前の5件 | -
無用なヨード摂取を止めましょう [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日の診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定ですが、
行先が業務をしている状態なのかどうか、
交通手段が確保されているのかどうか、
現時点ではよく分かりません。
本当を言えば、恐ろしくて仕方がありません。
不思議に自分の身を守ろう、
という意識は強くはありませんが、
原発もそうですし、
このままずっと計画停電などしていたら、
東京も多分滅ぶでしょう。
ガソリンもありませんし、
物もありません。
「震災で被災した方のことを思えば、東京の苦労など」
と言われる方も多く、
非常に立派なご発言だと思いますが、
正直昨日からは僕はそうしたことを考える心の余裕はありません。
昨日地震の後に、
ご家族を守らなければ、
という思いが強くて、
そのためにパニック発作になり、
食事も取れなくなった方が受診されました。
幡ヶ谷に行きつけのインド料理の店があるのですが、
そこの店主のインド人は、
昨日さっそく荷物をまとめて、
インドに戻りました。
こんな日本にいられるものか、
ということなのかも知れません。
これが今の東京です。
それでは今日の話題です。
今日は原発事故絡みの混乱で、
ヨードを大量に摂ったり、
赤ちゃんにヨードを飲ませているお母さんがいる、
という話を聞き、
これはいけないと思い、
再び記事にすることにしました。
先日比較的大量のヨードの内服により、
放射性ヨードによる、
将来の甲状腺癌の発症を予防することが、
ある程度可能だ、
という話をしました。
この時使用するヨード剤は、
ヨウ化カリウムの溶剤か丸薬で、
それは行政なり関係機関が速やかに用意して、
被爆を予防するために原則1回のみ、
使用することになっています。
これはある種の時間稼ぎの方策で、
いつまでもその効力が続く、
という性質のものではありません。
強い被爆が予想されるような時に、
速やかに飲んで、
その効力のある24時間以内に、
安全な場所まで遠ざかる、
というような用途に使用します。
多くの皆さんが不安に感じるのは、
毎日の記者会見などを見ていて、
本当にこの行政なり政府の機関なり自治体の責任者なりが、
そうした事態に即応して、
速やかにヨード剤を配布してくれるのだろうか、
ということに対しての、
危惧なのではないかと思います。
僕も正直、
そのことには自信は持てません。
ただ、重要なことは、
ヨードのブロックは、
放射線の被曝のリスクの中で、
それほど大きな意味を持つものではない、
という事実です。
原子炉から洩れた放射能の中で、
内部被爆として問題になるのは、
セシウムとストロンチウムとヨードです。
ヨードは物理的半減期は8日程度で、
要するに比較的すぐに線量は低下します。
その人体で影響を与える組織は、
甲状腺以外にはせいぜい唾液腺や皮膚に少々ある程度です。
これに対してセシウムの物理的半減期は何と30年で、
被爆すれば全身に分布し、
排泄は早いものの、
体内から除去されるのに3ヶ月は掛かります。
ストロンチウムは、
僕は以前カルシウムの吸収の検査に使っていたので、
馴染みがあるのですが、
カルシウムに良く似た性質があり、
骨に取り込まれて排泄され難いため、
体内から10年以上排泄されることがありません。
こう見てみると、
ヨードは他の2種の物質に比べ、
排泄も早いですし、
身体への影響も限定的です。
仮に吸収されたとしても、
最も悪いシナリオが、
甲状腺の将来的な癌の発生と、
甲状腺機能低下症の発症のみです。
ヨード剤の予防内服は、
それがうまく行ったとしても、
この甲状腺への悪影響を、
ある程度減らすだけです。
問題はむしろ他の物質の影響なのです。
しかし、ストロンチウムやセシウムの、
被爆を防ぐ方法はありません。
せいぜい身体に付着した放射能を洗い、
濡れマスクで防護するくらいです。
ストロンチウムを大量に摂れば、
これもある程度骨への放射線の沈着を、
妨害することは可能でしょうが、
今度はストロンチウムの排泄が困難になります。
骨へのカルシウムの取り込みが抑制されるので、
骨が脆くなってしまいます。
従って、ヨードの内服が取り上げられるのは、
それが本質的なこと、と言うよりは、
それ以外の物質を、
効率的に予防する方法が、
存在しないからに過ぎません。
ヨード剤の使用の目的は、
あくまで大量のヨードを一度に摂ることで、
一時的に放射性ヨードの侵入をブロックすることです。
皆さんが今から昆布を多く摂ったり、
お子さんにイソジンを与えても、
それは今後の被爆の予防にはなりません。
むしろ中途半端な使用は、
甲状腺機能に悪影響を与えたり、
いざヨード剤を使用しよう、という時に、
その効果を却って弱める結果にもなりかねません。
従って、そうした行為をするのは、
1つも有益なことではないので止めて下さい。
ただし…
緊急事態で行政の対応が間に合わない時、
ヨウ化カリウムの代わりに使用し易いものが何かと言えば、
それがイソジンのうがい液であることは確かです。
先日専門家の声明が報道され、
その中ではイソジンのうがい液の使用は、
人体に危険で効果もないので、
使用しないように、
という内容が含まれていました。
僕は基本的にその趣旨には賛成です。
緊急事態以外で、
そうしたヨード剤の使用は慎むべきです。
しかし、イソジンのうがい液が効果がなく、
人体に危険である、という部分は、
必ずしも正しいとは僕は思いません。
イソジンのうがい液が内服不可の理由は、
専門家の文書によれば、
イソジンうがい液に含まれるポピヨンヨードの成分は、
食品衛生法や日本薬局方で、
内服が認められていないものを含んでいるからだ、
となっています。
しかし、そんなことを言うなら、
ヨウ化カリウム自体も、
内服が公式に認められている成分ではありません。
うがい薬というのは、
そもそも少量は飲む結果になることが、
想定されている製品です。
当たり前のことですが、
少量しかも1回だけ飲んで有害な成分が、
うがい液の成分として認められる訳がありません。
また、ヨードは吸収率の良い物質で、
イソジンのポピヨンヨードの形態でも、
吸収されない、などと言うことはない筈です。
