんの嫁だーって言うから、私メンドクサイの我慢してこの子のISの設計してあげるんだよー」
 「バァ課長ぉぉおおお!!」

 束の発言を聞いた瞬間振り向きざまに裏拳を放つが、さっきまで俺の後ろに居た課長は既に大きく俺から距離をとっている。

 「なんだよー、事実だろー。折角のパパの好意を無碍にするなよー」
 「するなよー」

 課長の戯言に束が続く。そう、この二人ふざけている時のテンションというか、波長が非常に似通っている。だからこそ仲がいいのかもしれないが。

 「はぁ……で、話を戻しますけど、俺がIS学園に入るのに問題ないってどういうことなんですか?」
 「それは束さんが説明しよう!実はしゅーくんには私を護衛してた時に、こっそりISが動かせないかテストしてたのですよ」
 「は?」

 なんだそれ。

 「いやー、しゅーくん女の子っぽかったからもしかしたらISも起動するんじゃないかなーって。そしたら起動しちゃったんだよ。実はしゅーくんこそ史上初の男のIS操縦者だったのだ!」

 もしかしたら、他の男の娘でもIS起動するかもしれないねっ。と続ける束。ねっ、じゃねえよ……

 「まあそういうわけで、ISを動かせるかどうかの問題はなくなったわけだ。というわけで、シールド9はIS学園に入学する為に頑張って受験勉強をしてくれたまえ。あ、これ受験票ね」
 「はぁ……って、課長なんですかこれっ」
 「なにって、だから受験票」
 「そんなのわかっとるわ!」

 そんな事より、この受験票の名前欄!

 「どーして、受験者氏名が山田妙子になってるんだ!!」
 「ふっ、甘いなシールド9。少数を隠すには大衆の中。少数の中に少数を隠したところで逆に目立つだけだぞ」

 確かに、それはそうだが……

 「まあ、受験資格自体はどうにかねじ込む事は出来たが、入学できるかどうかはお前次第だ。というわけで三日後のテストに必ず合格するように。これは任務だからな」

 三日後って、まじかよ……






 結果報告。
 どうにかIS学園の入学試験には設子共々合格しました。筆記試験は散々だったが、試験官との模擬戦で試験官を倒したのがよかったらしい。まぁ、突っ込んできた相手の腕を取って合気の要領で思いっきり背中から地面へ叩きつけただけなのだが。
 あと、課長経由で聞いたのだが束がなにやらクール便で俺に送りつけているらしい。絶対碌な物じゃ無いだろう。




―あとがき
 やっちまったぜ!
 修史妙子主人公でこのSSは続きます。あ、ちなみに原作基準です。
 ちなみにこの妙子ちゃん、束さんに対しては何故か非常にぞんざいです。何故だ……
 なお、この妙子ちゃんは元々利怜が考えてたSSの案である、おとボクの聖應学院での警護任務を請け負っていた過去があります。いや、だからどうというわけじゃないけど。



[26504] 第二話「妙子様がみてる」
Name: 利怜◆ef51f0bf ID:3d06dbd3
Date: 2011/03/16 15:03
 四月初頭。晴れてIS学園の生徒として潜入した俺たちは、おそらく何らかの力が加わったのだろう、織斑一夏と同じクラスとなった。
 そして最初のショートホームルーム。窓際最後列の席に座る俺からは最前列中央の席に座る織斑一夏が無茶苦茶緊張しているのが手に取るようにわかる。
 あぁ、その気持ちはわかるぞ。俺も事情は違うものの、女の中で男一人の環境。大丈夫だ、俺が見ているぞ織斑一夏。
 まぁ、ほぼ教室の端と端の席である俺の席順はガードをするには決して向いていないが、窓際というのはそれはそれでガードには好都合だ。
 また、奇しくも一夏の左隣の席は設子だ。
猫かぶりお嬢様モードの設子ならお前の心のオアシスにもなろう。じゃない、いざとなったら素早い対応も出来る。


 そんな感じで観察していたら、自己紹介の順番になって名乗る一夏。だが、その内容はただ名前を言うだけ。まぁ、気持ちはわかるが一夏もそれだけで済む空気じゃないと察したのだろう、何か言おうと視線を彷徨わせてから結局――

