__眼前に広がる白き世界。天より神々は舞い降り、宴の幕は開かれた__。
 9/16の水戸ライトハウスを皮切りに、初のワンマンツアー“〜天地創造〜”を行なったカグラ。その最終公演“〜天地創造〜神々の宴”が10/7、渋谷オンエアイーストで行なわれた。この公演を見る前にも何度か彼らのステージを見ているが、お世辞でも何でもなく、この日のライヴは実に素晴らしいものだった。
 開演を告げるSEが流れる。吹雪を思わせる音の中に、錫杖を鳴らしたような“シャンシャン”という音が会場に鳴り響き、ステージを覆う白幕に竹林の黒い影、そして“Kagrra”の文字が映し出された。否応なしに会場の緊張とボルテージは高まっていく。瞬間、幕が一気に開かれ、真っ白な衣装に身を包んだメンバーが現われた。ステージ中央に作られた白い花道、会場とステージの天井から下げられた白い幕、薄く会場を覆うスモークは、白く霞んだ霧を思わせる。目の前に広がった“白き世界”。それが、このライヴのタイトルにもある“神々の宴”の始まりだった。
 1曲目は「幻惑の情景」。このシチュエーションにはピッタリの曲だ。“宴”へと誘い込むような一志の歌声に、すべてが引き込まれていく。妖しげなギターの旋律から始まった、2曲目の「鬼遊の唄」。そのときには、すでに観客も“宴”の情景の一部となっていた。カグラのライヴではもうお馴染みとなった、観客の持つ扇が会場中にヒラヒラと舞い、演奏に華をそえる。ライヴではかなりの盛り上がりを見せる「魔笛」「鵺の哭く頃」、祭り囃子を思わせるイントロから始まる「妖祭」へと続き、彼らの作り出した世界観のさらなる深みへ、観客を引き込んでいった。
 今年3月に行なわれた、渋谷オンエアウエストでのワンマンも見ているのだが、そのころと比べても、メンバーそれぞれが格段に成長している。カグラというバンドはひとりひとりに“華”があり、独自の存在感を持っているのだが、それがひときわ際だってきているように感じるのだ。ステージングや演奏面 が安定してきたということも、もちろんあるだろう。あくまで予想にしか過ぎないが、彼ら自身の中に、歌うこと、奏でること、伝えること、というものがどういうことなのか、ハッキリ見えてきたのではないだろうか。高く澄んだ歌声と身体全体で歌の世界観を表現する一志、やんちゃな感じで挑戦的に観客をアオる楓弥、一見静かに見えつつも、鋭い旋律を奏でる真、妖艶さとは裏腹に力強い音をハジき出す女雅、男らしい骨太なドラムで全体を支える白水。そんな“成長の証”を強く感じたのは、中盤に行われたドラム&ベースと、ヴォーカルのソロ演奏が行なわれたときだ。
 白水と女雅が刻む力強いリズムには、強い自信と気迫が満ちあふれ、その演奏に負けまいと、力いっぱい彼らの名を叫ぶ観客がいた。月と五重塔が映し出された白幕の前で、透き通 った声を響かせる一志。幻想的な古の都で歌う“歌姫”のような彼の歌声に、心を奪われ耳を傾けている観客がいた。観客は実にシビアな存在だ。良いものにも、悪いものにも素直に反応する。きっと難しく考えることも、詳しく説明する必要もないのだろう。彼らの素直な反応こそ、彼らがひとまわりもふたまわりも大きくなった何よりの証だと思うから。