僕は実際にイソジンやヨウ化カリウムを、
甲状腺疾患の治療に使用した経験はあるので、
その範囲で両者の内服に、
さほどの違いがないことは確認しています。
勿論緊急時以外には、
使用はする必要はありませんし、
するべきではないと思います。
原則として行政の指示を待って下さい。
しかし、僕の言うことを信用して頂ければ、
本当の緊急時には飲んで構いません。
お腹は下すかも知れませんが、
ヨードブロックの効果は存在するからです。
それでは今日はこのくらいで。
すいません。
あまり挨拶の言葉が見付かりません。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日の診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定ですが、
行先が業務をしている状態なのかどうか、
交通手段が確保されているのかどうか、
現時点ではよく分かりません。
本当を言えば、恐ろしくて仕方がありません。
不思議に自分の身を守ろう、
という意識は強くはありませんが、
原発もそうですし、
このままずっと計画停電などしていたら、
東京も多分滅ぶでしょう。
ガソリンもありませんし、
物もありません。
「震災で被災した方のことを思えば、東京の苦労など」
と言われる方も多く、
非常に立派なご発言だと思いますが、
正直昨日からは僕はそうしたことを考える心の余裕はありません。
昨日地震の後に、
ご家族を守らなければ、
という思いが強くて、
そのためにパニック発作になり、
食事も取れなくなった方が受診されました。
幡ヶ谷に行きつけのインド料理の店があるのですが、
そこの店主のインド人は、
昨日さっそく荷物をまとめて、
インドに戻りました。
こんな日本にいられるものか、
ということなのかも知れません。
これが今の東京です。
それでは今日の話題です。
今日は原発事故絡みの混乱で、
ヨードを大量に摂ったり、
赤ちゃんにヨードを飲ませているお母さんがいる、
という話を聞き、
これはいけないと思い、
再び記事にすることにしました。
先日比較的大量のヨードの内服により、
放射性ヨードによる、
将来の甲状腺癌の発症を予防することが、
ある程度可能だ、
という話をしました。
この時使用するヨード剤は、
ヨウ化カリウムの溶剤か丸薬で、
それは行政なり関係機関が速やかに用意して、
被爆を予防するために原則1回のみ、
使用することになっています。
これはある種の時間稼ぎの方策で、
いつまでもその効力が続く、
という性質のものではありません。
強い被爆が予想されるような時に、
速やかに飲んで、
その効力のある24時間以内に、
安全な場所まで遠ざかる、
というような用途に使用します。
多くの皆さんが不安に感じるのは、
毎日の記者会見などを見ていて、
本当にこの行政なり政府の機関なり自治体の責任者なりが、
そうした事態に即応して、
速やかにヨード剤を配布してくれるのだろうか、
ということに対しての、
危惧なのではないかと思います。
僕も正直、
そのことには自信は持てません。
ただ、重要なことは、
ヨードのブロックは、
放射線の被曝のリスクの中で、
それほど大きな意味を持つものではない、
という事実です。
原子炉から洩れた放射能の中で、
内部被爆として問題になるのは、
セシウムとストロンチウムとヨードです。
ヨードは物理的半減期は8日程度で、
要するに比較的すぐに線量は低下します。
その人体で影響を与える組織は、
甲状腺以外にはせいぜい唾液腺や皮膚に少々ある程度です。
これに対してセシウムの物理的半減期は何と30年で、
被爆すれば全身に分布し、
排泄は早いものの、
体内から除去されるのに3ヶ月は掛かります。
ストロンチウムは、
僕は以前カルシウムの吸収の検査に使っていたので、
馴染みがあるのですが、
カルシウムに良く似た性質があり、
骨に取り込まれて排泄され難いため、
体内から10年以上排泄されることがありません。
こう見てみると、
ヨードは他の2種の物質に比べ、
排泄も早いですし、
身体への影響も限定的です。
仮に吸収されたとしても、
最も悪いシナリオが、
甲状腺の将来的な癌の発生と、
甲状腺機能低下症の発症のみです。
ヨード剤の予防内服は、
それがうまく行ったとしても、
この甲状腺への悪影響を、
ある程度減らすだけです。
問題はむしろ他の物質の影響なのです。
しかし、ストロンチウムやセシウムの、
被爆を防ぐ方法はありません。
せいぜい身体に付着した放射能を洗い、
濡れマスクで防護するくらいです。
ストロンチウムを大量に摂れば、
これもある程度骨への放射線の沈着を、
妨害することは可能でしょうが、
今度はストロンチウムの排泄が困難になります。
骨へのカルシウムの取り込みが抑制されるので、
骨が脆くなってしまいます。
従って、ヨードの内服が取り上げられるのは、
それが本質的なこと、と言うよりは、
それ以外の物質を、
効率的に予防する方法が、
存在しないからに過ぎません。
ヨード剤の使用の目的は、
あくまで大量のヨードを一度に摂ることで、
一時的に放射性ヨードの侵入をブロックすることです。
皆さんが今から昆布を多く摂ったり、
お子さんにイソジンを与えても、
それは今後の被爆の予防にはなりません。
むしろ中途半端な使用は、
甲状腺機能に悪影響を与えたり、
いざヨード剤を使用しよう、という時に、
その効果を却って弱める結果にもなりかねません。
従って、そうした行為をするのは、
1つも有益なことではないので止めて下さい。
ただし…
緊急事態で行政の対応が間に合わない時、
ヨウ化カリウムの代わりに使用し易いものが何かと言えば、
それがイソジンのうがい液であることは確かです。
先日専門家の声明が報道され、
その中ではイソジンのうがい液の使用は、
人体に危険で効果もないので、
使用しないように、
という内容が含まれていました。
僕は基本的にその趣旨には賛成です。
緊急事態以外で、
そうしたヨード剤の使用は慎むべきです。
しかし、イソジンのうがい液が効果がなく、
人体に危険である、という部分は、
必ずしも正しいとは僕は思いません。
イソジンのうがい液が内服不可の理由は、
専門家の文書によれば、
イソジンうがい液に含まれるポピヨンヨードの成分は、
食品衛生法や日本薬局方で、