 「以上です」

 がたたっ。と、ずっこける女子多数。あー、こういうノリはテレジアの時はなかったな。と、的外れな事を思う。
 しかしそんな一夏の頭に黒いスーツを着た長身の女性が出席簿を叩きつける。

 「げえっ、関羽!?」
 「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 といって再度出席簿アタックを喰らわす女性。
 たしか彼女は織斑千冬。織斑一夏の姉にして束の幼馴染にして、IS国際大会モンド・グロッソの初代チャンピオン。
 まぁ、俺の彼女に対する知識の半分近くは束の惚気話?からの情報だが。
 それはそれとして、要するにIS界の英雄というべきかヒロインの登場に教室内が沸き立つ。
 うん。やっぱテレジアとは空気が違うな。もっとも、テレジアが特殊すぎたんだろうが。


 それからてんやわんやあって一時間目の授業。
 およそ半月強の電話帳のような参考書の詰め込み教育と、テレジアに主席入学した経歴を持つ設子とのマンツーマンの勉強のおかげでどうにか授業についていく。 苦労した甲斐はあったな。一夏は電話帳と間違えて捨てたらしいが。
 一時間目が終わって休み時間。
 俺はターゲットの織斑一夏……ではなくその隣の設子の席へと向かう。
 これは予め打ち合わせで決めていた事。
 設子曰く、複数のメンバーでターゲットに近づくにはまず窓口となる人間を作り、その人間を通して知り合いになるのが有効な方法の一つであるとのことらしい。
 その知識の情報源が一体何処からなのかはこの際目を瞑り、その作戦を元にまずは俺と設子が仲が良いというのを一夏に印象付けるべく、今は設子と行動を共にしているのだ。
 そして肝心の一夏といえば、動物園の珍獣のようにひたすら女子生徒に遠巻きに様子を伺われている状況に死にそうな顔をしている。

 「なんというか……凄い事になってますね」
 「えぇ、一夏さまの顔色も悪いようですし。心配です」

 憂いの表情で隣の一夏へ視線を向ける設子。流石設子、相変わらずの猫かぶりお嬢様モード、パネェ。
 と、心の中でサムズアップしたら睨まれた。
 閑話休題。
 これはさっさと一夏を気遣うということで話しかけた方が早いんじゃないかという結論に至って、いざ話しかけようとしたところにポニーテールの少女が一夏に話しかける。

 「……箒?」

 その少女の姿を見て、一夏がその少女に問いかける。
 箒……そうか、彼女が束の妹の篠ノ乃箒か。
 箒は周囲の目を気にして一夏を連れ立って廊下へと出て行く。
 結局二時間目のチャイムが鳴るまで一夏たちは戻ってこなかったので、次の時間に仕掛けることとなった。
 ちなみに、一夏はチャイムが鳴っても戻ってこなかったので千冬に再度殴られていた。


 そして二時間目の休み時間。
 今度こそはと一夏に語りかけようとした俺たちだが、再びそれは妨げられる。

 「ちょっと、よろしくて?」

 そう言って一夏に話しかけたのは豪奢な金髪を蓄えた外国人の少女。
 確か彼女の名前はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生。
 一応あらかじめ常にISを所持・展開できる各学年の代表候補生並びに専用機持ちについては、任務において脅威や不確定要素になる可能性を考慮して簡単なパーソナルデータは頭に入っている。

 「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 が、一夏は知らなかったらしい。まぁ、俺も資料をもらうまで知らなかったからしょうがないだろ。
 とはいえそんなのでまかり通るほど彼女のプライドは安くはなかったらしい。
 ついでに言うと一夏は代表候補生というものも知らなく(俺もそうだった)、セシリアの怒りに油を注いでいる。
 しかし、彼女は持ち前のプライドの高さ?でひとつ咳払いをすると、どうにか気を持ち直した。

 「わからないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 へえ、それはすごい。あれ?でも俺たちも教官を倒したよな?視線を向ければ、設子も頷く。
 だが、そんな俺たちをよそに一夏も少し不思議そうな顔をしながら――

 「俺も倒したぞ、教官」
 「は……?」

 そんな一夏の発言に酷くショックを受けたのだろう、彼女の口からは気の抜けた言葉が漏れる。

 「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
 「女子ではってオチじゃないのか?」

 以外と情報伝達がずさんだな。と思うが、これはある意味話題に乗るチャンスだと考え、設子にもう一度アイコンタクトを送る。彼女も俺の意図に気がついたようで、再び頷く。
 そしてここぞとばかりに俺は口を開く。

 「あのー、その教官でしたら、あたしたちも倒したのですが」
 「なあ!?」
 「へー。すごいな」

 更に素っ頓狂な声を上げるセシリアに、単純に感心する一夏。すごい温度差だな。

 「あれ?でもそれじゃあ結局、女子でも教官を倒したのってセシリアだけじゃないんだな」

 ただでさえ精神的に揺さぶられている状態なのに、そんな追い討ちのセリフまでかけられてセシリアの瞳が若干虚ろになる。一夏、恐ろしい子!!

 「あの、わたくしたちはとある事情で試験を受けたのが三月の中頃でしたので、情報が入ってこなかったのでは」
 「いや、設子さん。それフォローになってません」
 「?」
 「ははは……」

 設子の天然発言に一夏は苦笑いをこぼす。

 「まあ、これから隣の席のよしみで仲良くしてくれ……えぇと」
 「真田設子です。一夏さま」
 「い、一夏さまぁ?!」
 「設子さんはそういう人なんですよ、一夏さん。あ、あたしは山田妙子です。山田先生と名字がかぶってしまっているので、妙子と呼び捨てで呼んでくださってかまいません」

 というか、男に山田なんて呼ばれるといけすかない野郎を一人思い出すから勘弁してほしい。いかん、なんか変なトラウマができてしまっている。

 「あぁ、よろしく。真田さん、妙子」

 その言葉がちょうど合図だったかのように三時間目のチャイムが鳴り響く。
 そしてやってきた三時間目。
 紆余曲折あって、クラス代表を決めるにあたって一夏とセシリアが決闘することになった。
 一夏はどうしてこうなった。と愚痴っていたが、俺は男としてお前を応援しているぞ、一夏。


 更に時は流れて放課後。
 俺はルームメイトの設子と一緒に寮の部屋で荷物の整理。ちなみに部屋は一夏の隣だ。
 本当に外部からの干渉は受けないのか?IS学園。

 「なんというか、えらい事になってたな。一夏」
 「そのことについてだが、織斑はセシリアとの決闘の為に居残りをして特訓をするとも言っていたな」

 俺たちだけということもあり、素の状態の設子が漏らす。

 「マジか……いや、そうなると逆に行動範囲が限定されるから都合がいいな」
 「そうだな。それでは予定通り明日は私が校舎内の確認にいかせてもらうぞ」
 「あぁ。わかった」

 見取り図だけではわからないIS学園内部を、俺と設子は交替で見てまわる事にしている。ちなみに、今日は俺で明日が設子だ。

 「さてと、荷物の整理も終わった事だし……」

 と言って部屋の中央に置かれた段ボール箱に目をやる。
 上面にはクール便を示すものと「生物」「天地無用」のシールが貼られている。なお、それぞれのシールの下に「じゃないよ」と手書きで書かれている。意味がわからない。
 そして、差出人の名前は「篠ノ乃束」。うん、やっぱり開けたくない。

 「いっそ、このまま捨ててしまおうか……」
 「修史」
 「……わかったよ。開ければいいんだろ」

 設子の視線に耐え切れず、腹を括ってダンボールの封を切る。

 「……………」

 あれだ、言葉も出ないとはこういうことをいうんだろうな。

 「これは……にんじん?」

 脇から覗き込んだ設子が中に入ってるものを言い当てる。
 そう、ニンジンだ。ニンジンが段ボール箱の中にごろんと一個入っている。勿論、普通のニンジンではなく段ボール箱のサイズいっぱいの特大サイズのメカニンジンだが。
 そして葉っぱの部分には「PULL」と書かれたタグが付いている。
 引っ張らなきゃダメなんだろうなぁ、これ。
 特大メカニンジンを箱から出し、葉っぱの部分を引っ張ると殊の外あっさり抜ける。
 葉っぱの部分が抜けるとそれがロックになっていたようで、ニンジンが縦に割れてその中に収められていたものが顔を出す。