内服が認められていないものを含んでいるからだ、
となっています。
しかし、そんなことを言うなら、
ヨウ化カリウム自体も、
内服が公式に認められている成分ではありません。
うがい薬というのは、
そもそも少量は飲む結果になることが、
想定されている製品です。
当たり前のことですが、
少量しかも1回だけ飲んで有害な成分が、
うがい液の成分として認められる訳がありません。
また、ヨードは吸収率の良い物質で、
イソジンのポピヨンヨードの形態でも、
吸収されない、などと言うことはない筈です。
僕は実際にイソジンやヨウ化カリウムを、
甲状腺疾患の治療に使用した経験はあるので、
その範囲で両者の内服に、
さほどの違いがないことは確認しています。
勿論緊急時以外には、
使用はする必要はありませんし、
するべきではないと思います。
原則として行政の指示を待って下さい。
しかし、僕の言うことを信用して頂ければ、
本当の緊急時には飲んで構いません。
お腹は下すかも知れませんが、
ヨードブロックの効果は存在するからです。
それでは今日はこのくらいで。
すいません。
あまり挨拶の言葉が見付かりません。
石原がお送りしました。
いつもの台詞と診察室の当惑の話 [身辺雑記]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
今日は敢えて他愛のない話です。
診察室で患者さんに、
「何処かお悪いところはありませんか?」
とお聞きすると、
時々必ず返って来る台詞があります。
それは「頭以外はね」
というものです。
これは勿論その患者さんに、
脳の疾患などがある、と言う意味ではなく、
言葉のニュアンスから感じられるのは、
雰囲気を和ませるために発せられた言葉なのだ、
ということです。
つまり、ちょっと不謹慎かも知れませんが、
一種のギャグとして、
その患者さんは言われているのです。
患者さんによっては、
何も言わずにニヤリと笑って、
指で頭を指すだけのこともあります。
この台詞にはオリジナルが存在するのでしょうか?
寡聞にして僕はその出処を知りませんが、
あらゆる年齢層のあらゆる職業、環境の方に、
幅広く知られた医療機関での掴みの台詞であることは、
ほぼ間違いはありません。
こうしたボールが投げられると、
正直僕は非常に困ります。
勿論場を和ませるきっかけとして、
そのボールが投げられたことは分かるので、
何か上手い切り返しの言葉がないものか、
とはいつも思うのですが、
何度こうした場面に直面しても、
気の利いた答えを用意することは出来ません。
目の前を見ると、
どうだ、上手いことを言っているだろう、
とでも言わんばかりの、
ちょっと得意げな患者さんの顔があり、
僕は当惑して何も言えずに、
僅かに笑みを浮かべるのが精一杯です。
誰か上手い切り返しを教えて頂けないでしょうか?
もう1つちょっと困るのは、
その筋の方がお出でになり、
血圧を測るために腕を捲って頂くと、
見事な文様が目の前に現われる時です。
その文様の性質によっては、
ちょっとドキリとするのですが、
「あっ、見事な彫り物ですね」
と言うのも何となく憚られるので、
概ね何もなかったかのように、
平然とマンシェットを巻いて、
血圧を測ります。
皆さんもご存じのように、
昔風の彫り物の方は、
かなりの確率でC型肝炎が陽性です。
ただ、そのことを指摘して、
検査は受けていますか、
とお聞きするのには、
非常な勇気が要ります。
大抵そうした方はお酒もお飲みになるので、
そのことをお聞きしてから、
肝機能の検査を受けていますか、
とお聞きして、
なければ検査をお勧めするのが、
概ね僕の対処しているやり方です。
彫り師の方にも、
色々な腕前の方がいるようで、
これはさすがに見事だ、
と思うようなものもありますし、
その一方で、
子供の一筆書きのような、
オヤオヤ、と思うようなものもあります。
これは明らかに途中で彫るのを止めたな、
と思うようなものもあります。
実際には、
完成品の方が少ないような気がします。
神経を使うのは採血で、
通常採血をする部位は肘の部分で、
そこにはほぼ間違いなく文様があります。
そのために血管を見付けることは難しくなりますし、
もし失敗して内出血で、
大事な文様に傷が付いたらと思うと、
ドキドキしてしまいます。
医療者の立場からしますと、
彫り師の方には、
どうか点滴や採血に使用する部位には、
彫り物は彫らないで頂きたいと、
それが一番のお願いです。
それでは今日はこのくらいで。
今日は絶対良いことがあるような、
無意味な確信を持ちつつ、
これから診療に向かいたいと思います。
石原がお送りしました。
(付記)
本記事は3月15日午後5時に、
若干の修正を加えました。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
今日は敢えて他愛のない話です。
診察室で患者さんに、
「何処かお悪いところはありませんか?」
とお聞きすると、
時々必ず返って来る台詞があります。
それは「頭以外はね」
というものです。
これは勿論その患者さんに、
脳の疾患などがある、と言う意味ではなく、
言葉のニュアンスから感じられるのは、
雰囲気を和ませるために発せられた言葉なのだ、
ということです。
つまり、ちょっと不謹慎かも知れませんが、
一種のギャグとして、
その患者さんは言われているのです。
患者さんによっては、
何も言わずにニヤリと笑って、
指で頭を指すだけのこともあります。
この台詞にはオリジナルが存在するのでしょうか?
寡聞にして僕はその出処を知りませんが、
あらゆる年齢層のあらゆる職業、環境の方に、
幅広く知られた医療機関での掴みの台詞であることは、
ほぼ間違いはありません。
こうしたボールが投げられると、
正直僕は非常に困ります。
勿論場を和ませるきっかけとして、
そのボールが投げられたことは分かるので、
何か上手い切り返しの言葉がないものか、
とはいつも思うのですが、
何度こうした場面に直面しても、
気の利いた答えを用意することは出来ません。
目の前を見ると、
どうだ、上手いことを言っているだろう、
とでも言わんばかりの、
ちょっと得意げな患者さんの顔があり、
僕は当惑して何も言えずに、
僅かに笑みを浮かべるのが精一杯です。
誰か上手い切り返しを教えて頂けないでしょうか?
もう1つちょっと困るのは、
その筋の方がお出でになり、
血圧を測るために腕を捲って頂くと、
見事な文様が目の前に現われる時です。
その文様の性質によっては、
ちょっとドキリとするのですが、
「あっ、見事な彫り物ですね」
と言うのも何となく憚られるので、
概ね何もなかったかのように、
平然とマンシェットを巻いて、
血圧を測ります。
皆さんもご存じのように、
昔風の彫り物の方は、
かなりの確率でC型肝炎が陽性です。
ただ、そのことを指摘して、
検査は受けていますか、
とお聞きするのには、
非常な勇気が要ります。
大抵そうした方はお酒もお飲みになるので、
そのことをお聞きしてから、
肝機能の検査を受けていますか、
とお聞きして、
なければ検査をお勧めするのが、
概ね僕の対処しているやり方です。
彫り師の方にも、
色々な腕前の方がいるようで、
これはさすがに見事だ、
と思うようなものもありますし、
その一方で、
子供の一筆書きのような、
オヤオヤ、と思うようなものもあります。
これは明らかに途中で彫るのを止めたな、
と思うようなものもあります。
実際には、
完成品の方が少ないような気がします。
神経を使うのは採血で、
通常採血をする部位は肘の部分で、
そこにはほぼ間違いなく文様があります。
そのために血管を見付けることは難しくなりますし、
もし失敗して内出血で、
大事な文様に傷が付いたらと思うと、
ドキドキしてしまいます。
医療者の立場からしますと、
彫り師の方には、
どうか点滴や採血に使用する部位には、
彫り物は彫らないで頂きたいと、
それが一番のお願いです。
それでは今日はこのくらいで。
今日は絶対良いことがあるような、
無意味な確信を持ちつつ、
これから診療に向かいたいと思います。
石原がお送りしました。
(付記)
本記事は3月15日午後5時に、
若干の修正を加えました。
ヨード剤による甲状腺の被爆予防について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
東京は計画停電の発表で混乱があり、
電車は多くが停まっていて、
交通機能停止のような状況です。
ガソリンも足りないようで、
スタンドの多くが営業しておらず、
このままだと早晩車の使用も困難になりそうです。
もう少し事前に電力会社と交通機関が、
協議することは出来なかったのでしょうか。
停電自体は仕方のないことだと思いますが、
対応のまずさは非常に疑問です。
それでは今日の話題です。
今日はご質問のあった、
ヨード(あるいはヨウ素)による、
甲状腺のブロックの話です。
被爆の問題もあり、
多分イソジンのうがい液などは、
市場から消滅することが予想されますが、
このイソジンのうがい液には、
通常の濃度のもので、
1cc当たり7mgのヨードが含有されています。
通常医療目的のヨード剤としては、
ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムの溶剤が使用されます。
僕は使用が必要の際には、
調剤薬局で作ってもらっています。
被爆の予防にヨード剤を使用するのは、
比較的大量のヨードを身体に接取することにより、
甲状腺に取り込まれるヨードを、
ブロックする目的があります。
ヨードは人間の身体では、
主に甲状腺ホルモンの成分として、
その生合成時に使用されます。
甲状腺ホルモンをT3とかT4というのは、
その含んでいるヨードの数を表していて、
たとえばT3であれば、
その構造に3つの無機ヨードを含んでいます。
通常人間のヨードの必要量は、
1日0.2mgもあれば充分で、
土壌にヨードが多く含まれ、
海産物特に海藻類の摂取が多い日本人では、
ヨードの欠乏は殆どなく、
むしろヨードを過剰に摂取している人が多いと考えられます。
さて、放射性ヨードが身体に入ると、
その多くは甲状腺に集まります。
より正確に言うと、
口から摂取されたヨードのうち、
ごく一部は唾液腺に入り、
2割は吸収されて甲状腺に入り、
8割弱は腎臓から排泄されます。
この放射性ヨードが甲状腺の組織を破壊し、
特にお子さんでは甲状腺癌を高率に起こすことが、
チェルノブイリの原発事故の経験などから分かっています。
そのために、
甲状腺癌の予防のためのヨード剤の使用が、
放射線被爆の可能性のある場合には、
有効な予防法とされているのです。
それでは、何故ヨード剤を飲むと、
放射性ヨードの後遺症の予防になるのでしょうか?
これは大量のヨードが身体に入ると、
甲状腺はヨードで飽和された状態になり、
そこに放射性ヨードが侵入しても、
そのヨードは甲状腺に入れなくなるからです。
過剰のヨードはまた、
甲状腺ホルモンの生合成をブロックするため、
甲状腺機能亢進症の治療に、
用いられることもあります。
どの程度のヨードが、
甲状腺のヨードブロックの目的には必要でしょうか?
僕が大学の医局で、
甲状腺学の大家の先生からレクチャーされたノートを見ると、
概ね10mgのヨードでブロックはされる、
と先生は言われていました。
また、副腎シンチという検査があり、
この時には放射性ヨードを使用するのですが、
この時に甲状腺を守るために使用するヨードは、
概ね20mgから30mgです。
甲状腺機能亢進症でヨードを治療に用いる際には、
通常15mg程度を使用します。
ただ、甲状腺クリーゼという、
甲状腺機能亢進症の重症型があって、
その場合一刻も早く甲状腺機能を正常にするために、
一気に1g(1000mg)のヨードを使用することがあります。
つまり、ヨードの使用量にも、
実際にはこれだけの幅がある訳です。
現行の放射能被爆時の緊急的な使用としては、
13歳以上40歳未満の成人では、
76mgを1回使用する、
という方法が日本では採用されています。
放射性ヨードによる甲状腺癌の発症は、
20歳までの年齢では被爆線量に応じて上昇し、
40歳を超えると有意な影響はないとされています。
ただ、大量の放射線を浴びれば、
癌の発症はなくても、
甲状腺細胞が壊死するので、
甲状腺機能低下に陥る可能性はあります。
76mgという量については、
2000年に出た文献で、
放射性ヨードの95%が、
30mgのヨードでブロックされた、
というデータをその元にしています。
ヨードは腸管からの吸収は良く、
吸収されてから10分後には甲状腺に取り込まれます。
その予防効果は甲状腺機能が正常であれば、
概ね24時間は持続します。
従って、76mgというのは、
かなり量的には過剰なのですが、
万一にも取り込まれないように、
という判断からのものなのだと思います。
注意して頂きたいのは、
これはあくまで緊急時の、
一時的な使用を前提にしている、
ということです。
使用は1回限りで、
その効力があるうちに、
被爆しない距離に逃れる、
というのが目的です。
ただ、たとえば副腎シンチと言う検査では、
コレステロールにくっ付けた、
放射性ヨードを使用するため、
甲状腺の保護目的でヨード剤を使用しますが、
この場合は1週間程度はその使用を継続することがあります。
また、甲状腺機能亢進症の治療では、
2週間程度その使用を継続することがあります。
従って、甲状腺機能が正常な方が、
1週間程度30mgくらいのヨードを内服することは、
それほど大きな健康上の問題にはならない、
と考えて良いと思います。
イソジンのうがい液で換算すれば、
これは4ccくらい、ということになります。
これで基本的には甲状腺への放射性ヨードの侵入は、
使用している期間については、
ブロックされることになります。
ヨード剤を使用する面での、
副作用はないのでしょうか?