 「手紙と、指輪?」

 そこに収められていたのは一枚の便箋と、これといった装飾も無い黒い光沢を放っている一つの指輪。
 俺は設子と共に便箋に眼をやる。

 『やっほー、しゅーくん。女の子パラダイスをいっくんと一緒にエンジョイしてるかなー?
 さてと、長々と書くのはメンドクサイからズバット言っちゃうよ。この手紙と一緒に入っていた指輪は束さん謹製の結婚指輪だよー……って、あぁ、勢い余って投げ捨てないでよ?しゅーくん。大切なしゅーくん専用のISなんだから』

 手紙を読みながら、無意識に指輪をゴミ箱に投げつけようとしていた手を慌てて止める。
 これがIS?そうか、待機状態というやつなのか。

 『ちなみに結婚指輪ってのも本当だよ?しっかりしゅーくんの薬指のサイズだからね』

 やっぱり投げつけてやろうか……

 『本当は最後のフィッティングまで私が面倒見てあげたかったんだけど、束さんは束さんで忙しいので後はそっちでやってね。
 そうそう、肝心な事を書いてなかったね。しゅーくん専用のISの名前は「黒百こくびゃく」。しゅーくんの好みに合わせて防御特化仕様だよ。詳しいスペックデーターは黒百の中に入ってるから自分で見てね。
 それじゃあ、この手紙は読み終わった後に自動的に消滅する事は無いから、大事に取っておいてね。ばいばーい。

 P.S.
 しゅーくんは専用機持ちとして入学した事に変えていたから。束さん気っが利くー♪』

 「ふぅ……」

 手紙を読み終え俺は盛大にため息を付く。手紙の中でも疲れる奴め。

 「黒百、か……」

 天井の照明にかざしながら、黒い指輪を指先でもてあそぶ。
 展開した黒百がどんなものか気にならないと言えば嘘になるが、流石に最終調整を終えていないのをこんなところで起動するわけにはいかない。折を見てアリーナで動かしてみるか。

 「設子、一夏を誘ってそろそろ晩飯を食いに行かないか?」
 「そうだな。そうしようか」

 設子を連れ立って部屋を出ようとすると、隣の部屋から大きな物音が聞こえてくる。
 隣の部屋だとは言え、防音設備の整ったIS学園の寮内でこれだけの物音が立つということは、中では相当な大騒ぎだろう。

 「設子っ」
 「あぁ、修史は先に」

 短いやり取りをして、俺は一夏の部屋へと向かうべくドアを開ける。
 俺の眼に入ってきたのはドアに寄りかかる一夏と、その顔の真横でドアから生える木刀の切っ先と何事かと野次馬に集まってくる女子多数。

 「……箒、箒さん、部屋に入れてください。すぐに。まずいことになるので。というか謝るので。頼みます。頼む。この通り」

 ドアに向かって頭の上で合掌して、なりふりかまわずひたすら謝り通す一夏。
 どうやら、襲撃者というわけではなさそうだが……
 そして、長い長い沈黙。

 「入れ」

 いくばか経って、ドアから箒が顔を出す。
 その姿は雑に着込んだ胴着と、ポニーテールを下ろした濡れた髪。
 あぁなるほど、部屋備え付けのシャワールームから出てきた同室の彼女と出くわして、揉めたのか。
 事の推移を見届けた俺は、部屋に戻る。
 部屋の中では設子がいつでも突入できる格好でいたので、もう大丈夫だと言う事を告げる。

 「あー、突入する必要は無いぞ。ただの……青春だ」

 俺の言葉にに設子はよくわからないといった風に首をかしげる。
 結局一夏に気を使って声は掛けず、晩飯は俺と設子の二人だけで行ったのだった。




―あとがき
 一夏とのファーストコンタクトと、専用IS登場でござるの巻。
 展開の都合と、利怜のうっかりでイベントが多少前後する事がありますが、あしからず。
 そして遂に出しちゃったタエちゃん専用IS「黒百」。詳しい事については追々。
 次回は一夏の特訓と、黒百登場未定。(何


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