通常の副作用として多いのは、
胃腸症状です。
胃痛や吐き気はかなり多い副作用で、
大なり小なり起こると考えた方が良いのです。
一番の注意はヨードアレルギーで、
イソジンやルゴール、
造影剤で体調の悪くなったことのある方は、
使用することは出来ません。
慢性の蕁麻疹を生じる病気である低補体性血管炎や、
身体に水疱の出来るジューリング疱疹性皮膚炎では、
ヨードアレルギーを伴うことが多いので、
原則は使用が出来ません。
大量のヨードが長期間使用されれば、
橋本病など甲状腺ホルモンの生合成に、
何らかの問題のあるケースでは、
ホルモンの合成が阻害されて、
甲状腺機能低下になる恐れがあります。
ただ、これはホルモン剤の内服で予防は可能ですし、
通常1週間程度の使用では、
起こらないことが殆どです。
放射性ヨードと甲状腺癌との関連については、
僕自身しっくりしない点があります。
それは、
放射性ヨードは甲状腺機能亢進症の治療として、
広く使用されており、
甲状腺組織を壊死させる量を、
治療目的で使用するにも関わらず、
基本的には若年層に使用しても、
癌の発症が増えることはない、
とされていることです。
この違いが何処にあるのか、
納得の行く説明は、
僕の検索した範囲では、
見つけることは出来ませんでした。
今日は甲状腺の放射線被爆予防目的の、
ヨード剤の使用についての話でした。
より正当な記載は、
「緊急被爆医療研修」のサイトをご参照下さい。
原則としてその使用は、
行政の指示に従って行なって下さい。
この記事は勝手にイソジン等の内服を行なうことを、
促す意図のあるものではありませんし、
放射線の被曝は勿論ヨード剤の使用で、
完全に防御出来る性質のものでもありません。
防御可能なのは、
主に低年齢層の将来の甲状腺組織の発癌リスクのみだからです。
そうした点はご配慮の上、
慎重にお読み頂ければ幸いです。
それでは今日はこのくらいで。
被災された方にとって、
今日が少しでも良い日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
東京は計画停電の発表で混乱があり、
電車は多くが停まっていて、
交通機能停止のような状況です。
ガソリンも足りないようで、
スタンドの多くが営業しておらず、
このままだと早晩車の使用も困難になりそうです。
もう少し事前に電力会社と交通機関が、
協議することは出来なかったのでしょうか。
停電自体は仕方のないことだと思いますが、
対応のまずさは非常に疑問です。
それでは今日の話題です。
今日はご質問のあった、
ヨード(あるいはヨウ素)による、
甲状腺のブロックの話です。
被爆の問題もあり、
多分イソジンのうがい液などは、
市場から消滅することが予想されますが、
このイソジンのうがい液には、
通常の濃度のもので、
1cc当たり7mgのヨードが含有されています。
通常医療目的のヨード剤としては、
ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムの溶剤が使用されます。
僕は使用が必要の際には、
調剤薬局で作ってもらっています。
被爆の予防にヨード剤を使用するのは、
比較的大量のヨードを身体に接取することにより、
甲状腺に取り込まれるヨードを、
ブロックする目的があります。
ヨードは人間の身体では、
主に甲状腺ホルモンの成分として、
その生合成時に使用されます。
甲状腺ホルモンをT3とかT4というのは、
その含んでいるヨードの数を表していて、
たとえばT3であれば、
その構造に3つの無機ヨードを含んでいます。
通常人間のヨードの必要量は、
1日0.2mgもあれば充分で、
土壌にヨードが多く含まれ、
海産物特に海藻類の摂取が多い日本人では、
ヨードの欠乏は殆どなく、
むしろヨードを過剰に摂取している人が多いと考えられます。
さて、放射性ヨードが身体に入ると、
その多くは甲状腺に集まります。
より正確に言うと、
口から摂取されたヨードのうち、
ごく一部は唾液腺に入り、
2割は吸収されて甲状腺に入り、
8割弱は腎臓から排泄されます。
この放射性ヨードが甲状腺の組織を破壊し、
特にお子さんでは甲状腺癌を高率に起こすことが、
チェルノブイリの原発事故の経験などから分かっています。
そのために、
甲状腺癌の予防のためのヨード剤の使用が、
放射線被爆の可能性のある場合には、
有効な予防法とされているのです。
それでは、何故ヨード剤を飲むと、
放射性ヨードの後遺症の予防になるのでしょうか?
これは大量のヨードが身体に入ると、
甲状腺はヨードで飽和された状態になり、
そこに放射性ヨードが侵入しても、
そのヨードは甲状腺に入れなくなるからです。
過剰のヨードはまた、
甲状腺ホルモンの生合成をブロックするため、
甲状腺機能亢進症の治療に、
用いられることもあります。
どの程度のヨードが、
甲状腺のヨードブロックの目的には必要でしょうか?
僕が大学の医局で、
甲状腺学の大家の先生からレクチャーされたノートを見ると、
概ね10mgのヨードでブロックはされる、
と先生は言われていました。
また、副腎シンチという検査があり、
この時には放射性ヨードを使用するのですが、
この時に甲状腺を守るために使用するヨードは、
概ね20mgから30mgです。
甲状腺機能亢進症でヨードを治療に用いる際には、
通常15mg程度を使用します。
ただ、甲状腺クリーゼという、
甲状腺機能亢進症の重症型があって、
その場合一刻も早く甲状腺機能を正常にするために、
一気に1g(1000mg)のヨードを使用することがあります。
つまり、ヨードの使用量にも、
実際にはこれだけの幅がある訳です。
現行の放射能被爆時の緊急的な使用としては、
13歳以上40歳未満の成人では、
76mgを1回使用する、
という方法が日本では採用されています。
放射性ヨードによる甲状腺癌の発症は、
20歳までの年齢では被爆線量に応じて上昇し、
40歳を超えると有意な影響はないとされています。
ただ、大量の放射線を浴びれば、
癌の発症はなくても、
甲状腺細胞が壊死するので、
甲状腺機能低下に陥る可能性はあります。
76mgという量については、
2000年に出た文献で、
放射性ヨードの95%が、
30mgのヨードでブロックされた、
というデータをその元にしています。
ヨードは腸管からの吸収は良く、
吸収されてから10分後には甲状腺に取り込まれます。
その予防効果は甲状腺機能が正常であれば、
概ね24時間は持続します。
従って、76mgというのは、
かなり量的には過剰なのですが、
万一にも取り込まれないように、
という判断からのものなのだと思います。
注意して頂きたいのは、
これはあくまで緊急時の、
一時的な使用を前提にしている、
ということです。
使用は1回限りで、
その効力があるうちに、
被爆しない距離に逃れる、
というのが目的です。
ただ、たとえば副腎シンチと言う検査では、
コレステロールにくっ付けた、
放射性ヨードを使用するため、
甲状腺の保護目的でヨード剤を使用しますが、
この場合は1週間程度はその使用を継続することがあります。
また、甲状腺機能亢進症の治療では、
2週間程度その使用を継続することがあります。
従って、甲状腺機能が正常な方が、
1週間程度30mgくらいのヨードを内服することは、
それほど大きな健康上の問題にはならない、
と考えて良いと思います。
イソジンのうがい液で換算すれば、
これは4ccくらい、ということになります。
これで基本的には甲状腺への放射性ヨードの侵入は、
使用している期間については、
ブロックされることになります。
ヨード剤を使用する面での、
副作用はないのでしょうか?
通常の副作用として多いのは、
胃腸症状です。
胃痛や吐き気はかなり多い副作用で、
大なり小なり起こると考えた方が良いのです。
一番の注意はヨードアレルギーで、
イソジンやルゴール、
造影剤で体調の悪くなったことのある方は、
使用することは出来ません。
慢性の蕁麻疹を生じる病気である低補体性血管炎や、
身体に水疱の出来るジューリング疱疹性皮膚炎では、
ヨードアレルギーを伴うことが多いので、
原則は使用が出来ません。
大量のヨードが長期間使用されれば、
橋本病など甲状腺ホルモンの生合成に、
何らかの問題のあるケースでは、
ホルモンの合成が阻害されて、
甲状腺機能低下になる恐れがあります。
ただ、これはホルモン剤の内服で予防は可能ですし、
通常1週間程度の使用では、
起こらないことが殆どです。
放射性ヨードと甲状腺癌との関連については、
僕自身しっくりしない点があります。
それは、
放射性ヨードは甲状腺機能亢進症の治療として、
広く使用されており、
甲状腺組織を壊死させる量を、
治療目的で使用するにも関わらず、
基本的には若年層に使用しても、
癌の発症が増えることはない、
とされていることです。
この違いが何処にあるのか、
納得の行く説明は、
僕の検索した範囲では、
見つけることは出来ませんでした。
今日は甲状腺の放射線被爆予防目的の、
ヨード剤の使用についての話でした。
より正当な記載は、
「緊急被爆医療研修」のサイトをご参照下さい。
原則としてその使用は、
行政の指示に従って行なって下さい。
この記事は勝手にイソジン等の内服を行なうことを、
促す意図のあるものではありませんし、
放射線の被曝は勿論ヨード剤の使用で、
完全に防御出来る性質のものでもありません。
防御可能なのは、
主に低年齢層の将来の甲状腺組織の発癌リスクのみだからです。
そうした点はご配慮の上、
慎重にお読み頂ければ幸いです。
それでは今日はこのくらいで。
被災された方にとって、
今日が少しでも良い日でありますように。
石原がお送りしました。
大きなことと小さなこと [身辺雑記]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
現状の地震被害の深刻さを考えると、
どうもあまり他の話題を、
考えるような気分にはなれません。
今日は取り留めのない話になることを、
お許し下さい。
東京は平穏で、
交通機関もほぼ平常に戻りました。
家の中はまだ書類や本などが散乱していますが、
他はほぼ平常です。
昨日の夜の東京は、
妙に閑散としていて、
皆疲れて家でテレビを見ているのでしょうか、
車通りも少なく、
商店もガランとしています。
ただ、食品などの流通は、
かなり制限されていて、
コンビニの商品の棚はスカスカの状態です。
このまま何かが静かに滅んで行くのかと思うと、
心底恐怖を感じます。
昨日は通常通りの診療でした。
心療内科の患者さんから電話があって、
ご家族が岩手にいて全く連絡の取れない状態だ、
というお話でした。
それで診察にも来たくないと言われたので、
昨日は精神科の医師の診察日でしたし、
そう言わずに取り敢えずは来て欲しい、
誰かに話をするだけで、
解決にはならないにしても、
少し気持ちが落ち着くかも知れないから、
と実際にはもっと強く、
「来て!」と言いました。
その人にとって、
昨日の診察に、
何らかの意味があったのかどうかは分かりません。
ただ、今の僕に出来ることは、
その程度のことのような気がします。
それでも、
昨日僕が診察後に最も辛かったことは、
風邪で受診された患者さんが、
一向に良くならないと、
不満を訴えられたことでした。
今の僕の生活は、
こうした日々の止むを得ない積み重ねだけで、
止むを得ずに出来ています。
何て小さなことしか思い悩めないのだろう、
と考えていて思い出したのは、
以前の阪神淡路大震災の時のことです。
あの時は僕は大学の医局にいたのですが、
確か震災当日かその翌日が、
火曜日だったと思います。
火曜日は山梨にある病院で、
救急の当直のバイトがあり、
午前中医局で回診が終わってから、
夕方に山梨に向かうのが毎週の日課でした。
救急のバイトというのは、
正直非常にプレッシャーの掛かる苦痛な仕事で、
応援は呼べる体制はあるものの、
基本的には1人で全ての救急患者さんを、
診察しなければいけません。
特に救急当番の日に当たると、
原則として近隣の救急車は、
全てその病院に運ばれて来ます。
従って、確かに世間は地震で騒いではいましたが、
僕にとっては当直のプレッシャーが頭の中の全てで、
言葉は悪いですが、
どう修羅場を凌ぐか、
ということだけが、
頭の中を旋回している状態でした。
確か夜中の2時くらいだったでしょうか。
患者さんの対応に一呼吸を吐いて、
看護婦さん(当時はこの名称です)
の控え室に呼ばれて入ると、
小さなブラウン管のテレビに、
燃え上がる街の姿が、
延々と映し出されていました。
看護婦さんは、
「神戸は大変よね」
と言っていましたが、
僕は自分のことで精一杯で、
あまりそのことに興味がありませんでした。
すぐにまた救急車のサイレンの音が聞こえ、
上手くこの状況を凌げるか、
という不安と恐怖とが、
僕を押し包んでいったからです。
診療所を閉めて東北に行きたいと、
思う気持ちもありますが、
そんなことをしたからと言って、
僕に出来ることが何かあるという、
はっきりした目算がある訳ではありません。
明日の診察に、
またいつものように取り掛かり、
風邪の患者さんを失望させたことを、
僕なりに咀嚼して次に繋げることくらいが、
今の僕に出来ることの全てなのかも知れません。
うまく言えないのですが、
今生きている不思議を感じますし、
それが偶然ではないという思いもあります。
人間の背後には矢張り何かがあって、
確実に人間は今何かを試されているのだと思いますが、
それに立ち向かうにはあまりに無力です。
目覚めよと呼ぶ声は、
確かに聞こえるような気がしますが、
それでは今貧弱な生を生かされていて、
何をすべきなのかはよく分かりません。
ただ、今生きている責任として、
変わらなければいけないのだと思いますし、
聞こえない声を聞き、
見えないものを見る努力を、
しなければならないとは思うのです。
取り留めのないことを書きました。
震災で亡くなられた方の、
ご冥福をお祈りします。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
現状の地震被害の深刻さを考えると、
どうもあまり他の話題を、
考えるような気分にはなれません。
今日は取り留めのない話になることを、
お許し下さい。
東京は平穏で、
交通機関もほぼ平常に戻りました。
家の中はまだ書類や本などが散乱していますが、
他はほぼ平常です。
昨日の夜の東京は、
妙に閑散としていて、
皆疲れて家でテレビを見ているのでしょうか、
車通りも少なく、
商店もガランとしています。
ただ、食品などの流通は、
かなり制限されていて、
コンビニの商品の棚はスカスカの状態です。
このまま何かが静かに滅んで行くのかと思うと、
心底恐怖を感じます。
昨日は通常通りの診療でした。
心療内科の患者さんから電話があって、
ご家族が岩手にいて全く連絡の取れない状態だ、
というお話でした。
それで診察にも来たくないと言われたので、
昨日は精神科の医師の診察日でしたし、
そう言わずに取り敢えずは来て欲しい、
誰かに話をするだけで、
解決にはならないにしても、
少し気持ちが落ち着くかも知れないから、
と実際にはもっと強く、
「来て!」と言いました。
その人にとって、
昨日の診察に、
何らかの意味があったのかどうかは分かりません。
ただ、今の僕に出来ることは、
その程度のことのような気がします。
それでも、
昨日僕が診察後に最も辛かったことは、
風邪で受診された患者さんが、
一向に良くならないと、
不満を訴えられたことでした。
今の僕の生活は、
こうした日々の止むを得ない積み重ねだけで、
止むを得ずに出来ています。
何て小さなことしか思い悩めないのだろう、
と考えていて思い出したのは、
以前の阪神淡路大震災の時のことです。
あの時は僕は大学の医局にいたのですが、
確か震災当日かその翌日が、
火曜日だったと思います。
火曜日は山梨にある病院で、
救急の当直のバイトがあり、
午前中医局で回診が終わってから、
夕方に山梨に向かうのが毎週の日課でした。
救急のバイトというのは、
正直非常にプレッシャーの掛かる苦痛な仕事で、
応援は呼べる体制はあるものの、
基本的には1人で全ての救急患者さんを、
診察しなければいけません。
特に救急当番の日に当たると、
原則として近隣の救急車は、
全てその病院に運ばれて来ます。
従って、確かに世間は地震で騒いではいましたが、
僕にとっては当直のプレッシャーが頭の中の全てで、
言葉は悪いですが、
どう修羅場を凌ぐか、
ということだけが、
頭の中を旋回している状態でした。
確か夜中の2時くらいだったでしょうか。
患者さんの対応に一呼吸を吐いて、
看護婦さん(当時はこの名称です)
の控え室に呼ばれて入ると、
小さなブラウン管のテレビに、
燃え上がる街の姿が、
延々と映し出されていました。
看護婦さんは、
「神戸は大変よね」
と言っていましたが、
僕は自分のことで精一杯で、
あまりそのことに興味がありませんでした。
すぐにまた救急車のサイレンの音が聞こえ、
上手くこの状況を凌げるか、
という不安と恐怖とが、
僕を押し包んでいったからです。
診療所を閉めて東北に行きたいと、
思う気持ちもありますが、
そんなことをしたからと言って、
僕に出来ることが何かあるという、
はっきりした目算がある訳ではありません。
明日の診察に、
またいつものように取り掛かり、
風邪の患者さんを失望させたことを、
僕なりに咀嚼して次に繋げることくらいが、
今の僕に出来ることの全てなのかも知れません。
うまく言えないのですが、
今生きている不思議を感じますし、
それが偶然ではないという思いもあります。
人間の背後には矢張り何かがあって、
確実に人間は今何かを試されているのだと思いますが、
それに立ち向かうにはあまりに無力です。
目覚めよと呼ぶ声は、
確かに聞こえるような気がしますが、
それでは今貧弱な生を生かされていて、
何をすべきなのかはよく分かりません。
ただ、今生きている責任として、
変わらなければいけないのだと思いますし、
聞こえない声を聞き、
見えないものを見る努力を、
しなければならないとは思うのです。
取り留めのないことを書きました。
震災で亡くなられた方の、
ご冥福をお祈りします。
石原がお送りしました。
治療方針の継続性をどう考えるか? [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
昨日は地震で驚きましたが、
東京は基本的には平穏で、
本日の診療にも現時点で特に変更はありません。
昨日は11時前には何とか帰れました。
家の中はかなり悲惨ですが、
これはボチボチ片付けます。
北関東から東北の被害は大きいようで、
その点は非常に心配です。
地震の話はこのくらいで、
今日はちょっと軽い話題です。
たとえばご高齢の方が脳卒中の発作を起こして、
救急病院に入院するとします。
患者さんはしばらくして安定した状態になれば、
リハビリ病院に移るか、
長期療養型の病院に移ります。
そこでまた老健に移ったり、
それからまた別の長期療養型の病院を梯子したりして、
最終的に特別養護老人ホームのような施設に移るか、
ご経過が良ければ在宅に戻るのが、
比較的よくある経過です。
ここで長期療養型の病院や老人保健施設は、
包括医療の形式を取っていることが多いため、
そこで可能な医療行為には自ずと制限があり、
先日お話したように、
その前の医療機関の処方が、
使用困難で中止されることも、
しばしば起こります。
僕は近隣の特別養護老人ホームに関わっていますが、
特別養護老人ホームの配置医の立場からすると、
入所された方の病状の経過が、
辿り難くなっていることが非常に多いのが、
いつも頭を悩ませる点です。
入所の時手元に来る紹介状は、
その直前にいた病院や老健からのものだけです。
すると、
たとえば脳卒中の経緯がどうであったのか、
と知りたくなってお聞きしても、
「ここへ来てからは以前の処方をそのまま出していただけなので、
以前のことは分かりません」
というようなお返事が来ることが殆どです。
たとえば、当然使用されている筈の、
抗血栓剤が使用されていないケースがあり、
それは何処かで洩れてしまったものなのか、
それとも何か副作用があって、
使用の継続が困難になったのか、
徘徊して転倒のリスクが高いから、
などの付随する理由があったのか、
後からは全く辿れない状態になってしまうのです。
このように当初の治療の継続性が、
途中で消えてしまうようなシステムは、
もっと改善されなければならないのではないでしょうか?
そうした情報がもっと共有され、
後の診療に活かされるようなシステムがあれば、
先日ご紹介したような処方の中断なども、
起こり難くなるのではないかと思うのです。
皆さんはどうお考えになりますか?
今日は施設の医療の継続性についての話でした。
それでは今日はこのくらいで。
地震の情報には注視しつつ、
いつも通りに仕事を始めます。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
昨日は地震で驚きましたが、
東京は基本的には平穏で、
本日の診療にも現時点で特に変更はありません。
昨日は11時前には何とか帰れました。
家の中はかなり悲惨ですが、
これはボチボチ片付けます。
北関東から東北の被害は大きいようで、
その点は非常に心配です。
地震の話はこのくらいで、
今日はちょっと軽い話題です。
たとえばご高齢の方が脳卒中の発作を起こして、
救急病院に入院するとします。
患者さんはしばらくして安定した状態になれば、
リハビリ病院に移るか、
長期療養型の病院に移ります。
そこでまた老健に移ったり、
それからまた別の長期療養型の病院を梯子したりして、
最終的に特別養護老人ホームのような施設に移るか、
ご経過が良ければ在宅に戻るのが、
比較的よくある経過です。
ここで長期療養型の病院や老人保健施設は、
包括医療の形式を取っていることが多いため、
そこで可能な医療行為には自ずと制限があり、
先日お話したように、
その前の医療機関の処方が、
使用困難で中止されることも、
しばしば起こります。
僕は近隣の特別養護老人ホームに関わっていますが、
特別養護老人ホームの配置医の立場からすると、
入所された方の病状の経過が、
辿り難くなっていることが非常に多いのが、
いつも頭を悩ませる点です。
入所の時手元に来る紹介状は、
その直前にいた病院や老健からのものだけです。
すると、
たとえば脳卒中の経緯がどうであったのか、
と知りたくなってお聞きしても、
「ここへ来てからは以前の処方をそのまま出していただけなので、
以前のことは分かりません」
というようなお返事が来ることが殆どです。
たとえば、当然使用されている筈の、
抗血栓剤が使用されていないケースがあり、
それは何処かで洩れてしまったものなのか、
それとも何か副作用があって、
使用の継続が困難になったのか、
徘徊して転倒のリスクが高いから、
などの付随する理由があったのか、
後からは全く辿れない状態になってしまうのです。
このように当初の治療の継続性が、
途中で消えてしまうようなシステムは、
もっと改善されなければならないのではないでしょうか?
そうした情報がもっと共有され、
後の診療に活かされるようなシステムがあれば、
先日ご紹介したような処方の中断なども、
起こり難くなるのではないかと思うのです。
皆さんはどうお考えになりますか?
今日は施設の医療の継続性についての話でした。
それでは今日はこのくらいで。
地震の情報には注視しつつ、
いつも通りに仕事を始めます。
石原がお送りしました。
前の5件 | -